2001年6月5日
第151回国会 衆議院 総務委員会

案件:地方税法の一部を改正する法律案


質疑内容  「地方債について」   関連メルマガ「国会からの手紙」第107号  

 地方税法改正案審議では、地方債の元利償還について質問をしました。

 現在、地方債は国債と同様、リスクゼロとなっています。しかし、地方自治体がからんでいる第三セクターの破綻などをみると、財政的に立ち行かなくなる自治体が続出するおそれがあり、これからもきちんと地方債の償還がなされるのか、不安を感じざるをえません。これまでは、たとえ地方自治体が償還できなかったとしても、国が面倒をみるということでした。

 そこで、国は地方債償還について、借金の保証人のごとく法的に債務保証するのか、たずねました。総務省は、法的な債務保証はしないが、地方財政計画や地方交付税によってトータルで面倒をみる、と回答しました。しかし、小泉内閣になって地方交付税の削減という声が聞こえてきます。法的な保証でなく、今のような暗黙の保証制度では、交付税削減とともに、地方債のリスクが高くなる可能性は十分にあります。

会議録抜粋

○中村(哲)委員

 おはようございます。
 民主党・無所属クラブの中村哲治です。

 まず軽く、この地方税法の一部を改正する法律案によって減ると言われている十億円の地方税なんですけれども、この十億円というのは、減った分は地方が負担するのか、それとも国が何らかの形で面倒を見ていくのか。その点だけ、まずお聞かせください。

○片山国務大臣

 これは、十億という数字が多い、少ないという議論じゃなくて、そういう減収は地方財政計画の中で十分吸収され得ると私は思いますし、もし大きな穴があくようなら何らかの補てんは考えなきゃいかぬ、こういうことになると思います。
 減税をやるのはこれからですから、十月からですから。

○中村(哲)委員
 地方財政計画において吸収されるというのは、国が最終的に面倒を見ると考えてよろしいのでしょうか。

○片山国務大臣


 私が今申し上げているのは、これはやってみなきゃいけませんね、申告ですから、申告分離課税ですから。幾ら出てくるのか、それは締めてみなきゃいけません。

 その結果、それぞれの団体で大変財政運営に支障があるようなら、国が責任を持って面倒を見ます、こういう意味であります。

○中村(哲)委員

 細かい話をうだうだ言っても仕方がないのですが、イメージとしては、国も負担するし地方も負担するというようなイメージでしょうか。

○片山国務大臣

 これは、緊急経済対策で国が決めたことは事実でございまして、特に、個人投資家に株式市場に帰ってきてもらいたい、できれば一年を超える株式投資をしてもらいたい、株式市場を活性化してもらいたいという考え方でございます。

 そのための一つの方途として減税をやるわけで、その減税については、額が、これはきちっと幾ら幾ら、どの団体で幾らというのが出てくるのはずっと先ですから、もしそういうことが出て、先ほど言いましたように、その団体の財政運営に支障が出るようなことがあれば、国としても考えなきゃいかぬ、こういうふうに申し上げているわけであります。

 だから、そういう意味では、どっちがどう責任を持つかということではなくて、全体で責任を持つ、こういうことであります。

○中村(哲)委員

 全体で責任を持つということは、痛みを分かち合う、地方と国とで分かち合うということですね。大臣、うんうんとうなずいていただきましたので、そういうことだなと認識いたします。

 そういう話をさせていただいた後に、今、松崎委員がるる質問させていただきましたように、小泉政権にかわりまして、地方財政のあり方というのをもう一度考えていかないといけないのだなと思います。だからこそ、今までにいろいろなところで議論されていること、そういうことについてこれから聞かせていただこうと思います。

 まず初めに、地方債についてお聞きします。
 例えば、五月三十一日の衆議院の財務金融委員会での質疑がありました。その中で、地方債についても聞かれております。

 地方債の最終的な負担について、いろいろ段階を分けて考え方があると思います。まず、国が法律上の保証を地方債にしているのかどうか。次の段階として、法律上の保証はしていないとしても、何らかの面倒を見ていくということなのか。そういうことを踏まえて、地方債は国が面倒を見るのかどうかということを確認しておかなくてはいけないということになると思います。

 まず最初の段階の、国が法律上の保証をしているのかどうかということについて、さきの五月三十一日の財務金融委員会で議論がされていました。その中で、仙谷委員の質問に対して塩川大臣が、地方債は、それぞれ地方の自主的判断と実行において募集するものでございまして、国は関与しておりませんと御答弁なさっております。そしてまた、総務省の山名大臣政務官も、今、大臣がお答えになりましたように、地方債の債務につきましては、いわゆる政府保証債でございませんので、法律によるところの債務保証はありませんとお答えになっております。

 まず、法律上の保証について、御確認になるのですけれども、国は法律上の、民法上の債務保証を地方債においてしていないということでよろしいですね。

○片山国務大臣

 塩川大臣、山名大臣政務官の答弁の詳細を私は存じておりませんが、基本的にはそれでいいのだと思いますよ。法律上の保証はしておりません、地方債については。

 ただし、国が関与するといいますか、国が同意をする、地方債について同意をしますよね、協議を受けて同意をする、同意をした地方債につきましては、地方財政計画や地方交付税制度を通じてその元利償還については財源保障をする、こういう建前になっております。だから、法律上の保証はないけれども、元利償還については、国が関与したものについては、その元利償還については担保している、こういうことです。

○中村(哲)委員

 次の段階のことを今、大臣が御答弁なさったので、まず、段階として、いわゆるごんべんのついている保証については、法律上の保証のことですけれども、それはしていないということの確認をさせていただいたのですけれども、それはしていないということで改めてよろしいですよね。

 だけれども、次の段階として、法律上の保証はしていないけれども、地方財政計画や地方交付税制度によって、そのことは国がすべて面倒を見ているということでよろしいのでしょうか。

○片山国務大臣

 国との協議で、国が合意したものについては、今の地方財政計画で、元利償還は交付税その他を通じてしっかりと補てんする、こういう建前になっておりますから、それはそうしていると考えていただいていいと思います。

○中村(哲)委員

 その御答弁は、ある意味、二月二十七日に私が質問させていただいたときにお答えいただいた答弁の筋だと思うのですね。そのときに、私は、地方債の格付と申しますか信用について聞かせていただきました。そのときに遠藤副大臣から「地方財政計画や地方交付税制度を通じた財源保障をしておりますから、元利償還等について不安は起きない、こういう仕組みにさせていただいているところでございます。」と御答弁いただいておりますので、その件について、今、大臣がおっしゃったようなことは認識しておったところでございます。

 ただ、私がその次に疑問に思うのが、地方債というものが、すべての元利償還について交付税で賄われておるわけではないのですよね。そこのところとの整合性をいかに考えていったらいいのかというところが疑問なのですね。その点についてお答えください。

○片山国務大臣

 地方財政計画というのは三千三百に近い地方団体の全部の財政を集約するのですね。そこで、元利償還については公債費という形で歳出の方に載りますよね。地方財政計画というのは三千三百、財政を全部まとめるのですから、歳入の方はこうなる、歳出の方はこうなると。歳出の方には経常経費と投資的経費があって、それ以外に公債費がありますね。公債費は、全団体のその年度に返す公債をそこへ全部挙げるわけですよ。それで挙げて、収入、支出を見てつじつまが合わなければ、足りないものは交付税で全額補てんする、こういうことですから、その公債費で各地方団体、元利償還するものは国、トータルの中で財源保障している、こういうふうにお考えいただいていいと思います。

 具体的には、交付税で見ておるものはいっぱいありますよ。交付税で見なくても、地方財政計画というのは交付税だけではありませんよね、地方債もありますし、地方税もありますし、その他の収入もありますし、収入の方はいっぱいあるので。トータルとしての歳入と歳出、地方全体の歳入と歳出がバランスがとれている、こういうことですから、公債費についても、個々の団体の、それもトータルの財源保障がされている、そして個々にはそれが交付税になる場合もかなりある、こういうふうに思います。

○中村(哲)委員

 今、地方財政計画の方の収入の方で、地方税などもあるからそれとトータルとして判断していくのだという御答弁だと思うのですね。それは本当に私どももそうだと思うのです。

 ただ、現実問題として、今年度も十兆五千九百二十三億円の収支の不足があるわけですよね。地方財政対策を見直していく中で、赤字国債と特例地方債という形で最終的にこの穴を埋めていくという形になりますよね。そして最終的に、地方の負担分と言われる特例地方債については一〇〇%交付税で元利償還を見ていく、そういうふうなことになりましたよね。だから、最終的にはやはり国が面倒を見る、それも交付金で面倒を見るということになるというふうに理解しているのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

○片山国務大臣

 財源不足対策として赤字地方債を本年度から発行してもらう、これについては、後年度、その元利償還を丸々交付税の基準財政需要に入れるということですから、交付税計算のそれが算定になるわけですね。

 ただ、そこで、丸々それが交付税になるかどうか。その団体の地方税がどのくらい入るか、その他の歳入がどうなるかというのも絡みますけれども、交付税の基準財政需要額には丸々一〇〇%入れる、こういうことであります。

○中村(哲)委員

 問題になるようなケースというのは、地方税で賄えないような、そういう団体だと思いますから、ある意味、地方税がたくさんあるから交付税をもらっていないという団体はほとんどないわけですから、基準財政需要額に入るということは、交付税で面倒を見る、最終的にはそうなるのだということだと理解をしているわけですけれども、その点について御確認をよろしくお願いいたします。

○片山国務大臣

 極めて言辞を正確に言うと、少し違うのですけれども、交付税で丸々見るということと理解していただいていいと思います。
 基準財政需要額に全額入れるということは、交付税で面倒を見る、こういうことと理解していただいていいと思います。

○中村(哲)委員


 一連の御答弁を総合いたしますと、最終的に、地方債というものは国が面倒を見るということでよろしいのですよね。

○片山国務大臣

 地方債というのは、それぞれの地方団体の借金ですからね、国が全部面倒を見るということでは必ずしもないのですけれども。今言いましたように、財源不足に対する赤字地方債、その他特別のものについては国が丸々面倒を見る、その他のものについても、トータルとして地方財政計画で手当てをしているとお考えいただきたいと思います。

 そこがちょっと、なかなかわかりにくいかとも、私、しゃべりながら思っておりますけれども、基本的にはそれぞれの団体が起こす借金ですから。基本的にはそうですが、その団体の財政運営に支障がないような措置をトータルとしてはとっていると。

○中村(哲)委員

 その支障がないトータルな対応をするのが、最終的には特例地方債ないし赤字国債で担保されているわけですよね。だからこそ私はそのようにお聞きしているのですけれども、その点についてもう一度御確認をよろしくお願いいたします。

○片山国務大臣

 特に地方債の中で、その元利償還を後年度、交付税で丸々見るというのが大変多うございましたし、それから丸々見ないでも、かなりな程度見るというのがありますので、今回はその本来の、地方債は自分の責任と権限で借金をして、返すめども自分で考えてやる、こういうものですから、そこのところは、やや過保護だという意見もありますので、少し今後は財政構造改革の中で考えていかないといけないのかなと私個人は思っておりまして、これからいろいろなところと協議をしてまいりたいと思っております。

○中村(哲)委員

 大臣がおっしゃるように、区分ごとに、それぞれ元利償還についてどれだけ交付税で見るかというのは、私も表をいただいておりますから、それは理解しておるのです。区分ごとに対してさまざまな対応をしていく必要がある。だけれども、地方財政計画で、収入と収支を比べて、足りない部分が出てくる、その足りない部分について、最終的には赤字国債と特例地方債で面倒を見ていく、その特例地方債については一〇〇%後年度措置で、交付税で見ていくという話ですから、最終的には、地方債すべてのものに対して国が面倒を見ていくということでよろしいのですね。そうじゃないと、地方債が不安のない状態にしておりますということにはならないと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○片山国務大臣


 今までは許可制ですからね、本当に全部面倒、トータルでも見ていき、個別でもかなり見てきたんですけれども、今後は、協議制に平成十八年度から変わっていくでしょう、そういうことの中で、地方債の位置づけや何かも検討していく必要があるのかな、私はこう思います。今の委員の御議論、大筋では私もそれでいいと思います。

○中村(哲)委員


 今、許可制と協議制による同意は違うとおっしゃいましたけれども、それは今までの答弁と違うと思うんですね。

 いろいろ省庁の方からも話を伺いますが、許可と協議による同意は原則同じだと。確かにそうですね。何が違うかというと、協議制になったら同意がないものに対しても公債が、地方債が発行できるようになるということにすぎないわけで、許可制から協議制に変わったからといって、国の面倒を云々という話にはならないと思うんです。それはそうですね。

○片山国務大臣

 許可制のときは許可しないと発行できないんですよ。協議制のときは協議が調わなくても発行できるんです。ただ、協議が調えられないものは国がトータルで責任は持ちませんよ、こういうことになる。そこだけの差です。発行はできるんです。許可制のときはできません、法的に。

○中村(哲)委員


 だから、私は、許可を与えたものと協議をして同意を与えたものは違いがないはずなんだから、許可制が同意制に移るからといって違わないというふうに認識してもらわないと、今までの答弁と違ってくるんじゃないですかということを申させていただいたわけです。それは、今まで片山大臣、それから遠藤副大臣がおっしゃっていた答弁を総合したらそれしかないと思います。

 私が申しておるのは、協議制になって、それで同意を与えた地方債について、それはやはり最終的には特例地方債に対して一〇〇%元利償還を見るという形で、最終的に制度的に担保するという形で地方債については面倒を見る、そういう仕組みだということで認識しているんですけれども、その点について御確認をよろしくお願いいたします。

○片山国務大臣

 許可された地方債と協議をして同意をした地方債は、結果として同じですね。ただ、その発行が、許可制の場合には許可されなきゃできないけれども、協議制の場合にはできるというわけですね。それはできる。できるけれども、同意を得ずに発行した地方債については、元利償還等の将来の補てんの約束はない、こういうことですね。だから、許可された地方債と同意をされた地方債は、委員が言われるように同じです。それは同じ。

 それから、赤字地方債は、財源不足の一環で、本来、交付税で補てんすべきものを赤字地方債にしたわけですから、これはもう丸々国が面倒を見る、こういうことであります。

○中村(哲)委員

 何遍も繰り返しになるんですけれども、最終的に、制度として最初に出てくるのが特例地方債じゃないですか。そこの部分を一〇〇%国が後年度面倒を見ていくという形になることが、すべての地方債の元利償還について不安がないような形にするということになることだと思うんですけれども、そこをもう一度御確認させていただきたいんです。

○片山国務大臣


 同じ答弁になるかもしれませんが、赤字地方債は交付税の身がわりですから、これは元利償還、丸々面倒見ます。個々の地方債については、地方財政計画上、同意を得たものについてはトータルで財源の手当てをする、そういう建前でありますが、同意を得ずに発行した地方債については面倒は見ない、こういうことになると思いますね。

○中村(哲)委員

 私が言っているのも、大原則論を言っているわけで、許可を得たもの、それから協議を経て同意を得たものの地方債についてということで、私が今、地方債と言っているものはそのものだと認識してください。そういう意味で、地方債、もう繰り返しになりますけれども、許可を得たものと協議の上同意を得たものについては最終的には国が面倒を見ていく、そういうことでよろしいんですね。

○片山国務大臣

 もう簡単に答えますと、その元利償還については財政上の担保をいたします、面倒を見るということです。

○中村(哲)委員


 そうすると、私は素人ですからよくわからないんですけれども、国債の信用と地方債の信用度合いというもの、従来はその財政力に応じて格差があるんじゃないかというふうなことを思われていたイメージもあると思いますが、論者によってはそういう考え方をされていると思います。それはやはり今の、地方債については国が最終的に面倒を見るとおっしゃったので、地方債というのは国債とほぼ限りなく信用度が近いというふうに思ってよろしいんですね。

○片山国務大臣

 許可を受けた地方債について言われるならば、国債と同じです。それは国が責任を持つということですから、リスクはありませんね。そういう意味では同じだと思います。

○中村(哲)委員

 繰り返しになりますけれども、許可を得た地方債及び協議の上同意を与えられた地方債については信用度は国債と一緒だ、それは最終的には国がその信用について担保しているからだ、それでよろしいですね。

○片山国務大臣

 そのとおりです。

○中村(哲)委員

 次の質問に移るんですけれども、交付税との関係で、地方団体が財政的に非常に危なくなったときに財政再建団体になる制度がありましたね。今いろいろと地方財政について、かなり、第三セクター絡みで非常に危ない状況にあるとも言われております。今までは本当に何十年で十何件、二十件ぐらいで、今、赤池町の例だけがあるというふうなことを言われておりますけれども、今後、資産デフレに伴って、ある日突然、巨額の債務保証が地方団体に来るという可能性もあります。そうすると、何十、何百という地方団体が財政再建団体の申請をしてくる可能性がありますね。その審査能力とかそういうことに対しては、今、総務省としては不安はないでしょうか。

○片山国務大臣

 今、委員が言われたように、何千、何百と、今三千三百ぐらいしかありませんからね、都道府県入れましても。これを入れましても、そんなものですね、三千三百ぐらい。だから、何千、何百ということはないと思いますよ。

 今、財政再建団体はほとんどないと思いますけれども、出てきた場合に、それはノウハウが残っていますから。特に、昭和二十年代から三十年代にかけて財政再建が大はやりになりましたね。あのころは本当に地方財政が悪うございまして、そのときにいろいろな審査をし、財政再建をした。そういうふうなノウハウのストックが残っております。

 それから、総務省の関係の人はみんな優秀ですから、その審査能力については大丈夫であります。

○中村(哲)委員

 私は、何百、何千と言っていませんで、何十、何百と言ったんですけれども、その点は結構です。
 ただ、今、大臣がおっしゃったのは、今までフローベースでのお話をされていると思うんですよ。財政再建団体の制度というのは、フローが厳しくなってきたものに対してフローの手当てをきちんとすることで再建させていこうという制度だと思います。しかし、民間企業でも見られるとおり、最近はフローがだめだからというのではなく、過去にやった投資の資産的な被害によって大きなダメージを受けるというケースが出てきているわけですね。だから、ここで大きく枠組み、パラダイムの変換が起こっていると思うんです。

 再建制度におきましては、今までのようにフローだけを前提にして考えるのでなく、ストックの大幅な目減りについて手当てするような財政再建の仕組みというのをやっていかなくちゃいけないんじゃないでしょうか。フローというのは年度内の収支で、ストックというのは、資産とか債務保証したりしていて突然、第三セクターが破綻したときに、その被害が直接公共団体にかぶさっていくということを申しておるわけですけれども、その点について大臣は、それはもう心配ない、これからストックの目減りによってある日突然、巨額な債務保証が来たりしたとしても、それは何十、何百というレベルじゃないよ、少なくとも十件内におさまるから総務省の審査能力では十分だよ、そういう御答弁だと理解してよろしいのでしょうか。

○片山国務大臣

 今、委員が言われるように、何十、何百と出るようなことは、地方財政の破綻ですから、それは地方財政計画の策定でしっかりと財源手当てをしますから、私もそんな何十、何百ということは出ないと思います。例外的に、財政運営で大きなミスを犯したり何かが起こって、そういうような事故が起こって、そういうところは出てくると思いますので、そういうものについては、私は、恐らく大変特殊な、レアなケースだと思いますので、ちゃんとその団体の財政のフロー、ストック両方見まして、一定の財政再建期間を設けて、累積の債務は棚上げにしながら一定の期間の中でフロー対策、ストック対策をやって財政再建をしていく、こういうことになると思います。

 何十、何百と出るような事態があったら、地方財政全体の破綻につながりますから、そういうことは起こさないようにするのが我々総務省の役割だ、こういうふうに思っております。

○中村(哲)委員

 何十、何百も出てきたら地方財政の破綻だから、それを阻止するのが私たち総務省の役割であると御答弁なさいましたが、何十、何百出てこないように総務省として努力するとは、具体的にどういうことでしょうか。

○片山国務大臣

 何十、何百出てくるというのは、それぞれの団体の財政運営がどうにもできないようになるということですよね。例えば、昔は人件費が払えないということがあったんです、職員の給料が。そういう事態が仮に起こったら、それは地方財政そのものの崩壊ですよ。だから、そういう場合には国が責任を持って、地方交付税の増額だとか、税源の移譲だとか、特別の地方債を出すとか、いろいろな方途を講じます。それをやってきたのが昭和二十年代から三十年代にかけて、あの時期なんですよ。そのために地方財政再建特別措置法という法律もつくったんです。

 だから、私は、何十というのも大変だと思うけれども、何百なんということはちょっと、なかなかイメージとして想定できないのですけれども、そういう危機的な状況になったら、地方財政がひっくり返るということは国民の福祉に大変な重大な影響がありますから、政府としては全力を挙げて手当ていたします。

○中村(哲)委員

 大変よく理解できましたけれども、片山大臣がやはりイメージされている昭和二十年代以降の話というのは、フローの話だと思うんです。ある日突然、資産デフレによって巨額の損失が顕在化するというのがバブル崩壊以後の企業の破綻とかに出ているケースですから、それを想定しているのかどうかということは、頭に入れておかないといけないと思うんですね。

 その点に対して、大臣、資産のデフレ、資産の目減りに伴って巨額の損失がある日突然、顕在化するようなケースというのは、そう起こらないと考えておられると認識してよろしいでしょうか。

○片山国務大臣

 いろいろな、例えば箱や埠頭、土地やテーマパークやそういうものに地方団体が投資をしている、ストックの投資をしている、それが物すごく価格が低落している。これは複式簿記ではありませんし、価格の低落というのは大変資産として減りますよ。しかし、それが直ちにその団体の財政そのものに、大きな支障に私はならないと思います。

 だから、今、委員の言われたことが、私、少し理解力が弱いのか、もう一つぴんとこないんですけれども、基本的には、例えばシーガイアが、これは宮崎県、宮崎市もかかわり合ってのテーマパークというのかレジャー関係の投資でございますけれども、その段階で債務保証したり出資をしたものについてはどこまで返ってくるかということはあります。しかし、そういう場合について、私もそのときの答弁で申し上げましたが、それによって当該団体の財政運営に支障があるようなら我々は援助するけれども、そうでない限りは自己責任だ、こういうふうに申し上げました。基本的には、今のお話もそういうことじゃなかろうかと理解しております。

○中村(哲)委員


 大臣の御答弁をいただきまして、例えば第三セクターの資産の目減りによって大きな債務保証を地方団体が受けることになるかもしれない、そういう手痛い財政的なダメージを受けた場合は国が最終的に面倒を見る、そういう意気込みを聞かせていただいたということでよろしいですよね。

○片山国務大臣

 委員が言われるように物すごい債務保証は余りやっていないですよ。私が思ったより第三セクター等に対する債務保証はそんなに大きくないんですが、ケースとしては委員が言われるケースもあり得ますので、その結果、その団体の財政運営に致命的な支障を来すようなら、それは何らかの対応を考えます。

○中村(哲)委員


 今、大臣がおっしゃった、最終的に国が助けるという意気込みですよね。
 それが、私どもが調べて、勉強不足なのかもしれませんが、法律上に規定されていることなのかなということがあるわけですね。先ほどお話しさせていただきましたけれども、例えば、地方債の元利償還についてどれだけ見ていくのかということに関しても、法律ですべて決まっているわけじゃなくて、政令なり省令で決まっている部分もありますよね。そういう意味では、ある意味、口約束じゃないかというふうに地方団体から思われている部分もあると思うんですよね。

 私が勉強不足なのかもしれませんが、法律上の根拠、何法の何条がこういうふうなものになっているのかということについてお聞かせください。

○片山国務大臣

 何条何かと、いろいろ調べてもらいますけれども、私の認識では、明確にそれを規定した条文はないと思います。

 しかし、地方団体というのは国と同じなんですね。これは、地方団体は自治権というのがもともとあるんだという説と、国の統治権の一部を譲られているんだという両説ありますけれども、後の方が今行政法の世界では通説ですけれども、いずれにせよ、国と同じなんですよ、地方団体というのは。そうでしょう。国は主権と領土と国民ですよね。地方も同じなんですよ、自治権と固有の都道府県の区域と住民がおるわけですから。そういう意味で、憲法なり地方自治法なり地方財政法全部を見れば、それは今、委員が言われたような保障が根底にあると我々は考えるべきだと思っております。

 関係の条文についてはちょっと調べさせますので、また別の機会にでも御答弁いたします。

○中村(哲)委員


 地方自治体が、自治権というのがその団体にあるのかという説と国の一部だという説があって、今、通説は後ろの方だなというふうにおっしゃったので、その点に対し、私もちょっと勉強不足なので衝撃を受けているわけなんですけれども、国の出先機関が地方自治体なのかなというふうなイメージでとらえられているんだったらすごく問題ですが、そうじゃないですよね。今そうじゃないと首を振っていただきましたから、それはいいんですけれども。

 最終的に、実質的に国がすべて面倒を見ていく、地方債についても面倒を見ていく、それは憲法上、憲法の理念からして最終的にそれは確定しているんだ、それを動かし得ないんだということで認識しておいてよろしいのですね。

○片山国務大臣

 憲法の九十二条だったか何か、地方自治の本旨に基づいて法律で定めるとありますよね、地方自治は。だから、それが地方自治法なんです、あるいは地方財政法なのです。

 そういう意味では、私は国と同じと言いましたけれども、法律学者の間でいろいろな議論があるんですが、地方団体の存立というのは、もともと固有の自治権というのを持っているんだという説と、大きな国の統治権というのがあって、その統治権を分割して譲られているんだ、だから、これは出先という意味じゃありませんよ、自治権という権限が国の大きな統治権の一環なんだ、こういう説があるので、今の通説は、多数説は、国から分割して譲られているんだという説だ、こう申し上げたので、出先機関なんかということじゃ全くありませんよ。国と同型なんですよ、全く地方団体は。国と対等、協力の関係にあるのですよ、特に今の憲法の考え方は。

 具体的なことは地方自治の本旨に基づいていて、その地方自治の本旨が何かというのは、委員御承知のようにまた大分議論があります。それで、これは住民自治と団体自治だというのは、これもまた通説ですよ。我々が大学で教わった。これもいろいろな議論がある。

 そういうことによって、地方財政法や地方自治法や地方税法や、すべての地方自治に関する法体系ができていますから、そういう中で、今の地方債も国が関与して、その関与の限り国が責任を持つ、全体でこういう仕組みは法律上担保されている、条文についてはもう少し調べてもらいますけれども、私はそういうふうに思っております。

○中村(哲)委員

 経済財政諮問会議において、今後、交付税の議論がなされると思います。その中で、今の全体の枠組み、最終的には地方債というのは国で面倒を見るというその仕組みについては、財政構造改革の中でもそこの部分はいじらないと考えてよろしいですね。

○片山国務大臣

 基本的に、地方財政計画、それに基づく担保ということについてはいじらないというのか、今特に議論はありません。我々、自立性の強化は、国から来るお金を少なくして、地方がみずから取るお金をふやしてほしいと。だから、それは地方税の充実だ。その見返りで、負担金ではなくて国庫支出金が減るのはやむを得ません、特に補助金が。これはやむを得ません。地方税が充実すれば、その限りでは財源保障がそれだけ厚くなりますから、地方交付税は財源保障の部分を少し減らして、財政調整、財源調整の方を主にしていく。そういう意味では、地方交付税が減るのもやむを得ません。それは地方税が充実する、そういうことが前提ですということを諮問会議では申し上げているわけであります。

○中村(哲)委員


 確認なのですけれども、だから、経済財政諮問会議で、地方税は最終的に国が面倒を見るという枠組みに対しては、変更はないと考えてよろしいですねという一点をお聞きしたいわけです。

○片山国務大臣

 今の地方財政計画の仕組みを変えるつもりはありません。

○中村(哲)委員

 最後に、税財源の移譲についてお聞きいたします。
 前回の私の質問に対しまして、何らかの権威ある機関でやらなくてはいけないとお答えされていました。六月で地方分権推進委員会が終わりますので、その後に何らかの機関を設けないといけないとおっしゃっていましたけれども、この点についてどのようなことを考えておられるのか、お聞かせください。

○片山国務大臣

 今の地方分権推進委員会が七月二日で任期が終わります。法律を去年一年延長していただきましてありがとうございました。一年延長しましたので、再延長を考えずに、地方分権推進委員会としては一応これで閉幕にしよう。今度は税財源問題もやるということを前提に、それにかわる新しい権威ある中立の機関を立ち上げよう、こういうことでございまして、現在、官邸や関係のところと調整をいたしております。

 どういう形式というのか、根拠を法律にするのか政令にするのかとか、つくったものの任務をどうするのか。私は、地方分権のフォローアップをやってもらうということと、税財源の問題あるいは市町村合併の問題、そういうことになるのかな、こう思っております。その機能、任務をどうするかということ、あるいは何人ぐらいにやっていただく、何年間置くか、そういうことについては現在調整中でございまして、できるだけ今月中ぐらいには結論を得たい、こういうふうに思っております。総理も、それについては意見が一致しております。

○中村(哲)委員

 片山大臣の御持論である税財源の移譲というものが、この後の何らかの機関、今おっしゃった機関によってなされるということですから、三年なり、景気が回復されてからとおっしゃいましたけれども、そのことについて、きちんと早くやっていただくことをお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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