2004年9月9日 第160回国会 衆議院 総務委員会 閉会中審査 |
案件:情報通信及び電波に関する件(NHK不祥事問題等) |
[1] 質疑内容(41分) 「NHK不祥事問題について」
今回の閉会中審査では、NHKの海老沢会長を参考人として、不正支出問題に関する質疑を行いました。
問題の発端は、週刊文春の7月の報道でした。
NHKの芸能番組プロデューサーが、実際には仕事をしていない放送作家に番組制作費を支払い、キャッシュバックを得ていたというのです。この事件はNHKの調査でも事実であることが判明したのですが、この事件を契機に、NHKのソウル支局長が(わかっているだけでも)5000万円近いお金を(取材費に?)流用していたという話や、「宇宙新時代プロジェクト」担当職員がカラ出張を行っていたこと、更には、既に過去の話として処理されているものの不問にしていた4つの不祥事等々が次々と明らかになってきたのです。
中村は、これらの問題について、NHKがまとめた調査報告書を中心に質疑を行いました。
中村が最初に取り上げたのは、NHKの隠蔽体質についてです。
NHKは、今後の対応策として、懲戒処分を行った場合、「日本放送協会報」に掲載するとともに、起訴猶予以上の刑事事件に関する懲戒処分と刑事事件以外の事柄でも懲戒免職処分としたものについては、視聴者・国民に発表することとしました。しかし、この程度の基準では、実質的に公開されるのは、今回の事件に照らしあわせれば芸能番組プロデューサーの不正事件のみで、ソウル支局長の件も、宇宙新時代のカラ出張の件も、過去の4つの不祥事も、全てはNHKの窓口まで行かないとわからないということです。
また過去の4つの不祥事は、本来は刑事事件として扱われてもおかしくない、横領や詐欺の類のようですが、損害額は全て返済されたということで刑事告発がなされず、内部の処分(免職)で済まされています。しかしお金を返したからといって犯罪性がなくなるわけではありません。身内をかばう一方で、不祥事を隠蔽する気持ちがあったのではないでしょうか。
番組担当プロデューサーの事件への対応についても問題があります。もちろん、プロデューサー自身に最大の責任があるのは間違いありませんが、システム的には、直属上司が、問題の所在を知りながら、調査を行うことなくそれを握りつぶした点により大きな問題があると思われます。
組織ですから、問題がある職員というのは必ずどこかに居るでしょう。しかし起こった問題を最小限の被害で食い止めるためには、或いは再発を防止するためには、チェック機能が必要です。
今回の問題では、そのチェック機能が働きませんでした。これはNHK全体のチェック機能の信頼を失わせる問題であり、経営責任が問われる問題だと思われますが、経営側が、それに相当するだけの責任をとっているとは思えません。
中村自身は、公共放送の重要性を認識しており、よくいわれているNHK民営化論やNHK不要論には与していません。
問題は、今のNHKが、公共放送に期待される仕事をきちんとこなしているかどうかという点です。公共放送を預かる立場のNHKは、自分自身に対して特段に厳しい姿勢を保持する必要があります。その点で、今回の問題とそれに対するNHKの取り組みは全く不十分であることが判明しました。この問題は引き続き取り組んでまいります。
答弁に立つNHK海老沢会長
(1) 9月2日に公表した懲戒事案4件を告訴しなかった理由
(2) 芸能番組制作費不正支出問題について
ア 受注した放送作家の業務実態及び報酬額
イ 元チーフ・プロデューサー及び関与したイベント企画会社社長に対する告訴手続の状況
ウ NHKにおける独自調査の状況及び捜査への協力状況
エ 元チーフ・プロデューサーの当時の上司に対する懲戒処分(停職6ヶ月)の妥当性及び損害賠償請求の見通し
オ NHKが芸能番組を制作・放映する社会的意義
(3)元ソウル支局長の取材費請求問題について
ア 当時の上司が私的流用はなかったと判断した根拠
イ 元ソウル支局長に対する私的流用の疑いある全額の返還請求の予定
ウ 元ソウル支局長に対する処分(停職6ヶ月)と同様の私的流用問題に係る岡山放送局元部長に対する処分(懲戒免職)とが異なる理由
(4)謝罪番組放映の予定
○中村(哲)委員
民主党・無所属クラブの中村哲治です。
中村さん、私たちがNHKに聞きに行っても、NHKの広報は、八月、受信料が幾ら減ったのか、クレームについて今まで何件あったのか教えてくれないんですよ。そのように、各マスコミの記者の方が私のところに来てお話しになりました。
私に与えられた時間は四十分ですので、一々データを聞いている暇もありませんから、昨日、そのデータについてお尋ねをいたしました。そうすると、NHKはきちんとけさまでに出してきているんですよ。そして、八月の受信料の変化というのは例年とほぼ変わりがない。この不祥事が起きているからといって、特別ことしだけ、八月大幅に減っているというわけではないんですよ。こんなデータがなぜ広報からほかのマスコミの人に流れないのか、非常に私は不思議に思っております。
それからクレームの件数、先ほど長沢委員の御答弁にもありましたように、すべてで六千五百十二件、ここの私がもらっているペーパーでは六千二百九十五件、総数というふうになっておりますけれども、こういうデータも、私たちに渡すのであれば、広報できちんと私は示すべきだと思います。
NHKは開かれて情報公開をしていく、このようにきょうも理事、経営陣はおっしゃっていますけれども、言っていることとやっていることが違うじゃないですか。
また、報告書があります。平成十六年九月七日、おととい、日本放送協会が出された報告書、「「芸能番組制作費不正支出問題」等に関する調査と適正化の取り組みについて」、この報告書の二十八ページに、今後の懲戒処分についての公表の基準について書かれております。
読ませていただきますと、「今後、責任審査によって懲戒処分を行った場合は、NHKの「日本放送協会報」に、原則としてすべて掲載します。この協会報を視聴者・国民のみなさまが閲覧できるよう、新たに全国の放送局・支局・営業センターに備え置くことにします。」
私、これを聞いたとき、何で放送センターや営業所まで足を運べと言っているんだと。国民の皆さんや視聴者の皆さんが知りたいのであれば、足を運べと言っているんじゃないですか。なぜ、ウエブのページやホームページ、インターネットに載せないんですか。
こうも書かれています。「この「情報公開」に加えて、より透明性を高めるために、今後は、起訴猶予以上の刑事事件に関する懲戒処分と、刑事事件以外の事柄でも懲戒免職処分としたものについて、原則として視聴者・国民のみなさまに発表することとします。」こうしているんです。
だけれども、この基準だったら、今回の磯野事件も含まれないんですよ、事前の方ですけれども。懲戒免職になる以前の厳重注意のときでは含まれないんです。また、ソウル支局長の事件、今回停職六カ月になりましたけれども、停職六カ月でも、これは懲戒免職となっていないから公開されないんですよ。何で公開しているのか、この報告書にも載っているのか。それは、週刊新潮が報じたからじゃないですか。この基準、新たな基準でも公開にならないんです。
そして、こうもあります。「こうした考えから、平成九年以降の責任審査処分のうち、金品の不正取得によって免職処分し、すでに開示対象になっている次の四件も九月二日に記者発表しました。」そういうふうに書いているんです。しかし、その内容と見れば、先ほど長沢委員から御指摘がありましたように、事案は詳しく書かれていないんです。これでどうやって判断しようというんですか。
だから私は、昨日、資料請求で、この事案についてきちんと報告してくれ、文書でくれ、そうして渡されたペーパーがこれですけれども、ここの二十八ページに書かれているのと全く一緒の文章が書かれています。である調がですます調になっているだけですよ。事案もあわせて公開しないと意味ないじゃないですか。
それで、この全部の四事案、これはすべて本来刑事事件にすべきことですよ。全部、着服とか私的流用とかそういったものに対して、プライバシーがあるからと言って、先ほど理事の答弁では、所属の場所も公表しない、名前も公表しない、細かい内容も公表しないと言っているんです。だから、私、内部情報を聞かせていただくことがありますけれども、こんな金額では済んでいないと言っているんですよ。
先ほどからNHKは、自分たちは調査できないから司直にゆだねるんだと言っているんです。だったら、この四案件も司直にゆだねるべきじゃないですか。何で告訴状を出さないんですか。
告訴状を出さない理由、答えてください。
○宮下参考人
その四件につきましては、先日、九月二日に会長が発表いたしましたのは、先ほど申し上げましたように、これからは、一定の基準のもとに、請求されなくても協会の方から発表するという方針にいたしましたので発表したものですが、いずれも、金額についての調査は責任審査委員会の調査で確定しておりまして、しかも、その処分につきましても懲戒処分になっておりまして、そういうことがはっきりいたしておりますものですから、それから、全部弁済されております。それで告訴はいたしませんでした。
○中村(哲)委員
なぜ告訴をしていないのかという理由を聞いているんです。
○宮下参考人
その不正に扱われた金額が確定して、その全額を本人が協会に払い戻して、かつ懲戒処分にいたしましたので、告訴はいたしませんでした。
○中村(哲)委員
横領や背任、詐欺について、お金を返したら違法性がなくなる、そういう認識だということなんですよ、今の答弁というのは。そんなことは許されないんです。
あなたたちは会計検査院法で報告義務があります。二十七条には、会計に関係のある犯罪が発覚したとき、会計検査院に報告しないといけないと書いているじゃないですか。だけれども、自分たちは、お金を返してもらったら、これは犯罪に当たらないから報告しなくてもいいんだ、そういうふうに思っているんでしょう。その隠ぺい体質、内部者を守ろうとする意識が問題だと言っているんです。これが、今の経営陣と私たち国民・視聴者がずれているその一部分なんです。だから結局、この抜本改革と言われている案でも、今見た限りでもそれだけずれがあるんです。そのことをまず指摘させていただきたいと思います。
時間がありませんので、具体的な事件の中身に入っていこうと思います。まず、磯野チーフプロデューサーの巨額詐欺事件でございます。
台本に名前が載っていなかった人たち、B、C、Dの名前と、その支払われていた金額、それについてお答えください。
○出田参考人
私どもが調査した内容につきましては、報告書に書いてあるとおりでございます。関係者の主張がさまざまにございまして、必ずしも、不正があったかどうかということにつきましてはっきりしていない部分がございます。
したがいまして、先ほども申し上げましたとおり、NHKの調査そのものに、任意の調査に限界がございますので、この部分につきましても警視庁に詳しく説明をいたしまして、関係資料を提出しているところでございます。
そういう意味では、今回のこの時点では金額を明らかにすることができませんので、差し控えさせていただきたいと思います。
○中村(哲)委員
国会に来て何を説明するんですか。報告書を出して、もうそれで終わりでいいじゃないですか。
例えば、Cの業務内容、ここで書かれていることは、元職員の言い分とCの言い分が書かれているだけです。皆さんがどのように判断したのかということはきちんと書かれていません。それは何でか。今までの経営のあり方が、事後にチェックするような仕組みを設けていなかったんです。
それは、皆さんが、報告書十五ページのところで、「番組の制作形態が多様化するのに伴い、情報収集やアイデアの提供、出演交渉など多種多様な業務までを文芸委嘱料の対象としてきました。」そして、「放送現場の担当者以外には、放送作家の業務実態を把握しにくく、実際の業務に見合った支払い額なのかどうか、確認が難しい構造になっていました。」放置していたんですよ。これは、だから私は経営責任が問われるような問題だと思います。だから、Cの業務実態についても確認できない、Dにおいても確認できないということなんです。
司直に全部任せるとおっしゃいました。それでは、NHKとして出している告訴状、これは受理されているんですか。警察、いかがでしょうか。
○岡田政府参考人
お尋ねの件は、七月二十三日に告訴の相談を受けている件であろうかと思います。
現在、告訴人側から所要の疎明資料の提出を受けるなどして、事実関係の確認を行っております。そういう意味で、現時点で正式には受理していないと承知しております。
○中村(哲)委員
つまり警察は、告訴の相談は受けているけれども、告訴状の受理はしていないと言っているんですよ。
なぜ、受理できるようなところまでやらないんですか。そして、まだ受理されていないんだったら、積極的に自分たちで事案の解明をするべきじゃないですか。そこの問題点、告訴に係る問題点、どのようにお考えでしょうか。
○関根参考人
私どもが内部調査している内容につきましては、現在、警視庁の担当者と連絡をとり合いながら捜査に全面的に協力しているということであります。
○中村(哲)委員
その捜査に協力をしているということですけれども、それならば、当然、イベント会社社長にとどまらず、名前のないA、B、C、Dに関しても捜査資料等を提供しているということですね。間違いないですね。
○関根参考人
もちろんそうであります。
それで、具体的に私どもの報告書に記述しなかったというのは、例えば、金の性格がはっきりしないとか、果たして、イベント企画会社の社長に元職員が渡しているように、両方ともその事実関係を認めているというような内容ではありません。いろいろな調査をしたつもりでありますけれども、任意調査には限界があって、真相のところまでたどり着けないというのが現状であります。
したがいまして、そういったことも含めて、警察にさまざまなデータも含めて提供しているということです。
○中村(哲)委員
聞かれたことに端的に答えてください、時間が短いんですから。
私がお伺いしているのは、元職員やイベント会社社長の件だけでなく、A、B、C、Dそれぞれの件についても捜査資料をきちんと警察に提出しているんですねと言っているんですよ。
○関根参考人
御指摘のとおりであります。
○中村(哲)委員
その件に関しては、また後で事実確認がされることだと思います。
それでは次に、この件に関する処分についてお伺いします。
磯野チーフプロデューサーは海老沢会長と同じ茨城県出身である、また、コネ採用の温床と言われていた長期臨時採用である、そういったことが報道されております。だから磯野に対し手心が加えられたというのではないとは思いますけれども、天海当時芸能番組部長の処分である停職六カ月、この理由は何なんでしょうか。なぜ停職六カ月なんでしょうか。
○宮下参考人
お答えいたします。
NHK職員は、職員就業規則により、重要事項についてその都度上司に報告することが義務づけられております。また、部局長は、部下に懲戒に当たるような行為があったと判断した場合には、職員就業規則に従って、速やかにその真相を調査し、懲戒について会長に上申するよう定められております。
こうした規定に基づいて、芸能番組部長は、不正に気づけば、部局長である、その上司である番組制作局長に報告し、番組制作局長は会長に上申しなければいけなかったんですが、それをしませんでした。
それで、芸能番組部長は十分な調査をしなかったということが一点と、その調査をしなかったために、不正が行われているということに気づかなかったと本人は述べております。ただ、この行為は、不正を知りながら隠ぺいしたものではないんですが、職務上の怠慢によって重大な不祥事を見過ごしたもので、それを理由に停職六カ月という処分にいたしました。
○海老沢参考人
ただいま先生から、磯野君が茨城県であり、私も茨城県だから、会長が何か情実的な人事をしたんじゃないかというような報道がされたことについて触れられましたけれども、私は昭和五十四年当時は福岡の報道課長をしておりまして、この磯野何がしとは一面識もありませんでした。
それで、今回も、この事件が発覚し、初めて磯野という名前を聞いたわけですし、磯野何がしの顔も見たこともありません。一面識もないということを申し上げておきたいと思います。
そのほか、いろいろ週刊誌等で、NHKにいる茨城県人は、何か海老沢とつながりがあってそういう情実人事を受けているというようなことが書いてありますが、これは全くそういうことはありませんし、我々は実力主義あるいは適材適所で人事をやっております。誤解のないように申し上げておきます。
○中村(哲)委員
私は、聞かれていないことに別に答えてもらわなくても結構です。
事実だけ申し上げておきますと、この事件が三年前知られた平成十三年は、会長の任期中でございます。
それで質問なんですが、それであれば、一定の基準があったと。つまりこういうことだと思います。部下の詐欺や業務上横領などの可能性がある行為について上司が知った場合には、それをきちんと上に届けるというそういった基準があったということですね。私は、これがなかったというのであれば、経営責任を大きく問われても仕方ないというふうに思っていたわけです。しかし、今のおっしゃることは、あったということであれば、その責任は非常に重いんです。天海当時部長の責任は重い。
故意過失というのがありますけれども、重過失というのもあります。ほとんどこれは重過失に近いケースですよね。それで何で六カ月なのか。これは私たち理解ができません。本当はこの件に関しても私は経営責任が問われると思います。何で六カ月なのか。ほとんど磯野とやっていたことは変わらないじゃないかと。磯野の個人的な行為です。確かに個人的な行為です。でも、有権者、視聴者にとっては、一番問題があるのは、三年間ほっていた天海部長の行為じゃないですか。それにもかかわらず、ほぼ重過失のような行為に対して懲戒免職もせず、六カ月たったら帰ってくる。そんなことで本当にいいんでしょうか。恐らく、多くの視聴者はそのように思っていらっしゃると思います。
そこで、もうどうせ聞いても同じような答弁が返ってくるでしょうから、時間もないですし、次の質問に行きます。
そもそも、NHKが芸能番組を続けていく理由というのはどこにあるんでしょうか。恐らく、歴史的にはテレビの普及という目的があった。かたいニュース番組だけじゃ困るだろうから、紅白もする、そして芸能番組もさせていただく。そして、多くの皆さんの、ああテレビ買いたいな、NHK見たいな、そういった思いで番組が始まったんだと思います、歴史的には。
しかし、その歴史的使命も終わったんじゃないでしょうか。CSで多チャンネル化が進んでいます。放送と通信の融合、これは海老沢会長の持論でもあると思いますけれども、放送と通信の融合は進んでいる。そうなったときに、オンデマンドで、自分の見たい番組をテレビだけじゃなくインターネットでも見られるようになる。去年の紅白の結論も、最後に一番視聴率がとれるだろうといってSMAPを持ってきたんだと思います。そうして白組の圧勝で終わってしまう。私、こんな紅白を見たのは初めてですよ。
もはやNHKが芸能番組を放送する意味はないのではないか、私はこういう意見が出てくると思うんですが、いかがでしょうか。
○出田参考人
お答えいたします。
私どもの日本放送協会国内放送基準というのがございますけれども、この中に、「すぐれた芸能を取り上げ、情操を豊かにするようにつとめる。」あるいは「古典芸能の保存と各種の芸能の育成に役立つようにつとめる。」あるいは「家庭を明るくし、生活内容を豊かにするような健全な娯楽を提供する。」こういう、NHKが芸能番組を放送する必要性というものを定めております。
それで、私考えますに、NHKというのは、日本人にとって欠くべからざる文化を守り育てるというのが使命だというふうに思っております。具体的に、童謡ですとか、あるいは民謡、唱歌、こういったものを日本人として後世に伝えていくということも一つの文化でございますし、また、演歌も、最近では民放では余り取り上げることのないジャンルとなっておりますけれども、これも日本人にとっては忘れられない存在だというふうに思っております。
そういう意味では、視聴者の皆様からNHKの芸能番組に寄せる期待というものは大きいですし、公共放送としても欠かすことのできないというふうに思っております。
○中村(哲)委員
いや、それだったらわかるんです。つまり、童謡、民謡、唱歌、演歌に限って番組をつくればいいんですよ。日本の文化を守るんでしょう。私もそれは反対しませんよ。そしてこれが、必ずしも商業ベースに乗らない、だから、CSで聞こうと思っても、また、レンタルビデオ屋さんでDVDを借りてきて音楽を聞こう、そういうことにならないですから、こういった音楽に限ってやるというんだったらわかります。だけれども、その理由、ほかの音楽の理由を言っていないじゃないですか。
だから、そういうことで、ちょっともう考えを変える時期に入っているんですよ。時代の変化とともに好みが多様化していますから、多種多様なチャンネルを選ぶ、それを前提にして番組を編成していく、基準もそれに合わせて変えていく、それが必要なんです。
次の質問に参ります。
磯野チーフプロデューサーのNHKに与えている損害、それはいつどのような形で請求されていくんでしょうか。報告の十三ページにはこのような形で書いてあります。
しかし、今までのお話、C、Dに対しても幾ら請求するかわからない。これは民事訴訟をしないといけないわけですから、C、Dに払ったお金は全部磯野が会社に与えた損害だとまずNHKが主張しなければ、民事訴訟で、処分権主義ですからのってくることはないんですよね、裁判の俎上に。だから、どういう形で請求していくのか、最終的には裁判していくのか、そこが重要なんです。
報道にもありますように、元職員は、不動産会社が言うには、八千万程度の家に住んでいると言われています。高級外車を乗り継いでいるとも言われています。そんなことを、のうのうと大きな家に住むのを残しておいていいのかどうか、有権者、視聴者の皆さんはそのように感じていると思います。
それについて、元職員にどのような形で請求をしていくつもりなのか。十三ページに書かれている以上のことがあればお答えください。
○出田参考人
元職員とイベント企画会社の社長、双方とも弁済の意思は明らかにしております。NHKといたしましても、全額の返済を双方に求めていきたいと思っております。
ただ、返済を求める時期についてでございますが、今後の捜査の状況を見きわめながら具体的な対応を検討していきたいというふうに思っております。
○中村(哲)委員
少なくとも、時効が成立するようなところまで先延ばしするようなことがないようにしてください。少なくとも、時効の中断をするような法的処置はとっていただきたいと思います。
それでは次に、ソウル支局長の問題に移りたいと思います。
皆さんのお話では、結局、経理処理が不適切だったということで当時厳重注意したというふうなお話でした。しかし、普通に考えたら、明らかになっているだけでも二十九カ月分で四千三百九十九万円余り、そして、全体では四十八カ月に及ぶわけですよね。これは何ぼあるかわからない。そういった額になっています。これが、全部取材に使いましたと聞いて納得する視聴者の方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。
そして皆さんは、このようなことを私が聞けば、取材源の秘匿だということを理由にされます。しかし、取材源の秘匿というのは、外部に対してそのようにおっしゃるなら構いません。しかし、内部監査のところでは情報は共有できるんです。それをやっていなかったということは、当時のこの厳重注意をした報道局長もぐるだったんじゃないか、共犯なんじゃないか、そのように思われても仕方ないわけです。
なぜこの件が取材だったと言い切れるのか、その理由についてお答えください。
○関根参考人
今回の再調査でも、私どもは調査チームをつくりまして調査をやりました。
その調査のねらいというんですか、目的というのは、まず、支局経費の私的な運用がないのかどうか、そこを中心に調べました。本人に話を聞くことはもちろんのこと、当時支局におった人間、それと、この支局長がよく出入りしていたと言われる飲食店の店員等、そういったところから今回もいろいろな形で話を聞きましたけれども、少なくとも私どもの調査の結果としては、そういった私的な流用、もちろんソウル支局の銀行口座、本人の口座も調べました。そういったところからは私的に使っているという確認はとれませんでした。
したがいまして、そういった金というのは、本人の供述とか周りからの話、そういったものも含めて、業務とか、あとは支局の運営費、そういったものに使っているという判断をしたということであります。
○中村(哲)委員
皆さんがそのようにおっしゃったからといって、視聴者の皆さんがそのように納得するかどうかとは別問題なんです。報道だったら経費になって芸能だったら横領か、そういうふうに私は印象を受けますよ。額が大きいじゃないですか。その額すべて取材だって言い切れるんですか。岡山支局の問題であったら、九十万円の着服で懲戒免職です。九十万円程度も横領していなかったというような確証がなぜあるんですか。そこに答えていただかないと私たちは納得できないんです。
次に移ります。
今回、処分が、先ほど伊藤委員の指摘にもありましたように、今回何も状況が変わっていないにもかかわらず、週刊新潮の指摘があって初めてこれが表になって、また朝日新聞の記事が表になって、責任審査委員会にかけられて処分が変わる、こんなことになっているんです。伊藤委員はおっしゃいませんでしたけれども、これはまさに経営の問題です。経営方針の姿勢の問題です。こんなころころころころやり方を変える、そしてこのような形でしか対応ができない、私は、経営者の責任、大きく問われるべきだと思っております。
そのことについて後で申し上げますけれども、それと関連して、なぜ今回、それならばその額を返還するということを求めていかないんでしょうか。宇宙新時代プロジェクトの空出張の問題、これは取材費の経費ですけれども、全額を戻させております。同じように取材の経費であるのならば、そして不正な支出であるのならば、ソウル支局長の場合でも全額を払い戻しさせるべきなんじゃないですか。これはダブルスタンダードになっているじゃないですか。理由をお答えください。
○関根参考人
まず、ソウル支局長の場合でありますけれども、これは、本人は、以前ソウル支局長をやっているときは一般職でありました。一般職でありまして、支局長という重職にあったわけですからそういった責任がないということは言いませんけれども、空出張をやっていた職員というのは、これはいずれも管理職であります。そういった意味での責任の重さということも一つの判断の材料になったということであります。
以上です。
○中村(哲)委員
そんなことは視聴者の理解を得られるとは思いません。
何でソウル支局長が管理職じゃないのか、そんなこと視聴者にわからないじゃないですか。金額が大きいからでしょう。本音のところはそうなんでしょう。そんな二重基準を設けちゃだめですよ。
ソウル支局長は自分の判断でお金を使えたんでしょう。宇宙新時代プロジェクトのチーフプロデューサーが自分で決めてお金を使えたのと一緒じゃないですか。実質的には変わらないのに、形式的に、ソウル支局長は管理職じゃなかったから、一般職だったから、そんなことはNHKの内部にしか通用しませんよ。そんな答弁ばかりしていると、この委員会の意味自体なくなるんですよ。
宇宙新時代プロジェクト、これは何ですか。ソウル支局長の問題と同じ問題があります。なぜ経費だと認められたのか。こんなこと説明つかないじゃないですか。このことも同じようなどうせ答弁をされるんでしょう。もう答弁結構です。
岡山支局では九十万円の不正請求で懲戒免職ですよ。今回、問題が明らかになって、処分が出勤停止七日になりましたけれども、その前は厳重注意じゃないですか。何でこんなに岡山支局の場合と比べて軽いんですか。それについてお答えください。
○宮下参考人
あの岡山の事案につきましては、この九十万円というお金が業務に使ったものかどうかということについて本人から十分な納得いく説明がありませんでした。宇宙プロの方は、先ほど専務理事の方から説明いたしましたが、経費に使ったということについては確認ができました。
ただ、宇宙プロは、先ほど言いましたように管理職でもありましたし、ともあれ、空出張という行為は理由のいかんにかかわらず就業規則違反でありますので、出勤停止七日という処分をいたしました。
○中村(哲)委員
私は、そんな答弁では皆さんは納得できないと思いますよ。
もう時間も短くなりましたから、次に行きます。
謝罪番組はつくるんですか。放送時間はどれぐらいだとお考えなんでしょうか。他局は、不祥事のときにしっかりと謝罪番組をつくられております。しっかりと取材もされております。自分自身で自分たちのうみを出し切る、その取材もされております。
しかし、私、NHKの記者さんとお話ししたときに、何で中村さん、この件についてそんな詳しいんですかと言われるんですよ。経営陣は、自分たちは危機感を持ってやっておられるのかもしれませんが、社全体にそのことを伝える努力をされていないんじゃないですか。
まずお伺いします。謝罪番組、おつくりになられるんでしょうか。
○海老沢参考人
あさって十一日の土曜日の午後二時から一時間、二部にわたって、まず私が謝罪をし、そして、この前記者会見で発表しました調査報告書を詳しく説明いたします。その後、当総務委員会の審議の模様を四十分ほど、今収録しておりますので、それを入れながら特別番組を組むつもりでおります。
その後、全容が、今警視庁に告訴状を出しておりますので、そういう捜査の段階が進み、また裁判等の問題がありますけれども、それぞれの今またいろいろな総点検をやっておりますし、また、法令遵守推進委員会等でも今総点検をさらに続けながら、逐次改善するべきは改善しながら再生を図っていくつもりでおりますので、また次の段階で御報告申し上げたいと思っております。
○中村(哲)委員
もう時間も迫ってまいりましたので、聞き漏らした質問を一問聞きます。
懲戒処分というのはどういう処分なんでしょうか。後の人事に関係してくるんでしょうか。私には、めっと言われるだけにすぎないと感じているんですが、いかがでしょうか。
○宮下参考人
今、懲戒処分ということですか。厳重注意ですか。(中村(哲)委員「ああ、厳重注意です、済みません」と呼ぶ)
厳重注意というのは、就業規則にのっとった訓告に当たりまして、いわゆる懲戒処分ではありません。
ただ、もちろん、その厳重注意、訓告を受けたということについては、人事上いろいろな判断には影響があるということでございます。
○中村(哲)委員
いやあ、厳重注意は懲戒処分ではないということだったんですね。私、懲戒処分と思っていましたからちょっと言い間違いもしましたが、そういうことだったんですね。もう一事が万事こういう感じですよね。
海老沢会長、私は、経営責任をとるというのは二つの方法しかないと思っているんです。皆さんともお話をし、特に内部者の皆さんや労働組合の皆さんともお話しさせていただきました。一番大事なのは、視聴者に対して理解してもらうことだ。視聴者に対して理解してもらうまず一つの方法としてあるのは、会長以下経営陣がおやめになって、形の見える形であらわすべきだ。もう一つの方法は、見える形で徹底的にうみを出し切って新しい形をつくることだ。その二つの方法しかありません。
しかし私は、残念ながら、きょうの四十分の質疑をさせていただきながら、皆さんが本気でうみを出し切って、NHKだからこそつくれる番組、それを安心して見ていただけるようなそういう会社につくっていこう、そんな努力が私は不十分だと感じました。
私の父は海老沢会長と同じ昭和九年生まれです。理学博士ですけれども、もう引退して年金生活をしております。会長におかれましても、最後の会社人生、厳しい御判断をしながら自分の歩む道を決めていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
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