2002年2月28日
第154回国会 衆議院 憲法調査会地方自治に関する調査小委員会

案件:地方自治に関する件

参考人:筑波大学教授  岩崎美紀子 氏  →意見陳述を見る

[1] 質疑内容   [2]会議録抜粋


[1] 質疑内容(10分)「首都機能移転について」他

今国会から、よりテーマをしぼって少人数で議論するため、憲法調査会は、4つの小委員会に分かれました。「地方自治に関する調査小委員会」、「国際社会における日本のあり方に関する小委員会」、「基本的人権の保障に関する調査小委員会」、「政治の基本機構のあり方に関する調査小委員会」です。
このうち最初の2つの小委員会に所属しています。地方自治小委員会では、地方分権のすすめ方、たとえば、道州制導入や市町村合併などを議論し、国際社会小委員会では、日本の国際貢献のあり方などを議論します。
早速、第1回の地方自治小委員会で参考人質疑を行いました。
この日は、まず、参考人の岩崎美紀子筑波大学教授が、地方分権のすすめ方として、連邦制や道州制についての持論を述べていただきました。その中で、連邦制を選択する理由として文化的アイデンティティーをあげられました。
そこで、連邦制か道州制かに関わらず、地方分権をすすめ、地域文化性を育てる観点から、首都機能移転についてお尋ねしました。首都機能を移転させると、現在、東京からの情報発信に偏っているマスメディアを地方に分散させることができる、と考えたからです。岩崎先生によると、インターネットによる情報発信をすすめることが、情報発信の多元化につながる、とのことでした。
政令指定都市と府県との関係についてもお聞きしました。政令指定都市は、直接国と結びつくことになるので、府県と業務が重なることも出てきており、どう関係をとらえればいいのか、お尋ねしました。これに対して、岩崎先生は、府県のもとに置かれない人口100万人規模の特別市というものも、考えてみてはどうか、とのことでした。

[2] 会議録抜粋

○中村(哲)小委員

 民主党の中村哲治でございます。

 本日は、大変示唆に富んだ御教示をいただきまして、ありがとうございました。
 先生がおっしゃいました、今は相互浸透の形である、それを相互依存の形にしていかなくてはならない、すなわち、それぞれが自立する中で、地方自治体と国が協力していく関係をつくっていかないといけないというのは、まさにそのとおりだと実感しました。

 我が党民主党が一番大きな政策の柱として地方分権を訴えておりますのも、そういうふうな、地域が自立する中で共存していく、そういうふうな形がこの国に今一番大切なことではないかと考えておることからも、本当に親近感を持って聞かせていただきました。

 まず先生にお聞きしたいのは、地方分権を進める上で、地域文化性と地域政党とが、どちらかが必要なのではないかということをお話しなさいました。私は、その中で、マスコミの果たすべき役割というのは非常に大きいのではないかということを実感しています。

 日本では、テレビの場合はマスメディア集中排除原則がありますので、地域ごとに、特に都道府県単位にテレビが置かれることになっておりますが、キー局の制度がありますから、どうしても東京からの文化の発信に集中してしまっているのではないかと実感しております。地域政党ができるにしても地域文化性ができるにしても、まず東京からの文化の発信の一極集中というものを排除する必要があるのではないかということを今実感として持っております。

 その一つの解決の方法として、首都機能の移転ということもあるかと思いますが、先生の首都機能の移転についての御意見をお聞かせください。

○岩崎参考人

 首都機能移転ですが、首都機能というのが一体何を意味するのかというところで、移転する意味があるのかないのかが決まってくると思うわけであります。つまり、地方分権が進んでいけば、首都機能は、いわゆる中央政府が小さくなっていくわけでありますので、肥大しているので移転して小さくということであれば、それはただ引っ越しをして小さくなるわけでありますので、それはちょっとないと思うのです。見えざる遷都と昔言いましたけれども、地方分権を進めれば大分違ってくるのかなという気がします。

 ちなみに、首都機能移転論が出てきたときに、私もちょっといろいろ勉強しておりますと、小さな首都というのは、連邦国家は小さな首都なんですが、オタワ、キャンベラ、ワシントン等々そうですが、連邦制のもとでの首都というのは、プレース・オブ・パーラメント、国会のある場所というのが首都になっています。

 しかしながら、単一国家の首都というのはすべて集中していますので、プレース・オブ・パワー、権力の場所というふうになっておりますので、権力の場所というところを、少し権力、権限を地方分権していくと、それほど首都機能移転の必要はないのかなという気がします。

 ただ、東京にずっとあってというところは、心機一転するにはいいかなという気がしますけれども、それは余りにも、もうちょっと理論武装が必要かなという気がします。

○中村(哲)小委員

 少し議論の順序が逆だったのかもしれません。

 私が申したいのは、地方分権するためには、先生がおっしゃったように、地域文化性ないしは地域政党が必要である。私は、マスコミの分化がなければ、地域文化性なり地域政党というのはできないのではないかということを実感しております。

 例えば、私が生まれ育ったのは奈良なんですが、大阪文化圏。私の選挙区に住んでいる人たちも、奈良に勤めに行くというよりは大阪に勤めに行く人が半数程度いるということで、関西全体で考えることによって、一つの地方分権、広域行政のあり方というのが志向できるのではないか、目指していけるのではないかということが実感としてあるわけです。

 しかし、関西圏の中で、マスコミないしそういうふうな文化発信が、大阪、京都、兵庫、また奈良、そういう一体となったマスコミのあり方がなければ、関西州というか関西圏を中心とした広域の自治体というのはできないのではないかと実感しているわけでございます。それをつくっていくためのインセンティブとして、まず、経済の中心である東京と国会の存している場所とを分けた方がいいのではないか。

 先ほど、権力の集中だとおっしゃいましたように、日本の場合は議院内閣制をとっているわけですから、国会のある場所と中央官庁、官邸のある場所というのは、恐らく同じ場所になるかと思います。そうすると、必然的に官邸情報ないしは国会情報を伝えるマスコミの機能は、首都機能の移転によって東京から違う地域にもたらされる。そうすると、キー局の機能というのも東京一極集中ではなく、必ず首都が移転された地域と東京と、二つの情報発信基地といいますか、地域が必要になってきます。

 そういう意味で、地域の文化性、地域政党を育てるという観点から、マスコミを分散化させる必要がある。そのために、首都機能の移転というのは、手段として有効ないしは必要なのではないかという観点からお聞きしたかったわけでございますが、その点について御意見いかがでしょうか。

○岩崎参考人

 おっしゃるように、ちょっと順序を逆にお答えしてしまって申しわけございませんでした。

 マスコミがかなり東京に集中しているというのは、これは見えないところでいろいろな東京浸透、東京のいろいろな文化が出ていくということで、見えない集権化という気が本当にいたします。それを分けることで、地域文化性が育てられるというのは仰せのとおりだと思います。

 確かに、マスコミの報道を見ておりますと、ほとんど東京発信型でありますので、私も筑波ですから、茨城の端で、何か東京のニュースばかり見ている気がするわけでありますけれども。

 少し救いになるのは、インターネットが大分出てきましたので、一方的に送りつけられる映像だけではないのを見ることができるので、そういう意味で、マスコミを分散させることではなくて、新たな発信ができる情報づくりというので、インターネットという新しいメディアでやっていくことで、この問題は少し動かせるかなという気はしないわけではありません。

 関西はやはり文化の一大拠点でございますので、逆に東京に拮抗し得るような関西文化というのがあるわけですから、その辺で頑張っていただけることがほかのところにも大きな力になるのではないかなという気がします。

 首都機能移転については、多分政治と経済を分けていくということだと思いますけれども、それも考えていく一つの意味はあると思っています。

○中村(哲)小委員

 インターネットが地域情報の共有化に非常に役に立つというのはまさにそのとおりだと私も実感しておりまして、それも実践していかないといけないなと思いながら、メールマガジンやホームページをつくっているところであります。

 最後に、政令都市と府県との関係について、ちょっと違う次元の話なんですが、お聞きしたいと思います。

 と申しますのは、政令市というのは、政令市になってしまうと、国と直接結びつくことになりますから、府県との関係がまたずれてしまう。例えば、大阪府の元職員であった方にお聞きしたんですが、大阪市と大阪府、同じ大阪にありながら非常に仲が悪い。

 例えば女性支援センターをつくるにしても、大阪市は大阪市の中につくる、大阪府も大阪市の中につくる。同じものが二つできてしまう。そういうことを考えましても、道州制という言葉がいいのかわかりませんが、こういうふうな地方分権をやっていく中で、政令指定都市と府県の関係というのはやはり見直していかないといけないのではないか。今の状況は不幸だと思うんですけれども、それについてのお考えをお聞かせください。

○岩崎参考人

 昔、特別市というのがございましたけれども、一層制というふうに言っていいのでしょうか、府県のもとに置かれない、そういう特別市構想というのがあったわけであります。

 政令市がすべてそういうふうになるかならないかはちょっといろいろ問題があると思うのですけれども、どちらかというと、動きとしては、都市自治体はより自立する方向でいかないと、日本のように、可住地の面積が少ない、森林率七〇%くらいの国土の中で、それ以外のところに百万以上の都市が十個ぐらいあるというのは世界でも珍しいわけであります。そうすると、都市自治体がある程度自立をしていくということがかなり重要なのかなという気がしますので、私は、特別市構想というのは実はひそかに応援をしているわけであります。そうなると、どうしても府県のことを考えざるを得なくて、道州制になってしまうのかなという気はしています。

 デザインを組むのは非常に大変ですけれども、まず都市の自立というのを考えることも、ダブらないという意味で効率、それから人々のアイデンティティーということで、より強いアイデンティティーが求められるかなという気がします。

○中村(哲)小委員

 たくさん聞きたいことはあるんですけれども、時間が参りましたので、ここで私の質問を終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。

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