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2004年11月16日 
第161回国会 衆議院 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会
案件:永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与に関する法律案

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(24分) 「永住外国人地方参政権法案」   

この日の総務委員会では、「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与に関する法律案」(公明党案)の質疑が行われました。

この問題は長年にわたって議論され、国会に法案が提出されはじめて6年になるテーマです。民主党は、1998年結党時の基本政策に「定住外国人の地方参政権などを早期に実現する」と盛り込むなど、早くからこの問題に取り組んでまいりました。

今回提出された法案は、かつて民主党と野党時代の公明党が共同提出した法案に若干の修正をした法案であり、内容面については、おおむね賛成できるものです。

しかし、今回の法案の本当のポイントは、提出や審議のなされ方という政局面にあります。つまり、自衛隊のイラク派遣問題などの目をそらすために、公明党が法案提出をして自民党が採決なしの質疑のみを認めたという「茶番劇」だと評価しています。本来、議院内閣制の下では、与党(政権政党)が法案を提出する場合には、事前に与党内ですり合わせて合意を得ることが求められます。しかし、この法案については、自民党と公明党が連立政権を組む際の合意文書に実現への約束があるにもかかわらず、自民党内の根強い反対により、与党で一致した対応を取れないでいるのです。

自公連立政権ができて5年になりますが、自民党と公明党の一体化はますます進んでいます。ただ、自公両党が実質的に一体化しているからといって、形式的にも新党となることは両党にはできません。それは、両党の支持者には、相手の政党に対する非常に強い拒絶感を持っている支持層がいるからです。例えば、自民党の支持層の中には、公明党の大きな支持母体である(宗教法人)創価学会に拒絶感を持っている方が多くいます。公明党の支持層の中には、自衛隊のイラク派遣に見られるような小泉政権の方針は「平和を望む自分たちの気持ちに反する」という方がいます。両党が、選挙のときは実質的に一体化しているにもかかわらず、新党として合併しないのは、形式的には別政党という形態が相反する支持層を抱える自公両党にとって都合が良いからだと考えます。

そういう意味で、この法案は、「自公一体化の隠れ蓑」にされた法案だと言えます。こういう自公両党の政局的行動は、主権者たる国民の皆様にとっては分かりにくいものであり、政治不信を加速するものです。これからも、こういうゴマカシには抵抗し、国会が実質的に誠実に物事を議論できる場にするために取り組んでいかなければなりません。    

[2] 質疑項目

(1) 本案についての与党内調整の経緯

(2) 1952年4月19日法務府民事局長通達について

  ア 在日韓国・朝鮮人、台湾人の日本国籍を喪失させた当時の政策選択についての提出者の見解

  イ 通達と平和条約との関係

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[3] 会議録抜粋 

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 阿久津議員の問題意識を引き続きまして質問させていただきます。
 内容に入ります前に、この問題についてどのような議論をこれまでしてきたのか、これからするおつもりなのかということについてお聞きいたします。

 これまで、この永住外国人地方参政権付与法案について与党内でどのような調整がなされてきたのでしょうか。

○冬柴議員

 まず、自由民主党との間では、この連立合意をするに先立ちまして、私も当時公明党の幹事長でございました。自由民主党の当時の幹事長の森喜朗先生との間で、この問題について強く議論をいたしました。

 その結果、当時の内閣総理大臣小渕恵三先生の政治決断もありまして、当時、自民党内では、賛否両論本当にあったと思います。その中で、永住外国人地方選挙権付与についてはこのように書かれました。「衆議院倫理特委」倫理特別委員会ですね、「に継続審査中の「永住外国人に対する地方選挙権附与に関する法律案」のうち、地方分権関連法成立に伴う修正等を行った法案を改めて三党において議員提案し、成立させる。」ということで、もちろん、私どもが提案してからその日までに、地方分権推進法に基づく地方分権一括法、四百六十五本の法律が成立しております。それで、名前も自治省から総務省に変わったり、そういうものを書きかえて改めて提案して、そして成立をさせるという議論をしたわけです。

 しかしながら、その後いろいろやりましたけれども、なかなか自由民主党さんの方の内部の調整がつきにくくて、その後たくさんこれは署名していますけれども、なかなか進まなかったというのが事実です。

 平成十二年一月二十日には、三党の合意ですが、森先生も私も署名していますが、「三党は、今通常国会冒頭に「永住外国人に対する地方参政権付与に関する法律案」を提案する。但し、党内手続きが間に合わない政党にあっては衆・参委員会採決までにこれに提案者または賛同者として加わるよう努め成立を期する。」こういう約束をしたこともあります。

 自来、いろいろと論議を重ねてきたことは事実でございますが、なかなかいろいろとこれには意見がありまして、いまだ自由民主党が提案者に参加するということはできなくて、今回も公明党だけで提案をすることを余儀なくされたわけでございますが、それには事前に自由民主党の御了解を得て、そして私どもだけで提案させていただいている、これが事実でございます。

○中村(哲)委員

 民主党もかつて同趣旨の法案を出していたのを御存じでしょうか。御存じであるのならば、その評価をお聞かせください。

○冬柴議員

 何もかも申し上げますと、私が全部つくりまして、そうしたら、それが新聞に載りましたら、民主党の方から、ある人から、ぜひ説明に来てほしいと。説明に行きました。随分、数十名の方が聞いてくださいました。それで、共同提案にさせてほしいということで共同提案になったわけでございまして、だから、あなたが同趣旨のと言われるけれども、全く同じでございまして、趣旨じゃなしに、点、丸までみんな一緒でございます。

 ですから我々は、そのときには本当にこれを民主党と共同提案をしたわけでございまして、民主党と成立させようという気持ちで提案したのが事実でございます。

○中村(哲)委員

 私は、この委員会での過去の冬柴議員の答弁も読ませていただきました。非常に哲学的であり、また、質問者に対して真摯にお答えをされている、そういった答弁であったと思っております。きょうの法案の趣旨説明においても、非常にすばらしい考え方で書かれていることに関しては共感しているわけでございます。

 しかし、この取り扱われ方に関しては、私は非常に今問題があると思っているわけでございます。

 この法案は、地方自治の部分に限った参政権とはいえ、外国人に初めて参政権を付与する法案であります。議論にもあるとおり、国のあり方そのものにかかわる法案であります。

 自民党と公明党が連立政権を運営なさってもう五年になります。その間には二回の衆議院選挙と二回の参議院選挙がありました。私の目から見ますと、選挙運動も含めて両党の一体化はますます進んでいる、私の目からはそのように思えます。だから、やはり与党内でもっときちんとまとめて提出をなさるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

    〔中馬委員長代理退席、委員長着席〕

○冬柴議員

 党にはそれぞれ党の考え方があります。大きくは、公党間の合意でございますからこれが揺らぐことは考えておりませんけれども、しかし、現実に、党内手続というものを経て、そして法律を提案するということは、いろいろな手続があります。

 したがいまして、それはそれぞれの党の内部において真摯に取り計らわれているわけでございまして、私どもは、その結論を待って提案するということをすればいいけれども、それでは余りにも、衆議院が解散されて、今まで議論をずっとしてきたのに、解散されるごとに廃案になって、私は、これは四回目提案していますよね。

 ですから、こういうことが起こらないようにしたいわけでございますけれども、ただ、その中には、本当にいろいろな国家観とか、そういうものがいろいろありまして、党内で自由民主党さんも非常に苦慮をして調整をしていただいているその姿はわかっておりますから、私どもは、とりあえず我々だけで出させていただきますよ、それは結構ですという合意のもとでやっているわけでございまして、必ず採決までに意思を統一するという合意もあるわけでございますが、そのように努力をしていただけるものと期待をしている次第でございます。

○中村(哲)委員

 私の手元に、四年前、平成十二年十一月十六日の当委員会での議事録があります。その中で、冬柴委員はこのようにおっしゃっております。

 「その後、私どもは与党に入りまして、連立与党に入る平成十一年十月四日の三党合意の中で、自由民主党、自由党、公明党の三党合意の中で、これについては改めて成案を得て、成立をさせるという合意ができたわけでございます。したがいまして、これに基づいて、その後、自由党あるいは保守党と我々との間でこの法案を提案してきた。残念ながら、自由民主党の中でまだ一部意見の調整がつかないということで共同提案ができなかったんですけれども、しかし、公党間の約束として、これを成立させるということは約束されているわけでございます。」

 四年前に既にこういうふうにおっしゃっているわけです。何も進んでいないじゃないですか。私の見方はうがった見方かもしれませんが、多くの国民は、今から申し上げるようなことを思っていると思います。

 自民党と公明党はもうほぼ一体化している。選挙運動も一体化している。しかし、今の自民党の政策に唯々諾々と従っていくだけでは今までの支持者は離れてしまう。例えばイラク攻撃の問題、皆さんは支持者にどのように説明されているんでしょうか。そういった中で、こういった地方参政権の問題をある種ガス抜きの材料にして、法案審議だけして、また採決は行わない、どうせ、採決をしても自民党は賛成できないから採決まで持っていけない、そういうことになっているんじゃないですか。

 私は、民主党も同じ考えだけれども、採決をすべきでないと思っているのはその点にあるんですよ。本当にきちんと与党内でまとめてきてくださいよ。本当に大事な法律であり、重要な時代の変換点にかかわる法案であるからこそ、本気度が本当に求められているんじゃないですか。

 決意は、このときも、四年前もお聞きしております。一生懸命取り組みますという趣旨の御答弁をされております。しかし、四年たってもこの状態です。改めて、どのように今後議論を進めていかれるおつもりですか。自民党にまた任せきりで、お願いして、いや、取り組んでいただいているんですけれども、いいんです、いいんです、そのようにお答えなさるんでしょうか。改めて決意をお聞かせください。

○冬柴議員

 一つの法律や制度をつくるというには長い時間が必要でございます。私は、違うことを言って申しわけないですけれども、前職弁護士ですから、貧しい人が訴訟に巻き込まれたときにその弁護士費用を国が立てかえる制度が必要だ、このように思いまして、衆議院の法務委員会で十六回、予算委員会で七回質問を重ねました。合計二十三回。そして、私が当選してそれを最初にしたときには、この国の法律扶助に対する補助金は七千二百万円でした。しかしながら、ことしは四十億五百万円の予算が組まれております。その間に民事法律扶助法というものが成立をしました。

 そのように、一つの大きな仕事をなし遂げるためには十数年これに費やしているわけでございまして、これはまだ提案して六年足らずでございまして、これから頑張って、最後まで、私はこれを正しいと信じるがゆえに、いつまで議員をやるかはわかりませんけれども、議員である限り、また、公明党がこれを承継してきちっと成立をさせるためにあらゆる努力をしていく。

 党にはそれぞれの考え方、アイデンティティーがありますから、押しつけることはできません。私どもにも自由民主党から言われてもできないこともありますし、また、自由民主党にもそういうものはありましょう。しかし、連立を組んだときに約束したその事項は誠実に守らなきゃならないということは、私は当然だと思っています。したがって、粘り強くこれを実現するまで努力をしなければならない、このように思っているわけでございます。

○中村(哲)委員

 残念ながら、私の聞いた限りでは、言いわけはおっしゃっているけれども、まあ約束は守られなくても仕方ないというふうにおっしゃっているように思います。

 連立政権を維持するということは非常に重要なことでしょう、公明党にとっては。でも、こういうふうに、いつまでたってもどうせ今の自民党の状態だったら通らない案を、支援者との関係なのかもしれませんけれども、出し続けられているということに関しては、私は非常に問題があると感じております。

 内容に入らせていただきたいと思います。

 一九五二年の法務府の民事局長の通達によって旧植民地の方々の日本国籍は剥奪されました。この事実については、皆さん御存じない方がたくさんいらっしゃるかもしれませんので、資料を用意させていただきましたので、ごらんになってください。

 外国人に対する地方参政権の問題を考える際にこの点を避けて議論することは私はできないと思っております。当時の政策判断の選択としては、この国籍を喪失させる、剥奪させるという方法のほかに、国籍の選択制という方法もあり得たと思います。私は、一九五二年通達は、今の時代から見れば政策的に誤りであったと思います。提出者におかれましてはどのようにお考えでしょうか。私は国籍の選択制をとるべきであったと考えておりますけれども、いかがでしょうか。

○冬柴議員

 私は、当時の法務省民事局長の一片の通達によって、今まで日本国民であった、先ほども申しましたけれども、兵役の義務も課せられ、そして戦場に行き、負傷をし戦死した人がたくさんいらっしゃるわけですね。また、選挙権もありました。ある人の話ですけれども、選挙のポスターがハングルで書かれていたと。日本語を読めない人のためにハングルで書かれていたポスターが張られていたという戦前のその日本、そういうもので日本人として子孫ももうけ、そして生活の本拠を日本に置いているその人たち、帰るところもないその人たちの国籍を一方的に喪失させる、これは、今の人権感覚では私は相入れないですね。

 こういうことが今日起こっているわけでございまして、それが法務省の一片の通達で行われたことに対して、私も当時の議事録を調べてみましたけれども、大阪府選出の代議士さんが、これに対して異を唱えられた人が一人いられる。すごく私は感激しましたけれども、今にして思えば、この通達はもっと配慮をすべきであった、国籍選択を、彼らにやはりその機会を与えるべきだったというふうに心から信じております。

○中村(哲)委員

 私の質問に対して真摯に賛意を表していただきまして、本当にありがとうございます。

 自民党の皆さん、今提出者がおっしゃったように、日本の国籍を強制的に与えられた人たちは、今度は強制的に奪われたという経緯がこの問題にはあるんです。そういった経緯があるにもかかわらず、今度、それじゃ国籍をまた取ればいいじゃないかと言うことは、ある意味で、非常に人の心の中に土足で踏み込むような主張であるということもぜひ理解していただきたい、私はこのように思います。

 政府にお聞きいたします。なぜ、このときに国籍の選択制をとらなかったんでしょうか。

○滝副大臣

 ただいま冬柴議員さんから御発言もございましたけれども、中村委員の方から政府としての考え方、こういうことでございますから、お答えをさせていただきたいと存じます。

 この問題は、日本国との平和条約発効、これによって生じたものでございまして、この民事局長の通達の問題は、日本国と各国との平和条約の解釈を明らかにしたというのが法務省の見解でございます。

 特に、平和条約の第二条(a)項において、「日本国は、朝鮮の独立を承認して、」「朝鮮に対するすべての権利を放棄する。」こういうことを規定するということは申すまでもないんでございますけれども、この規定というものは、日本が朝鮮に属すべき人に対する主権を放棄したことを意味いたしますので、平和条約の発効によりまして、朝鮮に属すべき人は日本の国籍を喪失したものと解釈されていたわけでございます。

 それで、このことは法務省だけが言っているんじゃございませんで、昭和三十六年四月五日の最高裁大法廷判決においてもそういう趣旨のことを判示されているところでございます。

○中村(哲)委員

 我が院、衆議院調査局第二特別調査室がおつくりになっている、この法案に関する資料があります。その五十六ページに、今、滝法務副大臣がおっしゃった点についての、調査室としてのまとめたものがあります。

 それを読ませていただきますと、一九五一年、昭和二十六年九月、「日本は連合国との間で「日本国との平和条約」(サンフランシスコ平和条約)を締結した。平和条約においては、朝鮮について日本がその独立を承認し、朝鮮に対するすべての権利、権原、請求権を放棄するものとされ、また台湾についてもその領域に対するすべての権利、権原、請求権を放棄するものとされた。しかし、平和条約は日本が放棄した領域の帰属先については直接的には規定しておらず、また国籍の変動についても何らの規定も設けていなかった。」

 一九五二年、昭和二十七年四月、「平和条約発効、朝鮮人・台湾人の国籍の変動についてはその解釈に委ねられ、「法務府民事局長通達」により「朝鮮及び台湾は、条約の発効の日から日本国の領土から分離することになるので、これに伴い朝鮮人及び台湾人は、内地に在住している者を含めてすべて日本国籍を喪失する。」ものとされた。」

 つまり、条約は直接国籍を奪うべきとは言っていないんですよ。その解釈で、法務府、今の法務省が、国籍を奪う、そういうふうに判断をしたということなんですよ。滝副大臣は、条約からそのまま自動的にこういった政策判断が導かれるような答弁をされたんですけれども、違うんです。

 もう時間が参りましたからやめておきますけれども、この田中宏さんのお書きになった「在日外国人」という本の七十二ページに、吉田首相の当時の手紙が出ております。マッカーサー元帥に対する、今の時代から見れば民族的差別ととられるような内容の手紙であります。こういったものが背景にあってこの民事局長通達というものは出された、そのことを私は改めて申し上げて、時間が参りましたので、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

○滝副大臣

 ただいま委員から御意見がございましたけれども、これは平和条約の解釈により法務省がとったものでございまして、その前提として、実は、昭和二十年の十二月に、現在の公選法の前身の衆議院選挙法の一部改正がございました。その一部改正の提案理由説明でもこう言っているんですね。

 ポツダム宣言の受諾によりまして朝鮮及び台湾は早晩帝国の領土より離脱し、したがって、朝鮮及び台湾人は原則として帝国の国籍を喪失するものと考えられますがとこういうふうに述べておりまして、ただし、この平和条約が締結されるまでは暫定的に選挙権の停止、効力を停止する、こういうのが当時の解釈でございまして、以後、政府の見解は、そういうようなポツダム宣言、あるいはそれに付随して述べられておりますカイロ宣言をそういうふうに受けとめてきたということだけは申し上げておきたいと存じます。

○遠藤委員長

 中村委員、簡潔に。

○中村(哲)委員

 時間が参りましたので終了させていただきますということを申し上げたのに対して答弁をされておりますわけですから、非常に遺憾に思うわけでございますが、今おっしゃったことでも、条約の解釈を法務省がされたということなんです。政策的な判断で、実質的な理由を、国籍の選択制をとらなかったという理由をおっしゃっているわけではありません。その点について答弁不足であるということを改めて申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

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