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2003年6月13日 
第156回国会 衆議院 法務委員会   
案件:担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(55分) 「担保執行法案について」   

この日も前回に引き続き「担保執行法案」と、「不動産登記法17条」に基づく「地図」の整備について質問をしました。

「不動産登記法17条」に基づく「地図」について、前回の法務委員会では予算面でのてこ入れが重要であることを訴えましたが、それとともに、土地の境界を確定する手続について、しっかり法定化する必要があるのではないかということを主張しました。

土地の(公法上の)境界画定は、基本的には当事者間の話し合いで決められていますが、そこで決着がつかなければ裁判で決めるしかありません。しかしその裁判も手続が整備されておらず、時間も相当かかります。法務省からの回答としては、(境界画定作業の迅速化のため)行政処分で境界を確定できるようにするとともに、不服があれば、行政訴訟で対応するような新たな仕組みを整備する予定であり、できれば再来年度あたりに考えているという回答がありました。

担保執行法については、短期賃貸借人制度の見直しについて質問を行いました。従来の制度では、短期賃貸借人は、たとえ抵当権設定後に契約をした場合であっても、抵当権を行使されたとき立ち退く必要はないこととなっていました。しかしこの制度を利用し、暴力団等が居座ったうえで立退き料をせしめる等制度の悪用が目立ったため、この制度を見直そうということになったものです。政府は、当初3ヶ月の猶予期間を経て立ち退くべきとしていましたが、それでは余りにも短いということで民主党が交渉し6ヶ月に修正させたうえで、法案は可決されました。

不動産等の登記を行う際に支払う登録免許税は毎年8000億円程度とのことです。他方で法務局自身が「17条地図」を整備する費用が9100万円しかないというのは余りにも差がありすぎます。それを指摘したうえで、法務大臣に対し、是非とも地図の整備も含め、この分野の業務をしっかり進めて欲しいとお願いしたところ、大臣からは、可能な限り頑張るという力強い言葉をいただきました。

[2] 質疑項目

1.短期賃貸借制度廃止に伴う明渡猶予期間を3箇月とした趣旨

2.修正案
  1)明渡猶予期間を6箇月に伸長した理由
  2)占有者の対価の履行がない場合に猶予期間を認めない規定を設けた理由
  3)本修正により賃借人の保護が後退する可能性の有無
  4)引渡命令の申立可能な期間を9箇月に伸長した理由

3.抵当権消滅請求
  1)現行の滌除制度の濫用の実体
  2)抵当権消滅請求における第三者取得者への配慮の内容

4.一括競売
  1)土地建物の一括競売の範囲を拡大した趣旨
  2)競売代金の土地及び建物所有者への分配方法
  3)未登記建物に対する一括競売利用の可否

5.根抵当権
  1)根抵当権に元本確定請求権を付与した趣旨
  2)現行法に本法律案と同様の規定を設けなかった理由

6.不動産登記法第17条に規定されている地図
  1)筆界未定時に境界を確定するための方策
  2)境界確定訴訟で確定された筆界の登記所備付地図への反映
  3)民事局における地図行政への取り組み状況
  4)平成11年の民事法務協会研究会報告書の概要
  5)研究会報告書を立法化しない理由及び今後の予定
  6)裁判外境界紛争制度を創設した場合の他省庁への影響
  7)公法上の筆界と所有権界を一致させる必要性

7.登記事務のコンピューター化とインターネット公開
  1)登記情報以外に地図情報を公開する必要性
  2)登記情報サービス及び登記手数料の料金低廉化の必要性
  3)登記特別会計の収支状況
  4)登記簿及び地図のコンピューター化の整備予定
  5)地図整備のための予算を課保する必要性

[3] 会議録抜粋

○中村(哲)委員

 おはようございます。民主党・無所属クラブの中村哲治です。

 前回、六月六日の質疑に引き続きまして、残した質問をまず伺います。

 まず、短期賃貸借について伺います。

 政府案では、抵当権の設定後の短期賃貸借の賃借人には競落後三カ月間の猶予期間を設けております。この三カ月の趣旨は何でしょうか。改めて確認させていただきます。

○房村政府参考人

 今回、短期賃貸借制度を廃止するということにいたしましたが、その場合に、競落後、明け渡しを求められる賃借人にとりまして従来の生活の本拠あるいは営業の本拠を移さなければならないわけでありますので、転居先を探して引っ越しをする、こういう一定期間の余裕をやはり与えるべきであろう、そういうことから、そのために三カ月程度あればいいのではないか。

 また逆に、競落人の立場からいたしますと、競落物件を猶予期間中はみずから使用することができないわけでございますので、余りに長期間の猶予期間があると、競落そのものを希望しないあるいは競売価格が下がってしまう、こういうおそれもありますので、その調和を考えて三カ月としたわけでございます。

○中村(哲)委員

 御答弁を伺いますと、調和を図るということで三カ月にしたということですが、三カ月という期間の実質的な理由は論理的には導き出されていないということであるというふうに受けとめさせていただくことはできるんではないかと思います。そこで、修正案が議論になるんだというふうに理解をさせていただくところでございます。

 提出者にお聞きいたします。修正案では、明け渡し猶予期間を三カ月から六カ月に修正しております。その理由はなぜでしょうか。

○山花委員

 今、政府の原案の趣旨について、引っ越しのための期間も必要だということのようでありますが、過日、参考人の質疑の中でも、お年寄りであるとかあるいはシングルペアレントのようなケースでは次の家を見つけるのが大変だという話もございました。

 また、定期借地借家のようなケースでは六カ月前に通知ということになっておりますので、それともそろえるということもございます。また、明け渡し猶予の期間中は建物を買い受けた人はその建物をみずから使用することができないということになりますけれども、六カ月という程度であれば、競売物件を買い受けようとする側の意欲減退により円滑な売却が阻害されるというような問題も生ずることはないであろうというふうに考えまして、明け渡し猶予の期間を買い受け人の買い受けのときから六月とするものでございます。

○中村(哲)委員

 次に、お聞きいたします。

 修正案で民法三百九十五条二項を新設することとなっておりますけれども、それはなぜでしょうか。

○山花委員

 明け渡し猶予期間中の建物使用者というのは、建物について賃借権その他占有権原を有するということになるわけではありません。その猶予期間の満了まで明け渡しをしないことが許されるというところにとどまるわけであります。

 そして占有者は、明け渡し猶予によって無償で建物を使用することができることになるかというと、そういうわけでもなくて、建物所有者である買い受け人に対して、建物の使用の対価として賃料に相当する額の不当利得の返還義務ということを負うことになります。

 建物使用者が明け渡し猶予期間中の使用の対価を買い受け人から請求されても支払わないような場合に、六カ月の期間が満了するまで建物の使用を許すということになりますと、建物所有者の権利を不当に害するということになるのであろう。

 そこで、修正案の方では、民法三百九十五条に第二項を加えまして、買い受け人が建物使用者に対して相当の期間を定め、一カ月分以上の使用の対価の支払いを催告したにもかかわらずその期間内に建物使用者がその支払いをしない、こういった場合には、その期間の経過後は、建物買い受け人は、建物使用者に対して建物の引き渡しを求めることができるとしたものであります。

○中村(哲)委員

 簡単に確認させていただきますと、三カ月から六カ月に延ばした、それに対する弊害といいますか、それを軽減するために二項を新設したというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○山花委員

 この二項については、三カ月を六カ月に延ばしたからといって、繰り返しになってしまいますけれども、占有権原があって、新たな賃貸借契約が買い受け人との間に承継されるわけではありませんから、そうすると、ただ占有していて賃料相当分も払わないようなケースが出てくると、これはやはり調整が必要なんであろうということで新設をしたということでございます。

○中村(哲)委員

 次に、民事執行法八十三条二項を修正して、買い受けのときに民法三百九十五条一項に規定する建物使用者が占有していた建物の買い受け人については引き渡し命令の申し立てをすることができる期間を九カ月に伸長するのはなぜでしょうか。

○山花委員

 民事執行法の八十三条第二項は、競売不動産の買い受け人は、代金を納付した日から六カ月の間、引き渡し命令の申し立てをすることができるとしております。

 修正案では民法三百九十五条第一項の建物明け渡し猶予期間を六カ月に延ばしておりますから、あわせて引き渡し命令の申し立てをすることができる期間というものも長くいたしませんと、民法三百九十五条第一項の明け渡し猶予の規定が適用される場合には、買い受け人は、明け渡し猶予期間が満了した後も建物明け渡しをしない占有者に対して、引き渡し命令の手続によって簡易に明け渡しの実現ということを求めることができなくなってしまいまして、建物明け渡し請求訴訟を提起しなければならないということになってしまいます。

 そこで、修正案の方では、建物明け渡し猶予期間を原案より三カ月長い六カ月に修正するとともに、買い受けのときに、民法三百九十五条第一項に規定する建物使用者が占有している建物の買い受け人が引き渡し命令の申し立てができる期間も三カ月延ばしまして、代金納付の日から九カ月としたものでございます。

○中村(哲)委員

 先ほどの確認になるかもしれませんけれども、修正案によると、建物の使用の対価を一月分以上支払わないと建物の明け渡しをしなければならないことになります。それは、原案よりも賃借人保護が後退するのではないかという考え方もあるかとは思うんですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。

○山花委員

 確かに、条文をぱっと見ますと、そのような印象を持たれてしまうのかなという気もいたします。

 ただ、この買い受け人が建物使用者に対して明け渡しを求めるためには、一月分以上の不払いがあった後に、相当の期間を定めて催告するということが必要となっております。その催告期間が経過した後、建物使用者に対する引き渡し命令の申し立てをすることになります。そして、引き渡し命令の審理では、審尋において、使用の対価の支払いの有無であるとか、買い受け人が建物使用者に対して建物使用の対価として請求した額が相当であるか否かということが争点となると考えられます。これらの手続を経た上で引き渡し命令が発令されますから、その執行に至るまでは一定の期間を要するということになります。

 原案におきましても、建物使用者が明け渡し猶予期間中の建物使用の対価につき不当利得として支払う必要があることは当然の前提とされていたわけです。

 ただ、その猶予期間が三カ月というもともと原案の方は短い期間ですので、不払いがあったとしても、今申しました明け渡しの手続をとっているうちにその猶予期間が経過してしまうことが多いだろうということから、不払いがあった場合の取り扱いにつき、恐らくそういった理由で特段の規定が設けられていなかったのではないかと推察をされます。

 したがって、今の説明からもおわかりいただけるかと思いますけれども、修正案の方は原案より賃借人にとって不利な内容となるというような変更ではないということは御理解いただきたいと思います。

○中村(哲)委員

 ありがとうございました。

 それでは次に、抵当権消滅請求について引き続き質問をさせていただきます。

 民法三百七十八条の滌除を抵当権消滅請求という形態に見直す理由や請求者を所有権者に限った理由については、前回、六日の質疑で伺いました。そこで伺ったことなんではありますけれども、確認をさせていただきたいと思います。

 民事局長に伺います。

 濫用の事例としてどういうものが実際にあるんでしょうか。前回伺ったことの確認とはなるんですけれども、その点について答えていただきたいと思います。

○房村政府参考人

 滌除権の行使は、第三取得者が抵当権者に対して行う意思表示ということもありまして、そういう私人間の行為でありますので、濫用事例の詳細を把握しているわけではありません。

 ただ、金融関係者とか抵当権を行使することの多い方々から話を聞きますと、現在の滌除制度は、滌除の申し立てを受けますと、増価競売の申し立てをして保証金を納めなければならない、競落人が出ない場合にはみずからその競落をしなければならない、こういう負担が非常に重い。

 こういうことから、第三取得者の方が市場価格よりも相当程度低い額で滌除の申し立てをしてくる。その場合に、その額が余りに低い場合には増価競売の申し立てをするしかないわけですが、多少低いということですと、低いとは思いつつも、負担が重いということから滌除の申し出を受けざるを得ない。そういうことで、相当低い額で妥協せざるを得ないという弊害が生じているというぐあいには聞いております。

○中村(哲)委員

 ヒアリングをしているのがどうも銀行からのヒアリングが中心となっていて、一般の滌除を今まで利用したことのある人というようなところからの意見がどうも聞けていないような、そんな気もするんです、答弁を伺っておりますと。

 ということであるならば、やはり法務省としても民事局としても、従来の滌除権者と言われている人たちにも配慮する必要があると思うんですけれども、この抵当権消滅請求の手続では、第三取得者にはどのような配慮がされているんでしょうか。不利益を制度の見直しによってこうむることはないのでしょうか。

○房村政府参考人

 実は、今申し上げたような滌除が濫用されているということから、今回の検討に際しましては、滌除制度をそもそも廃止すべきである、こういう意見も相当強く主張されたわけでございます。

 ただ、抵当権つきの物件を取得した人間に、その抵当権の負担を消滅する道を開く、ひいてはそれが物件の流通を促進する、こういう観点も重要であるということから、抵当権を消滅する制度は基本的に残すということにいたしまして、ただ、従来の制度が余りにも抵当権者にとって負担が重い、その抵当権者の負担の重い部分を見直すことによって合理的な制度にしようということにしたのが今回の提案でございます。

 これによりまして、第三取得者としては、基本的に自分の申し出た額でその抵当権の負担を消滅する道は依然として開かれておりますので、そういう意味では、第三取得者にとっては、今回の改正によって特段の不利益は生じていないというふうに考えております。

○中村(哲)委員

 第三取得者は自分の希望した額を入札すればいいという話になりますので、確かにその点は、抵当権者に不当なほど有利な制度にはなっていないのではないかという主張も一理あるのではないかということで、受けとめさせていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 民法三百八十九条で、一括競売制度の導入が政府案にありますが、この趣旨はどのような趣旨でしょうか。

○房村政府参考人

 現行法の三百八十九条で一括競売を認めておりますが、これは、土地に抵当権が設定された後に、その土地上に建物が築造される、それでその土地しか抵当権の効力として競売できないということになりますと、土地を競落した人間は建物の所有権は取得しておりませんので、その建物が占有権原がないものであるとしても、訴訟を起こして収去を求めなければならない、こういう負担をこうむります。そうなりますと、当然その負担を恐れて競売に参加しない、あるいは競売価格が非常に下がる、こういうことになりますので、建物も一緒に競売してしまえばその建物所有権も取得しますので、建物をそのまま利用することも可能ですし、自分の費用で取り壊す場合であっても訴訟等の負担はこうむらない、こういうことになります。

 そういうことから土地建物を一括して競売ができるということにしているわけですが、現行法では、抵当権設定の後その設定者が抵当地に建物を築造した場合に限っております。ただ、抵当権設定者以外が建物を建てた場合であっても、その建物についての占有権原を持っていない、不法占有である、こういうような場合には、競落されればその土地の所有者からいずれ取り壊しの請求を受ける、そういうことでございますので、こういう場合も一括競売をできるようにすれば、競落をする人にとっても便利ですし、ある意味では、建物の所有者にとっても、みずから取り壊しをしないで、逆にその競売代金の配当を受けることも可能になる、こういうことから、今回範囲を広げまして、一括競売ができる場合を広げた、こういうことでございます。

○中村(哲)委員

 そうすると、建物所有者に対する配当はどのようになるのか。金額的にはどのような金額になるというふうに考えられるのか。手続的な規定もありましたら、そのこともあわせてお教えいただきたいと思います。

○房村政府参考人

 これは、一括競売をいたしましても、抵当権者が優先弁済を受けられるのは土地の代金部分に限りますので、建物の代金部分は建物所有者の方に参ります。

 その代金をどういうぐあいにして案分するかということでございますが、これは、裁判所が土地の評価額と建物の評価額をそれぞれ出しまして、その比例に従いまして競落代金を案分する。

 その場合の評価の仕方といたしましては、建物については、もともと土地の使用権がついておりませんので、建物としての額、ですから、例えば、現在その建物を建てるとすれば幾らかかる、その使用年数に応じて償却したような額というような算定方法が一つ考えられると思いますが、そのような適切な方法によりまして、建物そのものの額として評価をいたします。土地については、そういう負担のない更地の評価を基本としてそれぞれの評価額を出して、それで案文をして、建物部分のものを建物所有者に配当する、こういう形になります。

○中村(哲)委員

 確認なんですけれども、土地については、市場価格を中心として、近隣のところとの比較をしながら裁判所が額を積算する。そして、建物に関しては、この建物を建てたときの建築費を幾らかと算定して、そして経年劣化していますから、その分を考慮する、それが建物の現在価格になる。そして、先ほど算出した土地の価格そして建物の価格、この比率が出る、何対何というその比率が出る。そして、競落した額をこの先ほど算出した比率で分配して配当に回す。こういうことでよろしいですね。

○房村政府参考人

 土地建物の評価の仕方は、また専門的にいろいろあろうかと思いますが、基本的にはおっしゃるとおりでございます。

○中村(哲)委員

 それでは、次に疑問になるのが、建物が登記されていない場合、この場合でも一括競売をすることができるんでしょうか。

○房村政府参考人

 これは建物が登記されておりませんでも、一括競売は可能になります。

 参考までにその場合の手続を申し上げますと、申し立て債権者の方で、執行裁判所に建物の図面それから各階の平面図、これを提出していただきます。裁判所書記官が差し押さえの登記を嘱託するときに、これらの書面を登記所にあわせて送ります。そうしますと、登記官がその未登記の建物について、そういう資料に基づいて表示の登記をした上で差し押さえの登記をする、そして競売をする、こういう形になります。(中村(哲)委員「図面がないときは」と呼ぶ)それは出していただかないと、登記ができないものですから。よろしいでしょうか。

 建物を評価するということで、当然、現況調査等も行いますので、それは図面は作成可能ではないかとは思っております。

○中村(哲)委員

 図面は税務署から取り寄せたりすることができるという話も聞いておるんですけれども、その点は、確認なんですけれども、いかがでしょうか。

○房村政府参考人

 済みません、そういう実務的なところは私も余り詳しくないんですが、実態としては、債権者の方がいろいろな手を尽くして図面を出していただいて、表示の登記をしているという実情のように聞いておりますが。

○中村(哲)委員

 ここの点はきのう質問通告でも確認していたので、ぜひ答弁を用意していただきたかったんですけれども、できないということですから、次の質問に移ります。

 根抵当権について伺います。

 民法三百九十八条ノ十九で根抵当権について規定を追加しておりますけれども、この趣旨はどのような趣旨でしょうか。

○房村政府参考人

 根抵当権はその対象となる被担保債権が浮動するわけですが、これを実行するためにはその被担保債権を確定する必要があります。

 確定事由がこの三百九十八条ノ二十に種々規定されておりますが、その第一号には、「担保スベキ債権ノ範囲ノ変更、取引ノ終了其他ノ事由ニ因リ担保スベキ元本ノ生ゼザルコトト為リタルトキ」と、これが確定事由として挙げられております。

 一見しますと、極めて当たり前の、もうこれ以上債権が生じないんだから確定するということのようなんですが、取引が終了したかどうかというのはなかなかわかりにくい。そういうことで、従来から、この元本確定事由については外形的、客観的に明確に判断できない、こういう非難がございました。そういうことから、無用の紛争を避けて明確にするために、根抵当権者による通知によって、意思表示によって元本を確定するということを認める、これであれば非常に明確でございますので、そういうことによって確定事由としたいと。

 また、この確定事由は、基本的に根抵当権者の方で、もうこれ以後の債権は担保してもらわなくても結構です、こういう意思表示ですから、基本的には設定者に不利益を与えるものではない。そういうことから一方的な意思表示で確定をさせても問題は生じないであろう、こういうことから、新しく確定事由として、また、そういう事由で通知の事実がはっきりすれば登記もその事実に基づいてできるということから、双方申請ではなくて単独申請で可能にする、こういう改正をするものでございます。

○中村(哲)委員

 それでは、なぜ今までこの規定が設けられていなかったのでしょうか。

○房村政府参考人

 基本的には、根抵当権者にとっては、今後生ずる債権が抵当権で担保されるというのは利益な状態である、それを確定させる必要が多いのは設定者の方であろう、こういうようなことから、設定者の側からの意思表示による確定は従来から定められていたわけですが、根抵当権者についてはそういうものが用意されていなかったわけであります。

 ただ、最近のように、根抵当権で担保されておりました債権を抵当権つきで債権譲渡をしたい、こういうような場合には、確定をしないと債権譲渡ができません。この場合には、根抵当権者にとってもそうする必要性がありますので、それで、そうしたからといって、先ほど申し上げたように設定者に特に不利益を与えるものではない、こういうことから、抵当権者側からの意思表示による確定請求を今回認めるということとしたものでございます。

○中村(哲)委員

 以上で、前回積み残した質問はすべて聞かせていただきました。では次の質問に移ります。

 前回六月六日の質疑において、不動産登記法十七条の、いわゆる十七条地図についての質問をしました。質疑の後、前回お聞きした予算面の問題だけではなく、境界を確定する手続の不備が実は十七条地図の整備が進まない原因のもう一つの大きな理由になっているのではないかと思うようになりました。

 そこで、民事局長に伺います。

 現在、土地の境界を確定する手続としてはどのようなものがあるのでしょうか。

○房村政府参考人

 現行法上、土地の境界が争われているという場合には、境界確定訴訟という訴訟類型が解釈上認められております。その場合には、その隣接する者が隣の人を相手取りまして、境界の確定を裁判所に求める。裁判所で審理、判断をして、その境界を確定する、こういう訴訟がございます。

○中村(哲)委員

 つまり、境界確定訴訟しかないということなんですよね。そして、その境界確定訴訟で土地の境界が確定した場合、十七条地図の整備につながるんでしょうか。

○房村政府参考人

 法律的な制度としては、御指摘のように境界確定訴訟しかありません。

 これが確定した場合ですが、これは、その結果を当事者の方で登記所に申し出て、地図の訂正等を求めていただければ、登記所の方でもその判決を参考にいたしまして地図の訂正等が可能でありますが、私人間の訴訟でございますので、特に届け出の義務とかそういうものはありませんから、連絡がなければ全くわからない、こういうことになってしまいます。

○中村(哲)委員

 非常に問題が多いのかなという気がいたします。つまり、法曹関係者と申し出の当事者、土地の境界を争っている当事者だけで裁判をするわけですから、そこの専門的な測量とかいうところは必ずしも必要になっているわけではない、また登記所に知らせる義務もないということで、十七条地図の整備には必ずしもつながらない。しかし、境界の確定する手続としてはこの境界確定訴訟という形しかない。非常に問題が多いというふうに認識せざるを得ないと思うんですが、これまで民事局としてはどのような取り組みをしてきたのでしょうか。

○房村政府参考人

 実は、御指摘のように、境界をどう確定するかということについては、法律的な整備が非常におくれているというぐあいに私どもも思っております。この境界確定訴訟も、現行法上、特に法律上の根拠が定められているわけではなくて、かつて裁判所構成法におきまして、「不動産ノ経界ノミニ関スル訴訟」を区裁判所の管轄に属する、こういうような規定もあったことから、解釈によりましてそういう訴訟類型が認められているということでございます。

 ところが、この境界というのはいわゆる所有権の境とは性質が違う、いわば公法上のものでございます。何番地の土地の境界がどうかというのは、その所有者だけではなくて、やはり公の事柄でもありますので、公法上の効果を持っているというぐあいに普通考えられております。ところが、これを私人が自由に決めることのできる訴訟で争わせるということが本当に境界の定め方として適切であるかどうか、こういう問題がそもそもございます。

 また、境界確定訴訟については、今言ったように、解釈で認められてきているものですから、手続等についても必ずしも明確に決まっているわけではございません。それと、やはりどうしても訴訟ということになりますので、判決の確定までに相当の時間がかかって、費用もかかる。また、訴訟として隣同士で裁判所で争うという形になりますので、隣人関係に悪影響が出るというようなことも懸念されております。また、その判決の効果も一体どこまで及ぶのか、こういう問題もございます。

 そのようなことから、境界を確定する、あるいはその紛争を解決する制度というものを国として整備すべきではないかということは、私ども登記に携わる者として考えております。そういうことから、平成十一年に専門家、有識者から成る研究会に研究をしていただいて、裁判外紛争解決制度に関する調査研究報告書というものを取りまとめて、境界紛争の解決のあり方について研究をしてきたところでありまして、現在においても引き続き研究等を進めております。

○中村(哲)委員

 平成十一年ということは四年前ですよね。四年前からまだ何も進んでいないということも問題だとは思うんですけれども、まず確認をさせていただきたいと思います。

 平成十一年に出された研究会の報告、これの概要というものはどういうものでしょうか。今の境界確定訴訟の問題点はどのように解決されているんでしょうか。

○房村政府参考人

 平成十一年の研究会報告書では、境界の確定を法務局長等の行政処分で行う、いわば公法上の境界でございますので、行政処分の形でそれを確定する、そして、その土地の所有者等がその処分に不服があれば、行政訴訟でその取り消しを求める、こういうことを基本としております。

 法務局長が境界についての処分をする場合には、弁護士、土地家屋調査士、登記官等の境界に関する専門家から構成される合議機関を設けまして、そこで調査審議をしていただいて、その結論を諮問していただく、それに基づいて処分を行う。こういたしますと、公法上の境界を国が判断するという形で理論的にも整合いたしますし、また、境界に関する専門家が登記関係の方々に大勢いらっしゃいますので、そういう方の専門知識を活用して、より適切な判断が可能になるのではないか、こういうことから、基本的な仕組みとしては今申し上げたようなものを考えております。

○中村(哲)委員

 それでは、なぜそれを立法化、すぐにはしようとしていないんでしょうか。もう四年たっております。恐らく、今の御答弁から考えると、もう立法化したいんですけれども、なかなか手が回らなくてできない、そういうお話なのかなと思うんですが、いつごろを目途に考えていらっしゃるんでしょうか。

○房村政府参考人

 十一年に報告が出ているのになかなか立法化していないという点では、確かに私ども、御指摘を受けますと恥ずかしいんですが、一つには、現在、司法制度改革推進本部で裁判外紛争解決制度について全般的に検討して、その基本的な枠組み、いわば基本法というようなものをつくるという動きがございます。この境界紛争も当然そういう裁判外での紛争解決制度でございますので、本部で検討しております裁判外紛争解決制度の基本的な枠組みに合致したものにしたい、そういうことから、推進本部での検討を待ってそれに合致するような形で立法したい、こう考えて少しおくれているということが一つございます。

 それから、制度自体としても今までにない全く新しいものでございますので、例えば不服申し立てをする行政訴訟の仕組みをどういうぐあいにするのか。実は、この行政訴訟そのものについても推進本部でもまた見直しが進行しておりますので、やはりそういうものを踏まえて、せっかくつくる制度ですから、つくってすぐにまた修正ということでは困ると思いますので、そういうことからややおくれておりますが、私どもの今の予定といたしましては、不動産登記に関しましては、来年の通常国会にオンライン申請を可能にするための不動産登記法の全面改正をお願いしようと思って鋭意努力をしているところでございます。その次の課題がこの紛争解決制度ではないか。

 ですから、推進本部でADRの基本法の仕組みあるいは行政訴訟の仕組みが確定いたしますと、それを受けてできるだけ早期に立法したい、こう考えております。

○中村(哲)委員

 司法制度改革の一連の大きな流れの中でこの境界確定手続の立法を進めていくということで理解をさせていただきたいと思います。

 そして、この境界確定手続法が将来できた場合には、ほかの分野、ほかの省庁も含めてどのような影響を与えることができると法務省としては考えているのでしょうか。

○房村政府参考人

 これは、今まで訴訟を起こさなければならなかったような境界をめぐる紛争がここで適切に解決される、裁判外紛争機関という性質上、簡易迅速に、しかも専門的な判断に基づいて適切に解決することが可能になるだろうと思っております。

 それともう一つは、先ほどから御指摘を受けております十七条地図の整備、この地図の整備をする場合に、必然的に境界をめぐる紛争が惹起したり、あるいはそれを解決しないと地図がつくれないということがございます。こういう仕組みができますと、それと有機的に連動しながら十七条地図の整備を図っていくことが可能になるのではないか、そういう意味でも重要な事柄である、こう思っております。

○中村(哲)委員

 つまり、予算がついていたとしても、それを使うためには非常に大きな手間がかかっていた、だから、このような境界確定の手続が新たにADRとしてできれば、それが利用されることと相まって予算もきちんと使っていただける、そういうことだと理解できるんですね。そういうことですね。

○房村政府参考人

 御指摘のように、地図は境界を図面に落とすものですから、境界そのものが決まらないと地図がつくれない。この手続によりまして、従来に比べて迅速、適正に境界が確定できれば、地図の整備作業も進捗する、こういう関係にございます。

○中村(哲)委員

 あと房村民事局長に確認なんですけれども、先ほどおっしゃったように、境界確定というのは公法上の確定である、しかし、一方で土地の所有権というのは民法上の物権の争いですね。恐らく、望まれるべき、将来できると言われているこの境界確定手続法では、ともに確定する手続じゃないとなかなか意味がないのかな。例えば取得時効があった、そうすると所有権が移っているわけですから、そこも含めて境界を確定して公法上の境界もつくる、同時にそのようなことがなされるようなADRにならないと意味がないのではないかと素人ながらに思うんですが、その点については、今どのようにお考えでしょうか。

○房村政府参考人

 実は、それはなかなか難しい問題がございます。

 御指摘のように、利用する立場からすると、所有権といい境界といい、やはり、自分の土地の範囲がどこなんだ、こういうことを決めてもらいたいという希望はあるだろうと思います。ですから、そういう立場からしますと、境界とあわせて所有権の範囲についても確定するということが便利ではないかとは思うのです。

 ただ一方、理論的に考えますと、境界というのは公法上の定めということになっておりますし、所有権の範囲と境界の範囲が必ず一致するわけでもない。隣の土地の一部を時効取得しちゃっているような場合には、所有権の範囲はそこまでいっておりますが、それによって境界が動くわけではない、こういうことがございます。

 今、我々が考えておりますそういう境界確定を行政処分型で行う場合、集める専門家は境界の認定についての専門家を集める、こういうことが中心でございますので、いわゆる訴訟手続で争われるような所有権の有無をそこで判断することが果たして適切かどうか、こういう問題もございます。

 ですから、実は、研究会報告ではそこは比較的消極的に、土地の所有権の争いについては謙抑的に手を出さない、それは裁判所の方に任せようか、あるいはまた別の、ADRがあればそちらに、こういう考え方にはなっております。

 ただ、利用者からすれば両方一緒にということもあろうかとは思いますので、いずれにしても、今後研究を進めて、ADR基本法の考え方等も参考にしながら決めていきたい、こう思っております。

○中村(哲)委員

 房村民事局長、今おっしゃったことの前提というのは、ある意味十七条地図が一〇〇%整備している場合には当てはまる理屈じゃないかなと思うんです。公法上の境界ですから、十七条地図があった場合には、もう余りそこに手を入れる必要もないというか、そういう要請は出てくると思うんです。

 ただ、十七条地図自体がなくて、はっきりしていないようなところもたくさんあるわけですね。その中で境界を確定しながら手続を進めていくということですから、やはり、公の地図でどういうふうな境界を引くのかということと所有権の確定というのは実は非常に密接に関係してくる。にもかかわらず、ADRで一挙に解決できなかったとしたら、それは境界確定訴訟の弊害が残るということにもなりかねない。そこは確認をさせていただきたい、また主張をさせていただきたいと思いますが、時間もありますので、次の質問に移りたいと思います。

 次に、登記業務のコンピューター化とインターネットでの公表について質問をいたします。

 抵当権の設定物件の短期賃借人に対する保護の議論においても、賃借人が登記を見ることが必要である、前提であるというような議論がされております。しかし、実態として、賃貸物件を探すときに、希望する物件の検討の際に、抵当権がついているか、一々登記所に行ってそんなの調べる人はだれもいないと思うんです。

 私も最近物件を調べましたけれども、十件二十件回って見るわけですよね。紹介されたら、これ、よさそうやなと思って何件か見るわけです。そうしてその中で、ではそれを今度登記所に行って調べるのか。賃借物件というのは言ったら早い者勝ちの世界ですので、そんなの一々調べている暇もないというような、そういった今までの慣習があると思うんです。だから、議論の前提になっていることと実質的なものと、いわゆる立法事実が違うわけですよね。だから、そこは考えて制度をつくらないといけないんだと思うんです。

 私は、登記情報、つまり登記簿情報と十七条地図ですね、その情報をインターネットで自由に閲覧できるように将来的にはしていくべきではないかと思うんですが、この点についていかがお考えでしょうか。

○房村政府参考人

 御指摘のように、インターネットで登記の情報を見ることができるようにする、これはこれからの社会では当然要求されることだろうと思っています。私どもも、今、登記簿に入っている情報は、コンピューターで処理をするように、コンピューター化をしておりますので、そのコンピューター化した登記情報については、インターネット経由でこの情報を見るということを可能にする登記情報の提供に関する法律をつくりまして、現に実行しております。

 地図については、残念ながらまだ地図のコンピューター化が、進むというかまだ着手もしていないものですから、将来の課題になりますが、この登記簿のコンピューター化の次は地図情報をコンピューター化する、そしてその情報をやはりインターネットで見ることができるようにする、こういうサービスを提供するというつもりで、そのシステムの開発等も進めているところでございますので、将来的には、御指摘のように、インターネットを使いまして、いながらにして登記情報を見ることが可能になる、こういうことを実現したいと考えております。

○中村(哲)委員

 今の登記簿情報に関しては、今もうインターネットで見られる手続がある、そして、地図情報に対しても将来的にはインターネットで見られるようにしないといけない、そういう御答弁だったと思うんです。

 今、財団法人民事法務協会による登記情報のインターネットでの提供がなされているということなんですけれども、ちょっと高いんじゃないかなと思うんです。一件当たりの手数料は九百八十円。ということは、十件見ようと思ったら、九千八百円クレジットカードで決済をしないといけないわけです。それはなかなかちょっと高いんじゃないか。例えば抵当権をつけたりまた不動産の売買のときには、一件当たり九百八十円、これはそんなに高い値段じゃないと思うんです。しかし、短期賃貸借のところで、参照すべきという立法趣旨ならば、そこはもっと安くする政策的な努力が必要なんじゃないかなと思うんです。そこが違うといったらまた別ですよ。

 僕は、売買とか抵当権の設定の際であれば、一件当たり九百八十円というのは必ずしもそんなに高くはないと思うんですけれども、そういった要請があると思うんですね。だから、低廉な額で情報提供をしていく今後の努力というのは必要なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○房村政府参考人

 確かに、御指摘のように、今回のような法改正を行いますと、抵当権の有無を登記簿で確認するという必要性が生じてまいりますので、それをできるだけ低廉な費用で確認できる道を開くということは重要なことだろうと思います。

 ただ、現在の手数料も、実際にかかる経費を予想利用件数で割りまして一件当たりの単価を出して、それに基づいて定めるということで、決して恣意的に高目に設定しているわけではないんですが、ただ、現実にインターネットの利用件数は相当伸びております。したがいまして、利用件数が伸びてくれば、それを踏まえて一件当たりの手数料を下げるということは可能になろうかと思います。

 また、経費削減の努力も今後続けて、ぜひ利用しやすい価格におさまるような努力をしていきたい、こう思っております。

○中村(哲)委員

 つまり、手数料の問題というものは非常に重要な問題である、ここを検討しないといけないと思うんですね。

 今はインターネットの話をしましたが、登記所での閲覧とか登記簿謄本をとる場合でも同じことだと思うんです。登記簿謄本をとる場合には、今、一件千円の手数料がかかります。また、登記簿を閲覧する場合には、一件五百円の手数料がかかります。こういった手数料は、法律上は登記特別会計で処理されていると聞いております。

 登記特別会計ではどのように使われているのでしょうか。

○房村政府参考人

 それでは、簡単に登記特別会計の仕組みから御説明をさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

 実は、登記特別会計は大きく二本柱でできております。一つが、今御指摘のような手数料収入、これが大体一千億程度ございます。それからもう一つは一般会計からの繰り入れ、これが大体七百四十億程度ございます。

 こういう二本柱でできておりますのは、実は、登記所の行っている事務に二種類の事務がございます。一つは、いわゆる所有権移転というような登記申請を処理する登記審査事務でございます。それからもう一つは、登記簿謄本を発給するというような証明に関する事務、私どもとしては、これを登記情報事務、こう申しております。そういう登記事件の申請を処理する審査事務と証明等を行う登記情報管理事務、この二つに大きく分かれております。

 財源もこの二つに分けて使っている。手数料収入の方は証明等の登記情報管理事務に使う、そして、一般会計からの繰り入れは登記事件の審査に当たる審査事務に使う、こういうことになっております。

 したがいまして、手数料で納めていただいた額は、専ら登記情報管理事務、ですから、コンピューター化経費であるとかコンピューターの運営あるいは謄抄本発給事務機器の整備、それに従事する職員の給与、こういったものに充てられております。

○中村(哲)委員

 手数料収入が大体千億円、そのうち、人件費とかもかかりますので、登記情報管理事務の方には大体七百億円程度今かけているということだと思います。

 そうして、今後このコンピューター化はどのように進んでいくのか。七百億円かけて、どういったスケジュールで進んでいくというふうに考えたらいいのか。例えば、都市部では何年度までにやろう、全国では何年度までにやろう、そういった予定があるのであれば教えてください。

○房村政府参考人

 今、全国的にコンピューター化を進めているところでございますが、不動産登記のコンピューター化につきましては、今のめどといたしましては、平成十六年度末までには、需要の多い都市部等を中心に全国の主要な登記所の移行作業は完了させられるであろう、こう思っております。

 ただ、何分、登記所は全国に七百二十カ所以上ございますので、そのすべてをコンピューター化するということになりますと、どうしても平成十九年度ぐらいまではかかってしまうのではないか、こう思っております。

 私どもとしては、一日も早くコンピューター化を完了して、オンライン等で利用していただけるようにということで、今後も鋭意コンピューター化のスピードアップを図っていきたい、こう思っております。

○中村(哲)委員

 先ほどのお話は登記簿のコンピューター化に限られるんだと思うんですね。確認をさせていただきたいんですけれども、そういうことだと思います。

 つまり、十九年度までになされるコンピューター化は登記簿であって、十七条地図はまだなわけですよね。この十七条地図は、今後どのようにコンピューター化していく予定なんでしょうか。

○房村政府参考人

 地図につきましても、現在は数値地図が主流になっておりまして、コンピューターで処理することがもう可能にはなっております。したがいまして、登記所に備えられている十七条地図をそういうコンピューターによる数値管理をすれば、コンピューターで処理ができますし、オンラインで見ることも可能になります。

 現在、そのための準備としてシステム開発を行っておりまして、まずはパイロットシステムを立ち上げて、問題点を実際に試して研究したい、こう思っている段階でございます。

○中村(哲)委員

 今からやっていくということなんですけれども、そもそも、十七条地図をやはりきちんと整備する必要があると思うんですよね。

 先ほどお話を聞きますと、十七条地図の整備というのは、登記審査事務の方に入るわけですよね。つまり、一般財源の部分でなされている。だから、先ほどおっしゃったように、手数料で賄われる登記情報管理事務とは違う仕分けの部分から出さないといけない。やはりこの九千百万円をふやしていく努力をしないといけないんじゃないでしょうか。

 と申しますのは、登録免許税、これは一年間に八千億円ぐらいあるわけですよね。だから、手数料と考えれば、八千億円、十七条地図に回せるはずなんですよ。でも、それは現実的ではないですから、一般財源として非常に重要な財源でもありますから、八千億円はすべて十七条地図に回すということはできません。それはわかりますけれども、八千億円と九千百万円、これは全然額が違うわけですよね。

 ということを考えても、国土交通省がやっている地籍調査が二百六十億円ということを考えても、法務大臣はもっと閣議の中でも、やはり十七条地図をふやすために、八千億円上げている登録免許税、二百六十億とは言わないけれども、少なくとも百億ぐらい回してくれということを言えるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか、大臣。

○森山国務大臣

 この問題の重要性から、おっしゃるようなことも大いに考えられると思います。

 閣議といわずいろいろな場合にそのことを主張して努力したいと思います。

○中村(哲)委員

 いや、もうすごく力強いお言葉をいただきました。閣議とはいわずいろいろな場所で言っていくということをおっしゃっていただきましたので、本当にこの十七条地図は、近代国家として日本が存立するもう最低限の条件ですから、ここをしっかり政府として今後とも取り組んでいただくということで、質問を終わります。

 ありがとうございました。


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