2001年11月8日
第153回国会 衆議院 総務委員会

案件:国家公務員の育児休業等に関する法律及び一般職の職員の勤務時間休暇等に関する法律の一部を改正する法律案、地方公務員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案

[1]質疑内容   [2]会議録抜粋


[1] 質疑内容(25分)「公務員の育児休業・介護休暇について」

公務員の育児休業期間延長などの改正案審議にあたって質問をしました。

平成11年度国家公務員の育児休業取得者のうち、男性は0.4%、地方公務員は0.2%となっています。介護休暇取得者については、地方公務員で男性は15.2%となっています。あまりにも男性取得者の占める割合が低いので、取得をためらう理由を調査すべきだと訴えました。理由を調査しなければ、取得促進のための対策を考えることはできないからです。

理由の中で考えられるのは、特にキャリア組の国家公務員の超過勤務です。聞くところによると、毎日帰宅は午前0時をまわるとのことです。超過勤務を強いられた職場では、ギリギリの人員でまかなっていますから、一人抜けると周りに迷惑がかかり、なかなか育児休業を取りにくい状況にあるのではないでしょうか。仕事という、公(おおやけ)の部分にあまりにも時間をとられた公務員に、もっと家庭という、私(わたくし)の部分を与えなくては、男女共同参画社会を実現することはできません。

[2] 会議録抜粋

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 まず初めに、この法案の問題点として、男性公務員の育児休業、介護休暇の取得について聞かせていただきます。

 国家公務員の育児休業の取得状況につきましては、平成十一年度、育児休業取得者数は八千百十二名、うち女性が八千七十九名、男性が三十三名、つまり女性が九九・六%を占めています。また、地方公務員の場合は、育児休業者数六万二千五十九人、うち女性が六万一千九百三十七人、男性が百二十二人、つまり、女性が九九・八%です。介護休暇の場合、これは地方公務員のみのデータが出ているのですけれども、合計三千五百九十三人、女性職員三千四十八人、男性職員五百四十五人、つまり、女性職員が八四・八%です。これは、男女共同参画社会の実現を目指すこの法案の趣旨からしても、実態として低いのではないかと思います。

 総務大臣にお聞きします。この格差についてどのようにお考えでしょうか。そして、どうすべきだとお考えでしょうか。

○片山国務大臣

 いやいや、今の数字を私もお聞きしまして、ちょっとびっくりしました。圧倒的ですね。男性が育児休業や介護休暇をとれることを、あるいは知らないのかという気もいたしました。今まで、男性は外で働いて女性は家でいろいろなことをやってと、こういうやや固定的な観念が残っているのかなという感じを受けました。

 ただしかし、最近の若い人はまた変わってきていますよ。本当に、女性が今までやってきたことを男の人がやることをいとわなくなっているような感じが若い人を見ているといたしますので、これから事情は変わってくるかもしれません。男性もこういうものがとれるのですから、やはりこれは啓蒙したりいろいろなことをやりまして、男女共同参画社会にふさわしい、そういう休暇、休業のとり方が望ましいのではなかろうかと思っておりますので、私どもの方でも努力してまいりたいと思います。

○中村(哲)委員

 普及に努力していくと断言なさったことを本当に頼もしく感じております。
 それで、男性の公務員の取得状況、育児休業、介護休暇の取得者が少ない理由について、取り組むとおっしゃるからには、やはり調査されていると思うのです。でも、下調べといいますか、この質問のレクに来た職員の皆さんに直接聞くと、どうも調査はされていないかのような話を聞いております。この取得者が少ない理由については調査をしなくてはならないと思うのですけれども、その点については、大臣、どのようにお考えでしょうか。すべきだとお考えにはなりませんでしょうか。

○片山国務大臣

 しかし、今、委員が言われたのは何かの調査の数字でしょう。(中村(哲)委員「数は調査されているのですけれども」と呼ぶ)ああ、数は。状況を……(中村(哲)委員「理由です」と呼ぶ)それは、今聞きますと、理由についての調査はやっていないと思います。もう少し様子を見て、各府省の人事担当者の意見も聞いてから検討させていただきたいと思います。

○中村(哲)委員

 理由についてぜひ調査していただきたいわけでございます。そうでないと、どのようなことをすれば広まっていくのか、そういうふうな政策立案にはつながっていかないのじゃないかなと思っております。

 ここで、私、少し私見を述べさせていただきますが、男性職員の取得者が少ない理由について、一つの要因として超過勤務があるのではないかと私は感じています。つまり、超過勤務を強いられるような勤務実態があると、職場の周りの皆さんのことを思って取得にはなかなか踏み切れないのじゃないか。この意見に対しては、いや、女性のキャリアの皆さんでも、忙しいですが、育児休業、介護休暇をとっておられますよという反論も聞きます。しかし、女性の場合は、ある意味、仕方なく、やむにやまれずとっている場合もあると思うのですね。

 私は、国家公務員の、地方公務員もあるでしょうけれども、特に国家公務員の超過勤務というものが今マスコミでもずっと問題になっておりますから、ここに目を向けていかないといけないのではないかなと感じております。

 きのうの省庁の皆さんとのお話でも、労働基準法は公務員には適用されないと法律で決まっているというお話でした。しかし、その労働基準法の趣旨というのは公務員法に反映されているはずでございます。霞が関の公務員の皆さんの働き方を聞いておりますと、朝は少しゆっくりかもしれないけれども、晩は午前様はもう当たり前だ、家に帰って子供の顔をほとんど見られない、夕飯も一緒に食べられないという話もよく聞きます。公務員の方と夜の会食をすることもあるのですけれども、その後に、今からまた省に帰りますとおっしゃいます。このような働き方をこの国がしていって本当にいいのかどうか、それを私はすごく強く疑問に感じています。

 私は、この国の根深い問題というのは、政策立案にかかわる霞が関の皆さんが滅私奉公を強いられているところにあるのじゃないかなと感じています。

 確かに、公務員ですから公のことを第一に考えないといけない、それはそうなんでしょう。しかし、私の部分がいわば極小化しているのではないでしょうか。当たり前のことですけれども、公務員は国民の全体に奉仕する存在です。国民というのは、公のことも考えるけれども、まず自分たちの生活を一番大切に、幸せを考えて行動する、そういうふうなことを追い求める存在でもあります。個人を大切にすること、それはまさに、公務員の皆さんお一人お一人が、個人として尊重される、そういうふうな生活のあり方、働き方を保障されていないといけないのじゃないでしょうか。私がある程度保障されて初めて公務員の皆さんも公のために資することができる、このような考え方で、公務員の働き方というものを政府としては見ていかないといけないのじゃないかなと私は思います。

 特に今、父親の不在によって、拒食症など、家族の崩壊も言われております。この国が、ある意味、昔保っていたよき文化、父親がきちんと家族として役割を果たしていった。古い封建的な父権という意味ではなく、二十一世紀になって、今改めて家族における父親の役割というものが見直されていると私は思います。

 今この国は、そういう意味で、霞が関を含めまして、この国の勤労者それぞれが労働の質というものを問われる時代に入ってきております。組織の中で自分たちがいかにして働いていくのか、どのような労働をしていくのか、それが問われる中だからこそ、今、公務員改革ということも議論になっているのだと思います。長時間働くのではなく、組織のあり方を見直して効率的に働いていく、そして、家庭と仕事を両立していくこと、これは女性だけではなく、男性にもひとしく当てはまることなのではないでしょうか。だからこそ、男女共同参画社会なんだと私は思います。

 そこで、改めてお聞きします。
 超過勤務について、実態調査はなされていないと聞いております。超過勤務について調査をすべきだと私は思います。また、超過勤務と男性公務員の取得率が低い理由との相関関係も、ないという声もありますが、調べる必要があるのではないでしょうか。大臣の御決意をお聞かせください。よろしくお願いいたします。

○片山国務大臣

 今、中村委員がお話しのように、特に中央の、政府の国家公務員というのは夜型ですね。昼はお客さんが来たり国会に出たり各省の折衝をやったりということもあると思いますが、本当の企画立案業務というのは夜型になっていますね。夜の方が頭が働くかもしれませんね、今までの長いあれで。

 外国では、残業するのは能率が悪いとか能力が低いとか言われるのだそうですね。だから、仕事があっても家に持って帰るというのです、うそか本当か知りませんよ。日本はそうじゃないですね。これは仕事もあるのでしょうし、みずからの勉強やいろいろなことがあるんだろうと思いますけれども、次第に直していかなければならない、こういうふうに思っておりますし、全体の能率をよくするということも、IT時代ですから、考えていかなければならぬと私は思います。

 話は飛びますけれども、委員が言われたように、今一番の問題は家庭の崩壊ですね。お父さん、父というものがいないし、弱くなっているのですね、言われるように父権という意味じゃありませんけれども。そういう意味でも総合的に考えていかなければならないと思います。

 この超過勤務の実態はなかなか千差万別、ばらばらなんです。だから、調査しても、何か統一した尺度でつかまえられるかどうかわからないですね。御趣旨はよくわかりますので、ちょっと関係のところでよく相談させてください。

○中村(哲)委員

 大臣のお言葉をもう一度確認させていただきたいのですけれども、私も、総務省の大臣として申させていただいているだけではなく、やはり内閣の、国務大臣の一員としての片山大臣に対して申させていただいております。

 この問題というのは、一つ総務省だけの問題ではありません。もちろん、公務員制度というのは総務省で所轄することですから、片山大臣のもとでやっていただかなくてはならないことだとは思うのですけれども、全省庁にまたがることです。そして、この公務員の働き方いかんによって、この国が変わってきます。天下りの問題にしても特殊法人改革の問題にしても、ある意味、霞が関の皆さんが一般国民と違う生き方を強いられているところにも、感覚のずれというのは起きてくると思うのですね。公というものを極大化し、私というものを極小化していくようなあり方というものは、政治家の方が認識しないといけないと思うのです。

 こんなことを言ったら、私たち野党の議員が質問を遅くに出すから悪いんだということも言われますけれども、ただ、こういうふうな国会の審議のあり方自体がいいのかどうかということも考えていかぬと、あかんのじゃないかなと。事前に質問を出して、公務員の皆さんが質問案をつくって、大臣に託して、ここでやりとりをする。本当にそれが、政府委員というものがなくなった国会改革の趣旨からして、今の運用というのがどうなのか。そこまで見通してというか、そこまで考えを深めながら、今後、私たち政治家が取り組んでいかなくちゃならない課題なのじゃないかなと思います。

 だからこそ、改めて確認なんですけれども、大臣には、ほかの省庁の大臣ともよく話していただきまして、公務員の超過勤務の問題、それから働き方の問題について、ばらばらかもしれませんが、調査をして、また生の声を聞いて、その中から新しい二十一世紀の公務のあり方というものを考えていただきたいと思います。
 もう一度大臣の御感想をよろしくお願いいたします。

○片山国務大臣

 せんだっても、閣議の席で私と石原行革担当大臣が、超過勤務手当はできるだけ少なくするように、超過勤務はむだなものはないと思いますけれども、それはできるだけ少なくするようにということを各閣僚にお願いいたしました。

 いろいろな要因があるのですよ、超過勤務をせざるを得ないということには。一つは、確かに国会がありますね、本当に。もう一つは、やはり予算ですね。私は、そういうことについて総合的に改善の検討をすべきだと思いますし、委員の言われた点については関係の閣僚と十分相談してまいりたいと思います。

○中村(哲)委員

 全体的な国の改革の一環としてこの公務員制度改革もあると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、二つ目の質問として、非常勤についての質問をさせていただきます。
 育児休業も介護休暇も、非常勤については取得対象外となっております。しかし、非常勤で働いている皆さんの中には、継続されるなどして、常勤に近い勤務実態も多いと聞いております。私は、常勤に近い非常勤の人も何らかの形で対象にしていくべきなのではないかと考えております。

 しかし、その前提として、この非常勤の職員の皆さんの勤務実態が調査されていないということを聞いております。常勤に近い非常勤も対象にするかどうかという政策判断の前に、やはりこの調査はしていかなくてはならないのではないでしょうか。もちろん、非常勤の数というものは調査されているのですけれども、どれぐらいの方が継続して同じ場所で働いておられるのか、そういうデータはないと聞いております。そういう継続的な雇用形態についての調査というものをしないといけないと思うのですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

○大坪政府参考人

 ただいま先生の方から非常勤の方々の実態ということについてのお尋ねでございます。
 私どもの方では、言われましたように、数字という点については把握しているわけでございますが、先生が言われますのは、勤務実態というようなお話であろうというふうに思うのです。

 御承知のように、非常勤の方々の職務というものは、それぞれの事務あるいは事業の手助け、補助という格好でされておりますし、それぞれの省庁がそれぞれの必要に応じてされているということで、一律的な調査ということで実態をつかむというのは非常に難しい分野の話ではないかなというふうに思っております。この辺は、先生の言われる実態というものにつきましては、各省庁それぞれが必要に応じてやっているということで、ちょっと調査は難しいのではないかなというふうに考えております。

○中村(哲)委員

 局長答弁は要らないということをきのうの打ち合わせで言わせていただいていたので、なぜ答弁なさるのか私にはわからないのですが、それは結構でございます。

 つまり、いろいろな省庁にかかわること、また、国家と地方と両方あるから、いろいろあるから調べられないというお話なんですけれども、やはり何らか集める努力はしないと、統合する努力はしないといけないのじゃないかなと思います。

 今の御答弁におきましても、各省庁それぞれの部署内で調べておるということですけれども、今ワークシェアリングというのも民間で議論になっております。これはオランダ・モデルとかいうこともありますけれども、正規雇用だけでなく、正規雇用とパートタイムの社会保障の差もなくしていくような議論も始まっておりますから、正規雇用とそれ以外という、ぱしっと分けるような議論ではなく、やはりその間にはアナログ的に段階があると思います。どういう傾向なのか、そういうふうな調査というものは難しいからしないというのではなく、やはり一定の努力をしていく必要があるのではないか、調査についての努力をしていく必要があるのではないかと思います。
 これは方向性だけの話ですから、大臣にお答えしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○片山国務大臣

 非常勤というのは、委員、常勤でないのですよ、常勤の上に非がつくから。だから、ずっと継続的な雇用形態で、常勤はしないということで、非常勤職員というのが予算に組まれまして、その予算の使い方は各省庁の大臣の権限というか考えでやれる、こういうものですから、これも千差万別なんですよ。

 ただ、恐らく、委員が言われるような常勤的な形態も、私は、中にあると思いますね。確かにそれはあると思います。これをどうするかというのはなかなか難しいので、常勤的非常勤職員をワークシェアリングで持ち込もうというのは、ちょっとこれは、なかなかそうは簡単に私はいかないのではないかと思いますが、一義的には予算の執行の問題で、各省大臣の問題ですからね。
 これまた委員の御趣旨はわかりますので、財務大臣を初めとして関係の大臣と相談はしてみたい、こういうふうに思います。

○中村(哲)委員

 ありがとうございます。
 次の質問に移らさせていただきます。

 子供の看護休暇について、人事院にお聞きいたします。
 民間の方は先日、与野党の修正案で、三年後に議論を始めるということになりました。公務員制度は民間準拠ということですので、人事院としても検討中だと聞いております。この検討状況について、今現在どうなっているのか、お聞かせください。

○中島政府特別補佐人

 おっしゃいますように、民間準拠といいますか、民間企業で働く労働者と均衡が保てるような制度にしていかなければならない。

 民間労働者に関する育児休業法というのが衆議院を通過する際に修正されておりますし、附帯決議もついております。それに基づいて、厚生労働省の方、また、それぞれの民間企業の雇用主の方も努力されていると思います。私たちは、そういう状況をしっかり正確に把握しながら、また、緊密に連絡をとりながら、きちんとした対応をしてまいりたいというふうに思います。

○中村(哲)委員

 次の質問に入らさせていただきます。
 代替要員についてお聞きいたします。

 今回の法案の改正で、臨時的任用のほかに任期付任用も可能になりました。育児休業をとった場合に、きちんと予算的にも代替要員の確保策は講じられるのでしょうか。
 それからもう一つ、関連なんですけれども、介護休暇の場合、休暇ですから、非連続的なとり方というのもあると思いますから、難しいとは思うのですけれども、介護休暇の場合もいかがでしょうか。

○大村政府参考人

 お答えします。
 先生が今御指摘のように、現在の育児休業制度というのは最長でも一年を超えないことから、任命権者が、その職員が行っていた仕事を処理するために、例えば職員を配置がえしたり、そういう方法でやっている場合もあるわけでございますが、一番多いのは、臨時的任用ということにより代替要員を確保して、その業務を処理していく。平成十二年度に新たに育児休業を取得した職員のうちの約半数以上が、この臨時的任用を使いまして代替要員を確保しているという状況でございます。

 しかしながら、今般の改正によりまして育児休業期間というのは三年まで延びるわけでございますので、現在の臨時的任用というのは特別な任用でございますので、一年間に限られているということでございます。したがいまして、その業務処理を行うための要員確保が困難になるわけでございますので、今回、新たな措置として、育児休業期間に係る期間は、任用の期間の限度として任期付職員の採用を可能とする制度を設けたわけでございます。これによって公務の円滑な運営を確保するとともに、職員ができる限り育児休業をしやすいように配慮したところでございます。

 また、介護休暇につきまして、先生が今御指摘のように、介護休暇というのは、介護をされる方の状況に応じまして、例えば一日おきに取得するとか、時間で取得するとか、ある決まった曜日に取得するとか、そういうような、とり方自体が非常に多様な状況になっております。したがいまして、このために育児休業と同じような要員確保というのはなかなか難しいのではないだろうかという議論があるところでございます。

 ただ、今回、介護休暇の期間の延長が行われるということになりますと、どういう休み方になるのか、その辺の介護休暇の取得の状況を注視して検討してまいりたいというふうに考えております。

○中村(哲)委員

 時間が参りましたので、終わらせていただきますけれども、大臣には、今の御答弁をお受けになりまして、代替要員といいますか、かわりの人がきちんと来て、安心して働けるような環境をつくっていただきますようお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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