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2005年2月22日 
第162回国会 衆議院 総務委員会
案件:大臣所信に対する質疑(行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件)

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(48分) 「マスメディア集中排除原則・郵政民営化問題」   

 本日の総務委員会では、冒頭、同和問題に関する質問を行いました。
 野中広務元衆議院議員を題材とした著書「差別と権力(魚住昭著:講談社)」等によると、麻生大臣が同和問題に関し差別的な発言をされたとあります。この件の真偽について、麻生大臣に直接確認したところ、大臣は、そのような発言をした事実はないと否定されました。

 次にマスメディア集中排除原則に関する質問を行いました。
マスメディア集中排除原則とは、放送の機会をできる限り多くの方々に確保し、放送による表現の自由ができるだけ多くの方に享受されるようにするための規制です。具体的には出資比率等に規制をかけ、所有又は支配する放送局等の数を制限するものです。
昨年この出資比率違反をしている者が多数存在することが発覚しました。
 日本のマスコミは、実際には新聞各社ごとに系列化されています。ところが、マスメディア集中排除原則を所掌する総務省は、放送局を所管しているものの新聞社は所管していません。
 集中排除原則が徹底されていなかったのも、そうしたところに原因があるのではないか。従って、総務省は、新聞社等に対する調査権みたいなものも持つべきではないかといった趣旨で質問を行いました。
 大臣の見解は、マスメディアの集中排除原則は、今後とも徹底を図っていくべきではあるが、表現の自由というのは大変重く、政治が新聞社等へ介入することは極力避けるべきというものでした。
 確かに表現の自由は重要です。マスメディアの集中排除原則も、本来ならば業界の自主規制で対応すべきものです。しかし、放っておけば集中排除原則が達成できない現状においては、国の関与も仕方ない部分があると思います。

 最後に、郵政民営化の問題をとりあげました。
 郵政民営化については、竹中大臣が担当大臣となっているようですが、本来、郵政事業を所管しているのは総務大臣でした。この両者の所管の関係について質問を行いました。
 というのは、この所管の問題は、国会運営上非常に大きな意味があるのです。
 従来、郵政事業については総務委員会で審議をしてきました。従って、郵政民営化の問題も、引き続き総務委員会で扱うのが筋だと思います。しかし、ことこの問題については、小泉総理は、予野党ともに民営化反対派の議員が多い総務委員会ではなく、新たに特別委員会を設置し、そちらで審議したいと考えているようです。
 総務委員会は総務大臣が所管する問題を審議することとなっているため、総務大臣が、郵政民営化問題を担当しているかどうかというのは、どの委員会で審議を行うかという観点からは大変重要なポイントになるわけです。
    

[2] 質疑項目

(1) マスメディア集中排除原則に定める放送事業者への出資規制の徹底について

  ア 実質的な株主を調査する権限を総務大臣に与える必要
  イ 出資状況に係る情報公開を求める権限を総務大臣に与える必要

(2)郵政民営化問題の所管の所在について

  ア 総務省設置法に定める総務省の郵政事業に係る所管との関係
  イ 所管を内閣府(郵政民営化担当大臣)の専属とすることの是非

(3)郵政民営化の影響について

  ア 官から民への資金誘導の効果
  イ 民営化会社が独占的企業となって国民の利便性が損なわれるおそれ


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[3] 会議録抜粋 

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 本日、私は、第一に、野中広務前衆議院議員の証言に基づく案件、第二に、民間放送局の第三者名義株の問題、第三に、郵政民営化について質問を行います。

 まず、野中広務前衆議院議員の発言に基づく案件でございます。

 魚住昭著「野中広務 差別と権力」という本があります。この三百五十一ページに、「二〇〇三年九月二十一日、野中は最後の自民党総務会に臨んだ。」というところから始まる文章があります。これは、麻生総務大臣が当時差別的な発言をしたのではないか、そういうことが提示されている部分でございます。

 敬愛する総務大臣に対して、かなりきょうは厳しいことを申し上げなくてはいけないかもしれません。ただ、私としても、人権問題に取り組んでいる立場から、このような案件については、きちんと事実確認、それと大臣御自身の評価をお聞きしたいということで、今回お聞きさせていただくことにいたしました。

 少し長くなりますけれども、引用させていただきます。

 堀内の目の前に座っていた野中が、

 「総務会長!」

 と甲高い声を上げたのはそのときだった。

  立ち上がった野中は、

 「総務会長、この発言は、私の最後の発言と肝に銘じて申し上げます」

 と断って、山崎拓の女性スキャンダルに触れた後で、政調会長の麻生のほうに顔を向けた。

 「総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」とおっしゃった。そのことを、私は大勇会の三人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」

  野中の激しい言葉に総務会の空気は凍りついた。麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。

という記述であります。

 そこで、麻生総務大臣に伺います。この大勇会の会合で、野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなとおっしゃったことは事実でしょうか。

○麻生国務大臣

 私、ちょっとその本を読んでいないし、何という人が書かれたか知りませんけれども、その方の取材も受けたこともないし、面識もない、それをまず第一に申し上げておきたいと思います。

 それから、野中先生の発言は、私、その場にいましたから、総務大臣に予定されていると言われましたけれども、私は、総務大臣に予定されていたのはその次の日でありまして、前の日に自分が何大臣になるかということを知っていた大臣はゼロです。したがって、下を向いて赤くなりもしませんでしたから。正直申し上げて、今の記述はかなり違っていると思いますが、私は、その発言については事実とは全く違っていると思っております。

 大勇会の中でその種の話があったという三人というのが、どなたを指して三人と言っておられるのかは存じませんが、私どもの席では、昼食会の席だったので、かなりな数がいたという記憶がありますので、いずれにいたしましても、大勇会の席でその種の発言をしたことはありません。

○中村(哲)委員

 ということは、この本に載っている日付で申しますと、三百四十四ページには、「党大会の前日に開かれた大勇会の会合で野中の名前を挙げながら、「あんな部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と言い放った。」と自民党代議士の証言を書かれているのですけれども、これも事実無根ということでよろしいでしょうか。

○麻生国務大臣

 そのような発言をしたことは全くありません。

○中村(哲)委員

 別の方からは、岡山県で開催された講演会の中でも野中広務前衆議院議員は同趣旨のことをおっしゃっているそうでございますけれども、この件についても、それが、野中さんがおっしゃったということが事実であるとすれば、野中さんがおっしゃったことは事実無根であるということでよろしいですね。

○麻生国務大臣

 岡山の発言はちょっとわかりませんし、その現場にいたわけでもないので全然わかりませんが、もし大勇会の話をもとにして岡山で発言をされているという前提に立ったならば、そのような事実はありません。

○中村(哲)委員

 ということで、この本に書かれている当該部分の麻生総務大臣の、当時総務大臣ではございませんけれども、麻生氏の発言については事実無根であると麻生大臣はお答えになったということでよろしいですね。

○麻生国務大臣

 正確に言うと、その日は無役です。その日一日だけ無役。その前の日まで政調会長をしておりまして、その日一日無役、翌日総務大臣になったというのが事実でありますので、麻生議員と言っていただくのが正しいんだと思います。その席で、総務会の段階で役職を解かれておりますので、無役でありましたから、議員が一番正しいんだと思いますが、その発言があったことも記憶をいたしておりますし、その種の発言があったことも、現場におりましたのでよく知っておりますが、現場というのはその総務会の話ですね、大勇会での一連の発言があったという発言をしておられるということも私は知っておりますけれども、その種の発言をしたということは全くありませんし、それを証言したという議員の方々というのがどなたかということも、前に一回伺ったことがあるんですけれども、みんなきょとんとしているような雰囲気でしたので、事実と違うと思っております。

○中村(哲)委員

 つまり、野中当時の議員が自民党の総務会でそのような趣旨の発言をされたということは事実であるけれども、麻生当時の議員が大勇会においてそのような、野中氏を誹謗中傷するような発言をしたことはないということでよろしいですね。

○麻生国務大臣

 そのように御理解いただいて結構です。

○中村(哲)委員

 そのことは事実の確認をさせていただきました。ぜひ、大臣には一冊、また後で本をプレゼントさせていただこうと思っております。

 それでは、第二に、民間放送局の第三者名義株の問題であります。

 NHKの不祥事がありまして非常に情けない状態だなということを感じておりますが、それでは、NHKが不祥事があったから責めてそれでいいのかというと、一方で、民放の第三者名義株の問題が発生いたしました。読売新聞の渡辺さんが辞任をしたような大きな案件にもかかわらず、新聞、テレビを含めて、このマスメディア集中排除原則についての議論が全く行われていないということは非常に私は残念だと思っています。

 なぜ、総務省がテレビ局に介入をしないような法体系になっているかといえば、それは、テレビ局が、自分たちのことは自分たちで自主規制をしていく、不透明なことがあれば情報公開をしていく、そういった姿勢があるからだと思っております。

 マスメディア集中排除原則の中で、放送法第二条の二で放送普及基本計画というものを定めることが規定されております。その放送普及基本計画の第二項で「放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保」という規定がされておりまして、放送による表現の自由ができるだけ多くの者により享有されること、民主主義の健全な発達のため、また、放送が国民に最大限に普及され効果をもたらすことを保障するため、そういった理由で、一の者が支配可能な放送事業者の数を制限しようということでこの一〇%や二〇%の規定が設けられているわけでございます。

 しかし、今回の事件で、一〇%、二〇%という規定が守られているかどうかというのは本当はわからない、そして、それが守られていたとしても、マスメディア集中排除原則が求めているような目的は、実は達成できないんじゃないかということが明らかになってきたと思うんですね。

 新聞社は再販制度によって守られている。そして、新聞社が各テレビ局に出資をしていく。そして、それらの企業体というのは、互いに持ち合いをしながら企業の支配体制を強めている。実質的にはそういうことになっていると思うんですね。

 世の中の人だれが見ても、こんなマスメディア集中排除原則があって、一〇%や二〇%というような規定があるよということはほとんど御存じじゃないし、そんなことあるのかなと正直思っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃると思います。

 新聞社がテレビ局を持って、キー局が地方のローカル局も実質的に支配をしていくような構造にあるということはもうだれが見ても明らかだ。しかし一方で、マスメディア集中排除原則のような規定、省令で一〇%、二〇%のような規定があるから、総務省はそれ以上にチェックをするような構造にないわけですね。そして、私たち民主党の部門会議に説明に来てもらい政府の方から説明を受けたときでも、そのことは私たちに権限がないんですという答弁を繰り返されるだけでございました。

 ここについて、私は、もう考え方を変えなくてはいけない時期に来ているんではないかと思います。NHKの予算をこの国会で審議するのであれば、こっちの民放の方の株式の出資状況などについて、株主までさかのぼって総務大臣に調査する権限を、放送法、電波法を改正して規定を設けるべきなのではないか、私はそのように考えておりますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 中村先生、今事例違反の内容を全部精査中で、近々これは出ますけれども、現在までに把握している範囲では、間違いなく御指摘のあるとおりに、マスメディア集中排除の原則に違反しているという名義株等々を新聞社が所有しているというところはかなりな数があった。正確にいきますと、新聞社系で出資していた件数は、十四社四十一件、読売新聞社で十四件、中日新聞八件とざっとあるんですが、そういうものがあることは事実なんです。これは事実としてもう既に発表しております。

 中村先生、これは難しいのは、新聞社は監督官庁というのがないんですよ。だから、なかなか新聞社を総務省がということはできないことになっておるんですね。したがって、そういうところをまず御理解いただいておかないかぬところなんです。

 そういうところで、やはり基本的には、新聞社等々の関係者などに対して、マスメディア集中排除法のよって来る原因は、もともとはこういった形で、特定の人なり社なりがマスコミという極めて影響力のでかい、特にテレビになりましてから影響力が爆発的にふえておりますので、テレビ会社に対して影響力を明らかに行使できるかのごとき状況というのは避けなきゃならぬということはもう当然なので、そういった趣旨をよく認識してもらうように努力していただくところから始めないかぬところなんです。

 これは、報道の自由とか表現の自由とかいろいろなものと重なってきますので、いきなり今法規制までいっちゃうかどうかというところは、まだ今私ども検討している段階ではありません。

○中村(哲)委員

 今おっしゃったとおり、新聞社には監督官庁はないわけですよね。読売新聞が昨年の十一月十二日付の記事で書いてあることについては、私の目から見ると、余り反省の弁はないのか、もう規制緩和した方がいいんじゃないか、もう時代に合いませんよ、そういう趣旨の話になっております。

 例えば、こういうことが書かれております。「だが、時代は変わり、衛星を使ったBS、CS放送やケーブルテレビ、インターネットなど多メディア化が急速に進んだ。放送の多元性は十分に確保されており、メディア支配を厳格に規制する必要性は小さくなったといえる。 さらにメディア間競争が激化し、新規の放送事業開始のための資金集めがしにくくなった。この結果、規制緩和を求める動きがむしろ活発になっている。」そういうふうに書かれております。

 つまり、地上波の放送局であっても、いや、BSやCSで新規参入者が出てきているからそれでいいんですよと。これは巨大独占企業の非常に陥りやすい問題がここにあるわけですよね。

 確かに、今、地上波デジタルで新規参入が認められたとしても、実は、これは、出資する人も今の既存の巨大なキー局に対抗するような放送局をつくることはなかなかできないと思いますよ。今までの蓄積、累々と積み上げたものに対してこういった体制がある、そして、地上波については、もうほとんど免許の不許可というのも実質的にはできない状態になってしまっている。その中で、またこういうことを言いながら、CS、BSがあるから別にもういいじゃないですかというようなことを言い始めているというのは非常に不誠実だと私は思います。

 正面からマスメディア集中排除原則を、一〇%、二〇%ということをやるのであれば、みずから情報を開示して、持ち合いなどの情報も公開する、そういった姿勢が自主的に求められるはずであると私は思います。しかし、それをしていないのであれば、情報公開のレベルにとどめる形で総務大臣、総務省に調査権限を与える、そういったことが必要であると私は考えているんですが、いかがでしょうか。

○麻生国務大臣

 基本的に、マスメディア集中排除原則のよって来るところを最初に申し上げましたが、放送することができる機会、オポチュニティーというものをできるだけ多くの人に確保するというのがもともとの発想で出てきたんだと思うんです。

 今、何とか新聞の書いている話ですけれども、今回のを見られたらわかると思うんですが、総じて限度を超えているところは経済指数から見たら弱い県に多いんですよ。それはどうしてそうなるかというと、金を出す人というのは決まっているんだもの。

 先生は奈良県でしたか、奈良でどんな人が金持ちだかよく知りませんけれども、出す人というのはもう決まっているんですよ。もう既に出しちゃっている人のところにまた頼みに行かないと、ほかのところに行けないんですよ。だから、どうしたってそういうことになるというのは事実としてある程度わからないことはない。だから、他県だったら二〇%とかいろいろなことをしているんですが、なかなか散らそうと思っても散らしにくいという現実は確かにあるんです。

 私どもも地方側にいますから、福岡県以外の九州の中の県は、これはみんな大きな問題を抱えましたから、今回も、鹿児島とか出たのはみんなそれが大きな理由だ。私どもも、現場の金を出させられる側についこの間までいましたので、そこのところはよくわかるんです。

 ただ、原則として、今言われたように、やはりいろいろな意味で、こういった放送とかメディアというものは、広く、薄く、浅くとかいろいろな表現はありますけれども、確保しておくということをしないと、そういう努力を常にし続けておかないと、ちょっと一歩緩めたらするするっとそういったことになっていくんだと思いますので、そういった形は極力避けねばならぬと私どもも思っております。

○中村(哲)委員

 今大臣のお話にもありましたように、建前はメディア集中排除原則で、分散しているんだよ、私たちちゃんとそれを守っているよ、だから自主的にもきちんとやっているよということをやっておきながら、本音は、いや、お金を出す人がいなかったから仕方なかったんだよと、正面から読売新聞は書いているわけですよね。本音がそれであるのならば、それをベースにした、もう集中しているんだから、集中していることを前提として、そこを分散化していくような措置というのを情報公開していく、そういった仕組みが必要だと考えております。

 そこで、我が党の方針として、委員長に要請したいことがあります。この問題については事実の解明ということが必要ですので、読売新聞などの新聞社について参考人招致をするべきだと考えておるのですが、御検討いただけますでしょうか。

○実川委員長

 理事会で協議いたします。

○中村(哲)委員

 ありがとうございます。

 それでは、第三に、郵政の民営化についてのお話をさせていただきます。

 この件については、先週二月十七日に、衆議院予算委員会で松野頼久委員から質問がありました。そこのまず第一の論点についてお話をさせていただきます。

 総務省設置法第四条第七十九号にはこのような記述があります。「郵政事業(日本郵政公社が行う事業をいう。)に関する制度の企画及び立案に関すること。」この内容に郵政公社が民営化されるということは入っていないんでしょうか。

○麻生国務大臣

 今読まれました郵政事業に関する総務省設置法、これは多分郵政省と合併するときにできたルールなんだと思いますが、それに関して、今言われたようなことを、この間の内閣法制局長官の答弁というのがあっておりましたので、それが一番正確なところだと思います。

 郵政民営化の具体案及び必要な法案の企画立案などについては、内閣法第十二条第二項の内閣の重要な事務である。その次に、その事務が円滑に行われるように、竹中郵政民営化担当大臣は、国務大臣の任免権者である内閣総理大臣から、郵政民営化を政府一体となって円滑に推進するため、企画立案及び行政各部の所掌する事務の調整を担当させることを命じられて、郵政民営化の企画立案等の事務を担当している。そのときの答弁をそのまま読みました。これは仮にも法制局長官の答弁ですから、きちんと読まないといかぬのだと思います。

 そういった意味で、郵政事業の所管大臣としては、これは郵政民営化担当大臣に協力をさせていただいているという立場になります。

○中村(哲)委員

 私が聞いているのは、四条七十九号の郵政事業……(麻生国務大臣「済みません、長官じゃなくて、あれは梶田第一部長ね」と呼ぶ)今おっしゃったのは、松野委員の、「これが竹中大臣の所管であることを定めた法律を、法制局、ちょっと示してください。」という質問に対する答弁が今麻生大臣がお読みになったことなので、いや、法制局長官ですよね。

○麻生国務大臣

 済みません、法制局長官ではなくて、法制局梶田第一部長ということになります。

○中村(哲)委員

 それはともかくとして、設置法四条の七十九号の規定を私は聞いているわけです。その規定の、「郵政事業(日本郵政公社が行う事業をいう。)に関する制度の企画及び立案に関すること。」の中に民営化は入らないんですかということを申し上げているんです。

○麻生国務大臣

 この点につきましても、細田官房長官の答弁があのときに出ていると思うんです。

 総務大臣は担当の大臣であります、したがいまして、この郵政民営化という新しい事務を行う責任者の担当は竹中大臣でございますが、そのときに、当然、総務大臣も、郵政事業担当大臣として、これは全く関係がないということではなく、所管、所掌する大臣であることも事実でありますということを答弁しておりますので、今言われた、これが正しい答弁なんじゃないでしょうか。

○中村(哲)委員

 いや、私が聞いているのは、イエスかノーかで答えていただければいいんですよ。七十九号に書いていますよね。「郵政事業に関する制度の企画及び立案に関すること。」これは当然、郵政の民営化はど真ん中じゃないですか。制度の企画及び立案に関することでしょう。「日本郵政公社が行う事業をいう。」と書いているわけですから。日本郵政公社の行う事業に関する制度を企画すること、立案すること、民営化というのはそういうことでしょう。まさにこの七十九号の中身じゃないですか。そこを聞いているんですよ。いや、違うというのなら違うと言ってくださいよ。

○麻生国務大臣

 違うともそうだとも言えないところが難しいところなんですよね、この話は。(中村(哲)委員「そんなのイエスかノーかで答えてくださいよ」と呼ぶ)いや、答えられないところが難しいので。法律詰めてイエスかノーで答えられないんだから。

 だから、この種の話は、この七十九号を読まれたとおりなんですから、全くノー、私に全然関係ないとも言えないけれども、一応特命担当大臣というのが、少なくとも、内閣総理大臣によって任命されたその方が担当するということになっている以上、その方に一応協力するという形になるので、主は基本的には特命担当大臣にならざるを得ぬということだと理解していますけれども。

○中村(哲)委員

 最後の方の大臣の答弁が、ちょっと声が小さくなって聞こえなかったんですけれども。

○麻生国務大臣

 今、速記もちゃんと待っておられるほど、きちんととっておかれたいでしょうから。

 今申し上げましたのは、少なくとも、七十九号によって、総務大臣もこの郵政事業を担当している大臣であることははっきりしております。ただし、この民営化については特命担当大臣というのを、総理大臣が郵政民営化についてはといって特命を決められておりますので、私どもとしては、その他はともかくとして、郵政民営化のことに関しましては、それは担当しておりますので、自分のところの担当しておりますものがどんな形で、民営化するかということに関しては最大の関心事でありますから、いろいろな意味でやりますけれども、民営化に関しましては、これは郵政担当大臣竹中平蔵がやるということになろうと思います。

○中村(哲)委員

 大臣、七十九号は郵政事業に関することと書いているわけではないんです。七十九号は、「郵政事業に関する制度の企画及び立案に関すること。」と書いてあるんです。民営化はまさにここじゃないですか。今大臣は、郵政事業に関することだというふうにおっしゃっているんですよ。違うんです。あなたがする仕事というのは制度の企画及び立案に関することなんです。それを七十九号で、まさにど真ん中にそれを規定しているわけです。

 これを外して内閣総理大臣が任命できるということは、これは根拠法がないんですよ。それは国会でルールを決めているわけですから。国会でルールを決めて、それで行政を行うというのが、これは三権分立の当たり前の姿、法治国家の当たり前の姿なんです。それは憲法で決められているとおりです。

 だから、設置法に違反して総理大臣が竹中さんを担当大臣に任命しても、それであなたがこの企画立案に関する担当大臣から外れることはあり得ないんです。そうするのであれば、ここから、郵政民営化に関することというのは七十九号から外さなくちゃいけないんです。その設置法の改正もせず担当大臣ということになっている。これは、今の小泉内閣が総務省設置法に違反している、そういうことが言えるわけです。

 そのことについての真摯な説明が必要なんです。大臣、いかがですか。

○麻生国務大臣

 これは、正直申し上げて内閣総理大臣が答弁せないかぬところなんでしょうけれども、少なくとも、今言われましたように、郵政民営化の具体化につきましては、内閣法の第十二条の第二項の内閣の重要な事務として小泉総理が決めたということになっていますので、私どものところとダブルになっているじゃないかといえば、ダブルになっていますよ、形としては。

 ただ、総理としては、竹中平蔵をしてその担当大臣に充てると言われておりますので、それに抵抗する、反対するという人もきっといっぱい世の中にはいらっしゃるんでしょうけれども、私どもとしては、少なくとも内閣として、民営化ということに関しましては、民営化の方針に従ってみんなそれぞれ仕事をしていることになりますので、竹中平蔵の邪魔をするわけではありませんけれども、主たる業務は竹中平蔵が民営化担当大臣としてやられることになる。先ほど細田官房長官の答弁のとおり、私どもの方はそれを一緒にやるとか補佐するとかいうことになる立場だと存じます。

○中村(哲)委員

 法に基づかない行政をされるのは、それは小泉内閣の勝手ですよ。しかし、これは立法府としては許せないですよ。

 内閣法には何も書いていないでしょう。梶田参考人が言ったら、それは最高裁が言ったことになるんですか。内閣の重要な事務であるから単にそういうふうに言っているだけでしょう。竹中大臣が担当大臣という名前をもらうのは、それは勝手かもしれませんが、そのことによって、麻生大臣から郵政事業に関する企画及び立案に関する権限が奪われるという根拠にはならないんですよ。自分で名前をつけるのは勝手ですよ。だけれども、適法にやろうと思ったら、あなたから、総務大臣から権限を奪うような政府提出法案をまず出してこないといけないんですよ。そういうことを考えれば、もうこの郵政民営化の議論というのはこの総務委員会でやるしかないんですよ。

 委員長、いかがですか。

○実川委員長

 理事会で協議いたします。

○中村(哲)委員

 まさにこれは国会が軽視されているんですよ。内閣によって、国会が決めた行政をコントロールする設置法、それに違反する行為を堂々と法制局の参考人が答弁している、こんなことは許されないんですよ。国会が、憲法の第一義的な解釈権を持っている、だから法律をつくる、そういったことが憲法の原理的なルールじゃないですか。

 だから、幾ら小泉さんがそういうふうにしたからといって、それが国会との関係において正当化されることじゃないんです。だから、それを本当に主張されたいのであれば設置法を改正しないといけないんです。

 だから、私は、国会の現場において、好意的に解釈をすれば、担当大臣というのは、麻生大臣のサブとして各省庁の事務の調整を担当させる、民営化するときの調整事務を担当するのが重要な事項だからということで正当化される竹中括弧つきの担当大臣の任務である、そう国会は断ぜざるを得ないわけですということを大臣には認識していただきたいと思うんですが、いかがですか。

○麻生国務大臣

 ちょっと整理をせないかぬところなんでしょうけれども、いわゆる総理大臣から言われた任務を所掌するという仕事を与えられておるわけですから、私どもとしては、今言われたように、総務大臣として、考え方もいろいろあるでしょうけれども、この郵政民営化に関しては、この事務を主に竹中にという話になって、その竹中が今主にその仕事をやっている。私は所掌していますよ、間違いなく。所掌していますから、だから、その所掌しているものを一緒に手伝っている。

 ちょっともう一つ例を。国民スポーツ担当大臣というのをやっているんです。これは文部省所掌。だけれども、私が担当。おかしいでしょう。

 だから、今、各地方でいろいろスポーツの拠点づくりをやっていて、地方自治体みんなやっているわけです。これは、皆さん、私のところにもあらわれるということになっていまして、結構面倒くさいんですよ。

 だから、そういった意味で、今の話は、私としては担当を命じられた竹中さんと一緒にやらざるを得ぬ、これしかほかに言いようがないですな。

○中村(哲)委員

 答弁と私の指摘が行き違っていますから、ぜひ委員長、整理をしてください。

○実川委員長

 その件は理事会でまた協議いたします。

○中村(哲)委員

 理事会で整理をしていただくということで、ぜひ、郵政民営化法案の提出前に、この総務委員会に、竹中大臣、また、総務省設置法の権限に関して総理に出てきていただいて、内閣としての方針を具体的に説明していただく必要があると考えておりますが、委員長、いかがですか。

○実川委員長

 その件につきましても理事会で協議いたします。

○中村(哲)委員

 松野委員がせっかく予算委員会で質問したことでも政府は誠実に検討していないわけですよ。立法府と行政府の、まさに三権分立にかかわる重大問題であるにもかかわらず、全くその認識がない。

 この民営化については、まさにこの委員会で議論をしないわけにはもういかない、そのことを強く申し上げて、次の論点に移りたいと思います。

 竹中大臣は、松野委員の郵政民営化の目的という質問に対して全く答えておりません。経済の活性化と国民の利便性向上というのがメーンの理由です。あと一つ、公務員の、働く人の関係もありますけれども、経済の活性化につながるというのは官から民へお金が流れるということを言っているわけですね。ここについてまず私は聞きたいんです。

 それでは、公社であったら官から民へという改革をしなかったのかといったら、これは財投改革法がありますよね。まさに七年間かけてやっていることの今ちょうど半分過ぎたあたりで、あと三年あるわけですね。それは効果が全くなかったということですか。

○麻生国務大臣

 私の知っている範囲では、効果は結構あちらこちらで上がっているという評価の方が高いんじゃないでしょうか。

○中村(哲)委員

 だったら、民営化したら何でそれが加速されるんですか。

○麻生国務大臣

 質問する相手を間違えられておるんじゃないかなと思わないでもないんですが、私としても、公社になってからかつての郵便局より、より効率的になったということは総じて利用者は皆同様に感じておられることは間違いないと思いますね。ただ、民営化すればもっと利便性が出てくるということを言っておられるんでしょう。多分、そうだと思うんですね。

 ただ、あなたの場合は、それは金が流れないとかいろいろなことを言っておられる。それは別の意見があることは知っていますけれども。

○中村(哲)委員

 今、私は利便性の向上についての論点を話しているわけじゃないんです。その前の経済の活性化の論点についてお話をさせていただいているんです。

 経済の活性化というのは、具体的中身は何かというと、お金が官から民へ流れます、そういうことをおっしゃっているんですね。でも、そんなことはあり得ないじゃないですか。市場化がこれだけ進んでいます。財投改革によって引き受けなくちゃいけない国債や財投債、そういったものを、もう七年間でそれをやめてしまって完全に市場からの調達にする。つまり、金利は市場で決めることになるわけですよ。

 よく竹中大臣が入り口論と出口論の話をされます。特殊法人改革で独立行政法人にしていった、そういう出口論の改革が進んだから今度は入り口論なんですということをおっしゃっています。しかし、それがごまかしであるんです。出口論が進み切れないから、では、こっちで民営化して看板かけかえて、それで見ている人の関心をはぐらかす、そういう戦略でやっているとしか私は思えないんですよ。

 だって、そうでしょう。出口論の方の国債の発行とかばんばんやっているわけですね、今でも。そこをやるということは、民間の資金需要を吸い上げてしまうわけじゃないですか。トヨタのような超優良企業の場合は、国債よりも格付が上ですよ。しかし、普通の企業は、当然国よりも信用度が低い。だから、当然に金利も高く払わないといけない。その中で、国債が大量に発行されて、そのことによって金利が上がったら、さらに民間の方は金利が上がるわけですから、締め出されるわけですよね。これを経済用語でクラウディングアウトというらしいんですけれども、そういったことを考えれば、まず出口論の大改革が必要じゃないですか。そのことをせずして、そのことを前提として、官から民へお金が流れますよ、そんなことを言うのは理由になっていない。

 この七百兆にも上る国債の発行をどうするのか。そこを縮小することも何も提示しないで、ごまかすために、官から民へお金が流れます、そんなスローガンばかり言ったって、実際そうならないじゃないですか。そこをきちんと説明してくださいということを言っているわけです。いかがですか。

○麻生国務大臣

 これは財投という財政全体の話ですから、それこそお答えする立場に私はないんですけれども、基本的に今、財投の出口の話を言われましたので、財政投融資計画というのは、たしか平成八年のころに四十兆、今がちょうど二十兆ぐらいですから、それは出口の方はそこそこ、随分いろいろな改革で進んだことは確かなんだと思うのですね。

 ただ、入り口の方の話をさせていただくと、他省庁の話でいかがなものかと思うけれども、まあ、事実だからいいんじゃないかと思いますが、少なくとも、銀行の貸出残高は減っているんじゃないですかね。それで、銀行に対する返済の方が貸し出しより多いのは、この六年間、平均二十五兆円ぐらい。返済の方が多いというのは、民間でも貸出先はないということですよ。だから、ここが民になったらすぐこの金が流れると言うけれども、こちら側にそれを必要とする需要がないから銀行の貸出残が減っているというのが事実なんだと思うのですね。それに対する感想までを総務大臣に求められても、所管を超えていますので、事実だけ申し上げておきます。

○中村(哲)委員

 それは、先ほど言いました設置法の四条七十九号で、総務大臣の所掌事務なんですよ。だから、事実を申し上げたということは、そう認識しているということをおっしゃったと同じことになるんです。

 時間もありますから、もう一点、国民の利便性の向上の論点に移ります。

 これはただ単に、私は、巨大独占企業をつくるだけなんじゃないかなと。NTTの民営化の際にも、「巨大独占」という本が今出ていますけれども、そういった形で、民営化というのは独占状態を発生させるかもしれないということをかなり危機感を持って認識しないといけないと私は思います。

 例えば、町の雑貨屋さんがかえってつぶれてしまうんじゃないか、そういうこともあります。一方で、例えば現場の郵便局の職員さんがこんなことも言われています。中村さん、郵政の民営化になったら、私たち、どういうことができるようになるのか、それを考えてみました。トヨタの車に乗っている人の家に、ある日突然、名前の書いていない日産のパンフレットが送られてくる、小学校に入りそうな女の子のところに名前の書いていないランドセルのパンフレットが送られてくる、こういうことができるようになるというのが民営化ですよ、もうければいいという立場になったらそれはいいのかもしれませんけれども、私の感覚では、そういうことを郵便局使っていいんですかと。

 民営化の弊害というのは、実は、こういう巨大独占企業をつくることによって、国民生活が官の、また国の手を離れてしまって、好き勝手に国民生活を縛っていくことにもつながっていくということなんです。巨大独占企業ができてしまうことに対するデメリット、その認識はいかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 間違いなく確率としてはあると思いますね、そういったことは。ただし、それはよほどその郵便会社をやる経営者の能力がある場合。これがだめだったらだめよ、全然この商売は成り立ちません。よほど優秀な経営者を選んでこない限りはだめです。

 私らはそっちの世界から来たものだから、これだけのものをやるなら、こうすればもうかるなというのはわかるよ。だけれども、もうからないようにした会社で、今度は経営者を受ける人がいるかね。責任だけとらされて、これもやっちゃだめ、あれもやっちゃだめと言われて、責任だけ、はいと言われても、ちょっとそれはなかなか受け手はいない。おまけに、給料は幾らもらえるんですか。少なくとも事務次官並みとかNHK並みだったら、あなた、今もらっている給料からがたんと下がることを覚悟でどこかの大会社の社長が来る、組合との団体交渉はやらないかぬ、ちょっとしんどいだろうなと、そちら側にいた立場の人間からいうと、そう思うのですね。

 巨大独占の可能性は絶対あります。しかし、逆にくちゃくちゃになっちゃう可能性もある。だから、経営者は極めて大事。それはリスクは物すごく大きいということだけは頭に入れておかないかぬなと私自身はそう思っています。

○中村(哲)委員

 まだまだたくさん議論をしないといけないこと、今の麻生大臣の御答弁でもはっきりわかりました。この続きはこの委員会でさらにさせていただきたいと思いまして、そういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

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