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2004年4月20日 
第159回国会 衆議院 総務委員会   
案件:地方自治法の一部を改正する法律案、市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案、市町村の合併の特例等に関する法律案

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(48分) 「市町村合併特例法について(1)」   

現在、政府は市町村合併を強力に推進しています。今回の市町村合併関係3法案の改正は、市町村合併推進に向けた様々な方策を盛り込むためのものですが、その方策の一つに、地域自治区の設置というのがあります。

合併を進めれば自治体の規模は拡大します。地域自治区とは、合併市町村を地域で分け、その区域の問題等については区域の代表メンバーで構成する地域協議会に諮りながら自治行政を進めていこうという制度です。住民自治も充実させながら合併も促進するという、一石二鳥に見えるアイデアなのですが、実は大きな落とし穴があります。

 地域協議会のメンバーは市町村長が選出することになっています。またこの地域協議会の決定には法的拘束力はありません。地域自治区には事務所も設置されるのですが、その事務所長は市町村から派遣される職員です。つまり、地域自治区とは市町村の出張所であって、地域の意見を聞く機会は増やすものの、意見を取り上げるかどうかは市町村しだいですよという制度なのです。

 別の問題もあります。地域協議会のメンバーには報酬を支払うことも可能です。とすると、市町村長が、恣意的に自分の支持者を地域協議会のメンバーとして選べば、公費で自分の地域後援会を作ってしまうことにもなりかねません。また、こうした仕組みを法制化すれば、そのための財政措置が必要ということで、地方交付税の更なる増大にもつながりかねません。

 住民の意見を聴取するためであれば、このような法案は必要ありません。既に多くの自治体で住民集会等を実施されています。とすれば、運用次第では悪用されかねないこのような制度を何故法制化する必要があるのでしょうか。

政府は、運用には万全の注意を払うと述べるだけで、法制化の必要性について納得のいく回答はありませんでした。作っても意味がない、或いは百害あって一利なしという制度ですが、政府としては住民自治を進める努力をしたふりをするための「かたち」が欲しかっただけのようです。

[2] 質疑項目

(1) 地域自治区について

  ア 現行法の下での設置の可否
  イ 協議会構成員を首長が選任するとしたことの是非
  ウ 地域協議会構成員の選任に当たって多様な意見が反映されるようにすべきとの配慮規定に係る担保措置の必要
  エ 地域協議会構成員が条文上原則無報酬とされていない理由
  オ 地方の自由度を認める必要
  カ 地域協議会設置に係る費用を基準財政需要額に計上する考えの有無

(2) 合併に係る地域自治区設置の特例について

  ア ムラ意識を温存し住民意識の一体性の醸成を阻害するおそれ
  イ 合併関係市町村の枠組みでの設置を禁ずる提案についての所見
  ウ 住民自治の観点から非営利法人の活用に対する大臣所見

[3] 会議録抜粋

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治です。

 松崎委員に引き続きまして、質問をさせていただきます。松崎委員も質問しておられましたけれども、地域自治区について質問をさせていただきます。

 地域自治区とはどういうものですか、趣旨について教えてくださいと総務省にお聞きしたところ、このような回答がありました。

  地域自治区とは、地域の住民の意見を行政に反映させるとともに行政と住民との連携の強化を目的として、市町村の判断により設けられる区域であり、その区域の住民のうちから選任された者によって構成される地域協議会及び市町村の事務を分掌させるための事務所を置くもの。

  このような制度を創設するのは、市町村の規模が拡大しつつある中で住民自治を充実するためには、市町村を一定の区域に分かち、その区域を単位として、住民に身近な事務の処理を、住民の意見を十分に反映させ、かつ、行政と住民が相互に連携して行うことが求められているからである。

  地域協議会は、住民に基盤を置く機関として、住民及び地域に根ざした諸団体等の主体的な参加を求めつつ、多様な意見の調整を行い、協働活動の要となるものであり、地域自治区の核となるものである。

これが、総務省が私に渡してくれました地域自治区の趣旨であります。

 私は、この地域自治区の説明を聞きまして、何でこんなものが法律で必要なのかなと。正直、これを自治体の長がやろうと思ったら、自治法を改正しないとできないものなのか、条例でできるんじゃないか、そのように考えたわけでございますが、地域自治区の制度は、自治法改正をしなければできないものなのでしょうか。その点についてお聞きいたします。

○麻生国務大臣

 御指摘のように、条例で不可能なわけではありません。はっきりしております。条例で決してできないわけではありません。ただし、きちんとして、法律にした方が使いやすいという考えで今回のような法改正をお願いしておるというように御理解いただければと存じます。

○中村(哲)委員

 その使いやすいというのはどういう意味なのかということなんですよね。

 私たちが懸念しているのは、これは、いいように使われればいいんですけれども、悪用される可能性があるんではないか、そういったことも危惧しているんです。

 麻生大臣の選挙区はどうかわかりませんけれども、私の選挙区なども、御多分に漏れず、自民党が非常に強い選挙区でありまして、地域に行けば行くほどその傾向は強い。特に、地域の市町村の首長さんが、自民党、衆議院議員の候補の後援会長をされているケースもたくさんあるわけです。それは全国的にそういうケースがあると思います。

 今回の法案で懸念することはないという御答弁になると思いますけれども、私の選挙区以外の議員、それもかなり都市部の議員から、首長経験者の意見を聞いたんですけれども、その首長なんかが言っていたのは、こんなことは首長が本気になればできる、逆にこんなことは悪用される危険があると。

 どうも話を聞いていて、結論としては、地域自治区の長も市町村長が選任するわけです。そして、地域協議会のメンバー、構成員も、長が選任するわけです。結局、その地域を代表する人たちを首長自身が選んでいけることになりますよね。そうすると、例えば、市町村長の後援会に入っていないような人たちは実質的に選ばない、そういったことが可能になるんじゃないか。もちろん総務省の意見はそうじゃないんですよ。それはわかっているんです。しかし、そういった懸念が起こる余地がないのかどうか、そこを具体的に検討していきたいと思うんです。

 そこで、そんな抽象論で話をしていてもわかりませんので、まず、そのメンバーの選任についてでございます。

 地方自治法の一部を改正する法律案の中で、地域自治区の規定があります。第二百二条の五、「地域自治区に、地域協議会を置く。」と書いてあります。その三項の規定、読みます。「市町村長は、前項の規定による地域協議会の構成員の選任に当たつては、地域協議会の構成員の構成が、地域自治区の区域内に住所を有する者の多様な意見が適切に反映されるものとなるよう配慮しなければならない。」つまり、配慮規定なんですよね。

 配慮規定なんですが、この配慮がちゃんとされているかどうかということについては、私が条文を読む限り、担保されていないんじゃないか。つまり、これが恣意的に流れないような、配慮規定を担保するような、そういった規定が別のところになければならないと思うんですけれども、それが盛り込まれていないんじゃないかと思うんです。その点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

○松本大臣政務官

 お答えいたします。

 言いなりにならざるを得ないような状況も出てくるのではないかという御懸念の部分でございますが、この地域自治区につきましては、住民の意見を行政運営に的確に反映させるということでありまして、そのために市町村の内部組織として置かれるものという位置づけであります。公選された市町村長さんあるいは議会というものが現実にはあるわけでございまして、それとの関係を考えますと、地域協議会の構成員や合併に際しましての地域自治区の区長については、その首長さん、市町村長の選任によるということの方がふさわしいだろうということの判断がなされております。

 また、地域協議会の構成につきましては、区域内の住民の多様な意見が反映されるものとなるように、市町村長に配慮義務を厳重に課しているところでありまして、また、地域自治区の区長については、地域の行政の運営に関しすぐれた識見を有する者のうちから市町村長が選任するということになっているところでありまして、このような観点から、各市町村において適切な運用がなされるものと考えているところでございます。

○中村(哲)委員

 松本政務官のおっしゃったことは、私、そのままお聞きさせていただいたんですね。配慮規定はあるんですよ。それをわざわざ条文を引用してお聞きさせていただいたわけです。それは認識しているんですよ。だけれども、これは配慮義務にすぎないから、もしこれが破られるような場合、ほかでどういうもので担保されているんですか、そういう規定がないんじゃないですか、そういうことをお聞きしたわけです。にもかかわらず、松本政務官は、いや、そういう規定があるから大丈夫だと認識しています、そういう御答弁だったわけです。

 もう一度お聞きするんですけれども、配慮義務があるから配慮してもらえると思いますということじゃなくて、配慮義務、配慮規定はあるんだけれども、これは破られる可能性があるんじゃないですか、それを担保するものがあるんですかということをお聞きしているわけです。

○松本大臣政務官

 地域協議会は、住民に基盤を置く機関として、住民及び地域に根差した諸団体等の主体的な参加を求めつつ、多様な意見の調整を行って、協働活動のかなめとなるもので、地域自治区の核となるものであることはもう御承知のとおりであります。

 このため、地域協議会の構成が任命権者である市町村の恣意によることがないよう、地域を基盤とした多様な主体の意見が適切に反映されるものとなるよう配慮義務を課すということの御説明をさせていただいたところでありますが、この地域協議会の構成員の選任に当たりましては、当該地域に生活する住民個人はもとより、自治会、町内会、PTA、各種団体等、地域を基盤とする多様な団体から推薦を受けた者や、公募により応募してきた者の中から任ずることが要請されるというふうに考えております。

○中村(哲)委員

 まさに政務官の今の御説明を、私、事前に受けております。そういったケースが望ましいケースなんですよね。それは私も理解しているんです。そういった望ましいケースでないような形で選ばれる場合があるんじゃないか。それに対しては、どのような形でそれを検証していけるのかということに関して、非常に難しいんじゃないかと私は懸念しているわけです。

 麻生総務大臣が先ほどおっしゃいましたように、この制度自体は、今の現行法でも実行することが可能なんです。首長が意識があって地域協議会をつくる、そしてその中も、いろいろ地域で活動されているPTAとかボランティア団体とか非営利法人の人たちとか、広い意味でのNPOとか、そういう人たちから選んでくる地域協議会をつくる、そういうこともできるんですよね。地域を一つ支庁みたいな形でつくって、そこの長も自分たちで選ぶ、自分たちの職員からそこの長にすることも、今の自治法の枠内でもそれは可能なんですよ。条例もつくってやることができる。

 わざわざこういった制度をつくるわけですから、そういった先進的なケースをねじ曲げられないような、恣意的な運用をさせないような仕組みが必要なわけですよね。それなしにこういう制度だけつくってしまうと、逆に、私が先ほど申しましたような悪用の危険性が生じるのではないですか。むしろ、先進的な自治体では、もうこんなことつくらなくてもできるわけですから、現行法でもできるし、やっているわけですから、そこについてどういうふうな担保をするんですか。

 この委員会で政務官が御答弁をされても、それをきちんと自治体の長が読んで、松本政務官がおっしゃったからこれを守ろうということになればいいですけれども、必ずしもそうはならないと思うんです。どういった行政指導をするのか。例えば県がチェックをするのか。でも、それはそれでまた、自治という面からすると、私はすべきじゃないと思うんですよね。

 そうすると、この地域自治区という制度をつくった積極的な意味というのはどこら辺にあるのかな、そういうふうな形になってくるんですよ。だからお聞きしているわけでございますが、私の理解としては、つくったけれども実効的な意味というのはそれほどないのかな、制度をつくることに意味があるのかなというぐらいでしか受け取っていないんですけれども、それを超えた積極的な意味というのがもしありましたら、松本政務官、お答えをいただきたいと思います。

○麻生国務大臣

 中村先生が最初に言われたように、善意の人たちばかりじゃないという話は、法律をつくるときには、善意の第三者のみを当てにして法律なんかつくったらろくなものにならぬというのは、これは法律に携わった方ならだれでもということだと存じます。書いてないことなら何をやってもいいというぐあいに考える方も世の中には多いわけですから、そういった意味では、今言われた点は確かに考えておかないかぬところですが、それに対して介入するというのは問題だよというのも、私も全くそうだと思いますね。これをやったら官主導のきわみですから、それはいかぬ。

 そうすると、やはり落ちつく先は、住民の良識とか住民の自治とか、多分そういうところになるんだと思っております。だから、担保はあるかと言われれば、それは住民の自治と意識、民度なんという表現はいかがなものかと思いますけれども。

 ただ、先生、一つだけ。町長さん、首長さんが後援会の会長をしておられるなんというところは、福岡県で一件もありませんからね。神奈川県でも一件もありませんよ。ないところは世の中にはいっぱいあるんです。だから、ないからおたくは民度が低いなんて言っているんじゃないからね、それは間違えぬでくださいね。すぐそういったふうに揚げ足をとられたらかなわぬから、お断りしておきます。

 例えば、富山県とか熊本もありますよ、確かに。全国よく回りますので、結構その種のことに詳しい方だと思いますけれども、首長さんが後援会長をしておられる、支部長をしておられる、後援会会長、自民党の支部長、首長さん、三つ全部やっているなんというところは、九州じゃもう熊本ぐらいですね。あとはないです。福岡にはない。

 そういった意味では、これは地域によってすごく差があるとは思います。だから、奈良の話を伺って、大体言っておられる意味はわかります。何となくそうかなと思ったので、ちょっとそこのところは、恣意的にやられる可能性がゼロ、絶対ないと言うつもりは私も全くありません。

 ただ、そういったところは、ちょっと待ってくれという話がそれこそ民意として出てくるということにならなおかしいんだというような、ここは、僕は結構、住民の意識というのにはかなりパーセンテージが大きい方なものですから、おまえはちょっと甘過ぎると言われればそうなのかもしれませんけれども、これはやってみた上で、そういうところが幾つも出過ぎた場合は、それはそれなりにまた考えないかぬことになるのかもしれません。

 私は、基本的には、やはり一番の本来の目的は、今言ったような選挙に使うとかいうような話じゃなくて、何となく、先ほどの松崎さんの話じゃないけれども、流山とか柏とか松戸というところは、昔は、私ども子供のときはこんなところだったのが、いきなりぶわっと膨れ上がったところで、多分、意識としては旧住民の意識は全く無視された行政、だって新住民の方が圧倒的に、七割以上の人口ですから、全く旧住民は無視されるということは、もうあちこちでよく聞かされた話でもありまして、まともな方々の意見を吸収するというのが本来の目的であるという点だけは御理解いただければと存じます。

○中村(哲)委員

 私も大臣の問題意識と全く一緒だと自分自身は考えているんですね。住民自治なり住民の意思が一番重要である、そのための制度をつくらないといけないと思うんですよ。

 私が最初から申し上げているのは、住民意識が高いのであれば、もう、こういった制度を自分たちで条例をつくってやっちゃえるわけですよ。逆に、こういった制度をつくると、そこまで、自分たちでつくれるようなところまで意識が高まっていないにもかかわらず、こういった制度を形だけつくっちゃって、実際の運用が伴わなくて形骸化してしまう可能性が出てくるんじゃないか、それだったら、法律でこういうことはつくらない方がいいんじゃないか、そういった問題意識なんですよ。

 都市化が進んでいるという話がありましたけれども、例えば私の住んでいるところでは、逆に、奈良府民という言葉があるんですね、奈良府民。千葉都民と同じように、奈良府民という言葉があるんですよ、大阪から奈良に移ってこられて。

 そこで、逆に、首長さん初め、ほとんど政治的な権力を握っていらっしゃるのは旧住民出身の方であって、新住民が圧倒的多数にもかかわらず、その意見が反映されない、そういう自治体もあるわけなんですよ。だから、逆のこともあるわけなんです。そういったことを考えると、政府としてこういうものをつくっちゃうということの危険性は、また別にあるんですよね。そこは大臣に御認識いただきたいと思います。

 また少し細かい話に入りますけれども、そういった認識であると、この二百二条の五の第五項の規定も少し問題だと思うんです。第五項はこうなっています。「第二百三条第一項の規定にかかわらず、地域協議会の構成員には報酬を支給しないこととすることができる。」と書いてあります。協議会の構成員に報酬を支給しないとすることができると書いてあります。これは、普通に読むと、報酬は支払うべきものだ、だけれども、例外的に報酬を支払わなくていいよという話なんですよ。

 これは、事前の説明では、原則は、こんなの無報酬なんですよ、地域のPTAの代表とかボランティアの代表で来てもらうんだから、無報酬でやってもらうんですよと言っているんですけれども、法律には「支給しないこととすることができる。」ということで、この条文をそのまま読むと、原則支給なんですよ。「支給しないこととすることができる。」ということなんです。

 ここは、逆に言うと、もう無報酬なんですから、はっきり無報酬と書いたらいいんですよ。第二百三条一項の規定、これは、協議会とか審議会とかいろいろなものに関しては基本的に報酬を支払わないといけませんよと書いてあるわけですから、ここはまあいいと思うんです。この後、第二百三条第一項の規定にかかわらず、地域協議会の構成員には報酬を支給しないこととする、そういうふうな条文にしておけば全然問題ないわけですよ。

 しかし、今のこの条文の形じゃ、悪用されちゃう可能性があるわけですよ。ここがまさに問題である、私はそういうふうに思うんですが、この点に関してはどのように御理解されているでしょうか。

○麻生国務大臣

 今ゆっくり読んだところなんですが、これは確かに、典型的な役人の持って回ったような、何かよくわからぬような言い方になっているんじゃないか、払うなと書いてあった方がわかりやすいというところなんだと、私もそれは、役人出身じゃないせいもあって、わかりにくいなと思いながら、今きちんと読みました。

 ただ、これは、払うなと書くと何かまた決めつけになっちゃうんで、本来は払わなくていいということになるんだと思っていますので、私ども総務省としては、本来無報酬、基本的にはそう思っております。これは報酬は支給すべきではないものと認識をいたしておるというのが総務省としての立場です。

 ただ、払っちゃいかぬとも書けぬものですから、何となく、今そのような表現になったと理解していただいた方がよろしい。払うなというのも、ちょっといかがなものかなという感じがしないでもないかなというところです。

○中村(哲)委員

 払うなと何で書けないのかということなんですよ。払ってもいいとお考えなのかどうか。

 では、特殊なケースとして、払うケースが考えられるのか。そこはどのようにお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 これは非常勤ですね、基本的には。多分常勤にはならぬと思います。非常勤の職員みたいな形になるんだと思いますので、これはあくまでも、ある程度、地域住民として自発的な協働活動、そういったところの一環として考えないかぬところなんだと思います。

 そういった意味では、えらく専門性というか知識が要求される審議会の委員とか専門職員とかいうのと少し役割が異なります。町の世話役としていろいろな住民の意見を吸い上げるということになっておりますので、報酬のところにつきましては、大体、地元のかなり御年配の方で、奈良府民じゃない、奈良県民の方々が多分主たるものになるんだと思いますので、そういったところで、支給しないというのを前提にして基本的には考えたということだと思います。

 ただ、払っちゃだめよとも書けないし、一応働いてもらうわけですから、そこはちょっと、こういうような表現になっておる。ただ、認識としては無給、基本的にそう考えております。

○中村(哲)委員

 麻生大臣のおっしゃることは、私も重々わかっているんですよ。政府の方は、法案提出では光の部分を見ているわけですよ。野党としては、同じ問題意識なんだけれども、逆の方、影の部分はないのかなと思って話をしているわけです。

 そして、この条文を根拠に報酬が支払われるとどういうことになるか。最初の方に私が述べたようなことにつながる可能性があるわけですよ。公金を使って、そして選任手続も、全く恣意的じゃないけれども、暗黙のうちにそういう人がなるというのが決まって、あの首長のおかげで私はちょっと小遣い銭をもらえたな、そういう形になったら、あの首長の言うことは、まあまあ、言うことに従おうじゃないか、そういうふうな形になりかねないんじゃないですかというようなことを影の部分として申しておるわけです。そこに対する懸念がないのかどうかということを私はお伺いさせていただいているところなんですね。

 松野さんの時間を少しいただきまして、少し質問を続けさせていただきたいと思います。

 そういったことも考えると、もう少し地域協議会というものが、私はこれは制度として法制化する必要はなかったと思いますけれども、するとしても、もっともっと自由度を与えてもよかったんじゃないか。例えば地域自治区の長を公選も可能とするように、そういったことをする地方自治体は条例で決められるようにする、そういったことも可能だったんじゃないか。どっちかを選ぶのも自治体に選ばせましょうと。何で公選は絶対だめというふうにしちゃったのか、そこも疑問なんですね。

 そこまで地域の自主性、住民自治、住民の意思ということであるのならば、自治体の議会に、この地域の地域自治区に関しては代表者は公選で選んでもいいんじゃないか、そういうふうに議会が認めればそれも可能とする、そういった制度もできたかと思うんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 これは、おっしゃるように、何となくニンジンをぶら下げるような話になり得るという話なんだと思いますので、新住民が七、旧住民が三、その三の方が暇な人も多いし、これをつかまえて何となくという話は、大体奈良県の雰囲気はわかるんですけれども。

 これは、言われることは絶対否定しません。それはそういうこともあり得るだろうということは、その地域によって、私もある町のことを想像しながら、そういえば、あそこだったらあり得るなと思わないでもない町が私のところにもないわけじゃないから、わからぬわけじゃないんです。

 ただ、基本的には、中村先生、今言われたように、これを選挙で選ぶという案は、実は去年これをやるときには、大臣になりました後だったと記憶しますが、一応やって、町村長にこのアイデアを持ち出したんですよ。ところが、それは屋上屋だとか、その協議会の議員の方がまた偉くなったりと、話が込み入るからとにかく勘弁してくれという話が圧倒的に多かったというのが、今の案が出てきた背景なんです、正直なところを言うと。

 ただ、今言われたように、そういった危険性がゼロかと言われれば、私は十分にあり得る話だとは思いますので、そこのところはやはり指導していかなきゃいかぬというところは今後考えていかなきゃいかぬところだろうと。妙な金が払われたら、ちょっと待てということを言わないかぬことになる。それは本来の趣旨とは少し反するんじゃないですかということを役所としては言わないかぬことになる可能性はあると思います。

○中村(哲)委員

 質問にまぜて答えていただいて。分けて整理いたしますと、大臣としては、この二百二条の五第五項の規定というのは、やはり、大臣の言葉としては、問題とは言わないけれども、乱用の危険性がないように見ていく、そういうことをおっしゃりたかったということだと思います。

 首長が認めて議会にかけて、条例で地域自治区の長を選挙で選べるようにしようということにする制度を設けてはどうか、そういう私の意見に対しては、いや、なかなかそれは、今までの市町村長の話を聞いていると理解が得られない、そういう話ということで理解させていただいてよろしいですね。

○麻生国務大臣

 そのとおりです。

○中村(哲)委員

 それでも、あえて自分の市町村はそういうふうにするという議会が出てきた場合に、そういった余地も残しておいたらよかったんじゃないかというふうに私は思うわけですよ。大臣がおっしゃるような、住民自治とか住民の意思にのっとった制度にするためであるのならば、その方が論理的な帰結としては正しいんじゃないか、そういうふうなことを思っていたのでお聞きしたということでございます。そこは理解していただけますね。

 つまり、こういった制度をいろいろ見てわかるように、この地域自治区という制度は、必ずしも、大臣がおっしゃったように、住民意識の高まりとか住民自治のためというふうにおっしゃいますけれども、本当に住民意識が高かったり、住民自治を考えれば、これをわざわざつくる必要はないんじゃないか。むしろこういう制度をつくることによって一定の枠にはめちゃうことになっちゃって、住民意識の高まりというのを阻害している結果になっちゃいませんか、論理的にはそうなっちゃいませんかということをお聞きしているわけです。

○麻生国務大臣

 中村先生おっしゃるように、そういったこともあり得るじゃないかと言われれば、その点を否定するわけではありません。

 ただ、地域協議会ができることによって、逆に、初めて、何じゃこれということになって住民意識が出てくる面も否定できないと思いますので、それはちょっと地域によってまた差があるんだとは思いますけれども、今言われたところも十分に考えた上で執行していかないかぬところかなと思います。

○中村(哲)委員

 大臣としては、こういう制度があった方がきっかけとして自治が深まるんじゃないか、そういう御意見だったと思います。

 その方向をずっと考えていくと、将来的にこれは、交付税の算定のときの基準財政需要額のところに含まれてくる可能性があるんじゃないかな、私は、この制度を聞いたときに、一番最初にそう思ったんですよね。基準財政需要額の算定のところの基準に、地域自治区を一定の割合のところはつくっているだろう、それにはこれだけコストがかかるだろう、そういったことで基準財政需要額を積み増しされて交付税をふやしていくというようなねらいがひょっとしたらあるのかな、そういうふうに思ったんですが、その点はいかがでしょうか。

○松本大臣政務官

 地域自治区は市町村の判断で任意に置かれるものでありまして、現時点で特段の財政措置は考えておりません。

○中村(哲)委員

 
特段の財政措置は考えていらっしゃらないということですから、もうその言葉は議事録に残りましたから、将来、この制度を利用して、財政的なことが変更のないようにしていただきたいと思います。

 さらに質問しますが、地域自治区について、合併において特例を定める、そういう規定がありますよね。合併において地域自治区の特例を認める、そういった規定も今回の法案の中には含まれています。

 首長経験者の同僚議員と話をしていますと、困るのは、合併して何十年とたつのに、うちは旧A村だ、うちは旧B村だという話になる、A村のところに建物を建てたら、不公平だ、うちのB村のところにも建ててくれ、そういう話が出てくる、そういうお話があるわけです。二十一世紀の合併は、こういった問題はないようにしていかなくちゃなりません。ある程度名前等を残す必要は、コミュニティーですからあるのかもしれませんけれども、住民意識として、旧何々村の出身だとか、そういうこともやはり解いていくことも必要なわけですよね。

 私は、地域自治区の合併における特例に関して、ここも懸念があるわけなんです。地域自治区の特例の期限というのは、協議で決まるということなんですよね。ということは、法律上は、五十年でも百年でもいいわけじゃないですか。無期限ということも可能になってくるのか、それはそこまで勉強していないのでわかりませんけれども、五十年、百年でもいいことになってしまう。

 それが終わっても、今度は地域自治区ということで、普通の地域自治区の方になったら、結局、考えていくと、ずっとその村意識が温存されるような、そういった実態になってしまう可能性もあるんじゃないか。だから、私は、もう単純に地域自治区という制度はなくした方が、かえって自治体にとっては自治の範囲が広くなるんじゃないかという考え方なんです。

 そういったことを考えれば、やはり特例措置というのも、将来的に村意識を温存する結果になってしまうんじゃないかと思いますが、その点いかがでしょうか。

    〔委員長退席、佐藤(勉)委員長代理着席〕

○松本大臣政務官

 合併に際して設けられる地域自治区は、旧市町村のまとまりを維持したいものの、法人格を有する合併特例区を設置することまでは望まないというニーズに対応するために設けられている制度であります。

 一方、この地域自治区が永続的に存在したのでは、結果的に合併市町村の一体性の確立に妨げになることから、その設置期間については、合併関係市町村の議会の議決を経た協議により定めることとしております。また、その期間の変更につきましても、合併後の市町村の条例によらなければならないものとされているところであります。

 合併に係る地域自治区の設置期間については、法人格を有するなど独立性が比較的強い合併特例区の設置期間が五年を上限とされていることを踏まえ、合併市町村の一体性の円滑な確立を考慮しつつ、各市町村において適切に判断して設定をすべきものと考えさせていただいております。

○中村(哲)委員

 私は、合併特例区が五年以下ということはまだ許容できると思うんですね。ある意味、合併に踏み切るときにちょっとちゅうちょしている、そういうのは特例区をつくって五年の間に村意識を解消していくような、また合併した市町村の一体性を確保していくような運動をしていきましょうと。私は、合併特例区に関しては、まだ五年以下ということも認められるなというのがあるんですよ。

 しかし、地域自治区の合併における特例については、期限が、五年じゃなくて、十年にも二十年にも三十年にもできる。その後はまた普通の地域自治区に移行することもできますよね、制度上。そういった形になると、合併したときの意識がずっと続いていく、村意識がずっと続いていく、そういったことになりかねないんじゃないかな、だから、合併特例区よりも結構罪が重い特例なんじゃないかなと私は思うんですね。それだったら、合併をそもそもしなければいいわけですから。合併をして大きな自治体になって一緒にやっていこう、そういった気持ちをそいでしまう結果になってしまうんじゃないかということで、ここは問題なんじゃないかなと思うんですよ。

 私は、逆に、地域自治区の設定が旧市町村と地域を同一にできないようにする、そういったことの方が合併の効果がある。つまり、地域自治区で複数の、A村、B村、C村がX市になったとするときに、AとかBとかの単位じゃなくて、違うところで切る。例えばB村の真ん中で切るとか、そういうふうにする方が特例としては意味があるんじゃないか。もっともっと合理的な、経済圏で分けるとか、今日的な課題で分けるとか、川を挟んでいて町村が分かれている場合には川をまたいで一つの地域として考えるとか、いろいろなやり方があると思うんです。

 逆に、今回の法案で決められているのとは違ったやり方をした方が、かえって合併の効果とした上での特例という意味では、意味があるんじゃないかなと私は思うんですが、その点、いかがお考えでしょうか。

○山口副大臣

 私の方からもお答えをさせていただきたいと思います。

 先ほど来中村先生のお話しのとおり、ある意味で、もろ刃のやいば的なものがあるんだろうと思います。しかし、お話しの合併特例区の場合は、いわゆる合併への入り口みたいな役割が非常に大きい。そして、その後いわゆる違う方に移る場合に関しては、今先生御指摘のように、旧町村等々の枠組みにこだわらずに、まさに住民の皆さん方のいろいろな意見をしっかり聞こう、これを活用しようということで、それはもう旧来の町村の枠組みにこだわらずにやっていただいていいんじゃないかなと思っております。

 さっきもろ刃のやいばと申し上げましたが、そういった弊害というのも確かにあろうかと思います。私のすぐ隣町も、実は旧町村で町長さんの出し合いをするわけですね。あいつはあそこだから絶対許さぬみたいなことをずっとやってきたんですが、私どもも若干協力をさせていただいて双方仲よくみたいなことができたわけなんです。そこら辺はやはりお互いの努力だろうし、もう一つは、フランスの地方自治体を考えてみても、本当に住民のためにいいコミューンというんですか範囲というのは、ではどこまでなんだろうというふうな議論も実は一方においてあるんだろうと思います。

 ですから、そういったもろもろの思いの中でこのような形にさせていただいたということでございます。

○中村(哲)委員

 説明として余り私はわかっていないんですけれども、地域自治区というのは、今指摘させていただいたように、さまざま弊害がある可能性があるわけですよね。私も、市長さんに、この町は自民党ですからということで言われたこともありまして、自治体の行事には私は呼んでもらえないとか、そういうことも経験しているんです。

 こういった制度じゃなくて、それでは中村さんなら何を、代替案としてどんなことを考えるんだと聞かれるかもしれません。私が用意しているのは、非営利法人をもっともっと活用していこう、そういった考え方ができるんじゃないかということなんです。

 今、政府・与党でも検討されておりますけれども、公益法人やNPOなど、そういった非営利法人セクターの法人制度を抜本的に改革するという流れがあります。今一定の方向が見えているのは、準則主義で設立するようにしよう。つまり、登記をすれば非営利法人をつくれるようにしよう、そういった形の流れが政府でも検討されているというふうにお聞きをしています。

 私も、そこはいいと思うんですよね。非営利法人を登記で設立できるようにして、そういった非営利で地域の利益を担っていく、公共の活動を担っていくという団体をどんどんつくれるようにしていく。そして、その活動をしている団体の長とかそういう人たちをまた地域で集めて協議会をつくる。そういった運営をすることで、このような地域協議会みたいなものにかわるものができるんじゃないか。

 そのためには、逆に今度は、非営利法人法を抜本的に改革しないといけないですし、非営利法人に対して地域の人が寄附をする、それに対しては税制の控除、所得税の控除とかも認めないといけない、また今度は住民税の控除もできるようにする、そういう仕組みもつくる必要があると思うんです。

 逆に、こういったもので考えれば、地域ごとに幾つもそういうふうな、もし地域の中で対立があった場合に、非営利法人を複数つくることもできますし、また、これだけITが進んでいますから、合併して大きくなったところであっても、ブロードバンドで結びついていますから、距離を超えて、この範囲内で一つのテーマごとに、例えば介護なり、また公共移送でもいいですよ、例えば移動するときに困るからみんなで助け合いをしようとか、そういうのも、地域に固まらずに、大きくなった合併したその自治体の中でテーマごとに非営利法人をつくってコミュニティーを維持する、そういったことも可能になるわけです。

 だから、住民自治ということを考えれば、こういった非営利法人を活用するということが代替案として考えられるんじゃないかと私は思うんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣

 一つのアイデアとしては決して間違っていないと思いますが、基本的には、旧自治体の名前とか、そういった思い出やら何やらという、ちょっと大きな地域で、自分のもといた村、町、そういった名前が消える等々、その種の話からこれはスタートしていますので、今のNPOの話というのは、基本的には機能的な話であって、地域の代表というよりは機能別にということで、少し違うような気がします。

 今言われた中で、一つ難しいのは、学校法人も似たような例が幾つもありました。自民党の本部の前に永田町小学校というのがあるんですが、昔は有名な小学校だったんですが、今はありません。そのときの政務次官、永田町小学校OBの方から、おまえ何考えているんだといってめちゃめちゃやられましたけれども、結果的には一つにするふうになったんですが、名前だけは絶対残せとか、看板だけは外すなとか、それはもう大変なものです。やはりOBの方々の思いというのは多分そういうことになります。泰明小学校なんて銀座の真っただ中に小学校がまだ残っていると思いますけれども、それはいろいろな思いで多分残るんだと思うんですね。

 そういった意味では、この種の話というのはかなり感情論という情感の話が入ってきますので、理屈じゃなかなか割り切れぬというところは、中村先生、最も難しいところだと思います。その点をちょっと頭に入れておいていただきたいのが一点。

 もう一点は、NPOのお話をいただきましたが、税制やら何やらという話は、これも同じような話になろうかと思います。NPOに寄附してあげます、その監査法人がよっぽどうまくやらないと、バックマージンちょうだい、余りおもしろい話じゃありませんけれども、その話が実は幾つもあったから、NPOとかあの種の非営利法人というような話になかなか大蔵省がゴーを出さないというのがこれまでの経緯、最近は随分変わってきたとは思っていますけれども、そこらのところもありますので、今のところは一概になかなか言えないところだと思います。

 ただ、今、こういったものができ上がるのと、地域協議会というものと別にNPOがあったっておかしくはないのであって、そういったところは、こういったものをつくったといって、その地域において、これに対してもっといろいろな形で支援をという話は僕は十分に成り立つ話だと思います。今、あちらこちらで結構高齢者の方々のタクシーがわりを随分安くしておられて、これがタクシー業法違反かという話というのは結構実はありまして、それを特区にするしないというのがありましたので、もうよく御存じのとおりです。

○中村(哲)委員

 おっしゃるとおりなんですが、名前のことと機能のことはやはり分けて考える必要が私はあるんじゃないかと思うんです。住所の名前のことであれば、住居表示に関する法律、昭和三十七年法律第百十九号、これを変えればいいわけでして、市町村の判断でできるようにするとか、いろいろやり方はあると思うんですよ。それと地域自治区は必ずしもリンクしないんじゃないか、論理的には帰結しない、それはそうだと思うんです。

 機能に関しては、先ほど申しましたように、非営利法人制度を改革することでできる。大臣おっしゃったように、税制の問題とか、またバックマージン等の悪用、これも悪用の危険があるんじゃないか、そういうところで制度をきちんとしないといけないんですが、そういうことをやるということで可能なんじゃないか。そのことで、私が思うには、住民自治も住民の意思の向上というのも図ることができるんじゃないか、そのように考えるところでございます。

 もう時間も大分松野さんからいただきましたので、きょうのところは質問はこれぐらいにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。



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