2001年11月20日
第153回国会 衆議院 総務委員会

案件:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案

[1]質疑内容   [2]会議録抜粋


[1] 質疑内容(30分)「インターネットプロバイダーの責任軽減について」

インターネットが普及するにつれ、たとえば、ホームページ上に他人の名誉を傷つけるような記載が増えてきています。プロバイダー業者は技術的にこのような記載を削除しようと思えばできます。

そこで、一定の場合、プロバイダーが記載を削除しても発信者から損害賠償請求を受けないように法定しました。また、名誉を傷つけられた被害者が発信者に損害賠償請求を起こすため、一定の場合、プロバイダーが被害者に発信者が誰か情報を開示することも、あわせて定めました。

 この法律は、インターネット上の他人の権利侵害を救済するはじめてのルールとなります。新しい裁判制度だけに、委員会質問では、プロバイダーがどう行動すればいいのか、分かるようにこころがけました。たとえば、発信者情報を被害者に開示するには、前もって発信者に開示してもいいか、「照会」をしなくてはなりません。もし、この「照会」にちなんで、発信者が開示に不同意であれば、プロバイダーはどうすればいいのかは、副大臣の答弁では、裁判例の積み重ねによるしかない、とのことでした。

[2] 会議録抜粋

○中村(哲)委員

 おはようございます。民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 私は、この法律は、民法七百九条の不法行為の要件を明確にするための法律だと考えております。公権力が表現に直接に規制を加えるというのではなく、民事上のルールを定めることにより、私的自治の範囲内でネットの世界の自主規制を誘導しようとするものだと考えます。そういう趣旨のもとで、基本的には賛成の立場で、参議院の審議に引き続きまして質問をさせていただきます。

 この法案では、参議院での大臣の御答弁や副大臣の御答弁にも見られるとおり、他人の権利を侵害する違法情報についてのルールづくりであって、有害情報については対象外だということですが、そのことをまず確認させていただきます。副大臣、いかがでしょうか。

○小坂副大臣

 中村委員におかれましては、法案の趣旨を基本的に御理解いただきまして、ありがとうございます。

 御指摘のとおり、本法案は有害情報については対象外としております。本法案は、インターネットのウエブページや電子掲示板等で流通する情報によりまして個人の権利の侵害があった場合に、プロバイダー等の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利を定めているものでございます。

○中村(哲)委員

 その上で、違法情報について、この法案について反対の人たちからは、他人の権利という概念はあいまいであり幅広く解釈されるおそれがあり、違法とは言えない情報に対してまで通信事業者の自主規制によって送信を防止する措置、三条一項、二項がとられるおそれがあるという批判があります。

 これに対しては、本法律における他人、権利、侵害という言葉、用語は、一般司法上の不法行為について定めた民法七百九条の、条文を読みますと、「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」という条文の、他人の権利を侵害するという言葉と同義であるという回答があり得ると思います。つまり、本法律の他人の権利の侵害の法文解釈については、民法七百九条の法文解釈がそのまま当てはまり、従来からの解釈の積み重ねがそのまま適用されるので、反対派がおっしゃっているような幅広く解釈されるおそれはないということがあると思います。この点について確認させていただきます。

 本法律案の他人、権利、侵害は、民法七百九条に規定する他人、権利、侵害と同じものなのかどうか、総務省の見解を伺います。

○小坂副大臣

 中村委員御指摘のとおりでございまして、民法七百九条に言います他人の権利の侵害と同義であると考えられると思います。

○中村(哲)委員

 さて、そうだとして、本法律案における他人の権利の侵害として考えられるものとしては、具体的に何があるのでしょうか。恐らく、名誉権、プライバシー、著作権の三つが考えられますが、いかがでしょうか。そのほかには何があるでしょうか。よろしくお願いいたします。

○小坂副大臣

 委員御指摘のとおりでございますが、本法案において対象とされております権利侵害は民法上の不法行為に該当するものでありまして、したがって、情報の流通によって生じた特定の個人の法益の侵害であれば該当するものであります。

 権利侵害の種類は、特に限定はいたしておりませんが、想定される権利侵害としては、御指摘のような名誉毀損、プライバシー侵害及び著作権侵害などが考えられると思います。

○中村(哲)委員

 その三つ以外には具体的には、ほかには何があるかということに関してはございませんでしょうか。

○小坂副大臣

 あとは、商標権とかそういった権利が考えられるかと思います。

○中村(哲)委員

 さて、この法律案に対しては、発信者、被害者、特定電気通信役務提供者、すなわちプロバイダーの三者によって、それぞれの立場からの受けとめ方があると思います。それぞれの立場から、いろいろな思いでこの法律案については意見があることだと私は認識しています。

 そこで、総務省としては、この法律は最終的には何によって法の目的を担保するとお考えでしょうか。私の理解では、この法律の成立や施行後に、最終的には裁判所が判断すること、つまり、被害を受けた者が裁判所に訴え、三者それぞれが、権利侵害の局面や情報削除の局面など、その時々の局面でどのように判断したのか、その判断が適切であったのかということを裁判所が判断するということで被害者の利益と表現の自由との調整を担保していると考えておりますが、その点についてはいかがでしょうか。

○小坂副大臣

 最終的にはどうかということであれば、裁判所による判断ということになります。
 ただ、当省といたしましても、プロバイダー等が対応に困ることのないように、法律の解釈指針を示すという方法、あるいは業界団体等が事例の蓄積を行うことやガイドラインを作成することを支援するといったようなことを考えておるわけでありまして、御指摘のように、本法案の個々の条項についての具体的な解釈、適用については、最終的には、訴えを受けた裁判所において発信者の表現の自由と被害者の利益の調整を図りつつ判断が行われ、こうした判例の積み重ねによって解釈の明確化が図られていくものを期待しているところでございます。

○中村(哲)委員

 小坂副大臣のその答弁を前提として、具体的に事例を設定してこの法律の条文の流れを考えていこうと思います。

 まず、仮に私が、自分に対する差別的な書き込みがあるホームページ、正確にはウエブサイトということになるのでしょうが、そういうホームページがあるということを発見したとします。そこで、まず私ができることがあるとすれば、そのホームページを管理している、法文では特定電気通信役務提供者となっております管理者に削除依頼をすることになると思います。そこで管理者としてはどうしようかと思い、判断が問われることになると思います。管理者としては、勝手に削除すれば書き込みをした発信者の方から、民法七百九条の不法行為責任や、契約関係とかにある場合には民法四百十五条の債務不履行責任を問われる可能性があります。だから、プロバイダーとしては、管理者としては、削除するのにちゅうちょするのではないか。

 そのときに、削除するかどうかの基準になるのが三条の二項だと思います。それはいいですね。それを前提に質問をさせていただきます。

 まず管理者は、三条二項一号の「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由」があるかどうかを検討することになると思います。しかし、この条文に基づいて削除した場合には、書き込みを削除された発信者の方から損害賠償請求を受けたときに、相当の理由があったのかどうか、その証明責任を負うのは管理者ですね。それはいかがでしょうか。

○小坂副大臣

 お説のとおり、三条第二項第一号に規定される要件は、プロバイダー側の立証責任があるというふうに考えられます。

 本法の第三条第二項の各号は、プロバイダー等が特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害についての免責事由を定めるものでありますので、そのようになるということでございます。

○中村(哲)委員

 それならば、やはり三条二項一号の方では、私の権利が不当に侵害されていると信じたという相当の理由というのを根拠にしては、プロバイダーなどの管理者は削除しづらいだろう。しかし、削除しない場合には被害者、この例では私からですけれども、私の方から民法七百九条に基づく不法行為責任、もしくは何らかの私との契約関係があれば四百十五条に基づく債務不履行責任の損害賠償請求を受ける可能性があります。

 そのときには、管理者の損害賠償責任を検討する上で、プロバイダーの損害賠償責任を検討する上で、三条一項の方の一号や二号の要件が問題となりますが、三条一項の方の一号や二号の要件の証明責任は管理者にあるのでしょうか、それとも被害者である私の方にあるのでしょうか。不法行為責任、債務不履行責任の場合で分けてお答えくださいますようお願い申し上げます。

○小坂副大臣

 委員の御質問は大変具体的でございまして、大変に、実際起こるであろうことをいろいろ想定されて御質問いただいているわけでございますが、委員のその事例に沿ってお答え申し上げますと、まず、第三条第一号の不法行為責任、不法行為による損害賠償責任が生じる場合でございますが、一般の不法行為の場合と同様にまず被害者側にその立証責任がある、こう考えられるわけでございます。本法案の第三条第一項は、特定電気通信による情報の流通によって権利侵害が生じた場合についてのプロバイダー等の損害賠償責任が生じる場合を明らかにしている規定でございますので、そういうふうになるわけでございます。

 それでは、被害者が債務不履行に基づく損害賠償責任を追及する場合はどうなるのかということでございますが、その場合は、プロバイダー等に対して債務不履行責任を追及する場合であっても、第三条第一項各号の証明責任は権利の侵害を受けたとする側にある、すなわち、今の事例で申し上げますと、私がとおっしゃっている側にあるということになるわけでございます。

 さらに詳しく申し上げますと、権利を侵害する情報の流通についてプロバイダー等が責任を問われる場合に、権利を侵害されたと主張する者とプロバイダー等が契約関係にあるときには、プロバイダー等が契約者たる被害者の権利侵害に配慮しなかったということで、被害者から債務不履行責任を追及されることはあり得るということでございます。一般に、債務不履行責任の場合には過失のないことの立証責任を債務者が負うこととなります。しかし、この場合のような契約の主たる義務とは別の付随的な義務違反を理由とする損害賠償請求の場合には、故意、過失の証明責任は一般の不法行為と同様に権利の侵害を受けたとする者の側にあると解されているところでございます。

○中村(哲)委員

 続いて質問させていただきます。
 しかし、そのようなときに削除するのかどうかというのを管理者が判断するときに、当該書き込みが被害者である私の権利を侵害しているものなのかどうか、実質的な判断を強いられることになります。判断を迷うことになるだろうと。私の理解では、そのための手続として規定されているのが三条二項二号の照会の規定だと思います。その点についてはいかがでしょうか。

○小坂副大臣

 本条の、第三条第二項第一号において、ある書き込みについてそれが他人の権利を侵害するものであると通常考えられるようなものであれば、プロバイダー等において直ちに削除等の措置を講じても発信者からの責任を問われることはない旨規定をしているわけでありますが、また、第三条第二項第二号の要件を満たせば、相当の理由を判断せずにプロバイダー等が削除等の措置を講じた場合においても発信者に生じた損害について責任を問われることはない、こう規定しているところでございます。

 したがって、今おっしゃったように、第三条第二項の二号の規定がそれぞれ補完関係にあるということではなくて、各号はそれぞれ独立した免責要件を定めている、このように解していただきたいと思います。

○中村(哲)委員

 その回答についてはちょっと私も今判断できませんが、具体的にさらに詰めて話をさせていただきたいと思います。
 その照会に対して、条文でありますとおり、当該発信者が当該照会を受けた日から七日間を経過しても当該発信者から当該送信防止措置、この場合では削除になろうかと思いますが、これを講ずることに同意しない旨の申し出がないときには三条二項二号で免責される、また、同意する旨の申し出があるときには司法の一般原則からして私的自治上当然に免責される。

 問題は、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過するまでに当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申し出をした場合です。この場合には、管理者としては当該情報を削除した場合には三条二項二号によっては免責されません。免責されるには、やはり一号に戻ってと私は思っているのですけれども、相当の理由を証明しなくてはならなくなります。だから、同意しない旨の申し出があった場合には、管理者としてはなかなか削除に踏み切れないんじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。

 そこで、発信者から削除しない旨の申し出がある場合に、管理者が削除に踏み切れなかった場合には、管理者は逆に私から損害賠償を請求され得るのでしょうか。差別的な書き込みがあるような場合には、私の名誉が侵害されているわけですから、客観的には他人の権利が侵害されていることに当たるでしょう。だから、三条一項の方の一号または二号により故意、少なくとも過失は認められることになると思います。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

○小坂副大臣

 私の理解が委員が御指摘のものと正しいかどうか、今回の御質問について、ちょっと自信がない部分があるのですが、とりあえず答えさせていただきたいと思います。

 発信者から送信を防止する措置に同意しない旨の、すなわち削除しては嫌だよ、こういうお話があったときにプロバイダー等が情報を削除しなかった場合であっても、その場合には本条の、第三条第一項の各号の要件を満たさない限り、すなわち、一項に掲げてある一、二の、二つの、「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある」という第二号、あるいは当然知っていたという場合、これらの場合でない限り、プロバイダー等が被害者からの責任を問われることはないというふうに解されております。

 また、単に差別的な表現、例えば権利を侵害されたというのが特定の個人の権利の侵害でないような差別的な表現とか、そういうような事例の場合には、他人の権利の侵害があったとはそれだけでは言えないわけでございまして、プロバイダー等が三条第一項により――ちょっと待ってくださいね。

 失礼しました。ちょっと勘違いをしていた部分があると思いますので、補正をさせていただきます。
 了解しないといった経緯で、第三条第一項第二号にいうところの「権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある」とは言えないような場合については、当該情報を削除しなくてもプロバイダーが責任を問われることはない、このように考えられます。

○中村(哲)委員

 答弁が苦しいと私が感じるのは、削除依頼がプロバイダーに対してあるわけですね。そのときには少なくともプロバイダー、管理者の意識の上には、その違法情報が意識の上に上がるわけですよ。だから、具体的な検討をしないと、この一項の方の要件に当たらないということはなかなか言えないだろうと思うのです。

 だから、私が聞きたいのは、この法律では、プロバイダーなどの管理者が権利侵害を検討される場合にどういう行動指針をとればいいのか、そういう具体的な行動規範を示したものではない、そういうことを確認させていただきたいのですけれども、それでよろしいですね。

○小坂副大臣

 そのとおりでございます。行動指針を具体的に示したということではないわけです。

○中村(哲)委員

 確認的になりますけれども、その管理者にとって当該書き込みなどの情報によって他人の権利が侵害されているかどうか判断しづらいとき、それにはどういうふうにすればいいのか。それは、今後のネットの世界での事例の積み重ねや裁判所による解決の事例の積み重ねが必要だということであって、それがゆえに、先ほど御答弁になられた、総務省においてもガイドラインなどを整備していかないといけない、そういうことだと理解しておりますが、それでよろしいですね。

○小坂副大臣

 そのとおりでございます。
 御指摘のように、実際に、どのような場合に他人の権利が侵害されているというふうにされるのかということにつきまして、必ずしも明確と言えないという場合が出てくることも考えられますので、今おっしゃったような法律の解釈指針を示すとともに、業界団体等が事例の蓄積を行うことやガイドラインを作成することを支援する、先ほど申し上げましたが、そういったことを講じていく、こういうことでございます。

○中村(哲)委員

 プロバイダー、管理者の判断がその時々に問われるということを確認させていただいた上で、次に、第四条についてお聞きします。

 第四条は、発信者情報について被害者に開示請求権を認めた条文であると認識しております。もしこの条文がなければ、被害者が管理者に発信者情報を求めたとしても、その法的根拠が不確かであり、管理者としてはなかなか応じられない、お客様から文句を言われるかもしれないから応じられない。

 次に、被害者が裁判によって管理者に請求したとしても、それは人格権に基づく妨害排除請求という法律構成をとらなくてはいけない。つまり、物権よりも人格権の方が当然上位にあるので、物権に認められる妨害排除請求権は人格権にも認められるという法律構成をとるしかないのかなということになると思います。

 しかし、それでは裁判所の判断の結果次第ということになり、裁判所の判例による法創造機能といっても、それには限界があるだろう。だから、人格権に基づく妨害排除請求権を明文化するという趣旨でこの第四条の規定がある、そのように考えているのですけれども、いかがでしょうか。

○小坂副大臣

 大変詳しく解説をいただきまして、まさにそのとおりでございます。
 これまでに、発信者情報開示について、人格権に基づく請求を認めた裁判例は存在しておりません。また、実定法上の権利がない場合にこうした請求が認められる可能性は乏しい、このように考えられますことから、本法案において発信者情報の開示を求める権利を創設するというふうにしたわけでございます。

○中村(哲)委員

 具体的な条文の検討に入らせていただきます。
 第四条一項一号の「明らかであるとき。」というのは具体的にはどういう場合でしょうか。小坂副大臣の浅尾慶一郎参議院議員への答弁では、要件への必要性が述べられた上でこのようにおっしゃっております。これは「明白であるという趣旨でありまして、単に権利の侵害の可能性が高いということでは足りない、」とおっしゃっております。

 しかし、これでは、プロバイダーは何をもって明白であるのか判断できないのではないでしょうか。もう一度具体的にお答えください。

○小坂副大臣

 具体的にというのはなかなか難しいのでございますが、本法案の第四条一項において「当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。」を要件としているものは、通常の訴訟上の証明の場合には、通常人から見て権利侵害があったと確信するに足る程度まで証明することというふうになるわけでございますけれども、本要件の場合にはそれよりもさらに一歩進んで、疑いを差し込む余地のないほどに明らかだということを証明することが求められるということになるわけでございます。

 発信者情報は、プライバシーや表現の自由、場合によっては通信の秘密にもかかわる問題でありまして、安易に開示が行われることのないようにこのような要件が定められることが必要だ、このように考えているところでございます。

○中村(哲)委員

 管理者の方は、疑いを差し挟むことがないぐらいの明白なことであるというふうに感じたときにこの要件が満たされると判断すればいいということを確認させていただいた上で、次に、二号に入ります。

 二号の「正当な理由があるとき。」とは、浅尾慶一郎参議院議員への答弁では、小坂副大臣は、「具体的にはそれによって損害賠償請求を起こすとか、そういったようなことでございます。」とおっしゃっております。

 しかし、損害賠償請求権の行使のためにということは二号の条文でそのままに書いてありますので、大臣のおっしゃりたいであろうことをちょっと私なりに考えますと、差しとめ請求とか削除の仮処分などのためということも含む、つまり、裁判所を利用するにはその相手方を特定しないといけないから、そういうふうなときにはこの二号を満たすのだ、そういう趣旨だと考えますが、その点についてはいかがでしょうか。

○小坂副大臣

 本当に中村委員、よく研究をしていただいておりまして、まさにおっしゃるとおりなのでございます。
 具体的に申し上げますと、損害賠償請求のために必要であることのほかには、差しとめ請求、謝罪広告等の名誉回復措置の要求の必要性があることを示すものでございます。

 概括的に申し上げますと、本法案の第四条一項においては、発信者情報開示請求権の要件として、開示の請求をする者に発信者情報の開示を受ける正当な理由があることを要件としたところでございまして、発信者情報はプライバシーや表現の自由、先ほど申し上げたような、そういうふうに厳格にする必要があるということからしたことでございますので、ひとつよろしく御理解のほどをお願いします。

○中村(哲)委員

 そういう御趣旨ならば、将来的にADR、つまり紛争解決機関ができることを検討されておりますけれども、そういうふうなものができたときに、そういうときに権利救済を求めるときにもこの条文が適用される可能性があると考えてよろしいんですね。

小坂副大臣

 時間もないので簡単にお答えしますと、そのとおりでございます。

○中村(哲)委員

 二項によっては、発信者の同意が得られない場合、開示にはちゅうちょするだろうと思われます。
 四条の四項では、故意または重大な過失がない限り免責されると規定されておりますが、これは何についての故意であったり重大な過失であるのでしょうか。その点についてお聞きいたします。

○小坂副大臣

 第四条第四項において、プロバイダー等が発信者情報の開示に応じずに、その結果、開示を請求した者に損害が発生したような場合であっても、プロバイダー等に故意または重過失、重大過失がない限り責任を負わないと規定しているのは、プロバイダーが権利侵害が明らかであるとは思わなかった場合については、後日、明らかであるとは思わなかったことが客観的に仕方がないと判断されるような場合は、御指摘のとおりに故意や重過失があるとは認められないと考えられるところでありまして、したがって、プロバイダー等が開示しなかったことについての責任を問われることはないと解されます。

○中村(哲)委員

 時間が参りましたので、最後に、この法律というのは、インターネット上の表現の自由と個々人の名誉やプライバシーなどの個人の権利との調整ルールを定めた第一歩の法律であると私も認識しております。片山大臣が内藤正光参議院議員の質問に対して「こういう情報の、インターネット上の流通における最初のルール化の法制だと私は思います。それは百点じゃありませんよ。」とおっしゃったのも、そういう趣旨だと考えております。大臣も百点ではないとおっしゃっておりますから、今後も政府としてはインターネット上のルールづくりに引き続き取り組んでいくということを確認させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

○片山国務大臣

 今、委員と副大臣とのいろいろなやりとりを聞いておりまして、相当詳しく勉強していただいてありがとうございます。

 法案自身が、やはり表現が抽象的にならざるを得ないんです。だから、これでそのままというのはなかなか大変だと思いますね。やはり、いろいろな判例等の積み重ねや、解釈指針をできるだけ役所も示し、あるいはガイドラインも、これは業界団体の皆さんと相談しなきゃなりませんけれども、そういうもので補完していかないと、この法律を読んだだけですっとわかる人というのは、相当頭のいい人、まあ委員なんかそうですけれども、ほとんどいないんじゃなかろうかと私は思います。

 今、委員が言われましたように、基本的なルールの第一歩だと私は思っておりますから、これをスタートにして、できるだけいろいろなものを積み重ねていって、今言われましたように、表現の自由とプライバシーの保護との兼ね合いをしっかり、民法の手当てを含めてこれから対応していく、こういうことにいたしたいと考えております。

○中村(哲)委員

 ありがとうございました。

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