2002年4月12日
第154回国会 衆議院 法務委員会
案件:商法等の一部を改正する法律案
商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案
[1]質疑内容 [2]質疑項目 [3]会議録抜粋
[1] 質疑内容(30分)「コーポレートガバナンスについて」
商法改正にちなんで、今国会では所属していない法務委員会にて、差し替えで質疑を行いました。
商法は頻繁に改正が行われますが、今回は、会社の機構を根本から変える大幅な改正です。大規模会社について、取締役の人事・報酬提案や、会計・業務監査を、取締役・社外取締役で構成する委員会に委ねる選択も可能にする、という内容です。アメリカ流企業統治(コーポレートガバナンス)をモデルとしているそうです。
このうち、監査を行う監査委員会について主に質問を行いました。現行法上、取締役と監査役の兼任は禁止されており、新制度では、取締役でもある監査委員に公正、中立な監査が可能か、疑問をぬぐいきれないからです。
大まかに言って答弁の内容は、@監査委員会の監査はほとんど執行役に対してである、A委員会の過半数は社外取締役である、B新制度か現行の監査役制度か選択できるにとどまっている、でした。@について、会社の業務執行は、取締役会から選ばれた執行役に委ねており、監査委員の監査は、執行役に及んでいれば足りる、とのことでした。また、執行役と監査委員の兼任は禁止されているので、監査の公正、中立性は確保される、とのことでした。これに対しては、取締役会にも重要事項の決定権限は残るので、依然として取締役会への監査は重要であり、取締役でもある監査委員が取締役会を監査するのは自己監査ではないか、と指摘をしました。
[2] 質疑項目
1.監査と監督の法律上の相違点
2.委員会等設置会社における監査役制度廃止の理由
3.監査委員会の選任方法の問題点
4.委員会等設置会社における企業統治の在り方
5.監査委員会の取締役の職務執行に対する監査権の有無
6.監査委員会を組織する取締役が取締役会の意思決定に参加することの適否
7.監査委員会を組織する取締役の任期
8.執行役と取締役を兼任することの適否
9.現代語化を含めた今後の商法整備のあり方
[3] 会議録抜粋
○中村(哲)委員
民主党・無所属クラブの中村哲治です。
大臣にまずお聞きしたいのは、法学上の一般的な言葉の使い方として、監査というものと監督というものの違いはどういうところにあるのかということをまずお聞きいたします。
○下村大臣政務官
私からお答えをさせていただきたいと思います。
現行の商法上、取締役会は、代表取締役の選解任権限や個々の取締役の業務分担の決定、変更権限を有しており、これらの権限の行使を通じて各取締役における適正妥当な職務遂行を担保するようにする役割を担っているものでございまして、これを現行の商法は監督と呼んでおります。
これに対して、監査役には、取締役会が有するこのような権限はないかわりに、報告徴収権、調査権等の権限が与えられており、これらの権限を活用して取締役の職務遂行に違法な点がないかどうかを調査し、そのような違法行為を発見したときには、取締役会に報告してその監督権限の行使のきっかけをつくったり、違法行為の差しどめを裁判所に請求したりすることができることでございます。このような監査役の職責について、商法は監査と呼んでおります。
○中村(哲)委員
政務官、私そんなこと聞いてないんですよ。法学上の一般的な言葉の使い方として監査と監督というのはどういうふうな違いがあるかということを聞いているわけでして、それは私が聞こうと思った次の質問です。
つまり、監査と監督はどう違うのか。普通に考えたら、監督というのは内部的なもの、上が下を監督したり、そういうふうな使い方だ、監査というのは第三者が部外者の立場から見てチェックをしていく、私はこういうふうなものだと思うんですよ。そういうふうな違いがあるんじゃないかな、そういうふうな言葉の使い方が一般法学上使われているんじゃないかな、そのように考えているんですけれども、その点についていかがでしょうか。
○下村大臣政務官
監査には内部監査と外部監査があるわけでございますが、一言で言えば、監督とは適法性それから妥当性、それから監査については適法性を有するということであると思います。
○中村(哲)委員
監査は違法性だけを判断する、監督というのは妥当性プラス違法性を判断するということだと思います。
次に、私は、委員会等設置会社についての質問をこれからさせていただきます。特に、特例法における委員会等設置会社において、監査役制度が使われなくなって監査委員会制度が使われることになる、そういうふうなことに対する問題点を私なりに分析したことを聞かせていただこうと思います。
それでは、本論に入ります。
監査委員会というものは取締役会から選任されます。監査委員会は、監査役のかわりならば、独立性が担保されなくてはならないのではないかと私は思います。それでは、なぜ選任されるという行為が株主でなく取締役が行うのか、それについて私は聞きたいと思います。
つまり、株主総会で選任されるべきではないのか、そういうふうなことをお聞きしたいんですけれども、そういう点についてどのようにお考えになるでしょうか。
○横内副大臣
この委員会等設置会社の監査委員会のメンバーである取締役、これは株主総会で選任されるんじゃなくて、取締役会で選任をされるということになっております。その点を御指摘だろうと思うんです。
この委員会等設置会社の取締役会というのは、一点は、従来の取締役会とちょっと違いまして、社外取締役が過半数を占める指名委員会によって取締役の候補者が選任をされる、また、同じく社外取締役が過半数を占める報酬委員会で個々の報酬が決定されるというようなことで、取締役会そのものが従来の取締役会と違って監督機能が非常に大幅に高められているわけですね。そういう取締役会で監査委員会のメンバーも選任をされるということでございます。
加えて、監査委員会のメンバーについては、その独立性を高めるために、その過半数が社外取締役でなければならないということにされていることと、それから、その会社や子会社の執行役を兼ねることができないということにされているということにしておりまして、そういう意味で独立性は確保されているというふうに思います。
○中村(哲)委員
今の副大臣の御答弁をさらに深めて聞きますと、取締役制度全体として取り組んでいるので、端的に監査役の制度と監査委員会の制度を比べることはできないというふうに考えていいんでしょうかね。
つまり、監査役というのは取締役会からかなり独立性が高い制度ですよね。しかし、この新しい制度というのは、取締役会から選任されて、取締役会と監査委員会との関係においては、監査役と比べれば独立性は低いかもしれないけれども、指名委員会なり報酬委員会なりの制度とセットされていることによって、全体としてガバナンスが確保されているというふうに考えてよろしいんですか。
つまり、監査役から比べれば監査委員会は取締役会に対しては独立性が担保されていないかもしれないけれども、全体としてガバナンスは確保されている、こういうふうな考え方の違いがあるんだ、そういうことでしょうか。
○横内副大臣
御指摘のとおりだというふうに思います。
委員が独立性と言ったときに何に対する独立性かということがあるわけですが、恐らく現在の監査役制度ですね。これについて独立性が問題になりますのは、いわゆる代表取締役、社長に対して監査役が独立していないという問題があって、そこで、昨年の臨時国会で、いわゆるコポガバ法で監査役の会社の代表取締役に対する独立性を強めたということがありました。
今回の委員の御指摘も、今度は業務を執行するのはいわゆる執行役ですから、執行役に対してこの監査委員会が独立性がちゃんとあるかどうかという御指摘だと思うんですけれども、その点は御指摘のように、取締役会そのものが独立性が高まっているということと、それから同時に、監査委員会メンバーについては特別に、執行役を兼ねることができないとか、そういう独立性を高める規定が設けられているということで、全体として独立性が確保されているというふうに考えているということであります。
○中村(哲)委員
その観点をもう少し具体的に詰めていこうと思います。
監査委員会は、取締役の職務執行を監査しないのか、また取締役会自体を監査しないのか、その点についてお聞きします。
というのは、これは法務省からいただいたカラーの組織図のペーパーなんですけれども、監査委員会から矢印は、執行役の方に伸びているんですけれども、取締役会の方に伸びていないんですね。点線で私がこういうふうに引いたのは、これは手書きで私が自分で入れたんですけれども、これは、点線が入っているように、監査委員会から取締役、取締役会の方にも監査はされているんじゃないか。法文上見てもそうじゃないかと思うんですけれども、この点について、いかがでしょうか。
○横内副大臣
委員の御指摘のように、この絵は間違いでありまして、おっしゃるように監査委員会から取締役会に線が伸びてなきゃいけない。ある段階まではこれはあったんですけれども、委員にお渡ししたこの資料の段階でその点の間違いがありまして、その点はおわびを申し上げます。
○中村(哲)委員
つまり、これは矢印が書いてあったらどういうことをみんなぱっと見て思うかというと、選任したメンバーから監督されるんやからおかしいんちゃうかということを、図にきちんと書いてあると、そういうふうに思うわけですよ。それが書いていないことによってその辺がぼけてしまう。そういうふうな問題点があるんです。
だから、誤りであったということは、こういう法案説明するときのこれはわかりやすい資料ですよね、こういうわかりやすい資料のときに重要な要素が外れているということは、これは法案審査の前提を欠きますよ。本当に、こういうことはやはりきちんと取り組んでいただかないといけない。その点についてどのようにお考えでしょうか。
○横内副大臣
御指摘のとおり、そういう誤りがあったことについては申しわけなく、おわびを申し上げます。
○中村(哲)委員
もっと法文をちゃんと読んでください。
それじゃ、具体的にもっと詰めていきますね。
こっちに対して監査しますよね。今度、ここに書いてありますけれども、取締役会は「取締役の職務執行の監督」と書いてあるんですよ。つまり、監査委員会のメンバーに対してもこれ
は監督するんでしょう。それはどうなんですか。
○横内副大臣
御指摘のように、監査委員会は、執行役の職務執行は当然監査するわけでありますが、取締役の職務執行についても監査を行うということでございます。ただ、委員会設置会社におきましては、業務執行を行うのは執行役でございますから、監査委員会の監査というもののほとんどは執行役に対する監査になるわけですね。
ただ、そうはいっても、監査委員会の監査は取締役についても行う。具体的には、取締役も取締役会への出席ということが一つありますし、それから、執行役から取締役会の招集通知を受けたときには取締役会の招集を行わなければならない、そういう職務がありますので、そういう職務がこの監査委員会の監査の対象になるということでございます。
○中村(哲)委員
それと関連して、取締役会は基本的経営事項に係る業務執行の意思決定を行いますよね。その意思決定には、監査委員会のメンバーである取締役も参加するんですよね。それなら、監査委員会が取締役会を監査するのに、自分がメンバーとして参加して決定した取締役会での決定をどのようにして監査することができるのか。
これは自己矛盾じゃないかと私は思うんですよ。これは、やはり制度的に非常に無理があるんじゃないか。取締役会から選任された監査委員会が、自分もメンバーとなっている取締役会の決定をまた監査する、そういうふうなスキーム自体が論理矛盾になっているんじゃないか。
むしろ、監査委員会のメンバーは取締役会の議決権がない方が合理的なのではないかとさえ思います。監査委員会の取締役は、みずから判断する取締役会の決定に対してどのようにチェック、監査するんでしょうか。
それについて副大臣のお考えをお聞きいたします。
○横内副大臣
先ほども申しましたように、監査委員会は、業務の執行を行うのは執行役でありますから、執行役の業務の執行に対する監査というのがほとんどの仕事になるわけです。しかし、取締役についても一定の職務がありますから、それについても監査をするということでございます。
そこで、委員がおっしゃる、自己監査みたいなものじゃないかという御指摘は、あるいは御指摘として確かにあると思うんですけれども、あくまでも監査委員会の監査のほとんどの部分は執行役の業務執行に対する監査であるということは御理解をいただきたいというふうに思います。
おっしゃるように、一部、取締役会の職務についての監査もあるんですけれども、その限りにおいては確かに自己監査ということになりますけれども、その点は、監査委員会の監査が実効性をしっかり持てるようにいろいろな手当てをしております。
例えば、今度の改正後の商法特例法の二十一条の七の第一項二号でありますけれども、監査委員会の活動を補完する内部統制システムをしっかりと構築させるということにしております。具体的には、監査委員会の事務局といいましょうか、監査委員会をサポートする手足となるようなそういう内部監査室的な組織をしっかりつくって、そこで監査をきちっと適正に行う、そういう監査の実効性を高める措置は別途とっております。
○中村(哲)委員
内部統制システムをとられるということですから、その点についてはしっかり取り組んでいただきたいと思うわけです。
次の質問に移りますが、関連して、そうであれば、監査委員取締役の任期が一年ということは任期として短いんじゃないかなと思います。
監査役の任期が三年から四年になった。前は二年だったですよね、二年から三年になって、次、去年の改正で三年から四年になった。これというのは、任期を長期間にすることによって、きちんと監査の実を上げようという観点だったと思います。
私は、監査役が四年というふうに任期が長くなってきたということと比較したら、やはり、監査委員取締役の任期も四年にすべきではないか、そのように考えるんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○横内副大臣
監査委員会のメンバーも取締役でありますので、今回の委員会等設置会社の取締役の任期は一律一年であるというふうにしていることとの関係で、同じように、この監査委員会メンバーたる取締役についても任期を一年として、信任するかどうかは毎年の株主総会に諮るということにしております。
そうはいっても、監査委員会のメンバーというのは、社外取締役が過半数を占める指名委員会で候補者の人選がなされておりますし、そういうことで適切な人選が行われる仕組みができておりますので、監査委員会のメンバーの再任が不当に妨げられその地位が不安定になるというようなことはないというふうに思っております。
○中村(哲)委員
その点についてはもう一度後でお聞きしたいと思うんですけれども、そもそも、この委員会等設置会社において、それを選択した場合に監査役が置けないということに問題があると思います。
中間試案のときには、置いてもいいし置かなくてもいいという選択制になっていたと思います。つまり、委員会設置会社を選択した場合に監査役を置くのかどうかも中間試案では選択制だったですよね。しかし、今回、法案になったときに、監査役は置けないようになりました。これはどういうことなのかということを思うわけでございます。
私は、置けるかどうかも選択制にすべきではないか、つまり、三委員会プラス監査役併存の形というものもやはりとるべきなのじゃないか、さらに進めて、むしろ、監査委員会制度自体をなくして監査役制度を残した方がいいんじゃないか、つまり二委員会プラス監査役制度というふうにした方がいいのではないかとさえ思っておるわけでございます。この点についての法務省の御意見をお聞きしたいと思います。
○横内副大臣
今、試案の段階では併存を認めているという御指摘がありましたが、中間試案の段階では、もうそういう案は消えております。
それで、監査役と監査委員会の併存を認めてもいいんじゃないかという御指摘でございますけれども、この委員会等設置会社の制度というのは、取締役会が業務執行者に対する監督を行う、そういう監督強化の手法としてこの委員会等設置会社の制度を設けているわけでございます。
そこで、委員会等設置会社に別にまた監査役を残すということにしますと、監査という同一の職務を担当する機関が会社の中に二重に存在をするということになりまして、組織がいたずらに複雑になる。また、相互の権限調整、お互いにそれぞれ権限が例えば重複したりとか、その辺でまたそごが生ずるというおそれがあるということもありますので、委員会等設置会社というのは、業務の執行は執行役がやる、その執行役に対する監督というのは取締役会がやるんだ、その取締役会の中の機関として監査委員会が監査をやる、そういう仕組みにしているということでございます。
○中村(哲)委員
副大臣、まず事実確認なんですけれども、中間試案の第十九の一の2には「1の場合においては、会社は、監査役を置くことを要しないものとする。」と書いてあるだけでありまして、これが現行法のように置くことができないということと同じ意味なのかどうか。私は、これはやはり表現が違いますから、置くことを要しないという表現と置くことができないというのは明らかに違うと思いますよ。大臣、答弁を撤回してくださいよ。
○横内副大臣
確かに置くことを要しないと書いてあるわけでありますから、その読み方として、置いても置かなくてもいいというふうに読めるのかもしれませんけれども、そこの意味は、もう置かないということで、そういう趣旨で書いてあります。そのことは、法制審議会の委員の皆さんもそういう認識でその試案は受けとめております。
○中村(哲)委員
この表現上のことでがたがた言っても仕方がないので、次へ行きますと、結局、執行役と取締役の兼務を可能にしたことが何でなのかなということを思うわけですね。先ほど副大臣の御答弁にありましたように、指名委員会というのが非常に大きな権限を持つわけですよね。それで、執行役と取締役のメンバーは兼ねられますよね。ということは、この指名委員会の社外取締役でないメンバーにも代表執行役というのは入ることができますよね。こういう制度になっていますよね。
これというのはおかしいんじゃないかな。現行制度は取締役と監査役とを兼ねることはできませんよね。そういうことから考えると、代表執行役が取締役の議長にもなる、そして、指名委員会の、これは互選ですから委員長になれるかどうかわかりませんけれども、そういうトップになることになったら、結局そういうふうなチェックシステムも働かなくなりますよね。だから、独立性というのは担保されなくなるじゃないですか。
先ほど副大臣のおっしゃることをお聞きしていたら、今回のこの委員会システムというのは、執行役と取締役というのを、いわば今までのような執行役の方が取締役会に当たって、今度、取締役会の方が従前の監査役なり監査役会に当たるというふうなすみ分けというふうに考えれば、代表執行役なり執行役と取締役会のメンバーというのが兼ねられるというのは、やはりこれはおかしいんじゃないかな、そういうふうに考えるのですけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。
○横内副大臣
この委員会等設置会社というものの目的は、監督と執行を分けるというのが主たる目的でありますから、それを徹底していけば、委員の御指摘のように、執行役と取締役との兼任は認めるべきではないという議論も、議論としては確かにそれはあると思います。
ただ、他方で、監督機関である取締役会の構成員である取締役の中に執行役を兼務している者がいた方が、会社の業務執行の状況とか会社の内情を把握することが容易になって、監督権限の適切な行使に資するという面もあるというふうに思います。
この制度は米国の制度を参考にしているわけでありますけれども、米国においても、執行役員と取締役の兼任というのは制限されておらず、執行役員の一部が取締役を兼ねるのが一般的であるというふうにも言われております。
そういうことで、この改正法案においては、取締役と執行役の兼任を法律で一律に禁止することはしないで、執行役を兼務する取締役を置くかどうかというのは、会社の選択に任せることにしたということでございます。
○中村(哲)委員
米国でも認められているというふうなことでしたけれども、米国の制度が本当にいいのかどうかということを考えないといけないですね。
エンロン事件が何で起こったのか、そういうふうな反省はきちんとしているのですか。やはりCEOが巨大な権力を握り過ぎたがゆえにエンロン事件が起こったと言われております。アメリカの現実にその制度で起こっている問題に関して反省なしにそのまま輸入するということは、これは日本の主体性が問われますよ。
厳しいことを言うようですけれども、余り時間もなくなってきましたが、本当にこの点については検討しないとだめですよ。それはどのようにお考えでしょうか。ちょっと確認させていただきます。
○横内副大臣
米国のこの制度を無批判に取り入れているというようなことは、これは全くないわけでありまして、法制審議会で専門の委員が十分な議論をして、もちろん、米国のその制度についても十分な検討をした上で、我が国に合う制度として、しかも選択制で、従来型の制度と新しい制度との選択制で導入をするということでありまして、決して米国のその制度を無批判に取り入れているということではございません。
○中村(哲)委員
大臣に、これまでの審議の感想と、それから、商法典というものを今後どうしていくのかということをお聞きしたいわけです。
私も法学を勉強してきて思うのは、この商法典は片仮名です。普通の人が読もうと思っても読めません。句読点も打ってありませんし、また、枝番号が多いので体系的な理解というものがなかなかしづらい、そういうふうな法律です。また、有限責任社員法が、この商法典と有限会社法、また、きょう話題となりました特例法とに分かれております。こういうことを考えても、会社法典という形で、商法典とは分離して、現代語にして、本当に若い世代が勉強しやすいような法律にしていかないといけないと思うのですね。
特に、ロースクールが始まりますし、実務法律家というのがたくさん出てこなくちゃいけない、そういう時代に入ってきます。ということになると、やはり日本が主体性を持って会社法典というものをきちんと整備していく、こういうことが必要だと思います。
きょうの先ほどのエンロンのことも踏まえまして、どのように会社法制を整備していくのか、お考えをお聞かせください。
○森山国務大臣
いろいろと御指摘をいただきました点、大変参考になったと私も思っておりますが、これからの検討課題といたしまして、おっしゃいましたように、片仮名で書いてある、非常に古い時代にできた法律、その後必要に応じて改正を続けてはきておりますけれども、しかし、若い人が勉強しやすいように、現実の社会でもっと使いやすいようにということは、当然必要なことだと思います。
平仮名の口語体の表記ということもいろいろなところから要求されておりまして、私どももその必要性を感じておりますので、そのことも含めて、スケジュールといたしましては、会社法全体の整合性を図ることも含めましてこれから検討いたしまして、私どもの予定といたしましては、平成十七年の通常国会にお出しすることができればというふうに思っております。
○中村(哲)委員
平成十七年ということは二〇〇五年の一月から始まる通常国会だと考えてよろしいかと思います。あと三年という時間ですから、まあ短いのか長いのかよくわかりませんが、私としては、できるだけ早く、前倒ししてでもやっていただきたいなと思います。
それじゃ、最後にコーポレートガバナンスという意味で、一点聞かせていただきたいと思います。
去年の十一月二十七日に平岡秀夫委員がお聞きしている点でもあるんですけれども、完全親子会社、いわゆる持ち株会社を円滑に創設するために、株式交換、株式移転の制度が一九九九年に商法改正によってつくられました。その後、株主代表訴訟において、もとの会社の株主が、完全親会社、持ち株会社の株主となることによって、代表訴訟の当事者適格、原告適格をなくしてしまうのではないかという法律的な論点があります。
これに関しては、今、現行法律では解釈が二つあって、当事者適格はあるという立場とないという立場があると思います。しかし、地裁の判断というのは、多分これは分かれ得るんじゃないかなと思います。現に、興銀事件においては、みずほホールディングスの株主になった株主からの代表訴訟に関しては、平成十三年三月二十九日、訴えの却下判決が出ております。それは確定しております。大和銀行の株主代表訴訟においては、これは和解が成立しておりましたよね。
これは非常に問題があると思うんですよ。この間の読売新聞の記事によって、上村達男早稲田大学法学部教授も、これが問題だと。先ほどアメリカの話がありましたけれども、「アメリカでは、持ち株会社の株主による子会社取締役への株主代表訴訟は昔から認められている。」と書いてあるんですね。
アメリカに制度を倣って会社法を整備しているんであったら、代表訴訟においても、きちんと子会社に対する責任も認めるように法改正しないといけないんじゃないですか。それはどのように、副大臣、お考えになっているんでしょうか。
○横内副大臣
今御指摘がありましたように、会社が持ち株会社になった場合に、株主代表訴訟が提起をされていたその株主の株式というのは持ち株会社の方の株式に移転していくわけですね。それに伴って原告適格を失うんじゃないかという議論は、確かに議論としてあるわけでございます。そして、これについて、今委員も御指摘になりましたように、その株主は原告適格を失うという判断を示した地方裁判所の判例が一件ございます。
ただ、この点については、株式移転後も株主の原告適格が維持されるという有力な見解もございまして、今のところ見解が大きく分かれておるというふうに言ってよろしいと思います。
さらに、これに関連しまして、仮に原告適格が失われるとした場合に、株式が移転しますから、今度は持ち株会社の方がその訴訟を引き継ぐのかどうかという議論もありますけれども、この点についてもまた学界の議論が分かれているということでございまして、これは見解が今のところ大きく分かれているというのが現状でございます。
したがいまして、判例や学説のこれからの動向というものをよく見きわめていきたいというふうに思っておりますけれども、万が一、今後の株主代表訴訟の実情から株主の利益が不当に害されるような事態が生ずることがあれば、所要の立法措置を講ずることも検討してまいりたいというふうに思っております。
○中村(哲)委員
委員長、今の答弁は、答えていないと思うんですよ。今、現行法制の解釈の問題をおっしゃいましたけれども、私は政策判断を聞いております。そういうふうな議事進行での御指導もよろしくお願い申し上げ、時間が参りましたから、私の質問を終わらせていただきます。委員長には、今後、どうかよろしくお願いいたします。
終わります。
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