2002年7月11日
第154回国会 衆議院 憲法調査会地方自治に関する調査小委員会
案件:地方自治に関する件
参考人:三重県知事 北川正恭 氏 →意見陳述を見る
[1]会議録抜粋 質疑10分
[1] 会議録抜粋
○中村(哲)小委員
民主党の中村哲治です。今、政治倫理審査会の幹事会があって、急遽の日程で抜けさせていただきまして、申しわけございません。
私は、知事の隣の奈良県出身の議員でございます。三重県の取り組みを県会議員などに聞いておりますと、かなり私たちの県と違うんだなと思います。今自治体間競争という時代に入ってきていると思います。知事のお考えとして、どういう点でほかの自治体よりまさっているのか、三重県としてはどういう取り組みを、ほかの都道府県と比べて先進的にやっているとお考えでしょうか。
○北川参考人
他県との比較は正直できかねる点がありますが、私が喜んでいるのは、一つは県議会との関係でございまして、緊張感のあるパートナーシップが確立できていると思うんです。
私は、平成九年でしたかに、三重県がやるべき事務事業は一体幾つあるか計算したら、三千三百ありました。三千三百のうち、先ほど申し上げた五つプラス一で県が公的に関与すべきでないというので調べたら、二百七十五本出てきたんです。それを意思決定する前に県議会にばっと出して、さああなた方どう思うというのをやったんです。当然、三重県議会は情報公開ですから、全部県民の方はお入りになっているわけですが、何と二百二本一遍にとれてしまったんですね。
それはほとんど補助金です。いろいろな団体の補助金とか、かつて県の実力者のためにとか、私、知事の集票マシンに変わるものだとかというのがあったんでしょうね、恐らく。そういう補助金がほとんどだったんですが、ほとんど一遍に取れてしまって、県議会の先生方もそこがきっかけになって、どんどんとタックスペイヤーの立場で我々に対して厳しい御注文をいただくことになって、本当にすっかり変わってきたと思います。
その背景は、私は地方分権一括法だと思います。機関委任事務が八割もありますと、やはり執行機関とうまくやってという思考回路になるんですが、原則廃止になりましたから、御自分たちがちゃんとチェックをしよう、あるいは条例を立案しようというふうに変わってきている背景もあり、情報公開もこれありで変わってくれて、三重県の改革は車の両輪で動き始めたというのが一つ。
もう一つは、県の職員組合との話し合いで、例えば特勤手当というのがありました。御自分たちで、いろいろ困難職場だとか危険職場は特別勤務手当がつくというもの。ところが、そんなの形骸化していて、同じ県庁の中で課が違うと、こういう部屋の中で、こっちは特勤手当はつくけれどもこっちはつかないという、そんなばかげたことがどこにあるのという話なんかを本気でやりまして、労使も共同委員会を開いて、マスコミ入れてやろうよという話を真剣にしました。五年かかりましたが、県の組合の委員長から、知事やろう、我々なれ合いはだめだからマスコミにも入ってもらってやろう、こういう申し込みをいただいて、私は大変喜んでおります。
さまざまなボトルネックはどんどん解け初めて、そしてこれも緊張感のあるパートナーシップが確立して、私は、組合ともあるいは議会とも、相当毎日厳しくやられていますから、つらいんですけれども、そういうことがあると大きなけがをしなくて済みますし、緊張感がありますので、マスコミの方も入られていますから、なれ合いととられないですから、そういった点で回転し始めている面は三重県はあるんだろう、そんな感じがします。
○中村(哲)小委員
今、自治体間競争の話からそういうふうな話を聞かせていただいたんですが、もう一つ、今のお話を聞くと、非常に緊張感のあるパートナーシップがなされているというのは、それは県民から見ても非常にわかりやすいなと思うと同時に、その動きなりが、今度は広域化しているときに、どういうふうに考えたらいいのかなということを思うんですね。
ちょっと趣旨がわからないと思うので簡単に申しますと、自治体間競争と同時に、今度は隣接する自治体との協力の話がやはり大切だと思っております。先ほど和歌山との森林の整備についてのパートナーシップというか協力についてお考えになられていると思うんですが、今後の道州制などもにらみ、県と県が協力していくことが広域化行政にとっては非常に大事だと考えているんですけれども、自治体間協力について知事はどのようにお考えでしょうか。
○北川参考人
積極的にやっていけばいいと思うんですね。それで機能分担をし合えばいいと思うんです。
例えば、紀伊半島がありますね。奈良、和歌山、三重と三県にまたがる半島は紀伊半島だけなんです。東京から離れているということでロストワールドになっていたということですね。それで、三県で協力して、熊野古道、あるいは紀伊の高野山に行く道、熊野三山に行く道なんかを一緒に世界遺産に努力しようというので、世界遺産暫定リストに載りました。あと二年かけて暫定リストを取って世界遺産に、我々の努力、うまくいけばなると思いますね。それは、大峯道も入っていますので、三県の協力があって初めてできるわけでございます。
そういうことはどんどんやろうということで、紀伊半島なんかでは、例えば防災も一緒に、ヘリを飛ばそうというのは一緒にやっています。あるいは、三重県の県民は、三重県の小学校か中学校に行くのに一時間もかかる、だけれども和歌山県に行くなら十分で行くというのには、そんなの取ったらどうというようなこともしています。あるいは警察の関係とか、そういったことで、お互いが協力し合ってやるということはとても重要なことだと思っておりますので、今後これは物すごく加速していくと思います。
その形が広域連合に変わってみたり、あるいは合併に行ったり道州制にというのは、やがてそういう方向に行くんだろう、そういう感じで取り組んでおります。
○中村(哲)小委員
機能分担というお話でしたが、今現実に協力をしていく上で、何かネックになっていることとか、文化の違いとかで困っていることとか、そういうことは見当たりませんでしょうか。
○北川参考人
いっぱいあります。こんなはずじゃなかったということの連続ですから、なかなか連携するとうまくいかないというのは、事実いっぱいあります。
しかし、時間をかけてやっていきますと、だんだん溶け合ってくるんですね。県の行政も、今まで情報非開示が一番大きかったんですけれども、全部悪いところは隠していたんでしょう、県のボーダーで。これを知事同士でやり始めると、職員じゃありませんから、どんどん取っ払った方が楽になるんですね。
そういう点では変わってきていると思いますから、まず、県の職員の行政に対する意識の改革度合い、感覚の違いが一番ネックになっているんだ、そんな感じがします。
○中村(哲)小委員
感覚の違いというのは徐々に取れてきているというふうにお感じになっておられますか。
○北川参考人
度合いはありますけれども、そのように確実に流れはできていると思います。
○中村(哲)小委員
私は、知事のきょうのお話をお伺いして、一つの県が頑張っていただくと周りの県が非常に活性化していくんじゃないかなということを実感しているわけでございます。
私たちの会派の議員でも、北川知事がおっしゃるから非常に勉強になるということをよく聞かせていただいています。例えばこの間、知事はきょうスーツを着ていらっしゃいますけれども、京都議定書の時代なんだから、国会議員は私たちがいつもやっているように開襟でやればいいんじゃないかというようなことを言われて、ああそうだなと言われたというふうに言っておったんですけれども、今後、理念の面で、地方の知事と国会議員の関係というのはどうあればいいとお考えでしょうか。
○北川参考人
先ほども申し上げましたけれども、食わず嫌いということもあれば、未知の世界でジェラシーもありますから、やはりいろいろな議論を忌憚なくやって、ああそうかとわかり合えることがあれば、すごく私は進むと思うんですね。
だから、私、先ほども申し上げたんですが、国会議員のときは知事っていいなと思っていますし、知事になったら国会議員っていいなと思って、勝手なものなんですね、立場立場で。だから、勝手同士がしゃべっていても何も解決できませんから、お互い忌憚なく話し合って、成果を上げていこうと。それは、一足す一が三とか五とか十になる。今、中央と地方の関係で、一引く一はゼロになる場合もあるんだろうと思っておりますので、きょうもちょっと、いささか失礼を省みずに申し上げているのは、私どもも一生懸命変わる努力をしますので、ぜひ御一緒に問題解決できればという意味で申し上げたつもりでございます。
○中村(哲)小委員
ありがとうございました。終わります。
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