2001年4月10日
第151回国会 衆議院 総務委員会

案件:電波法の一部を改正する法律案


質疑内容  「電波法改正」

 電波法改正案審議でも、ひきつづきデジタル化に関連する問題をとりあげました。アナログTV機器であっても、デジタルに変換する装置があればデジタル放送を見ることができますが、問題は価格です。BSアナログTVにつけるBSデジタル放送への変換装置は10万円といわれており、地上波TV用についても同じような価格が予想されます。これでは、現在1万円台で買えるTVとのバランスがあまりにも大きすぎます。

 総務省は、
10年後には変換装置は1万円くらいの価格になるだろうとの回答でしたが、少し楽観的な推測のように思われました。また、デジタル化にあたってローカル局への財政支援についてたずねました。基本的には、ローカル局の申請通りに長期低利の融資や税制上の特別措置を受けられる、とのことでした。

会議録抜粋

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治です。
 まず、いわゆるIT革命に対して森政権が果たしてきた役割について、私なりに意見を述べさせていただいた上で質問に入りたいと思います。

 今回の電波法の改正というものは、森政権が取り組んできたいわゆるIT革命のための環境整備の一環だと位置づけられると思います。私は、一般論として、このIT革命の名のもとにデジタル化を進めていく政策というのは、大変よいことだと思います。

 まず、国全体の情報の流通が本当に円滑になります。そうすると、生産性も向上しますし、経済も上向いてくる。先ほども話がありましたように、個人の生き方も変わってくる。情報の共有により、あらゆる分野で社会参加が進むことになるでしょう。先ほども地方分権に非常に役に立つという御意見がありましたけれども、本当にそういうことだと思います。ひいては、日本の民主主義というものも成熟化していく、そういうふうにつながることになっていくんだと考えております。

 しかし、何事にも、光の部分があれば影の部分があると思います。IT革命も、何も考えずに推し進めていけば、影の部分が非常に多くなってしまう、かえってIT革命なんかなかった方がいいんじゃないかというような人がたくさん出てくることになると思います。私たち政治に携わる者の使命というものは、その影の部分をできるだけ取り除いていく、そのことなのではないかと思います。

 森政権の一年間の特色として、私たちは不十分だと思いますけれども、不十分とはいえ、このIT革命に取り組んできたこと、これが挙げられると思います。しかし、残念ながら、森政権というのは余命幾ばくもないようです。片山大臣、小坂副大臣、本日はこのIT革命に取り組んできた森政権の最後の置き土産として、IT革命に対する影の部分を解消する方針についてはっきり示していただきたいと思います。
 三月十六日、NHK予算の審議のときに、私は、「この続きは電波法のときにやらせていただきます。」と申させていただきました。早速続きの質問をさせていただきます。

 まず、アナログテレビが使えなくなることについてお聞きします。
 電波法改正案の七十一条の二によれば、二〇一一年には今あるアナログテレビはそのままでは使えなくなるということです。この影響を最小限にするためには、デジタル地上波をアナログテレビで見られるようにするアダプター、いわゆるセットトップボックスが二〇一一年に幾らぐらいの値段になっているのかということを今のうちから想定しておく必要があると思います。
 小坂副大臣は、三月十六日の総務委員会で、山村委員の質問に対して次のようにお答えになっています。

 アナログのテレビにつけるセットトップボックスと言われているアダプターが、たくさん需要が出れば価格が急激に低下をいたします。今一万とか二万とかするものが、二〇〇六年ごろになりますと、恐らく一万円をはるか下回って提供されるような状況になっていると思いますが、そういうことになりますと、それをつけるだけで見ることができる。
このように小坂副大臣はおっしゃっております。

 しかし、今、BSデジタル放送を受信するためのセットトップボックスは大体十万円前後と言われております。それを、今一万円とか二万円とかするものだとおっしゃっているのは、どうも事実を誤って認識されているのではないかというふうな印象を受けます。もちろん、現時点でこのようなアダプターは販売しておりませんので、今一万円とか二万円ということはあり得ないんですね。
 先ほど、小坂副大臣は、二〇〇三年に二万円ぐらいになっているだろうと試算がある、そういう御答弁だったのですけれども、このあたりのところの御認識をもう一度確認しておきたいと思うんです。いかがでしょうか。

○小坂副大臣


 今の、最後のセットトップボックスの部分だけ、まず答弁させていただきたいと思います。

 私が過日の委員会におきまして一万円を切るだろうと申し上げました根拠は、一つは、今パーソナルコンピューターでアナログの信号をデジタルに読みかえてビデオ録画するような装置、ボードといいますか、そういうものが発売をされております。従来は三万から五万ぐらいしておりましたけれども、今一万五千円から、安い物は一万円を切っております。それがデジタル変換の部分の一つの参考になるものとして、自分なりの資料として頭に置いたことでございます。

 二〇〇三年に一千万台普及している時点で大体二万円ぐらい、これはメーカー等の試算でございまして、それなりにマーケットを知っていらっしゃる皆さんの意見として価値があると思っております。

 その後、二〇〇六年ぐらいに本格的な、地方も含めた放送が開始される時点で幾らぐらいか、こう試算したときに、私は、その一番心臓部の、一番金のかかる部分がワンチップ化されることが価格低下の大きなかぎを握っていると思いますが、そこまでにはIMT二〇〇〇が普及をいたしまして、携帯電話も動画像、またその中でデジタル放送を受信できるような機能を備えたものも発売されてくることが想定をされます。そうしますと、ワンチップ化されたチップは共用部品として幅広く利用され、そのための生産体制が十分に整ってくる、こう考えられますので、そういった時代には一万円を切るようなものが出てくるだろう。

 また、デジタル放送のフル機能をコンバートするセットトップボックスの値段と、もう一つは、今あるアナログテレビでともかくデジタル放送の絵だけでも見たいというような要望にこたえるセットトップボックスも出てくるんではないか。その場合には、多機能ではないものですから、非常に単純化された機能で大変低廉なものが出てくるだろう、私はこのように想像をいたしております。あながち単なる空想を言ったわけではないつもりでございまして、御理解をいただければと思っております。

○片山国務大臣


 冒頭に、中村委員からいろいろなお話がございました。

 森内閣はIT革命を最大の課題にいたしております。御承知のように、昨年の臨時国会でIT基本法を通していただいて、年末にIT戦略会議がその戦略の提言をいたしまして、一月六日に新しい省庁体制が発足すると同時に総理を本部長にします新IT戦略本部を立ち上げまして、私も副本部長の一人にしていただきましたが、一月二十二日に年末の民間の戦略会議御提言のものを中心にe―Japan戦略という国家戦略を決めまして、三月末までにe―Japan戦略に基づくアクションプランを決めた、こういうことで推移いたしておりまして、その相当部分は我が総務省が担う、こういうふうに私は考えております。

 そこで、IT革命というのは経済的な効果も雇用的な効果も大変大きゅうございますし、また国民生活にも大変いい影響を与えるということでございますが、委員言われましたように、光だけではなくて影があるよ、こういうことでございまして、当面の影といたしましてはいわゆるデジタルデバイドがあるのではなかろうか、地域的に、年齢的に、所得的に。

 地域を見ますと、大都市圏が一番進んでおりまして、インターネットの普及、携帯電話の普及、その他ですね。その次が中小都市で、地方の市町村は大変おくれている。それから年齢的に見ると、若い人が大変利用されておって、高年齢になるほど利用率が低い。所得的には、所得の高い人がやはりITに一番なじんでおられて、所得が低い方がもう一つである。また、障害者の方が今のIT機器等になかなかおなれになれないというようなことがあります。私は、この情報格差、デジタルデバイドを解消することが当面の一番大きな課題ではなかろうか、こう思っておりますし、情報バリアフリーということで、障害者の方や高齢者の方でも手軽に簡易に利用できるような機器の開発も必要だ、こう思っております。

 これも既に答弁させていただきましたが、総務省ができましてから、総務省にIT有識者会議というのをつくりまして、ここではデジタルデバイドの解消を中心に議論していただいております。メーカーの社長さん、あるいは地方団体の代表、情報通信事業に携わっている方、障害者の代表の方、高齢者の代表の方、いろいろ入っていただいておりまして、これは六月中ぐらいまでには結論を得たい、こう思っております。

 そういうことで総務省の取り組むべき大きなテーマとしてIT革命、デジタルデバイドの解消を今後とも十分にしっかりと取り組んでまいりたい、こう思っております。

○中村(哲)委員


 片山大臣の御答弁で、デジタルデバイドの解消というのが今当面の一番の課題だということを聞かせていただきまして、本当に私もそうだと思います。その点についてこれからも強力に取り組んでいただきたい、そういうふうに強く思います。

 小坂副大臣の御答弁をいただきまして、二〇〇六年のころには一万円を切るだろう、そういう見通しでやっていく、そのことの説得力も非常にあるのかなと思いました。そして、先ほどの松原委員の質問に対する御答弁で、もし下がらなかった場合には何らかの対策も考えていかなくてはならないということもお聞かせいただきましたので、その点だけ御確認はさせていただきます。

 次に、いわゆる共聴についてお聞きいたします。
 山間部など電波が届きにくい地域が我が国は多いということで、一カ所で電波を受けてそれを増幅するなどして有線で各家庭に放送を届けるという共同受信のための施設、いわゆる共聴施設がこの国には設けられていることが多いです。また、共聴施設というのは、そのような山間部などだけではなく、ビル陰などで都市部でもマンションなどに設けられているところも多い。しかし、このような共同受信のための共聴施設というのがデジタル化によって大きな影響を受けるのではないか。その点についての議論なりが余りなされていないように私は感じております。

 そこで伺うのですけれども、デジタル放送受信のために共聴施設を全国でつくりかえるコストとしては、日本全体で幾らぐらいになっていると御試算しておられるのでしょうか。

○小坂副大臣

 いわゆる共聴施設という中には幾つかのパターンがあるのかと思うんです。一つは、アンテナを高いところに立てて、そして受信した電波をケーブルを通じてアンテナ線として各戸のテレビに配給をして、そこで見ていただくという形のもの、これが一般的だと思います。

 デジタル化に際して必要な設備というものを考えますと、一つは、同じような、アンテナはそのままなんですけれども、デジタル電波が受けられる方向性等を全部修正した後、それで受けていただいたものを流すと、デジタルのテレビをお持ちの方はデジタルで受信をする、アナログのテレビをお持ちの方はその中からアナログの電波を拾って受信する、こういう形態が出てくる。また、その中で、いわゆるアナログテレビでデジタル放送を受信するために協調的に何かできないかということも考えられると思うんです。

 ただ、いわゆる受信対策としての部分だけを考えますと、共聴施設はそのままの形で、周波数の適正等のデジタル化へのアンテナの施設の整備等を行っていただいて、それぞれの施設の所有者または利用者の負担においてこの対策をとっていただく、これが原則でございまして、これ以外のことは今考えてございません。

 また、責任を持って取り組む主体者というのは、今申し上げた共聴施設を、例えば協同組合のようなもので運営をしていれば、その組合の出資の中でやっていただく、出資者のそれぞれの分担でお願いをする、こういうことでございます。

 今御質問はなかったのですが、今の私が申し上げた三番目の形、いわゆるアナログのテレビでデジタル放送を受信するように協調して何かできないか、こういうことになりますと、これはチャンネルがたくさんある場合にはなかなか難しいですね。ですが、一つの形に大もとで変換したものだけを受信するという形にすれば、そのチャンネルだけならば共聴することが可能かもしれません。
 ちょっと余計なことを申し上げましたが、基本的には、そういった主体としては利用者の負担でお願いをするということを考えております。

○中村(哲)委員

 利用者負担でやられるということで、その点は御確認させていただきましたけれども、メタル線では帯域の問題で非常に難しいのじゃないかという議論もあると思うんです。線そのものを光ファイバー化する必要があるのではないかという意見もあります。
 そうすると、非常に大きなお金がかかることになると思うんですけれども、その点に対しての事実の確認をさせてください。

○小坂副大臣

 いわゆるケーブルテレビのようなものを想定した場合、いわゆる共聴受信というよりはむしろフルサービスをケーブルで行っていく場合、これは情報量が非常に多くなってまいりますので、通常のメタルケーブルだけでは賄い切れないのではないかということも想定される部分が出てくると思います。また、帯域的にカバーし切れないのではないか。

 これは、技術的にいろいろまだ対応可能ではないかというふうに私も考えています。そういった趣旨であれば、これはちょっと研究をしてみないとわかりませんが、何か具体的な事例があれば、こういった部分、こういうことでどうなるのだ、こう聞かれればまたそれを研究してみたいと思っておりますが、今御指摘の質問の部分が、カバーできるのかということであれば、基本的にはカバーできる、こう考えております。

○中村(哲)委員

 御確認させていただきたいのですけれども、山間部で今メタル線を使って共聴施設をつくっているところがある。そこがデジタル放送になってフルサービスを受けるときに、今のメタル線で可能だというふうに総務省は認識されているということでよろしいのでしょうね。

○小坂副大臣


 いわゆるケーブルテレビの場合、単にアンテナから電波を流して送るというのじゃなくて、ケーブルテレビで放送するという場合に、いわゆるヘッドエンドと言われて受信したものをデジタルに変換してケーブルに送り込んでいく部分、この部分は幾つかの方式があるようなのですが、今は三十チャンネル分ぐらいはそのまま送れますので、これはパススルー方式、ただ通すだけですね、この方式であれば技術的には問題がない、このように聞いております。

 それから、ちょっと私も余りこの部分には詳しくないのですが、トランスモジュレーションという方式があるのだそうですが、これですと経費が数千万円かかって、八チャンネル分しか送れないというようなことがあるようでございます。これはあくまでもBSデジタル放送のケーブル伝送方式として試算をしたときのものだそうでして、ちょっと御質問がそういう具体的なものでなかったものですから資料を整備しておりませんが、いろいろなパターンが考えられる、こう思います。具体的なものをいただければ後日資料をお届けしたいと思っております。

○中村(哲)委員

 金曜日のときに具体的な質問をすると言っていたのですけれども、うまく伝わっていなかったようで、済みません。
 ここが日本の場合は非常に大きな意味を持ってくると思うのですね。今の放送でも、最終的に入らない、見られないから共聴施設をつくったという地域が多いのだと思います。そこに対する配慮というものをしなければ、デジタルデバイドというのは解消しないと思うのです。ここに対して私たち政治家は一番心を配っていかなくちゃいけないのじゃないかなと思っているのですね。

 これは関連してなんですけれども、共聴設備とは直接は関係しないかもしれませんけれども、例えば山間部などでは、今は事実上受信できているという運用がなされているところもあると思うのです。V局の場合は、波長が長いですから回折などして電波が届きやすい。しかしデジタル化するとなると、今の総務省の方針ではU局を使うということになりますから、回折がV局に比べれば少ないわけですよね。そうすると、同じところから同じ出力で送ったとしても届かない可能性があります。それに対してどういうふうな配慮をしていくのか、そういうことも考えていかないといけないと思います。その点についてはいかがお考えでしょうか。

○小坂副大臣


 中村委員も大変勉強されて、専門的な質問が多いようでございます。
 おっしゃるとおり、周波数が短くなれば直線性が高くなって障害物によって遮へいされる可能性がふえてまいりますので届きにくい。その意味で、UHF対応を使った今度の新たな地上波のデジタル放送の到達のパターンは、現在のVHF対応を使ったものよりはより限られた形になって、受信しにくい地域がふえる可能性がある、こうなってまいります。

 そこで開発されたのが日本流のシングル・フリーケンシー・ネットワークシステムという形でございまして、今は送信のもとがありますと、中継局は全部そこのもととは違う周波数を使って送っていかないと、干渉し合ってしまうのですね。それを、同じ周波数を使っても干渉しない方式が開発されておりまして、それによって電波を中継する中継点を細かくつくっても干渉しないでできるようになっているのですね。したがって、そういった山間部にも民放とNHKとが協調して鉄塔を建てて不感地域を解消する努力をすることによって、今よりもむしろそういう意味では対策がとりやすくなってくる可能性はあります。

 今までは、中継局をつくりたいけれども周波数があいていないのでつくれないという状況がよくあったわけですが、その部分はなくなってくるということで、今度は経済的な問題にもなってまいりますので、その部分で協調していただいて、経費を下げて対応をとっていただきたい。その上で、私どもはその範囲内で十分やっていけると考えておりますが、いずれにしても、デジタルデバイドを起こさないというのは、大臣からいつも私ども言われております至上命題でございますので、その点に注目しながら慎重に検討してまいりたいと思います。

○中村(哲)委員


 御答弁をまとめさせていただきますと、デジタルデバイド解消のためには何らかの措置が最終的には必要になるというふうにお考えだと思うのですけれども、その点についてもう一度御確認をお願いいたします。

○小坂副大臣


 もっと具体的に言えば、今まで中継局というのは大電力で中継していたのですが、今回は小さな、いわゆるデジタルデバイド解消のためだけの小電力のアンテナで済むということで、経費的にも非常に軽いのですね、比較的ですよ、比較の話でございますが。そういう意味で、ローカル局は事業メリットの中から対策を十分講じていただけると思っているわけでございます。

 しかしながら、どのような形であっても、結果としてならないように、やはり政治の役割としてそういうものを注目していく必要があるという政治的な考え方を私は答弁させていただいたつもりでございますが、現在はそういった対策は、経費的なものに政府側で対応する必要はない、このままの計画で十分進んでいく、こういう認識で進んでいるわけでございます。

○中村(哲)委員

 放送局には、東京のいわゆるキー局と言われる大きな局から、独立U局みたいな小さな局まであると思います。アンテナの方向というものが地上波にとっては非常に大きな意味を持ってきますから、共同で鉄塔を建てるというのは非常に大きな意味を持ってくると思います。そこで、旧郵政省、現在の総務省が果たすべき役割というのは非常に大きいと思いますので、その点については主導的な役割を果たしていっていただきたいなと思います。

 関連することになるのですけれども、次に、放送局のデジタル化に対する投資について、改めてお伺いしたいと思います。

 東京の民放キー局や大阪の準キー局、そのような大きな放送局を除くと、地上波放送のデジタル化については、放送局にとっては設備投資の負担が非常に大きいことになってしまうと考えられます。例えば、今までは曲がりなりにも黒字で健全経営をしてきたような放送局が、デジタル化のために設備投資が追いつかなくなって、また、この不況で増資もままならなくなって、立ち行かなくなってしまうというローカル局が出てこないとも限りません。私は、これは一つの考え方だと思うのですけれども、民間金融機関が貸せないような低利で長期の融資というものを政府として整備していかなくてはならないというふうに考えております。

 そこで、政府としては、このようなローカル局に対してどのような支援策を考えておられるのか、先ほども御答弁がありましたけれども、御確認をもう一度よろしくお願いいたします。

○小坂副大臣

 ローカル局に対する支援は、まず、地上放送のデジタル化に関する設備投資について、第百四十五国会におきまして成立させていただきました高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法等によりまして、税制面、金融面での支援を講じております。

 具体的な手続といたしましては、財政投融資を除いて、NTTのいわゆる売却益のCといいますか、それによる無利子あるいは低利融資を考えるということ、それから通信・放送機構による債務保証を行い、あるいは国税、地方税の特例措置を受けるために、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の第四条に基づく実施計画の認定をさせていただいて、それによってこれを実施していくという方法等が考えられております。

 この中で、ローカル局においても、デジタル化の投資によりまして新たなサービスが実施をできる。すなわち、地域の情報に密着したサービスを活用した通信・放送の融合形態のサービスとか、あるいはeコマース、今でいえばいわゆるテレビショッピングみたいなものが、双方向が機能することによってより幅広い新たなビジネスパターンというものが出てくる。そういったようなものによってローカル放送の収入源を確保していただきながら、負担は今申し上げたような融資策あるいは税制措置によって支援をしていく、このような中で乗り切っていただけるものと考えております。

○中村(哲)委員

 今の御議論をお聞きしていて、もう一方で考えなくちゃいけないのは、モラルハザードが起きないような形でやっていくということだと思うんですね。さきの総務委員会で通信・放送機構に対してまた仕事が付される、追加される法案が通りましたけれども、債務を保証するときのコストとか、無利子、低利融資をするときの、日本政策投資銀行などいわゆる政策金融機関によって支援策がとられるときのスキームというのをもう一度きちんと考えていく必要があると思います。

 その支援策のための費用というのは恐らく一般財源から出ることになると思うんですけれども、一般会計から総額幾らぐらいのものが出るというふうにお考えなのでしょうか。

○小坂副大臣

 基本的には、法人税の特別償却とか、あるいは地方税におきましては固定資産税の軽減とかという形のものでございますので、補助金を出すというような形になっておりませんので、そういった意味の予算が支出されるという形ではないわけでございます。

○中村(哲)委員

 ちょっと聞き方が悪かったようなんですけれども、具体的に幾ら補助金を出すという形でないとしても、本来なら入ってくるべきお金が入ってこないということになりますから、財政を考える上では同じだと思うんです。

 この支援策をとるにおいて国家がどれぐらい負担をするのか、そのことについて試算はどれぐらいあるのかということをお聞かせいただきたいということです。

○小坂副大臣

 支援するとしたらどのくらいの分の経費になるのか、逆にそういうものを想定してみろというお話でございますが、現在そういう資料を持ち合わせておりません。また、試算のやり方でございますけれども、基本的には、それぞれの努力によって新しいビジネスを創出する中で経営的な判断で対応していただくのが基本線なんですね。その上で国税等の減免措置もとっていく。したがって、投資額がどのくらいになるか、各局で個別に試算をしていただいたものの積み上げになると思うので、そういった資料、本日は用意しておりませんけれども、ちょっと調べまして答弁させていただきたいと思います。

○中村(哲)委員

 非常に細かい話になりがちなものなんですけれども、こういう細かい配慮をとっていく必要がこの問題としてはあるのかなというふうな感じがしております。

 そこで、融資とか支援策なんですけれども、融資をしてもらいたい、支援をしてもらいたいというときになると、ほぼ無条件で支援はしてもらえるというふうに考えてよろしいのでしょうか。

○小坂副大臣

 ローカル局が必要というふうに思って申請をしていただければ、前向きに適用してまいります。
 しかしながら、試算が難しい一つの理由は、経営的な判断でございますので、その支援をどの分野でどのくらい申請してくるかが申請を待ってみないとわからないということがございます。それでも何らか資料はあるんじゃないかと私も考えて今ちょっと資料要求をしているんですが、そういう形では今のところ資料を持ち合わせておりませんので、今おっしゃったような形で、どの分野でどのくらいというのは現在わかりません。

○中村(哲)委員

 どの分野でどれぐらいということがわからないというのはわかるんです。それをお聞きしているのではなくて、一般的にローカル局などが、自分たちが設備投資するお金が自分たちの資金ではなかなか賄えないから何か支援策が欲しいというときに、どういう、ローカル局であればお金が貸してもらえたり支援策を受けられるのか、ほぼ無条件で受けられるのかどうか、そこは非常に不安に感じておられると思うんですよ。そこについてのお考えをお聞かせください。

○小坂副大臣


 経営的な状況がどうであるかということが指標になるのかどうかということかもしれません。それにつきまして、債務保証をしていただくわけでございますので、機構によって債務保証等をする、その部分で判断をされるものと思っております。

 基本的には、ローカル局として、地域の放送局として皆さんに支援をされている放送局であれば、申請をしていただければちゃんとした制度上の融資、減免措置は受けられるというふうに考えていただいて結構だと思います。

○中村(哲)委員

 確認なんですけれども、少々赤字が出ていてもというぐらいなのかどうかというのはいかがでしょうか。

○小坂副大臣

 赤字の多寡でいきなり判断するというようなことではございません。あくまでも存続をするという放送局であれば基本的には支援をしていく。

 しかし、そこには債務保証をお願いしたりする審査の部分がございますので、そういう中で判断をされることでございますが、通常の放送局で健全な営業を行っている放送局であれば、若干の負債を抱えていることは当然あるわけでございますので、そういう中で、あるからいきなりだめだというようなことは決してないということでございます。

○中村(哲)委員

 負債を申しているんじゃなくて、毎年毎年の赤字の問題なんですけれども、裏返して考えると、少しでも黒字が出ているような放送局であれば、その黒字を、長期間にわたって返していけるような範囲だというふうに考えていただけるのならば融資は受けられるということで考えてよろしいのですね。

○小坂副大臣

 はい。実施計画をつくって申請をしていただくわけですね。一つは、その実施計画を総務大臣が認定をして、実施計画の実施確実性というものを評価の判断基準にさせていただきます。

 ですから、今後こういう形で事業を拡張したいのでこれだけ全部認めろといって、それがすんなり通らないということでいろいろ言われるということじゃなくて、適切な範囲内で、地域を支える放送局として今までやっていらっしゃった範囲内のそういうものに基づいた計画の中で適切と思われるものは基本的には認可されるという方向でございますけれども、そこに審査が入りますので、今申し上げたような経営の健全性とか実施計画の具体性とかあるいは規模における適切性、そういったものが審査の判断基準になってまいります。

 黒字があって累積でどうなる、あるいは赤字があってそれの今後の見通しがどうだ、そういう部分は、全体の中の一部として審査の判断基準にはなりますけれども、それがすなわち認めない原因にはならないということでございます。

○中村(哲)委員


 非常にわかりやすい答弁をしていただいたと思います。
 支援策はどうしても、これから二〇〇六年に向けて利用されるピークが来ると思います。今はまだまだ少ないのではないでしょうか。そうしたときに、今は制度はできているけれども使わないからその枠が縮小されるとかいうことが非常に危惧されると思います。

 確認なんですけれども、財務省に対しては、今はこういうふうに利用が少ないけれども、二〇〇四年、五年ぐらいにピークが来るだろうからこの枠は残していっていただかなくては困るとか、そういうふうなことを力強く説明されるということでよろしいのでしょうか。

○小坂副大臣


 時限的なものはございませんので、存続すると考えていただいて結構でございます。

○中村(哲)委員

 非常に利用度の高い制度をこれからも維持していくということを御確認させていただいたと思います。

 やはり地上波デジタルというのはかなりの負担を民間に求めるということがわかってきたと思います。言うまでもなく、テレビというものは大部分の国民にとって毎日の生活になくてはならないものだということは言えると思います。ほかのメディアに比べて国民生活に非常に大きなウエートを占めているということを考えても、国策で地上波デジタル化を推し進めるのであれば、これは重点的に投資をするというぐらいの覚悟を持ってもいいのではないかと思います。

 国、地方を合わせた借金が六百六十六兆円という財政難ですから、広い意味で公共投資の優先順位をつけるときに、IT革命を唱えてきた森政権としては、政権の最後にこの方針、つまり、他の公共投資をセーブしてでもこの分野には重点的に投資をしていくんだというような方針を明確に打ち出すことも必要なのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○片山国務大臣


 小坂副大臣から詳細に御答弁させていただきましたように、アナ・アナはデジタルの前提として、しかも今何不自由なくアナログ放送をやっているものを変換してもらうわけですからこれは公費を出そう、電波利用料ですけれども公費を出そう、こういうことでございますが、本番のデジタルの方は基本的には放送事業者の方に行ってもらう。しかし、大変大きな投資だから、例えば長期低利の融資をしますよ、税制上の特別の措置をとりますよ、場合によっては債務保証も考えますよ、こういう措置をやってきておるわけでありまして、そういうことで今、NHK初め放送事業者の方の一応の納得は得ているわけであります。

 ただ、御承知のように、一兆六百億円という巨額な投資ですから、やる過程ではさらにいろいろな議論が出てくると私は思います。例えば、ローカル局の中には、今の長期低利の融資はありがたいけれども、もう少し優遇された融資制度は考えられないかとか、今我々の方にもいろいろ御要請が来ておりますから、我々は、アナ・アナをやり、デジタルが始まっていきましたら、どういう優遇措置がさらにとれるかは検討してまいりたい、こう思います。

 ただ、基本的には放送事業者の仕事ですから、それを公費で負担するということは、例えば直接それに助成金を出すとか財政支援を直接やるということはなかなか問題があろう、こういうふうに私は思いますけれども、例えば融資や税制やその他の便宜供与でどこまで応援できるかは、さらに状況を見ながら検討させていただきたい、こういうふうに思っております。

○中村(哲)委員

 大臣の御答弁を私なりにまとめますと、自助努力にまずは任せるべきだということだと思います。それは本当にこれからのこの国にとって一番必要なことだと考えておりますから、私も同感でございます。

 ただ、思いますのは、三月十六日の大臣の私への御答弁の中で、状況の変化に応じて対応は変えていく、また、状況を見ながら、よく検討して結論を出していきたいということをおっしゃっていました。状況の変化への対応を検討するときには方針が必要だと思うんですね。その方針を今の段階からはっきりおっしゃっていただいた方がいいと思うんですよ。それが政治家の務めなんじゃないかなと思います。

 状況に対応して見てから行動するというのではなく、状況に対応するときにどういうふうな方針でやっていくのかということに関して、十年間という長いスパンを見ながらの話ですから非常に難しいことはわかるんですけれども、その点に関してもう一度答弁をいただきたいんですね。大臣は私への答弁で、「前後の状況で御勘案賜りますようにお願いします、賢明なる委員として。」と最後におっしゃっているんですけれども、私は大臣が思っておられるような賢明な委員ではないのかもしれません。政治家として、大臣として、この方針というものをいま一度お示しくださいますようお願い申し上げます。

○片山国務大臣


 今の法律で出しております優遇措置はもちろん続けていきます。これは一番大きな方針です。ただ、大きな投資ですから、アナ・アナをやりデジタルに入るわけですから、その場合に、特に体力が乏しいと言われるローカル局にとって困難な状況が出てきた場合には、さらなる優遇措置がとれるかどうかを検討していきたい、こういうのが大方針であります。

 そこで、今いろいろな共同の検討会、協議会をつくりまして、まず、とりあえずアナ・アナから始めなければいけませんからアナ・アナの協議会でございますけれども、共同の大きな委員会を民放の事業者の方とNHKさんと総務省の方でつくっておりますから、そういう中でも検討していきたいと思いますし、個々のローカル局の御意向も聴取しながら方針をさらに固めていきたい、こういうふうに思っております。今それをやっておりませんから、今の段階でどうだというのは、現在の法律上の優遇措置は続ける、こういうことでございます。

○中村(哲)委員


 今の大臣の御答弁をお伺いして、三月十六日の御答弁からはかなり前進したというふうに私は感じさせていただいております。前回ではそのときの状況に応じて判断するけれども、今御答弁いただいたのは何らかの措置をとっていくというふうなことで御答弁なされたというふうに私は感じておりますけれども、それでよろしいでしょうか。

○片山国務大臣

 いや、措置をとるとまでは言っていないですよ。措置をとるかどうかを検討いたしたい、こう言っておりますから、気持ちは前進しておりますけれども中身は同じでございますので、ひとつよろしく御理解を賜りたい。またこういうことを言うと、賢明なる中村委員、よろしくお願いいたしたいと思います。

○中村(哲)委員

 前進のお気持ちというのは議事録に載っておりますから、もう一度議事録を読ませていただきまして判断させていただきます。

 先ほどからの私ども民主党の委員の質問の中でいろいろとありまして、それを私も確認させていただくんですけれども、このようなことを進めていくときに、やはりお金の使い方というのをきちんとチェックしていかないといけないというのは非常にあると思います。つけ加えにもなりますけれども、アナ・アナ変換それからアナ・デジ変換、いろいろ経費がかかる中で、ここの積算根拠とか、そういうものを明確にしていく必要がある、厳しくチェックしていく必要があると思いますけれども、その点についての意気込みをお聞かせください。

○小坂副大臣

 恐縮でございます、もう一度質問の趣旨をお願いできますか。

○中村(哲)委員


 アナ・アナ変換とかにかかる費用に関して、補助金を出していくとか措置をしていく、支援策をとっていくということになると、きちんとした情報開示といいますか情報の認識というのが必要になってくると思います。透明性の確保も必要になってくると思います。行政としていかにかかわっていくのか、その点について意気込みをお聞かせください。

○片山国務大臣

 アナ・アナにつきましては五カ年計画でやっていく、初年度、本年度が百二十三億円の公費を出す、これは五カ年計画を続ける、もう既に答弁しておりますけれども総額は八百億程度でございましょうか、この方針は固めておりますし、具体にどうするかというのは、情報公開法の施行が四月一日から始まりましたので、基本的にはできるだけ情報開示をしていきたい、そのように考えております。

○中村(哲)委員

 それとともに、放送事業者に対して過度な干渉にならないようにということも同時に両立しなくちゃいけない課題だと思います。それに対してもう一度確認をよろしくお願いいたします。

○小坂副大臣

 先ほどほかの委員からもありました、いわゆるお金は出すけれども口も出す、そういうことでは困るよ、こういう御趣旨かと思いますが、支援すべきものは支援の枠組みの中で支援してまいりますが、放送の事業者の報道の自由また番組編成の自由等を阻害することのないようにしてまいりたいと思いますし、御指摘の情報公開につきましても的確に行ってまいりたいと存じます。

 また、先ほど委員の方の御指摘にありました高度テレビジョン放送施設整備事業に関しても、ローカル局に対する国税の支援措置等、財政当局とも積極的に話し合って、ローカル局の負担が急変急変にならないように対応してまいる、そのための努力を一生懸命やっていきたい、このように考えております。

○中村(哲)委員

 御答弁をいただきまして、まとめさせていただきますと、放送事業者に対する支援というものは、公的機関が報道機関に関与するということですから表現の自由との関係で非常に大きな難しい問題はある、自律性をできるだけ配慮しながら、しかし経営が成り立たないようなことになっても困るから最大限の努力をしていく。その難しい両立に取り組んでいかれるということを御確認させていただいてよろしいんでしょうか。

○小坂副大臣


 あくまでも原則は、資金調達等はローカル局といえども独自の経営判断また経営の責任において推し進めていただく、しかしながら、低利融資あるいは法人税等の軽減措置、こういったものについては、国としてできる限りの、支援措置として決めましたものですから、それの維持に努めてまいります。こういう枠組みでございます。

○中村(哲)委員

 ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。

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