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2004年3月2日 
第159回国会 衆議院 予算委員会第3分科会   
案件:平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算(法務省及び外務省所管)

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(33分) 「ドミニカ共和国への移住問題」   

拉致問題に見られるように、これまで日本政府は国民をきちんと守ってこなかったという歴史が徐々に明らかになってきています。ドミニカ共和国への移住問題も、残念ながらそういう問題の一つです。移住した人たちは、「カリブの楽園」という触れ込みの中、高倍率の競争を勝ち抜き、現地に移住された人たちです。現在、その人たちが当時の国の責任を問う裁判を起こしています。

3月2日の予算委員会において私がした質問は、裁判で争っている問題ではなく、その周辺の政治的に解決しなくてはならない問題です。メインの質問は、移住者の皆様に対してJICA(ジャイカ:(独立行政法人)国際協力機構)が貸し付けを行う「移住融資事業」の問題でした。

現地で聞いた切実な声は、「JICAから借りた融資がドル建てのため、元金が膨らみすぎて返せなくなってしまっている。」というものでした。具体例をあげれば、1ドル=6ペソ(現地通貨)で借りた借金が、金融危機により1ドル=50ペソとなった結果、8倍に膨れあがっています。

この融資制度の政策目的は「移住者の定着・安定に必要な生活基盤の確立を支援すること」ですが、皮肉なことに、膨らみすぎた借金が足を引っ張り、生活基盤の確立に逆行する結果になってしまっているのです。「JICAからの封筒は、もう、返せないから開けてもいない」という声もありました。

本来、政策機関がドル建ての融資をするには、借り手がドル建ての融資に伴う為替リスクに耐えられる経済主体であることが前提であるはずです。ドミニカ移住者は、ドミニカ国内で投資をし、生産物をドミニカ国内で販売し、現地通貨で返済をしています。 そもそも、この融資制度自体が固定相場の時代にはじまったものなので、このように対ドルレートが大きく変動することを当時は想定していなかったと思われます。

このような私の主張に対して、川口外相は、「返済している人たちがいる。」「インフレが高進をしている国では、待てば待つほど返す金額が少なくなっている。」「モラルハザードの問題も存在する。」という答弁をするにとどまりました。川口外相の答弁は、一見、正しいように思われます。しかし、通貨の変動に対して、生産物の価格や賃金の上昇が追いついていかず、結果的に到底返済できない高利になってしまっている事情を無視しているのです。政府がする事業には、必ず「政策目的」があり、絶えず政策目的に照らして適切かどうかを検証する必要があります。政府のやっていることを見ていると、手段が目的化していることを強く感じます。

[2] 質疑項目

ア 日系移住者に対する日本語教育の現状
イ 日本人補習校問題
  a 入学対象者選定基準
  b 運営に関する外務省の関与及び存在の周知徹底の必要性

ウ 国際協力機構による移住者融資事業の政策目的
エ ドミニカ共和国内法に基づくドル建て融資の可否
オ ドル建て融資による移住者の為替リスク負担の是非
カ 現地通貨の対ドルレート下落に伴う融資返済負担増加と政策目的の整合性
ク 途上国における為替及び物価変動リスクを勘案した融資事業再構築の必要性

[3] 会議録抜粋

○中村(哲)分科員

 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 予算委員会分科会、この第三分科会の最後の質疑者として質問をさせていただくことに対しまして、本当に感謝申し上げます。

 私は、去る一月十三日から十八日まで、少し名前が長いんですけれども、「ドミニカ共和国への日本人移住者問題解決を進める国会議員懇談会」という議連のメンバーの一人として、ドミニカ共和国に行ってまいりました。以下、ドミニカというふうに略させていただきますけれども、ドミニカの皆さんとお話をさせていただいて感じたこと、それを、大きく三つの質問という形で、川口外務大臣また逢沢副大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず第一に、邦人に対する日本語教育についてでございます。

 在外邦人に対する日本語教育はどうなっているのでしょうか。いわゆる日本人学校という学校もあるそうですし、補習校、補習授業校という学校もあるそうです。その二つの学校の違い、また要件はどのように違っているのか、それについてお伝えください。

○川口国務大臣

 一般的に申し上げて、海外の日本人補習校というのがございます。これにつきましては、これは基本的に在留邦人の方によって運営をされるということであって、要件ということで、入学資格ですとかそういうことをおっしゃっていらっしゃるのでしたら、どういう人が、大体、運営委員会というのがそこにありまして、その運営委員会がその学校の運営について決めるということであると承知をいたしております。

 それから、日本人、日本語学校ですか……(中村(哲)分科員「日本人学校です」と呼ぶ)日本人学校。日本人学校、これは文部省の所管でございますので私はよく存じませんけれども、幾つか、海外にいる日本人の子弟を教育する学校はあると承知をしております。

 補習校というのは、通常、普通の場合は現地の学校に行って、国語、算数といった基礎的なものについて教えるということで、日本人学校というのは、それについて、現地校には行かないで、ウイークデー、日本人として日本語で教育を受けるというシステムだと承知しています。その詳細は、これは所管が外務省でございませんので、恐縮ですが、文部省をお呼びいただければと思います。

○中村(哲)分科員

 その補習校について、少し突っ込んでお話を伺います。

 確認になりますが、日本人学校が対象として想定しているような長期滞在者に限るわけではなく、補習校、補習授業校というものに関しては、移民など、それ以外の日本人の子弟も希望すれば入学できるというふうな、基本的にそういう仕組みであると考えてよろしいですね。

○川口国務大臣

 どういう人たちが中に入れるかというのは、まさに、それぞれの補習校の運営委員会、そこで決まっていくというふうに承知をしていますので、今委員がおっしゃられた話からすれば、具体的にどういう例があると知っているわけではありませんが、論理的な可能性としては、日系人も入るところもあるでしょうし、いろいろな範囲で入学資格については決めているのではないかと思います。

○中村(哲)分科員

 日本政府にとって、日本人の日本語教育をすること、日本語教育をきちんと日系人や日本人にすることというのは非常に意味のあることだと思うんですね。もちろん、海外にいるわけですから、日本の学校での教育がそのままできるわけではないですけれども、大臣がおっしゃったように、日ごろはインターナショナルスクールに行っていたり現地の学校に行っていたり、しかし、それでは足りない国語とか算数とか、そういったものに関してはきちんと補習をしていこう、そういうことで、日本人の子弟に関し、きちんと、日本語また日本の文化を実感できるような教育をしていくという機能が非常に重要だというふうに思います。

 そういったことで、今おっしゃいましたように、補習校においては運営委員会というものがあって、そこできちんと精査をして、制度上は長期滞在者に限らないわけですから、移民など、その地域に根を張っている人たちにも道を開いていく、そういったことで理解させていただきたいと思います。

 だから、そういったことを、現地にあるいわゆる日系人協会などの現地の邦人相互扶助団体にきちんと周知徹底がされているのかどうかということが、普通、大使館の役割として大きな役割があると思うんですね。その周知徹底に対して、きちんとされていらっしゃるのでしょうか。

○川口国務大臣

 世界で幾つ補習学校があるか私は知りませんけれども、それぞれの学校でどのような入学資格を付与し、それからそれをどのように知らせていくか、一義的には、これをやっていくのはまさに運営委員会の仕事であるということです。

 もちろん、おっしゃいますように、大使館としましても、これは日系人も含めて、その方々が生活上の必要な情報を持っているということは大事なことでございますので、それについては今までもお手伝いをしておりますし、今後ともそれについては極力やっていく所存でございます。

○中村(哲)分科員

 事前の事務方のお話によると、補習校の管轄は外務省だというふうにお聞きしていたんですけれども、直接、日本人学校の方は文部科学省なんだけれども、補習校の方は私はそういうふうに聞いたというふうに思って……(川口国務大臣「共管です」と呼ぶ)共管ですか。共管であるということもありますので、外務省は一定の役割を果たせるということでございます。

 そうすると、補習校の中に二つクラスをつくることも可能だというふうに聞いておりまして、一つは長期滞在者用の、日本に帰る人向けのクラス、もう一つは現地で勉強されている、現地でお住まいになっているという方が対象のクラス、こういった二つのクラスをつくることが制度上可能だということをお聞きしておりますけれども、副大臣でも結構ですからお答えください。

○逢沢副大臣

 日本人補習校の実態について、より詳細な情報を求めるという趣旨であろうかと思いますが、今大臣からお話がございましたように、基本的に在留邦人の方々によって補習校は運営をされ、また入学資格等々も、それぞれの学校にございます運営委員会によって基本的には決められているということでございます。

 まさに委員御指摘のように、いよいよ海外に滞在をした方が日本に帰る、日本に帰れば日本の学校にまた帰国子女として戻らなくてはならない、特に力を入れて国語、算数の水準をできるだけ日本のそれに合わせていこうという趣旨、意図、目的で設立をされたという経緯もございます。そういったものに対応する中身、そして、引き続きその国にとどまる、海外にとどまってというお子さんに対する対応、大きく大別すればその二つになろうかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、在外公館として、補習校の現状、また、そういうものが存在し、サービスを提供しているということについては、当地の日本人の方に周知徹底をする、そういう必要性は大いにあろうかというふうに存じます。

○中村(哲)分科員

 時間が思いのほか過ぎてしまっておりますので、二番目の質問は後に回しまして、メーンのテーマで、お聞きをしたかった三番目の質問について質問させていただきます。

 移民に対する貸し付けについてでございます。外務省の資料としては、「移住融資事業について」ということでございますが、経緯のところを読ませていただきますと、移住融資事業、「移住融資事業は、昭和三十一年にJICAの前々身の一つである日本海外移住振興株式会社により開始され、以来四十数年にわたり移住者の定着・安定のために重要な役割を果たしてきた。」以下は省略をさせていただきますが、このJICAが行う移住融資事業というものは、どういった政策目的でなされているのでしょうか。

○川口国務大臣

 JICAの移住融資の目的でございますが、これは、移住者の方々の移住先国における定着、そして安定に必要な生活基盤の確立を支援していくというものでございます。

 そして、これは個人もしくは団体で農業、工業、漁業等の分野で事業を行う方々に対しまして、おのおの事業に必要な資金の貸し付けを行うといったものでございます。

○中村(哲)分科員

 現地の方々にお話を伺っていると、ドル建てで貸し付けることに対する非常に大変な負担感を感じていらっしゃるんですね。最初は一ドル一ペソから始まるんですけれども、それが一ドル三ペソになり、一ドル六ペソになり、一ドル十三ペソになり、最近では、もうこの年末からの動きが激しかったんですけれども、一ドル今五十二ペソまで上がってしまっています。そういった中で、ペソを借りているんですけれども、ドル建てで借りているものですから返済が追いつかないという、そういった非常に悲鳴に似た声を伺いました。

 そこで、伺った話の中でまず出てきたのが、ドミニカ共和国の憲法や憲法の下位規範、日本でいうと民法とか金融関係法とかいうことになるんでしょうけれども、そういったドミニカの法規範の中ではドル建ての取引は認められていないんじゃないか、そういった声があったわけです。恐らくまだ確認中かもしれませんけれども、外務省としては、この件についてどのように把握をされているでしょうか。

○川口国務大臣

 これについて現地にも確認をいたしましたけれども、ドミニカ共和国においてドル建て融資を明示的に禁止しているという法令は存在するとは承知をしていないということでございます。

 それから、今までもJICAの移住融資をやってきたわけですけれども、ドミニカ共和国の関係当局からこれについて何らかの指摘があったということはないということでございます。

○中村(哲)分科員

 この法律的な観点に関しては、今からまたさらに弁護士を通じたり、話は進むと思いますので、その推移を出していただきたいと思うんですが、そもそも、その政策目的とこのドル建てというのが合致するものなのかな、そぐうものなのかなというそもそもの疑問が私にはあります。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、この為替リスク、対ドルレートが大きく変動するドミニカ・ペソの状況を見ても、為替リスクを移民の側に負わせるのは非常に酷なんじゃないか、移住者の側に負わせるのは酷なんじゃないかということを思うのですけれども、この為替リスクを移住者に負わせる理由はどういうものがあるんでしょうか。

○川口国務大臣

 外国に、要するに為替変動がある関係のところに貸し付けをした場合に、だれがこの為替リスクを負うのかというのは、この問題も含め、あるいは円借款のようなことも含め、あるいは企業の貸し付けも含め、すべてこれはいつも変わらぬ問題であるということだと思います。

 それで、特にドミニカ共和国あるいは移住者の方々がインフレが高進をする中で、名目的に返済をしなければいけない現地通貨がふえていくということについて非常に問題意識を持っていらっしゃるということは、これはよく理解をいたします。

 それで、何でドル建てなのかという御質問でありますけれども、これは経緯的に、そもそももともとの原資がドルであったということから来ているということが一つあるようでございますけれども、基本的にはこれの為替負担、現在は国の要するに税金でやっているわけでございまして、その税金が円であるということでありますので、もしペソで貸し付ければ、国がその為替差損を負担する、すなわち、日本の国民がこれを負担するということになるということです。

 経緯的にドル建てになっているのは、経緯があって、これは日本海外移住振興株式会社というのが、その後JICAに吸収合併になった団体としてありますけれども、そこがそもそも移住融資を開始した時点では、アメリカの三つの銀行から移民借款をしてそれを原資としたということで、その原資の保全を考慮してドル建てで行われたという経緯がそもそものそのスタートであるということです。

○中村(哲)分科員

 外務省からいただいている資料では、「貸付金の原資は国からの出資金であるが、昭和六十三年度からは国からの出資を受けずに回収金を財源として貸付を実行している。」とあります。今の大臣の御答弁とは少し違うのかもしれないなということを感じておるんですが、それよりも少し違った見方を主張させていただきたいと思います。

 ドル建てで貸せる経済主体というのは、そのリスクを背負えるような経済主体でなければならないと思います。政策目的があくまでも移住者の定着、安定であるのであれば、移住者がその経済活動においてドル建てで貸し付けをさせられても十分それで返していけるような状況であるということが必要なんだと思います。あくまでも貸付事業の政策目的が移住者の定着、安定にあるのであれば、それは私は当たり前のことだと思うんです。

 なぜその制度の当初においてドル建てで貸し付けをさせられたかということを考えると、これは固定相場の時代だったわけですね。固定相場の時代だから、あえて、ドル建てで貸そうがペソ建てで貸そうが、制度が始まったときには余り問題にならなかった。しかし、その後ニクソン・ショックもあり、ドルが不換紙幣になって、そして大きく為替が変動する時代に入ってきた、そういったときに、さて、大きく為替が変動しない、そういった状況においては、大臣がおっしゃったことをそのまま政策目的と照らして検証することは必要なかったんだと私は思います。

 しかし、このように大きく為替が変動する時代において見ると、その為替リスクをどこに負わせるのか、どれぐらい負わせるのかということは、これは政策目的に照らしてまた検証をし始めないといけない、そういった段階に私は今入っているんだと思います。

 ここは今御答弁、なかなかいただけないかもしれませんけれども、検討をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○川口国務大臣

 本来のその政策目的を貫徹するならば、ペソ建てであるべきではないかという御意見、これもあり得る御意見だと思います。

 先ほど円借款の例を出しましたけれども、円借款も、言ってみたら途上国に対して支援をするわけでございまして、支援の対象として、国と個人はもちろん違いまして、すぐには比べられませんけれども、円建てで貸している、為替負担は途上国が負っているということがあるわけでございます。全体として、国の税金を使って、さっきの回収金を使ってというのは、もともとは国の税金であるわけですから、国民の税金を使ってだれが為替リスクを負担するのかという非常に大きな、一般的な問題になるというふうに思います。

 それで、そういった為替リスクの負担のほかに、この問題についてはいろいろな問題があるわけでして、それは、例えばほかの国でも同じような融資があるわけですけれども、そういったほかの国、あるいは同じドミニカ共和国の中で、返済をしている人たちがいるわけでございまして、その人たちの公平性の問題をどのように考えるかという問題があります。

 それからもう一つ、現地通貨でということにした場合に、為替リスクを国が負担しているわけですから、待てば待つほど返す金額は少なくなっている。インフレが高進をしている国ではそういうことになるわけでして、まさに今起こっていることの逆のことが起こると考えていただければいいわけですけれども、ペソは同じである。それで、ペソ建ては同じである。他方で、物価が上がって、インフレが上がっていきますから、相対的に小さくなるわけですね、所得もインフレにつながって上がっていきますから。という意味で、待てば待つほど、延ばせば延ばすほど得になるというようなこともあって、これは総称してモラルハザードといいますけれども、そういった問題も存在をします。

 そういういろいろな問題を考えてこの問題は検討をしなければいけない話でございますけれども、我々としては今までずっとそういうドル建てでやってきて、そして返済をしている人たちも大勢いる。全体として九百四十二件、件数がある中で、七百七十四件は返済をされているわけです。という状況がありますので、そういったことも考えなければいけない。

 ですから、今そういう状況で、今後いろいろ状況も変化する可能性がありますので、今後、そういった状況の変化を注視しながら、適切に対応していきたいというふうに考えています。

○中村(哲)分科員

 私が今の質問で申し上げたのは、政策目的と合致するのかというお話なんですね。先ほどおっしゃったように、円借款の場合に、途上国に対する貸し付けですから、これはまさに大臣がおっしゃったように、国と個人は違うんですよね。国はある程度為替リスクを負える体力もありますから、そして政策目的も、そういった国同士の貸し付けということで整理をされるわけです。しかし、このドミニカの移住者の人たちに対しては、移住者の定着、安定というのが政策目的でありますから、それに合うような形で貸し付けをしなくてはいけないというふうに私は申しておるわけでございます。

 だから、確かに、返済をしている人もいらっしゃる、その公平性を考えれば問題はないじゃないか、ドル建てで問題はないんじゃないかとおっしゃるんですけれども、逆に、ペソ建てにしても、返す、返さないということとは次元の違う話だとも言えるわけですよね。だから、そこは、返す、返さないと、ペソ建て、ドル建てというのは、必ずしも関係しないと言えると思います。

 それから、より深い問題としては、先ほどモラルハザードのお話がありましたけれども、返済がもうできない、返す意思はあるんだけれども、膨大な金額になり過ぎて、到底返すことができない。私は、この返したいんだけれども返す意欲を失ってしまっている人たち、そういった人たちに、ある程度返せるような、そういったスキームをきちんと組んであげることも必要だと思うんですね。

 少し具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 ここは、JICAに当初聞いたときに、そんなことはしていないというふうにおっしゃったんですけれども、借りかえの実態があるんじゃないかということについて、今調査をしていただいております。まだ、きょう現時点で余り目立った答えは出ていないんですけれども、先週末に初めてこういった表が出てきました。「既往債権元本完済日と新規貸付実行日が同日の債権一覧表」、これで、四十件の今既往の債権の表をいただきました。これは、旧債権の元本が完済された日と、新しく貸し付け、同一の人に貸し付けた新しい債権の貸付日が同じものが四十件あったということなんですね。

 これに関しては、外務省の側からすれば、新しい貸し付けであり借りかえではありませんというふうにおっしゃるんですけれども、移住者の皆さんからお話を聞くと、実態的には新しい契約を結ばされて、そして返済をさせられているというか、することになってしまっている、そういったお話があるわけでございます。

 だから、そういったことも考えると、どうにかして、目先は返している、また、借りかえをしている、債務がなくなっているという状況ではなく、きちんと移住者の人たちが返せるような状況をつくるということが私は重要なんだというふうに感じております。

 そこで、大臣にお尋ねをさせていただきたいと思うのですけれども、今、大臣がおっしゃったこと、私も理解できるんです。ペソ建てで借りて、物価が上昇する。その中で、相対的にペソ建てで、低い金利で借りていれば、本当に払わなくていいわけで、実質的にはすごく目減りされてしまうんですから、そういった御主張も理解はできるんです。

 しかしながら、ここで考えなくてはいけないのは、途上国において為替が大きく変動するというのは、物価だけではないわけですね。ドミニカの場合、現地に行ってきてお聞きしてきたら、金融危機があったと。その中で、大きく為替が下がってしまった、通貨が下がってしまっているということもある。また、急激に物価がそれに伴っても上がるわけなんですけれども、物価が上がっても自分たちが売るものの、生産物の価格がそれに伴って上がっているのか、また、給料がそういったペースで物価の上昇とともに上がっているのかということを考えると、物価の上昇までに、支払いの能力がそれに伴って上がっていないという現状もあるわけです。

 だから、川口外務大臣がおっしゃることも一理あるんですけれども、それは、借りている人の層の給料の上昇がどれぐらいあったのか、また、貸し付けられている農家の皆さんが生産するそういった農作物、それの価格がどれぐらい上がっているのか、そういったことを基準にしていただいて既存債権の整理をしていただくということが、政策目的からして必要なことではないかと私は考えるわけですが、いかがでしょうか。

○川口国務大臣

 まず、委員がおっしゃっていらっしゃる問題意識、ドミニカに移住した人がインフレの中で返すことが非常に難しくなってきていて気の毒である、何とかしなければいけない、この気持ち、これは私もよくわかります。

 それは、そういうことを申し上げた上で、幾つかのことを申し上げているわけですけれども、まず、冒頭の、ペソ建てでないことが政策目的に反するという御主張。これについては、ずうっとドル建てでやってきて、ですから対応が必要だという問題意識はわかるんですよ。わかるんですけれども、そもそも、一番最初の御質問の、政策目的に反するではないか。これは、ずうっと七一年の変動相場以降もドル建てでやってきた、国が為替リスクを持たないということで、これは一応整理ができている話であろうと思います。

 その上で、それならば今困っている人たちにどういう措置をとるのかということが次の問題であって、それについては、先ほど申しましたように、問題意識としてはよくわかりますけれども、例えばモラルハザードの問題ですとか、それから公平性の問題ですとか、いろいろそういった問題がありますねということを先ほど申し上げたわけですね。

 それで、その上で申し上げたことが、これについては、今後いろいろな動きというのが経済についてもあり得るわけでございまして、国としてはこれについて注視をしていきたいというふうに思っているということを申し上げたわけです。

 それから、さらにもう一つつけ加えさせていただきますと、これはJICAの融資であるということでございまして、JICAが今独立行政法人ということになっております。したがいまして、国が今までのように、特殊法人であったときのように、JICAに対して一般的に指導監督をするということが制度上できなくなってきているということでありまして、個別の業務、これをどのように改善していくかということについては、これは直接にJICAとお話をしていただくということであると思いますけれども、外務大臣、私としても、外務省としても、この問題については関心を持って注視をしていきたいと考えているということだけ申し上げたいというふうに思います。

○中村(哲)分科員

 今のお話を伺って、どれだけの方が政策目的と為替リスクの負担についての関係ということを外務省がどのように考えているか理解できたかということに対しては、非常に私は疑問だと思います。

 ここに関しては、これからも引き続き検討していただきたいと思うんですね。時間が参りましたから、これ以上の質問がもうできませんし、二つ目の、国籍取得の問題についての問題も残ってしまいましたけれども、それだけ私はこの問題について外務省が果たすべき役割は大きいと思います。そこに取り組みをしていただきますようお願い申し上げます。

 一言だけ答弁いただけますでしょうか。

○川口国務大臣

 委員がおっしゃっていらっしゃる、今、移住者の中に困っていらっしゃる方がいらっしゃるということについては、その問題意識は私もよく理解をいたします。

 その上で、今後のその動向について注視をして、必要に応じ適切に対応していきたいというふうに考えております。

○中村(哲)分科員

 まだまだ聞きたいことはありますけれども、持ち時間が終わりましたので終了させていただきます。ありがとうございました。





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