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2003年2月19日 
第156回国会 衆議院 予算委員会   
案件:平成十五年度一般会計予算・特別会計補正予算・政府関係機関予算

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(60分) 「トラック事故問題・予算編成問題等について」   

この日の予算委員会の前日、国会内で「生命のメッセージ展」が開かれました。交通事故や犯罪等で亡くなった方々の写真と添え書きを添付した人型をオブジェとして展示するものです。

交通事故の中でもトラックやタクシーなどによる業務中に発生するものは過酷な労働環境に一因があると言われています。しかしながら、現状の法律で刑事責任を追及できるのはドライバーのみであり、事業者を訴えることはできません。事業者に対しては法律に基づいた労務管理及び運行管理を適切に行うよう行政がしっかり監督することになっているのですが、実際はほとんど手が回っていない状況にあります。

こうなると遺族としては裁判に訴えるしかないわけですが、事故情報は警察が握っており、遺族にさえなかなか公開されない状況にあります。

この問題は、先ず警察や事業者の持つ情報を公開するとともに、事業者に対しても行政が適切な指導・監督を実施する必要があります。そこでこの日の予算委員会では、事業者の指導・監督を厳正に執行するよう扇国土交通大臣及び坂口厚生労働大臣に強く要請するとともに、こうした交通事故に対し事業者も刑事罰の対象とする刑事上の法体系の検討について、谷垣国家公安委員長に対し強く求めました。

次に予算編成に関する問題ですが、現行の予算システムは以下のような問題を抱えています。

・ 予算案は12月末にできているはずなのに、実際は1月下旬(予算案が国会に提出される)まで公開されていません。十分な予算審議を行うためには、国会開会前にできるだけ早く予算案を公開する必要があります。

・ 財務省の予算配分は硬直化しており、一度予算を減らすと必要な時に増やしてもらえません。従って各府省は配分された予算が余っても国庫に返さず、無駄とわかっても使い切ってしまうことがあります。これを解決するためには、予算を単年度ごとに編成する仕組みをかえる必要があります。

これについて塩川財務大臣は

・ 予算案は12月末にできていても、これを間違いの無いよう精査し、印刷するのにどうしても一ヶ月かかってしまうので、これ以上早く公開するのは難しい。

・ 財政法で一定のしばりがあるためすぐには難しいが、今後検討したい

と回答されました。予算の単年度主義の改正は簡単には進みませんが、予算案の公開については、電子媒体で提供する等より早期に公開するための方法があるはずです。

この日はその他に脱北者の問題や職業訓練の問題、公務員制度改革の問題等について質問を行っています。

[2] 質疑項目

1.トラック事業者による交通事故への対応

  1)交通事故を起こした運転手を雇用している事業者に対する国土交通省による監査のあり方
  2)加害者側事業者からの報告書に対する遺族による確認の必要性
  3)トラック業界の労働条件について厚生労働省の把握状況
  4)交通事故発生時における労働基準監督署による監査の必要性
  5)長時間労働が交通事故の原因と目される場合における労働基準監督署の対応
  6)営業に起因する交通事故について特別の法体系の必要性
  7)現行刑罰法規の厳正な運用の必要性

2.予算書の提出時期

  1)予算書を政府案決定閣議後速やかに提出する必要性及び1か月のタイムラグがある理由
  2)電子媒体による予算書提供及び情報開示を早める必要性
  3)政府の予算審議に臨む姿勢と予算書の提出時期遅延との関係
  4)予算書作成過程に関する資料提出の必要性

3.予算の単年度主義
 
  1)予算の単年度主義について、構造改革の必要性
  2)財政法改正について塩川財務相の所見

4.脱北者(北朝鮮脱出者)問題

  1)脱北者に関する情報開示のもたらす影響について川口外務相の所見  
  2)脱北者の概数公表について川口外務相の所見
  3)脱北者への具体的支援内容
  4)脱北者への支援事業と日本国籍との関係及び支援費用の出所
  5)難民条約における「難民」の定義と在北京日本人学校への脱北者との関係
  6)難民であると認定する場所

5.成功報酬型の民間委託による職業訓練ついて坂口厚生労働相の所見

6.国家公務員採用試験改革
  1)中島人事院総裁と石原行政改革担当相との試験合格者数に関する意見の差異について石原行政改革担当相の所見
  2)多様な人材の確保について石原行政改革担当相及び中島人事院総裁の所見
  3)英国のファーストストリーム方式について石原行政改革担当相の所見

[3] 会議録抜粋

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治です。

 私は、小泉政権の問題点は大きく分けて二つあると思います。一つは、市場主義的な構造改革がまだ不十分であるという点。もう一つは、これがもっと悪いことだと思うんですけれども、構造改革というものには負の部分があります。

 市場主義的な構造改革をすれば、必ず貧富の格差も出てくる、弱者が出てくる、そういった負の部分に対して手当てする政策が十分にとられていない。社会を守るという観点、社会の連帯、コミュニティーの連帯を保障するという観点が非常に欠けているんじゃないか。それが小泉改革の一番悪いところだと私は思います。

 ある意味で、戦後、自由民主党を初めとして守ってこられたいい意味での保守政治というものが、一九八〇年ぐらいから非常に悪くなってきている。そこの抜本的な政治としての改革をしなくてはならないのではないか。私は、そのように考えて、二十代から、かわり得る政党をつくらないといけない、その思いで活動をしてまいりました。本日は、そういった意味で、社会を守る、社会の連帯を保障するという観点からの質問をさせていただきます。

 まず第一に、昨日、生命のメッセージ展というものがこの国会でもありました。法務大臣、国家公安委員長も出席なさったと聞いております。そこでの話を少しさせていただきたいと思います。

 トラック業者による交通事故、それに対する被害者の補償、また加害者であるトラックのドライバーに対するケア、取り組みというものが果たしてなされているのかどうかということが問題となります。

 と申しますのは、構造改革を進めれば進めるほど市場主義的な競争が起こります。そして、今、トラック事故による被害者の方たちがおっしゃっているのは、このような構造改革が進めば進むほど過当競争が激しくなる、そうすると、ドライバーの過剰な労働環境、過労が生じさせられてしまう、その結果事故が起こる、そういったことが切実に訴えられています。これは、各省庁を超えて取り組まないといけない課題だと私は感じています。

 そこで、国土交通省にまずお伺いいたします。

 こういった事故を起こしたドライバーを雇っているトラック業者に対する監査はきちんとしているのでしょうか。監査をする以上、きちんと生きる形にしていかないといけませんが、そこの運用はどのようになさっているでしょうか。

○扇国務大臣

 今、中村議員から御質問がございましたトラック業界、特に交通事故を起こした後どうするか。大事な点だと思っておりますけれども、今、交通事故の死亡者は、御存じのとおり、昨年には八千三百二十六名ということになりまして、目標を達成いたしまして、少なくとも、八千四百六十二人目標だったのがそれを下回ったわけですから、下回ったことだけは了といたしますけれども、かといって、事業用のトラックは死亡事故の約八%を占めています。

 そういう意味では、一たび事故が発生したときに大変大きな被害を大型であるだけにもたらすということで、最も重要な課題の一つであると国土交通省でも認識しておりまして、トラック事業者に対しまして、これまでも機会あるごとに注意をし、安全の規制の強化、そういうものを指導はしてきておりますけれども、安全確認の徹底を図って、少なくとも、危険運転致死傷罪を設置した刑法の一部改正を踏まえまして、飲酒運転等の悪質な、危険な運転行為によります事故防止に万全を期するようにということを徹底いたしております。

 ちょっと風邪ぎみで、声がかすれて済みません。

 本年四月から、少なくとも飲酒運転の処分等を強化して、厳正に監査そして処分を行っているというのが現実でございます。

○中村(哲)委員

 大臣、さらに聞きますけれども、監査をしたときに、監査というのは業者からの報告書をとることが基本となっているんですね、その業者からの報告の信憑性を確認する必要があると思うんです。そこがきちんとなされているのかどうか、そこが今問題なんです。遺族が問い合わせても、それは確かめていませんというふうに答えられる。少なくとも遺族に対しては、この報告書で遺族としては納得しますかということを問い合わせる必要があると思うんですが、いかがですか。

○扇国務大臣

 遺族に対してまでは私ども至っていないと思っておりますけれども、事業者に対しては、少なくとも酒酔い運転をして事故を起こした場合というのは、確実に監査に入っております。そして、少なくとも今までは、ひどい場合は営業停止も含めてという監査を今行っているというのが現実でございます。

○中村(哲)委員

 私は、遺族の確認をしていただきたいと思うんですね。そこを一点、いかがですか。

○扇国務大臣

 私は、事業者に監査に入ったときに、その会社の監査のときに、事業者がどういうことを言うのか、遺族に対してこうこうこういう事情でという、遺族と話し合ったとか、そういうことも監査のときに事業者から報告があると思いますので、もしもその報告に疑義が持たれるときには、監査に入った意味がありませんから、監査というものは遺族の意見まで聞くというようなことが、事業者の態度によっては私はあり得るべきだと思っています。

○中村(哲)委員

 そのあたりのところをきちんとしていただきたいと思います。

 次に、厚生労働省にお聞きいたします。

 このトラックの業者の問題としては、ドライバーの過剰な労働条件というものがあると言われております。しかし、事故が起こったときに労基署がきちんと監査、監督しているのかどうかというところがまた問題となっております。このトラック業界のドライバーの過剰な労働条件ということに関しては、厚労省はきちんと把握しているんでしょうか。

○坂口国務大臣

 運転手が事故を起こします場合に、長時間労働等の場合があって、そして一つの企業に例えば多発をしているといったようなことは当然起こり得る話でありますから、トラック運転等をやっておりますそういう企業に対するふだんからの、いわゆる長時間労働等につきましては、監督署からも鋭意指導をしているところでございます。特にこのトラック業界におきましては、その業務上、長時間労働にどうしても陥りやすいということがありますので、特別に上限等を設けまして、その中でやっていくといったようなことを今やっているところでございまして、そういうことも我々としてはこれからも心がけていかなければならないというふうに思っております。

○中村(哲)委員

 事故を起こしたときの当該ドライバーの労働条件について、改めて労基署から調査なり監査なりする必要があると思うんです。大臣、そこをどういうふうに今後取り組んでいくのか、そこについての御答弁をよろしくお願いします。

○坂口国務大臣

 事故を起こした人全部を監督署として見ていくということはなかなか難しいというふうに思いますけれども、ここは警察とよく連携をとりながら、そして、これは長時間労働による疑いがあるというものにつきましては、私たちもそのことを実は調査しているところでございます。もう一つ我々が関係することといたしましては、労災であるという申し出がありましたときには、そのことに対して我々すぐに調査をいたしております。その二点だと思います。

○中村(哲)委員

 遺族が労基署に、長時間労働があったんじゃないか、そのことについて調べてくれと言ったときにどのような対応がなされているのか。一説によると、企業から訴えられたら困るので、遺族には、そういったことは言えませんと労基署の方は言っているという話を聞いております。この点については、大臣、どのようにお考えですか。

○坂口国務大臣

 私も具体的に知っているわけじゃありませんけれども、そういうお申し出があれば、それは調査の対象にするだろうというふうに思います。それは、交通事故の問題であれ、一般の労働者の問題であれ、長時間労働がここは多いというような情報がありましたところには調査をしておりますから、交通事故の場合にそういう申し出がありましたら、それは調査の対象になっていくだろうというふうに思っています。

○中村(哲)委員

 このトラック事故の問題というものは、企業側の問題、そして労働者の問題、それから交通事故という道路交通法上の問題、さまざまな問題が複合しております。この問題については、これからも非常に粘り強く取り組んでいかないといけないと思っておりますので、続きは法務委員会でしたいと思いますけれども、最後に、国家公安委員長、こういったことの解決のために、刑罰として、今後、交通事故、またこれは営業状態、営業に基づく交通事故ですね、特別な刑事上の法体系が必要なんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○谷垣国務大臣

 今の中村委員の御質問は、トラック事故のときに、実際に運転して事故を起こした者、これはもちろん、先ほどからの御議論のように、刑罰なりいろいろなものがあるわけですが、その背後の経営のあり方とか労働のあり方にまで踏み込んだ刑罰体系が必要ではないかという御趣旨ではないかと思うんですね。私も、背後責任というものを追及して、その安全運転の運転管理の徹底を図ることが大事だろうと思います。

 それで、御質問を機に私も道路交通法の該当部分を読み直してみたんですが、かなり制度としてはでき上がっているという感じがいたします。

 具体的に申しますと、使用者等がその業務に関して過労運転であるとかあるいは過積載というような違法行為を命じている、あるいは命じないまでもそれを容認していた、こういう場合には使用者に罰則を科すことができるというふうになっておりますし、さらに、過労運転等の違法行為を防止するために適切な運行の管理を怠っている、行っていない、こういう使用者に対しては、必要な措置をとるように公安委員会が指示をすることができる、また、道路における交通の危険を防止するための措置として、自動車の使用を制限する制度、こういうものも設けております。それから、これに加えまして、事業用自動車の運転者の道路交通法違反行為などにつきましては、監督行政庁である国土交通省に通知をして所要の行政措置を促すというような制度も設けられておりまして、こういう制度を我々も十分活用して、トラックに関する事故をもっと減らしていくように努めなければいけないと思っております。

○中村(哲)委員

 今おっしゃったように、制度はきちんとできているんです。また、制度ももっと整備をしなくてはいけないと思うんですけれども、より大事な問題は、制度ができていてもきちんと運営されていないんじゃないか、その思いが被害者の皆さんは強いんです。だからそこを、きちんと運営はしっかりやっていく、約束していただけますね。

○谷垣国務大臣

 制度の趣旨を十分踏まえまして、トラック事故をさらに減らしていくように、運営に、国家公安委員会としても督励をしてまいりたいと思っております。

○中村(哲)委員

 ありがとうございました。国土交通省の扇大臣、また国家公安委員長の谷垣さん、もう結構ですので。

 次に、予算書の提出時期について伺います。

 吉田公一委員の二月十三日の質問で、予算書がこれだけ提出されたという話もされました。そして、上田清司委員の二月十七日の質問では、予算書を精査しての質問がなされました。

 しかし、ここで問題なのは、予算書の国会への提出は一月二十四日なんです。この資料の第一ページを見ていただきたいんですけれども、議案の提出は一月二十四日になされている。閣議決定は十二月二十四日なんです。一カ月もたっているんです。予算審議が予算書を精査して本来なされるものであるのならば、閣議決定をしてすぐ国会に提出されないといけないのではないかと私は思うんです。そして、国会議員はその予算書をきっちり見て予算を審議する、これが本来あるべき予算委員会のあり方なんじゃないか。

 しかし、そう考えると、この一カ月のギャップというのは非常に長過ぎるんじゃないか。なぜこの一カ月というタイムラグがあるのか、そこについて、財務大臣、お答えください。

○塩川国務大臣

 これはやはり現場に当たっていただくのが一番、実情を見ていただくのがよくわかると思うんですが、実は、閣議決定いたしますね、それは百万単位で決めておるんですね。そして、それを予算書にしますとき、各省持ち帰りまして千円単位に切りかえて精査しておるんです、千円単位に。百万単位から千円単位に変え、計算をしておるんです。この作業がどうしてもやはり一週間ほどかかっちゃうんです。それから、それをまとめまして印刷所へ出します。印刷所に出しまして、作業いたしまして、正月休みでもずっとやりまして、最低三週間はかかる。(発言する者あり)いや、ばかなと言うけれども、実際それぐらいかかるんですよ。(発言する者あり)

○藤井委員長

 御静粛に。御静粛に願います。御静粛に。

○塩川国務大臣

 だから僕は言っておるんです。現場を見てやれと言うんです。一回現場を見てからの判断をしてもらわな困る。

 そして、印刷にかけます。そして、校正をしなきゃならぬのです。この校正が、虎ノ門の印刷所でやっていますから、これは一回現場を見てやっていただいたらわかると思うんです、どうして予算書ができておるかという。これをいたしますのに、千人からの人間がずっとかかり切って読み合わしておるんです。それが非常に時間がかかるんです。そして、詰めまして、せいぜい速くやりましても大体十四、五日はもう絶対かかります。そこへもってきて、ことしの分は補正予算も一緒にやったんです。ですから、非常に日数がかかったということでございます。しかし私は、せいぜい、精いっぱいやってこの日数だったと思うんです。それは、一回、予算作成の現場をずっと見てやっていただいたらよくわかると思うんです。

 ですから、もう正月も返上して一生懸命編成していますから、できるだけ早く出すように今後も努力いたします。いたしますけれども、そういう物理的な制約もあるということを見ていただ
きたいと思います。

○中村(哲)委員

 塩川財務大臣がおっしゃった、現場を見てくれという意見は、確かにそれは私ども委員としても聞かなくてはいけないかとは思うんですが、例えば、今もうこれだけデジタル化が進んでいる時代です。だから、現実に印刷をしなくても、予算委員にだけ、予算委員というか国会議員にだけはデジタルデータで配るという方法もあるんじゃないですか。例えば、全部の議員室にはパソコンがあります。エクセルのデータで、表計算ソフトのデータで出すことにすれば、技術的には可能じゃないですか。そういうことも含めて、もう少し早く情報開
示をする方法を考えるべきなんじゃないですか。

○谷口副大臣

 今塩川大臣がおっしゃったように、大臣自身が現場を拝見されて、この大変な状況を見られたわけでございますけれども、閣議決定から予算書作成までに単位の切りかえがございますし、また、ちょっと大臣、言及されませんでしたが、一般会計と特別会計と政府関係機関の全体で千八百ページあるという、やはり膨大な予算書のことでございますし、また、この作成作業のほか、関連作業として予算の説明また各目明細書も同時につくるということがあって、かかっておるわけでございます。

 また、今中村委員がおっしゃったような、電磁媒体を使えばというようなことなんだろうと思いますけれども、これにつきましても、平成十三年度より本格的に運用させていただいておりまして、各省庁との間の計数データの交換を初め、印刷原稿データの交換について、省力化をできるだけ図るということで、極力早期に提出をさせていただきたいというように頑張っておるところでございます。

○中村(哲)委員

 電子媒体の話は答弁になっていないじゃないですか。それは、政府内部では電子媒体でやりとりはしているけれども、こちらには電子媒体として出すつもりはないということと同じじゃないですか、今の答弁は。

 事ほどさように、補正予算も出すかどうかは、それは政府の判断の勝手でしょう。閣議決定が十二月二十四日になるというのも勝手じゃないですか。だから、きちんと十分な審議をすべき、そして年度内に通すということであるのならば、ここはもっと早く情報公開すべきなんじゃないですか、どうなんですか。

○谷口副大臣

 今委員がおっしゃった、例えばCD―ROMで出すといったようなことをしましても、このスケジュール感で見ますとそんなに早期に提出をできるというような状態にならないわけで、財務省といたしましては、委員のおっしゃるように、なるべく早く決定をいただいた後に提出をさせていただくように、極力努力をいたしておるところでございます。

○中村(哲)委員

 これは、何日間で予算を提出しないといけないかという法的な決まり、今はありませんよね。だからこそ、立法府と内閣との信頼関係がすごい大事なわけですよ。

 審議をする上でデータというものは確実に必要なわけですから、ここを延ばせば延ばすほど、私たちは実質的な審議をしなくて済む。立憲主義の原則また三権分立の原則からすれば、立法府は政府から上がってきた予算を厳しくチェックするというのが議会の第一の目的じゃないですか。そこをいわば換骨奪胎するための方法として予算書を提出するのをおくらせる、そんなことあっていいはずはないじゃないですか。一カ月かかるというのも、もう少しきちんと資料でまた私たちに提出していただけませんか。

 委員長、ちょっとどうですか。

○谷口副大臣

 冒頭お話をさせていただいたように、印刷局の職員を初め、寝る時間も惜しんでやっておるわけでございます。大変な作業をやっておるわけです。

 それで、おっしゃるような作業日程については、これはお渡しできる資料はございますので、これは見ていただければ大変なその状況を御理解いただけると思いますので、この資料について出させていただきたいというふうに思います。

○中村(哲)委員

 この問題については、予算の編成のやり方とかいう抜本的な問題にかかわってくる問題だと思いますので、今後とも取り組みをさせていただきたいと思います。

 次に、予算の単年度主義について伺います。

 やはり今経済がこんな状態で、先ほども同僚議員とお話をさせていただいて聞いているのは、単年度主義が予算執行の大きな弊害になってきている、そして経済にかなり悪影響を与えているという話を聞いております。

 そこで、塩川財務大臣、予算が単年度で使い切りにならないといけないんじゃないか、そこの制度をそれこそ構造改革していく必要があるのではないかと考えるのですが、いかがですか。

○塩川国務大臣

 もっと予算の行使に多様化してもいいと思いますけれども、これは今財政法で一定の縛りがございますので、法改正が伴ってくる問題だと思っております。よく検討いたしたいと思います。

○中村(哲)委員

 つまり、財政法の縛りがあるから今はなかなかできないと。ここはやはり構造改革という意味でも、財政法を変える、それぐらいの意気込みがないといけないと思うんです。今のは、財政法を変えることも積極的に検討するという意味でいいですね。

○塩川国務大臣

 これは、いろいろ解釈もございまして、広く解釈すると憲法問題にも関係してくるということもあるし、いろいろと各法令との関係がございますので、よく精査してやっていきたい。私は、ちょっと感じとしては簡単に進むことではないけれども、検討して努力をするということはやってみたいと思っております。(発言する者あり)

○中村(哲)委員

 不規則発言にありますけれども、行政へのチェックと同時に、そのことによって行政のむだ遣いが非常に横行しているということもあるわけでして、そこのバランスは非常に難しい。先ほどの予算書の提出時期がいつかという問題とも関係してくる、立法府と内閣との関係の問題に大きくかかわる問題ですから、ここは非常に大きな議論をしていかないといけないんですが、ここの議論をしながら、そのような検討も今後していかないといけないと私は考えております。

 次に、脱北者の問題について伺います。

 資料の二ページを見ていただきたいんです。四番目の項目に今入っております。

 先日、私は、北朝鮮からのいわゆる脱北者の問題について質問をさせていただきました。そこでの質問に対する答弁が非常に不十分であったから、二月四日に質問主意書を提出させていただきました。その回答が以下のとおりに示されております。私は質問主意書の中で、「脱北者のプライバシーや安全確保、更には北朝鮮に残された家族の安否にどういう影響を与えるのか、具体的に示されたい。」ということで、情報開示に伴う問題点についての質問をさせていただきました。そうすると、答弁の方は、プライバシーを保護する観点、また安全に配慮するとの観点から、明らかにすることは差し控えさせていただくという答弁が返ってきていました。これは質問と答えが一致していないんですね。私は、明らかにすることがどういう影響を与えるから答えられないのか、そのことをお聞きしているんですが、そこには、影響を与えるから明らかにできないとしか答えていなくて、理由は書かれていないんです。

 外務大臣、ここはどういう影響を与えるからということなんでしょうか。

○川口国務大臣

 私どもが一番避けなければいけないと思っておりますのは、だれがその人かということが何らかの形でわかってしまうということであるわけです。その結果として、その御本人の身の安全や関係者あるいは北朝鮮に残った家族の人に影響が及ぶということを恐れているということでございます。

 恐らく、そう申し上げると委員は、数を言うことが何でではその人がわかるということにつながるのかというふうにお思いになられると思います。それは、そういうふうにお思いになられるのはもっともだと思いますけれども、若干想像力をたくましくしてお考えいただきたいんですが、例えば、一度数字をお出しします。そして、恐らくその一年後の数字をお聞きになられるでしょう。そうやって、こうやって出していくということになりますと、一回お出しして次はお出ししませんということになりませんから、例えば、その一年間に、極端な話ですが一人いたと言うと非常にわかりやすくなってしまうケースが考えられるわけですね。これは一例でございますけれども、それから、その関係国の政府の立場もあると思います。何人を何年間で日本に行くように計らったかと。そういうことが今後の脱北者の動きに影響を与えるということもあるだろうと思います。

 いずれにしても、何らかの形で本人のアイデンティフィケーションにつながるようなこと、ここにいくことを、本人の安全、家族の安全、プライバシーのために絶対に避けたい、そういうふうに思っているということでございます。

○中村(哲)委員

 先ほど大臣は、人数も知らせないことに関して不満があるということはもっともだとおっしゃいました。

 しかし、先ほどおっしゃったように、一年後の数字を聞くとまた違ってくるということになると、一つ妥協案としてあるのは、何名までとは言わずに、どれぐらいのオーダーだ、例えば二十数名だとか三十数名だとか百数十名だとか、そういったぼやかした数字で概算を言う、それは方法としてあるんじゃないかと思うんです。

 なぜこういうことが必要かと申しますと、例えばこの受け入れした人たちに対して支援立法を考えるのであれば、予算のことも含めて大体どれぐらいの数の人たちが法案の対象者になるのか、そこはやはりつかんでおかないと法案審議ができないと思うんです。

 そういった意味で、妥協案として、何名までということではなくて、概算の数字、大体何名かということは言ってもいいんじゃないですか。

○川口国務大臣

 脱北者が日本でちゃんと暮らしていけるようにするための支援を政府として考えていくということは、私は大事なことだと思っています。委員がおっしゃるように、そのために大体何人ぐらいという見当がつかないとできないということももっともだと思います。

 そういったことと同時に、先ほど申し上げたような、本人がわかってしまうということをぜひ避けたいということのはざまにあってこれは非常に難しい問題であるわけでございますけれども、今、どれぐらいかということについては、この前薮中局長から何十人ということであるということを申し上げた、そこまでは申し上げられますけれども、それ以上についてはなかなか難しいと思います。

○中村(哲)委員

 この問題については、昨日、このような形で報道もされております。新しい脱北者の方が北京の日本人学校に駆け込んだという記事も報道されております。そういったことで、これからこの何十人という人たちがどういうふうにふえていくのか減っていくのか、そういうことも踏まえながら考えていかないといけない問題なんですね。

 この間からの外務省の答弁というのは、行政府は情報を抱え込んで、私たち立法をする者に関しては情報を伝えない、そういう姿勢だと受け取ってしまうわけですよ。しかしこれは、立法も行政も国政に携わる者すべてが同じように情報を共有化して議論すべき問題なんじゃないか、私はそう思うんです。だから、もし悩みを共有化したいのであれば、ある程度の情報を今後開示していくようにお願いいたします。

 資料がありますから、その続きを申します。

 質問主意書で、保護した方々のうち、我が国に滞在している方々はどのように生活しているのか、仕事についているのか、日本国政府の支援内容はどうなのか、NGO等の支援を受けているのかということを聞かせていただきました。

 そうすると、答弁書の中にはこのように答えられております。「親族等からの支援を受けられないような場合には、自立した生活を送ることができる環境を早期に整えることができるよう、政府として必要な対応を行ってきている。」このようにお答えになっています。

 この「政府として必要な対応を行ってきている。」ということの具体的内容はどうなんでしょうか。これは官房長官ですね。

○川口国務大臣

 外務省としてやっているところというのは、日本に入ってきて生活を始めるというところでございますけれども、基本的に、御本人が自立をなさる、あるいは関係の親族の人がそれを支援する、そしてNGO等の支援者が手伝う、そういう形で暮らしていらっしゃるわけですけれども、それぞれがプライバシーでございますので、それを政府として、公的な機関として入っていって、どうやって暮らしているかということを調べるということは控えるべきであると思っています。

 外務省としてお手伝いをしているということは、例えば、生活保護を受けるための手続等、それから住居を探さなければいけませんのでそういったことのお手伝い、その程度のことをやらせていただいているということです。

○中村(哲)委員

 それは、日本国籍を有する者、また有しない者すべてについて同じようにされているということですか。

○川口国務大臣

 答えは、そういうことでございます。

○中村(哲)委員

 その費用は、予算のどこから出ているんでしょうか。

○川口国務大臣

 外務省の予算からいいますと、貸し付けの予算が若干あるということでございまして、生活保護の手続をお手伝いするとかそういったことについては特に予算を必要としない。ですから、人件費の範囲内でということで、職員がやっている、そういうことです。

○中村(哲)委員

 それでは、急な話なんですけれども、本日報道されているこの脱北者の問題について少しお聞きいたします。

 難民条約によると、難民の定義は以下のようになっています。一、自分が国籍を有する国、国籍国の外にあり、二、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、三、迫害を受ける十分に理由のあるおそれが存在するために、四、国籍国の保護を受けることができず、または国籍国の保護を受けることを望まない者、この四要件が難民の定義でありま
す。

 そうすると、この脱北者四人というのは、明らかに難民条約上の難民の定義に当てはまると考えるんですが、いかがですか。

○川口国務大臣

 これは一概に申し上げるということが難しくて、個々の事案による、個々のケースによるということです。

 したがって、今回のケースにそういうことが当てはまるかどうかはわかりませんけれども、一般的に申し上げますと、我が国としては、申請者の人定事項の確認をする、希望を聴取して、そしてこの人の生命あるいは身体の安全が適切に確保されるかといった人道的な観点、そして関係国との関係という観点、それを総合的に考量して、具体的な対応については検討をする、そういうことでございます。

○中村(哲)委員

 私は、このケースについては、どこで難民認定の判断をするのか、つまり、日本でするのか中国でするのかということが非常に大きな分かれ目になると思うのです。今、日本の領事部に身柄があるということですから、私は、日本で、日本国が難民認定の手続をすべきなんじゃないかと考えますが、いかがですか。

 それは、この四人の人たちが日本で難民認定の手続を受けたいという希望をしているということ、それから、過去の経緯を含めても、人道的な観点を考えると日本でやった方がいいのではないかということがうかがわれること、その二点が理由なんですが、いかがでしょうか。

○川口国務大臣

 我が国において、申請者が難民条約に定義をされる難民に該当するか否か、この判断は出入国管理法そして難民認定法で行われるわけですね。そして、その手続によりますと、難民の認定の申請をすることができるのは、本邦にある、日本にいる外国人であるということでございます。本邦外にいる外国人は難民認定を受けることができないということになっています。

 それではどうするかということですが、外国人が日本の在外公館に対しまして庇護または第三国への亡命を求める場合、この対応につきましては、これはまさに個々の事案によるということでございますので、一概には言えませんが、一般論としては、先ほど申し上げたようなことに戻るわけです。

○中村(哲)委員

 この問題についてはまた引き続き法務委員会などでもさせていただこうと思っておりますが、これからこういう問題はたくさん起こってくるのです。日本として外国人をどういうふうに受け入れていくのか、そういうことは大きく問われる問題になると思います。

 日本という国は、古くから、律令制度の時代から、外国人を受け入れて、さまざまな文化を自分たちに取り入れる中で国が発達してきた歴史もあります。そういったことを考えると、積極的に受け入れていく、人権の観点から受け入れるという感覚が、日本国に世界から問われるんじゃないかと思うのですね。だからこそ、ここは外務大臣にも、もう少し情報を公開した上で、今後この問題についても日本国民にしっかり訴えかけていただく、そして国民の理解を得ていただくというふうな方向に話を持っていっていただきたいと思います。

 それでは、これでこの質問は終わりますので、内閣の方も、外務大臣も御退席ください。

 では、次の質問に移ります。

 五番目、民間委託による職業訓練についてです。

 昨年四月十七日の厚生労働委員会で、我が党の加藤公一委員が坂口厚生労働大臣に質問をさせていただいております。これはどういうことかと申しますと、今政府の方で、五年間で五万人のキャリアコンサルタントを設けるという方針が出ております。しかし、その人たちがどこで働くのかということは余りはっきりしていません。私たち民主党の議員の中で今考えていることとしては、イギリスの民間委託の制度を私たちも、国も導入すればいいのではないかということでございます。

 厚生労働省とお話をしていて、私たちも民間委託していますとおっしゃるのです。しかし、どこに委託するのかはすべて官が決めているのです。しかし、イギリスの制度では、それは労働者の方が決める。そして、職業訓練を担当する民間企業は、労働者に投資をします。そして、その労働者がきちんと再就職できたら、その時点で補助金を成功報酬として与える。また、三カ月間雇用が継続していれば、その時点でさらに補助金を与える。そういった成功報酬型の職業訓練、民間活力の利用というのがされているわけです。

 このいいところは、どういった職業訓練をすれば再就職に結びつくのか、ここに民間企業同士の競争原理が働きます。そして、成功報酬ですから、政府の側としてもむだなお金を使うことはない、こういったメリットがあるんです。

 だから、今政府がやっている民間委託と私たちが言っている民間委託では、そういった意味で、市場原理を利用するという意味で大きな差があると思うんですが、大臣、今後、この、結果を見ての成功報酬という形の民間委託に関してはどのように取り組まれますか。

○坂口国務大臣

 一番最初、キャリアカウンセラーのお話が出ましたが、これは五年間で五万人ということで、十四年に約一万人できたというふうに思っております。

 それで、この人たちは、人によりますが、ハローワークで働く人たちもおりますし、それから企業の中でそれぞれ雇用問題をつかさどる人たちもおみえでございますし、また民間の職業関係の機関で働かれる人もあるだろうというふうに思っております。このキャリアカウンセラーの間でできるだけ、もうその皆さん方があらゆる地域で働いていただいていて、そしてその皆さんのいろいろの立場の情報を交換して、そして一つの方向に行けるように一つはしたいというふうに思っております。前提の話でございます。

 それから、その次に、民間機関に成功報酬的に費用を支払うべきではないかというお話がございました。

 それで、私は、どこの民間企業にお任せをしてもいい、どこでもいいということになってしまうと、これはやはり少しルーズになり過ぎる、余り適切でないところも入ってくるわけでありますから、どういう民間機関にゆだねるかという、そこの設定はやはりやらなければいけないんだろうというふうに思っています。その設定しました民間企業の中のどこに行くかは、それは個人にお任せをするということでいいのではないかというふうに思います。

 その後、その成果が、成功報酬にして、上がればいいし、上がらなければだめだ、それは確かにそういうことを考えなければいけないわけでありますが、今国がとっておりますのは、機関として多くの人を就職させた、そういう優秀なところに対しましては、より多くその人たちを優先的に委託するといったことをとっておりまして、直接的ではありませんけれども、間接的な競争原理というものを導入しているというふうに思っております。

 ここのところは、しかし、委員が御指摘になりますようなことは十分検討に値する話でございますから、今後とも検討していきたい、こう思っております。

○中村(哲)委員

 直接的な競争原理の導入については明確に検討するとおっしゃったので、今後検討していただきたいと思います。

 それでは、厚生労働大臣、ここで結構でございます。

 それでは、前回に引き続きまして、公務員制度改革について質問をいたします。六番目以降の項目であります。

 資料の三ページを見てください。これは、二月十三日の島聡委員による予算委員会の質問の未定稿でございます。島委員は、いわゆる公務員の採用試験の二・五倍、四倍問題について質問をしました。その中で、島委員は中島人事院総裁に、「あえて二・五倍という結論を出した理由を言ってください。」という質問をしました。それに対する中島人事院総裁の答弁は議事録にあるとおりです。少し引用しますと、「就職浪人というのがことしも昨年よりは多くなっておるということがございますし、」とおっしゃっております。また、多様な人材が確保できたかということについても、「必ずしもそういうふうになっていない」というふうにおっしゃっております。

 そして、これを受けての石原大臣の答弁の中にはこのように書かれております。「経過期間であるので二・五倍を維持したと総裁は申されていたんだと私は理解させていただきました」というふうに答えられています。

 しかし、これは、議事録で見る限り、中島人事院総裁がおっしゃっていることと、石原大臣が中島人事院総裁はこうおっしゃったということと、全く違うんですよ。中島人事院総裁は、経過期間であるので二・五倍にしたとは言っていないんです。

 それは、次のページから載っております、人事院の発表した資料にも明らかです。四ページ目は、一・九倍から二・五倍になったときの内定者の変異が書かれております。そして、五ページ目と六ページ目を比べていただきたいんですけれども、六ページ目が、十三年度の合格者の人らがどういうふうに採用されたかです。そして、五ページ目が、昨年どのように採用されたかです。

 この表を比べてみたら、採用されている大学というものはほとんど変わらない。そして、合格者がふえた分だけ採用されていない学校というのはふえているんですよ。ということは、必ずしも、合格増ということが多様な人材の確保ということにはつながっていないということは明らかなんです。

 そして、七ページを見てもらってもわかるとおり、官庁訪問の時期についても、ことしから改善が図られるということですけれども、最終合格の時期が早くなれば賛成ということで、こういったことはやはり就職浪人ということにも大きく関係してくるわけですね。

 さて、石原大臣、中島人事院総裁は経過措置であるので二・五倍を維持したと申されてはいないと私は思うんですが、この点についての認識をお伺いいたします。

○石原国務大臣

 私の言った意味は、平成十五年度採用試験の合格者の規模についてはもう一度二・五倍として様子を見てみたいと中島総裁が委員お示しの資料の中で言われておりますね、それを聞きまして、この延長線上のものと思われることから、私のボキャブラリーの中で、経過期間であるので二・五倍を維持した、そういう意味で言ったわけでございます。

○中村(哲)委員

 ということは、石原大臣も、人事院総裁がおっしゃっているように、一・九倍から二・五倍にふえたことで就職浪人がふえている、そういった問題、また、多様な人材を確保できたのかといったら必ずしもそうはなっていないという問題、こういった問題はあると御認識されているということでよろしいですね。

○石原国務大臣

 就職浪人という言葉が試験の内定者と採用された人との差を指しているとしたら、それはふえるのは当然ですよね、そういうふうに仕組んだわけですから。

 しかし、その一方で、省庁から話を聞いてきたという報告、一・九倍から二・五倍になったことによって多様な人材を採ることができた、そういう報告もありますので、そういう話もあるということも、委員ぜひ各省の人事担当者を呼んでいただいて聞くと、そういう事実を確認することは私はできると思っております。

 そして、合格者を出した大学数は、委員お示しの資料の中で、四十一校から五十八校とふえましたけれども、内定者を出すことができた大学数というのは実は同じですね、その表を見ますと。

 そういうことで、それをどう評価するかということは、現実に採用した省庁の人事担当者の話というものをぜひ聞いてもらいたいと思いますし、十四年度の地方大学からの内定者、これは内定者ですけれども、内定者の数は二割ぐらいふえている。こういうことをいろいろ考えていただきたいですし、昨年閣議決定をいたしまして、四倍程度ということを言っておるのですけれども、人事院の方も、もちろん三条機関的な独立機関でありますので、いろいろお考えになって決定されることはそれなりの意味があったと考えますけれども、やはり閣議決定の重みというものもこちらの方で十分配慮していただきたいというのが私の率直な感想でございます。

○中村(哲)委員

 石原大臣は、多様な人材は確保できていると各省庁の人事担当者は言っているというふうに今御答弁されました。これは、中島人事院総裁が十三日におっしゃったことと違っております。

 中島人事院総裁、この点に関しては、やはり石原大臣がおっしゃったことは正しいんでしょうか。

○中島政府特別補佐人

 それぞれの立場で受け取り方が違うんでしょう、きっと。

 私たちは、今お話しになりましたように、合格者を出した学校数が四十一校から五十八校にふえたけれども、内定者を出した大学というのは二十五校で変わりがない。しかも、内定者のいない学校が十六校から三十三校にふえたということでございます。

 そしてもう一つは、十三年と十四年とを比べました場合に、採用予定数というのが二十五人ふえている。二十五人ふえているけれども、その中の十三人が東大だということですね。それで、東大の中でもいろいろな人材がおるから、東大ばかり採用しても多様な人材が採用できたというふうに言うのか、それとも、合格者は出すけれども毎年採用されない大学が地方にたくさんありますけれども、そういうところからもやはり採用する方がより多様な人材を採用したということになるのか、そこらは受け取り方の違いじゃないかというふうに思います。

○中村(哲)委員

 この両者の答弁を見てもわかるとおり、人事院と石原大臣の見解は全く違うんですよ。そして、ここは受け取り方の違いということでぼやかしていますけれども、ここは実質的な議論が必要なんです。人事院の総裁が今おっしゃったような数が事実を物語っているじゃないですか。

 私は、ここで一つの提案をさせていただきます。それが、資料の八ページにありますイギリスの国家公務員の試験制度です。

 英国の場合は、ファーストストリーム育成プログラムということで、一番下に書いておりますけれども、合格者は省を選ばなければ最終的にはどこかに採用される、つまり一倍ということなんですね。そういう制度をつくっているんです。

 そして、具体的な内容はどういうことかと申しますと、資料に書いてありますとおり、この制度は、第二次大戦後、軍務に従事して教育の機会を失した優秀な人たちを公務から排除することがないように、知識の検証ではなく、面接、集団討論、模擬職務試験、これは大量の資料を分析して課題に対する解決策を起案する等の試験などを内容とする新タイプの試験が導入されたことが発端となっております。

 そして、九ページの資料の下のところにつけておりますけれども、その試験の担当責任者はこのように言っております。「他者理解、分析力、判断力等々の(試験の評価要素となっているような)資質はそう簡単に身につけることはできない一方、これらを有する優秀な人材であれば必要な専門知識は各省に入ってから身につけることができる」、だから「幹部候補の試験では専門知識よりも基本的資質の検証の方がずっと重要である」と言っているわけです。

 そういった意味で、このような形で試験内容を知識中心からこういった集団討論や模擬職務試験を中心とすることによって、倍率は四倍にしなくても、石原大臣が十三日におっしゃったような、予備校に通って特殊な勉強をした人しか受からない試験にはならない試験となるのではないでしょうか。石原大臣、いかがですか。

○石原国務大臣

 この点につきましては、中村委員と私の考えに差異はないなと。私も、このファーストストリームですか、これは非常に参考になると思って勉強したんですけれども、政府から民営化された、いわゆるエージェンシーの試験機関に委任されているということで、筆記試験を主体とした一次試験合格者は採用予定者数の六倍程度になっていて、ファーストストリームのこの表を見せていただきますと、二次試験では、議員の御指摘のとおり、集団討議あるいはマンツーマンの面談などが行われているということであります。これは私も承知しております。

 今回の公務員制度改革では、委員が御指摘されましたような、こういうファーストストリームに記載されているような内容、内閣の定める公正なルールのもとに、各府省が行う総合的な人物評価による採用を進めたい、そういうことを私どもは考えているわけでありまして、その考え方と、委員が御指摘されましたこのファーストストリームの考え方は非常に共通するものがある。

 それで、委員、一倍の話をされましたけれども、これを見ますと、二〇〇〇年九月、英国内閣府ヘロン・ファーストストリーム試験課長と、内閣府の方でこれをやっていて人事院ではないと思うんですけれども、日本の場合は、採用試験は人事院が行っております。人事院が面談試験まで行って、その後、三次試験という言い方は適切かどうかはわかりませんけれども、各府省が採用している。ですから、人事院の試験制度プラス各府省の最終面談までを公務員試験と考えるならば、実は一倍になるということだと私は理解しております。

○中村(哲)委員

 時間が参りましたので、本来、人事院にお聞きしたいところなんですが、質問を終わります。ありがとうございました。


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