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2004年11月25日 
第161回国会 衆議院 総務委員会
案件:日本郵政公社による証券投資信託の受益証券の募集の取扱い等のための日本郵政公社の業務の特例等に関する法律案

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(37分) 「郵政公社による証券投資信託の窓口販売について」   

 この日は、郵政公社が証券投資信託の窓口販売を行えるようにするための法案について審議を行いました。

 もともとこの法案のアイデアは、平成15年4月に株価が7600円を割り込むような事態に陥っていたころ、証券市場活性化対策の一つとして打ち出されたものです。
 日本人の資産構成は現金・預金が過半を占める一方、株式や投資信託の占める割合が低く、先進諸国と比べても偏った構造になっています。そうした状況を改善することにも資するということで提案されていたのですが、一方で、公的な機関である郵政公社がリスクのある金融商品を売る事の是非について論議を呼んでいました。

 質問では、特に公務員という信頼感を背景にリスク商品を扱う危険性、また場合によっては与党の景気判断を追認していると見られかねないという意味で、販売員たる公務員が政治の中立性を損なう危険性のあることについて大臣に質問しました。大臣からは、もともと証券取引法に、断定的な判断を提供して顧客を勧誘してはならないことが規定されているとしたうえで、職員には十分に注意を払うように指導していくという回答がありました。

 確かに証券取引法にそのような規定が入っているのは事実ですが、これは民間も含めて従うべき一般的な規定です。質問の趣旨は、公務員が証券投資信託を扱うのであれば、民間が証券投資信託を扱う以上に注意が必要なのではないかというものです。指導だけでは心もとないからこそ、それを担保する制度が必要だと考えます。

 同じ観点から、各種公文書の発行を地方自治体より受託している郵便局が、民営化した後も同じ業務を続けるのかという点について質問したところ、政府からは、続ける方針であるとの回答がありました。

 民営化された郵便局が、各種公文書の発行を代行しても良いということであれば、コンビニや他の民間業者でも請け負えるということになります。

 民間でできることは民間でという流れはわかるのですが、官に求められる仕事が残るのは間違いありません。市町村合併が進み、地域の役所が閉鎖されていく中、郵便局はむしろ公的な存在として、各種公文書の発行等、地方自治体の業務を請け負う窓口的な存在として維持する方が良いのではないかという気がしています。    

[2] 質疑項目

(1) 投信窓販業務について

  ア 公社及び国家公務員の身分を有する職員に対する顧客の信頼感を背景とした投信窓販業務の弊害
  イ 販売員が政府の経済見通しに対して中立的に投信商品を取り扱うようにするための具体的方策

(2) 郵便局での公的事務(地方公共団体受託事務等)の取扱いについて

  ア 総務省が公的事務の取扱いを促進してきた経緯とリスク商品を取り扱う投信窓販業務の実施との整合性
  イ 郵政民営化後の公的事務の取扱いの在り方

(3) 公社による投信商品の公募について

  ア 公募の具体的基準
  イ 公募基準の策定への総務省の関与の在り方

(4) 公社による投信窓販業務の経済財政政策上の意義について

  ア 資金の直接金融への誘導政策に及ぼす効果
  イ 国債管理政策との整合性


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[3] 会議録抜粋 

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 本日、私は、第一に、公務員と投資信託、第二に、郵政官署法と投資信託、第三に、間接金融から直接金融へ、第四に、現有資産の管理について、第五に、信書の分野について、以上の五点について質問を用意させていただいております。三十五分ですので、端的に聞いていきたいと思います。

 まず第一に、公務員と投資信託の関係であります。

 楠田委員の質問にも関連してまいりますけれども、公務員がリスク商品を売ることに対する懸念は、我が党の議論の中でも指摘をされております。

 この点について、総務省としてはいかにお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 今の御質問ですけれども、先ほど申し上げましたように、昨年の五月、いわゆる証券市場活性化というのを目的としてこれが始まったというのがそもそもの背景です。

 ただ、今御指摘のありましたように、窓口で投資信託を販売するということは、これは投資信託にはある程度のリスク性が伴いますので、株とはちょっと違うかとは思いますが、買っていただく利用者の方々にそのリスク性につきまして十分説明をするという責任は避けて通れないところだと思います。

 いわゆる販売をする郵便の職員というのは、これは郵便切手を売るのとはわけが違いますので、全然違うんですよという十分な説明をするようなこと、また、売ります商品の内容に関する知識等々、研修などなど、訓練が必要なんだと思います。法令遵守、近ごろの言葉ではコンプライアンスとかいうようなものを含めて大変重要なところだと思います。販売職員に対しまして、きちんとやろうとするとどうしても、先ほど申し上げましたように、人数がある程度多くて、かつその種の訓練に人を割けるところとなると、二万四千九百ありますけれども、そうそうあるわけではないので、今、五百、五百五十局ぐらいからスタートするところだと思います。

 少なくとも、大分景気がよくなったからえらいもうかるでみたいな話、安易なことをやるのは極めて危険ということになりかねぬと思っておりますので、十分注意してやられるべきものだと思っております。

○中村(哲)委員

 今の大臣の最後のところが非常に重要だと思います。公務員が売るということは、やはり買い手にとってはより信用されるということなんです。民間企業のレベルよりも高いコンプライアンスが求められると言っても私は過言でないと思うのですね。

 党内の議論では、こういう意見もありました。公務員が売ることにはこういう問題もある。投資信託を売るということは、これから景気がよくなる、経済がよくなるということを前提とします。だから、例えば、選挙前に野党が今の経済政策は誤っているじゃないか、そういうふうに主張したときに、いや、景気はよくなりますよ、いや、経済は今から回復基調になりますよ、そう政府は言っていますよというふうな売り文句で外務員が回られた場合、民間ならばそれはいいのかもしれません、しかし、これを公務員がやった場合に政治的中立に反するんじゃないか、そういう指摘が党内でありました。

 このことを防止する、そういった公務員ならではの防止策というのはいかに考えていらっしゃるでしょうか。

○麻生国務大臣

 基本的に、今おっしゃっておられる点は、普通の証券会社の窓口に立ちます投資信託の販売員に比べて、役人の方はもう少し慎重であらねばならぬということなんだと思います。

 一つだけ、投資信託というのは、配当性向、配当率等々を考えました場合に、例えば景気の流れに余り関係ない企業の債券、株等々の場合は、配当率二%、今もうちょっと上になっていると思いますが、一番かたいところだけを売りましても配当率というものは確実に一・五とか二、ローリスク・ローリターンということになるんだと思います。こういったものは景気の上下に関係なくかなりかたいところだと思っておりますので、そういったものが主たるものであって、えらくハイリスクのものはちょっといかがなものかという感じは、これは先生、どなたも皆思っておられるところだと思います。

 役人の身分のままこの種のことをすることに関して、そういったものには慎重であらねばならぬのではないか、ましてや、景気がいかにも上がってくるというような話を安易に言うのは問題ではないかという点に関しては、私もそう思っております。したがって、景気がよくなるから上がりますよという形の売り方は、それはちょっと避けられた方がよろしいのではないか、率直に私もそう思います。

○中村(哲)委員

 大臣は、そういうふうに問題意識を共有しているのなら、具体的にどういう防止策をお考えになりますかということを私は質問したわけです。それについていかがでしょうか。

○麻生国務大臣

 基本的にはその担当する外務員の姿勢の問題なんだと思いますので、その種の問題は、売らないようにというように指導をする以外に手がないのであって、そういった商品はきちんと避けるようにするべきだという指導をするのが正しいんじゃないでしょうか。

○中村(哲)委員

 確かに、それは外務員の姿勢の問題、資質の問題ですよ。でも、それだったら企業不祥事なんか絶対起こらないじゃないですか。企業の不祥事が起こるから、コンプライアンスを守りましょう、システムとして、そういった外務員が存在しないように仕組みをつくりましょう、そういう世の中の流れじゃないですか。それを外務員の姿勢の問題、資質の問題と言ってしまったら、これは議論にならないじゃないですか。

 具体的なシステムとしてどういうことをお考えになりますかということをお聞きしているんです。それは総務省として関与することではない、公社に任せるという話であれば、まだそれはそれでわかるんですけれども、いかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 証券取引法というのがありますが、それを見れば、有価証券の価格またはオプションの対価の額が高騰し、または下落などということを断定的に判断して勧誘する行為を禁止しておるわけでしょう。この法律はこっちにも適用されることになりますので、これを遵守するというのは当然じゃないですかね。

○中村(哲)委員

 今大臣がおっしゃったのは、それは民間と同じレベルで頑張りますという話なんですよ。私は、公務員だからこそ民間以上のコンプライアンスが求められるんじゃないですかと申し上げているんです。だから、そこをどういった仕組みをつくって、先ほど大臣は、そういう売り文句をやっちゃいけないですねということをおっしゃっていた、そういうことを防ぐ仕組みをいかにつくれるのかということをお聞きしているんです。民間以上のところですね。

 そこについて、考えていないというならそれはそれでいいんですよ。証券取引法に任せていますから、もうそれ以上のことは考えていません、だから、そこは民間と同レベルで仕方ないんですよ、そういう御答弁をされるんだったらまだわかるんです。

 一方で、公務員だから、民間よりもやはり厳しいといいますか、先ほどおっしゃったような、慎重でなければいかぬというお気持ちであれば、さらに、より一層の防止策というのが必要なんじゃないか、そこを議論させていただいているわけでございます。

○麻生国務大臣

 御指摘いただいているところはよくわかりますけれども、基本的にはこれは公社がやることになりますので、公務員ということも少なくとも向こう二年間くらいの話かもしれませんけれども、それまでの間、民間とは少し違うんですよという点で、この法令遵守の点につきましてはきっちりやってもらわなきゃ困りますよという話を、総務省として郵政公社に対して指導するということなんだと思います。

○中村(哲)委員

 今の大臣の答弁にもあって、皆さんおわかりのように、結局、公務員がこれを売ることに対する具体的な担保というのは、すべて公社に任されているということなんです。だから、公社の姿勢がどういうふうになってくるのかということが逆に問われるわけです。私は、今の段階で公務員が投資信託を売るということにはやはり反対せざるを得ないと思っております。

 それに関連して、第二の論点に移りたいと思います。郵政官署法と投資信託の関係であります。

 二〇〇一年二月二十七日の総務委員会におきまして、私は当時の片山大臣と議論をさせていただいております。そのときに、片山総務大臣は、市町村合併で役所が遠くなることを郵便局の利用で補うという方針を打ち出されております。私は、一つ、それは見識だなと思っておるんですね。実際、今まで近くのところで住民票とかもとれていたわけですから、合併になると困る、そういった人たちに対して郵便局を利用してもらう、それは一つの方法だと思います。国策としてそれを推進してこられたのが総務省だと思います。

 しかし、こういった官業の代行をしているようなところが、今度は逆に非常にリスクのある投資信託という商品を売ることになること、このことについても整理をしないといけないと思うのですね。その点についていかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 非常にリスクのあるものは投資信託ではない。リスクはないとは言えないというのが投資信託。まず、基本的には、非常にリスクがあるという表現はいかがなものかと存じます。

 いずれにいたしましても、今でも、確定拠出年金、四〇一k、これも一種の投資信託みたいなものだと思いますけれども、こういったリスク商品の取り扱いは既に実施をいたしておるところでもあります。また、国債なんかを売っておりました場合でも、国債を個人に売った場合、十年物を途中で売却した場合は元本割れするおそれもありますという話で、リスクを有するということはある程度言えるんだと思っておりますので、今御指摘のありましたように、その種の投資信託というものは、それらのものに比べて、非常にとは言いませんが、今やっておりますよりさらにリスクがあるという点はきっちり説明をする必要があるんだと思います。

 その種の話が出てくるところで、いわゆる行政事務手続を、町村合併等々に伴って、住民の利便に供するためにやるところと一緒に、その窓口サービスをやります郵便局がやるということに関しては問題ではないかということなんだと思いますが、私どもから見て、民間金融で取り扱っている商品を郵便局において取り扱うということが、国民にとってメリットがあるのはもちろんですが、それはいかぬと言われると、それは中村先生、直ちに、極めて危険なジャンクボンドを売るわけでもないので、そこは少し違うんじゃないかなという感じがするんです。

○中村(哲)委員

 つまり、大臣の受け取り方は、国民の受け取り方がどうであるのかということが一番関係してくるんだと思います。

 郵便局で売っている投資信託だから安全、安心だろう、そういうふうに受け取られる可能性が非常に高いということを私は申し上げているわけでございます。しかし、そこの点が崩れてしまったならば、一方で官業を引き受けることが拡大をしているにもかかわらず、そういったリスクの高い商品を売っているということになると、国民としては、端的に言うとだまされたということになります。

 具体的に、法律の条文で考えていきたいと思います。今回の法律案の八条に規定があります。

  第六条の規定により読み替えて適用する証券取引法第六十五条の二第一項の登録を受けた日本郵政公社(以下「登録郵政公社」という。)は、証券投資信託の受益証券の募集の取扱い等に係る証券投資信託を選定しようとするときは、公募の方法によらなければならない。この場合において、登録郵政公社は、内閣府令・総務省令で定めるところにより、公募の方法による選定の手続を定め、これを公表しなければならない。

第八条一項にこのように書かれております。その公募の方法がいかにあるべきかというところがポイントになってくるんだと思います。

 公募の基準はどういったものなのか。ここで懸念されるのは、手数料が多いような投資信託が選ばれることになるんじゃないか、そういった懸念もあるわけですね。手数料が多い投資信託、投資信託によって、郵政公社特有の手数料はつけちゃいかぬということに恐らくなるんだと思いますが、手数料が高いような銘柄を郵政公社が選ぶんじゃないか。そういうのはリスクが高いから、結局、消費者がそれを知らずに買ってしまうようなことがあるんじゃないか。また、手数料が高い、そういった商品を積極的に扱うということは、その投資信託を運営する会社に郵政公社が天下りするんじゃないか。そういった問題とも絡んでくるわけでございます。

 公募の基準は何なのか、その点について、改めて総務省から御答弁いただきたいと思います。

○山本副大臣

 先生御指摘の本法律案第八条でございますけれども、ここにおきましては、内閣府令・総務省令において、公募の方法による選定の手続を定めて、これを公表しなければいけないということになっておるわけでございます。

 そこで、内閣府令・総務省令においては、公募の基準を示すこと、基準を示すに当たっては、インターネット等により広く周知されるものであること、選定した商品の募集の取り扱いは、日本郵政公社のみが取り扱うものでないこと等々を予定いたしております。

 そしてまた、今先生からありました、委託の手数料の高いものを選ぶのではないかというような御指摘等については、不当な販売の禁止ということになってくるんだろうと私どもは理解をいたしております。

○斎尾参考人

 
具体的な公募の方法、そして選定基準につきましては、今回の法案に係る内閣府令・総務省令の内容を踏まえまして、公募選定の公正性、それから透明性が十分確保されますように定める予定でございます。現時点では、公募につきましては、郵便局のお客様にふさわしい投資信託の商品コンセプト、選定基準を公表した上で実施することを想定しております。

 具体的な選定基準につきましては、過去の運用実績、価格変動リスク、収益性等の定量的な評価基準に加えまして、商品の運用方針や運用方法、さらには投信委託会社の経営の健全性や運用体制、リスク管理体制、公社に対する販売支援体制等の定性的な評価基準を用いる予定でございます。

 このように、郵便局のお客様にふさわしい商品が選定されるような基準を設定することとしておりまして、専ら手数料水準のみに着目した商品設定は考えていないところでございます。

○中村(哲)委員

 今、斎尾理事のおっしゃったことは一般的なことを言っているにすぎないんですよ。手数料のみに基づいて選ぶわけじゃない、そんなこと、当たり前じゃないですか。

 リスクの高いものを選ぶんですか、低いものを選ぶんですか、そのことについての答弁もないじゃないですか。きのう、質問取りのときには、ちゃんとそこまで踏み込んで答えますとおっしゃっていましたよ。そんな国会対応でいいんですか。今のことなんか、実際何も答えていないのと一緒じゃないですか。省令が出てきたらまた対応するということでしょう。

 総務省、これでいいんですか。今、せっかく副大臣が一生懸命基準をおっしゃって、やはりこの方針で公社は頑張ってもらわなあかんという気持ちがあらわれていたのに、今お聞きになったような感じですよ、公社の姿勢というのは。国会軽視と言っても私は過言ではないと思うのです。どういうふうに具体的にやっていくのかについて、具体的なイメージがわかないじゃないですか、今のでは。その点について、総務省、いかがお考えでしょうか。

○山本副大臣

 総務省の立場としては、先ほど申し上げましたような、要するに省令を出していくわけでございますけれども、先生の御指摘のように、あとは郵政公社の方が、本当に郵便局らしい販売の体制をどう整えていくか、そしてまた利用者の方々にどう説明をしていくかだろうというふうに思っておりまして、その辺につきましては、総務省として監督する立場でございますので、厳しく指導をしていきたいなと思っております。

○中村(哲)委員

 その総務省の方針で頑張っていただきたいと思います。

 郵政公社は、きちんと答弁しないようですから、もう答弁は結構です。

 この点に関して、民営化された後はどうなるのか。つまり、郵政官署法は、証明書の交付事務として六つの事務をやっているわけですよね。これからも、民営化された後も、こんな戸籍、除籍の謄本、抄本、記載事項証明等をやっていいのか。地方税の納税証明書、外国人登録原票の写し及び外国人登録原票記載事項証明書、住民票の写し及び住民票記載事項証明書、戸籍の附票の写し、印鑑登録証明書、この六種類、これからもやっていいのか、民営化された後もやっていいのかという論点があります。

 この点について、内閣府から副大臣に来ていただいていると思いますが、御答弁をよろしくお願いいたします。

○西川副大臣

 今やっているいろいろな事務を民営化後も引き継ぐのか、こういう御趣旨かと思います。

 本年の九月に閣議決定しました郵政民営化の基本方針でありますけれども、この中にも書いてあります。窓口ネットワーク会社については、地方公共団体の特定事務それから福祉的サービスなど地方自治体との協力等の業務を受託する、こう書いておりまして、これからもそれらを前提にしまして詳細な制度設計をやっていきたい、こう考えております。

○中村(哲)委員

 麻生大臣、今のお話、結局、公務員であること、それと郵政官署法でこのように郵便局がいろいろな行政事務を請け負っていることが民営化のときに非常に大きなネックになってくるんじゃないか、そこが大きなポイントなんですね。

 今、基本方針には、そこは引き続きやっていきますということが書かれていますという御答弁にとどまるわけです。それを担保するために、それじゃどういう新しい施策を講じますよということについては触れられていないんですよね。今の理屈だったら、コンビニの普通の会社にでも、こういった六つの証明書交付事務は任せていっていいという話になるわけですよ。

 では、コンビニはだめで、民営化された郵政会社はなぜいいのか、そこの担保は何なのかということが問われるわけです。そこに対する答えが、残念ながら内閣府の副大臣の答弁からはないわけです。そこについて、大臣、いかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 これは基本的には、郵政公社を民営化する法律が今から出てくる段階ですから、まだ今、中村先生、答えはないんですよ。今検討中、正確に言うとそういうことになるんだと思うのですね、まじめに答えれば。ごまかし方はいろいろ、答弁の仕方はあろうかと思いますが、まじめに答えればそういうことになるんだと思うのです。

 だから、今言われました、印鑑証明を初め六つなんですが、現実問題として、地方行政を預かる立場からいきますと、通称三千と言われております市町村というものが、二千五百二かな、今たしかそんなものだと思うのですね。これはかなりの数のいわゆる庁舎、村役場というものがなくなる。

 ところが、御存じのように、村には最低一つ郵便局があることになっておりますので、その郵便局が残ることによって、行政サービスを維持し得る可能性がそこにある。通常、役所に行くといったら、今六つ言われましたけれども、こういった戸籍とか印鑑とかいったものをとりに行く話ですから、そこらのところがいわゆる窓口ネットワーク等々の、今でいいます郵便局のところでそれがとれるというのは、これは行政サービスを維持するという意味で非常に大きな役割を果たす、私自身はそう思っているんです。

 問題は、そこにいる人たちが非公務員ということになってくると、例の裁判所の特別送達を含めいろいろな問題が今出てきている。これは目下検討中なんだと思うのですが、そういったものの一環としてこの種のものも検討されてしかるべきな話なのであって、こういったものが、民間のこれでできるんだったら、コンビニだってできることになりはせぬかという御意見なんだと思いますけれども、そういうのを含めまして、いわゆる準備室の方で法案をつくられるときには十分に検討されるべき内容だと思います。

○中村(哲)委員

 今から法案化するときに詰めていくという話なんですよね。だけれども、具体的にどういう方法があるのかということに関しては想像できないと思うのです。

 大臣、検討中だけれども、こういう方法がある、こういう方法、こういう方法があるということをもしお示しいただいたら、また私たちも考えることができるんですけれども、公務員じゃない民間の人たちがこういう証明書の発行をすることに対して、信頼感を損なわない、不信感を持たれない、そういった方法があるのかどうかについて、今具体的なイメージは恐らく大臣でさえお持ちでないんじゃないかなと私は正直思うのですね。私自身、よく考えているんですけれども、そういったことを一個も考えることができない、思いつくことができないわけです。

 まだそういう段階にあって民営化するのは、時期尚早なんじゃないか、もっともっと議論をしていくべきじゃないか、私はそのように考えているわけでございます。その点について、確認だけさせていただきたいと思っております。

 では次に、第三の論点に移りたいと思います。間接金融から直接金融へ、そういった論点でございます。

 これから十年間で、私は、日本の金融状態というのは基本的には劣化していくのではないかというふうに思っております。

 と申しますのは、将来十年間で、今まで非常に頑張って働いてこられたいわゆる団塊の世代の人たちが、今はお金を稼いで貯金をしているけれども、十年後には社会保障の受け手になっていく、そういった意味で、貯金が減っていくだろう。それを裏づけるように、近年の貯蓄率はどんどん低下しております。

 こういったことを考えると、当初、この法案が目的としていた、貯蓄から民間へ資金を移していく、証券市場を活性化していくということが、その目的が変容するのではないか、金がなくなっていくのではないか、そういったことがあるのではないかと思うのですが、この点について大臣はいかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 これは、中村先生、ちょっと話が長くならざるを得ぬのですが、基本的に、日本人の場合は他の先進国の人に比べて、いわゆる個人金融資産というものを貯金、預金で持っている比率が約五五%くらい。先進国の中では、アメリカはちょっと少な過ぎるという感じで一二、三%くらい、ヨーロッパで大体二五、六%から三〇%くらいなんだと思うのですね。日本はまず異常に高い、いい、悪いは別にして。

 私は、これは、資金がなかった時代、とにかく小口金融で集める、これは金がなかった時代には非常にうまくいったんだと思っております。この金を使っていろいろ、財投を初め政策金融機関で傾斜配分して日本の経済復興に充てたことは間違いないと思うのです。ただ、それがたまりにたまって三百五十兆、加えて銀行が危ないというような話になったものだから、また預金がごそっと移ったりして、個人金融資産約一千四百兆のうちの四分の一が一つの国有貯金に集まり過ぎているというのは、これは世界じゅうで日本だけなんだと思うのですね。

 これだけ金を持ってくると、当然のこととして、金がないときは貯金は目的になりますけれども、ある程度金を持ったら、今度は金は目的から手段に変わって、その金を使って何をするのかという話になっていくのが当然の流れだと思いますが、貯蓄より投資とか、いろいろな表現になってきつつある。それだけ余裕が出てきたといえば、余裕が出てきたんだと思います。

 今度は株の比率を見ますと、これは投資信託というのは、日本の比率を見ますと、二%しかないということです。アメリカとかドイツというのは十何%ありますので、えらく高いなとも思いますけれども、イギリスやフランスでも四とか九とかいう数字になっています。投資信託の比率です。

 そういうものを見ますと、もうちょっとこれは貯蓄が減って投資に回ってもおかしくない数字なのかなという感じがするんですが、いずれにしても、金の流れというものが、ある程度金のできてきたような時代に合わせて、そういったものになっていくという流れなんだと思います。

 問題は、具体的な例を言う方が、先生の場合、わかられると思いますので、例えば、今普通預金で預けて金利〇・〇〇五%、だから千万円預けて五百円。五百円ですよ。一回おろしたら手数料が三百円、もうあほらしくてやっておられぬ、私だったらそう思うのですね。今、かたい株で、どの株がかたいかと言うとちょっと問題ですね、配当率でいきますと二%くらい。だから、配当率二%ということは、千万円預けて二十万円。今、税金が別枠で一律一〇%になっていますので、二十万円引く二万円で残り十八万。十八万と五百円はどっちが利益がでかいかといえば、これはかなり年をとられた方でも理解をしていただけるところだとは思うのです。

 それでも、やはり日本人の意識というのは、株は怪しげなものなんですよ。田舎で、中村さん、株やっているんだって、と何だかばくち打ちに近いようなイメージにとられかねないくらい、昔は株をやっていると言ったらほとんどアウトですよ。少なくとも私の田舎では、間違いなく。とにかく信用しちゃいかぬのは石炭掘りとばくち打ちと言われたくらい。私はそういうところに育ちましたので、株をやっているというのはそういうイメージなんです、日本の場合は。

 いや、そんなものじゃありません、今株というものは、信託とか投資とかいうものは全然違うんですということの理解というのは、金を持っておる高齢者ほどないんですよ。そこのところが、今の日本というのはかなり貯蓄に偏り過ぎていると思っておるんです。

 先生、加えて、この五、六年で見ますと、企業は、借りるより返済している額の方が実に二十五・六兆円多いんです、この六年間の平均で。これは日銀が公式に発表している数字です。

 九〇年代の初めのころは、企業は年間五十兆借りておるわけですから。預金は二十兆、五十兆借りて差額は日銀がという話なんですが、その五十兆借りているものが二十五兆、返済の方が多いとなると、これは、二十兆の預金がふえて二十五兆の返済が返ってくれば、合計四十五・六兆円のデフレ圧力ということになっているのが、今の日本の経済というか金融の実態であろうと思います。

 そういった意味では、その金がまた貯金に回って、基本的に今返済する方が多いわけですから、これは金利がゼロでも企業は金を借りに来ないという前提で経済というものを書いた本は私が読んでいる話ではないので、そういう状態が今初めて起きておるという状況でもあります。中村先生、これは、今いろいろな試みがなされているものなんだと思いますけれども、少なくとも今までの例ではなかなかできない状態で、あわせてどうするかというところが経済としては今一番問われているんだと思います。

 この貯金も、昔はとにかく郵貯、郵貯といったんだけれども、借りるところがなくなってくれば、これは、今三百兆の金を持っていて何をするんだという話になっていきはせぬかなという感じが率直なところですね。

○中村(哲)委員

 非常に長い答弁で、ちょっと時間がなくなってきたんですけれども、要約させていただくと、だからこそ郵便局が投資信託を売ることによって、貯金の意識から投資信託というのもあるんですよということにしていくということだ、そういうことをおっしゃりたかったんだと思うのですね。

 私もその意見には賛成なんですよ。そうなってくると、今度は、国債管理上、こういったものが問題にならないのかということになってくるわけですよね。

 今、つまり、郵貯、簡保でお金をごっそり集めて国債を買っているわけです。だから、官から民へとお金の流れを変えると、今度は国債が消化できなくなるんじゃないか、国債の暴落を招くんじゃないかということになります。影響がないということになれば、今度は法律の趣旨が生かされないことになります。どっちにしても問題じゃないかというふうに思うのですが、最後にこの点について伺いたいと思います。

○麻生国務大臣

 御指摘のありました点につきましては、これは、国債の金利がこれだけ安いという状況の中にあって、今までそれ以上に安心なものはない、かつ銀行の預金も千万円預けても〇・〇〇五%ということになると、やはり株式市場に流れるよりは郵便貯金にということで、それがそのまま国債に回ったことは容易に想像はつくと思います。ただ、影響についてどうかと言われると、これは投資信託の窓販の規模などにもよるとは思いますけれども、直ちに、どれぐらい影響が出てくるかというのはちょっと想像ができないところなんです。

 いずれにしても、証券市場の活性化に資する、それがいろいろな意味で景気の動向にもよくなるということで、国全体としてはメリットがあるのじゃないかなという観測は持っております。

○中村(哲)委員

 時間が参りましたので終わらせていただきますが、今回、まだ、現有資産の管理の方、特に社宅の問題についてやろうと思ったんですが、質問が残ってしまいました。社宅の問題、今、管理費よりも社宅から集めてくるお金の方が少ないんですね。ずっとずっと少ない。四分の一ぐらいしか管理費を賄えていない、そんな状況にあります。国有資産をきちんと利用するという意味でも、この点について次回また議論させていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。



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