2001年3月16日
第151回国会 衆議院 総務委員会
案件:放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
質疑内容 「NHK予算案審議」 関連メルマガ「国会からの手紙」第97号
NHK予算案審議では、総務省とNHKに対し、2011年までに行なう地上波TV放送のデジタル化について質問をしました。2011年までに全国全ての放送局は、地上波放送のデジタル化を自前の予算で行なうことがすでに決まっています。
これは、現在使われているアナログTVが原則として2011年には見られなくなるという、国民生活にとっても影響の大きい問題です。
NHKには自前でデジタル化を行なう体力があるのか、たずねました。受信料で成り立つ、いわば経営基盤のしっかりしたNHKですら体力がないとすれば、他の民放やローカル局はかなり自前でのデジタル化は難しくなるからです。NHKの回答は、国の方針としてデジタル化が決まった以上、自前でがんばるということでしたが、国の支援をお願いすることもありうる、ということでした。
会議録抜粋
○中村(哲)委員
盛り上がった本会議の後ですから頑張っていこうと思います。民主党・無所属クラブ、中村哲治です。
さて、午前に引き続きまして、質問させていただきます。私は、きょうは地上波デジタルの移行についての質問をさせていただきます。
地上波放送について、政府の方針としては、アナログからデジタルへの切りかえというのは放送事業者の方でやっていただく、そういう方針だと聞いております。つまり、総務省の方針でNHKが、二〇〇三年から三大都市圏、大阪、名古屋、東京、そして、二〇〇六年からは全国で地上波のデジタル放送をしなくてはならないということだと私は認識しております。
しかし、どうもお話を伺っていると、NHKの皆さんとしては、BSデジタルの契約を千日で一千万件という目標を達成しなくてはならない、だから、人材や資金などの経営リソースというものをBSデジタルに集中したいとお考えになっているのが私は本音だと思うんです。
しかし、先日、海老沢会長からお話を伺いました。いや、国の押しつけではありません、一緒にやっていこうという話ですというお話でした。しかし、一方で、先ほど山村委員への御答弁にもありましたように、そのときにお話しになられましたのは、ラジオの普及も三十年かかりました、そしてテレビの普及も三十年かかりました、今度地上波デジタルを二〇一一年まで十年でやるというと、並大抵のことではない、だから、何らかの地方振興策というものが必要じゃないかというお話だったと私は認識しておるんですね。
そこで、海老沢会長に改めてこの場で伺いたいのですけれども、今、私が申し上げたこの内容でよろしいのかどうか、そして、それを前提として、何らかの地方振興策として具体的にどういうものをお考えになられているのか、その二点、お聞きいたします。
○海老沢参考人
今委員から指摘がありましたけれども、ラジオ、テレビとも三十年の月日を要して全国に普及したという歴史を持っております。そういう中で、地上デジタル放送をやる場合には、これから十年でやらなきゃならぬということになりますと、非常にこれは常識で考えても大変な作業であることは言うまでもありません。
今、この国会に電波法の改正案が提出され、審議されております。これが成立しますと、二〇一一年にはアナログからデジタルに完全に転換するということになります。私どもは、そういう法律ができ上がりますれば、これに向けてNHK、民放とも最大の努力をしなきゃならぬということは言うまでもありません。
ただ、やはり、世の中計画どおりいくかどうかは、歴史が示すように難しい面もあります。しかし、そういう法律ができた以上は、それに向かって努力をするよう、さらにいろいろな面での準備を進めたいというふうに思っております。
御承知のように、この四千七百万世帯を全部やるということは非常に大変、つまり、日本は、先ほど申しましたように、山間辺地が非常に多い、そして、離島もたくさんあるということになりますと、これも都市と違って非常に経費がかかることは言うまでもありません。私どもの資金力だけで十分これが達成できるかどうかは非常に難しい面もあろうかと思います。
そういう面で、それがうまくいけばいいんですけれども、経済の変動等によってできなければ、やはり何らかの措置、いわゆる地方を振興させるというような意味合いを含めて何らかの措置が必要になるのではなかろうかという、今、漠然とした一つの考えといいますか、それを持っているということを述べたわけであります。
いずれにしても、我々はあくまでもやはり目標がなければ前に進みませんので、目標に向かって着実に進めていきたいというのが今の私の気持ちでございます。
○中村(哲)委員
非常にわかりやすい答弁をしていただきましてありがとうございました。
私なりにまとめさせていただくと、二〇一一年までNHKとしては最大の努力をしていく、国家の目標に向かって最大限の努力をしていくけれども、自分たちの資金ではそれが最終的にできるかどうかわからない、だから、そのときには何らかの措置を考えてほしいというのが、今の会長の、私なりに受け取った内容です。
しかし、それを前提としますと、総務省様の今の方針とはちょっと違うような気がしますよね。大臣、この点についてどのようにお考えでしょうか。
○片山国務大臣
今、海老沢会長からお話しのように、今回、この国会に電波法の改正案を出させていただいておりますけれども、それは、今言いましたように、二〇一〇年までにデジタル移行を完了させたい、こういうことであの法案の中身ができているわけでありまして、我々はそういうことでやっていきたい。
こういう考え方をまとめますまでには、NHKを含めまして民放、総務省と三者の相談の場をつくりまして、どうだろうかということを相談しての上の結論であるわけでありますが、とりあえずはアナ・アナをしっかりやる、それから、デジタルの方の投資に移っていく、こういうことでございます。
NHKさんは特殊法人ですから、一番体力もある、技術的にも一番すぐれている、こういうことなんでしょうが、例えばローカル局やなんかはデジタル投資が大変だという話は、私も公式、非公式に耳にいたしますので、何らかの対応ということは既に言われております。だから、もう少し様子を見ながら、何らかのいい知恵が出るのかどうか、こういうことでございますが、いずれにせよ、NHKさんには全体の機関車として先導的に引っ張っていっていただきたい、こう思っておりますので、海老沢会長初めNHKの皆さんとは十分意見交換してまいりたい、こういうように思っております。
○中村(哲)委員
いつものわかりやすい大臣の答弁とはちょっと違うような気がするんですよね。措置が必要になるかもしれないと、大臣の今の答弁では、そういう声も聞いているけれども、頑張っていくという、そこまでだと思うんですよ。
措置が必要だという現実問題が起きたときに、いや、もうそれは民間業者なりNHKでやってもらうんだ、公的資金は投入しないんだというお考えなのか、いや、やはりそういうときには措置が必要になるよねとお感じになっているのか、どちらでしょうか、お答えください。
○片山国務大臣
まあ、これは、今回のデジタル化移行は順序がありますから、まず我々は五年かかってきっちりアナ・アナ変換をやりたい。それからデジタルに入るわけで、まだ相当のロングスパンですから、その間に、状況を見ながら私は考えていきたい。今必ず何らかの対応をとるということも言えないし、全くとりません、こういうことも言えないと思います。
○中村(哲)委員
状況を見ながら変えていくということですから、それは措置をする可能性があるということだと受け取っていいのですね。
○片山国務大臣
いや、可能性が何かということですけれども、今の段階では決めていない、今の段階では、今までのやり方のように頑張っていただく、こういうことでございますけれども、状況の変化に応じて対応は変えていくというのがあれですが、ラジオやテレビは三十年かかったかもしれませんが、中村委員、最近はドッグイヤーですから、やはり十年ぐらいでということは一つの考え方で、関係の方の御同意も得ておりますから、そういう中で、今あなたみたいに、右か左かどっちかと言われてもなかなか、真理は中間にありとひとつお考え賜りたいと思います。
○中村(哲)委員
私は、右か左かどっちかやといっていることを聞いているわけじゃないのですよ。最終的に、もしそうなった場合に、措置をすることがあり得るのかどうかということをお聞きしているのです。もう一度お答えください。
○片山国務大臣
委員のお気持ちはよくわかりますので、状況を見ながら、よく検討して結論を出したいと。
○中村(哲)委員
状況を見ながら検討するということは、措置の可能性があると言っているのと私は一緒やと思いますけれども、その点についてどうお考えでしょうか。
○片山国務大臣
同じことをお答えして恐縮になりますけれども、前後の状況で御勘案賜りますようにお願いします、賢明なる委員として。
○中村(哲)委員
では、次の関連した質問に移らせていただきます。
今までの御答弁の方針から聞いておりますと、今後、市場に出てくるテレビというのは、アナログとデジタルの両方の受信機能を持ったテレビが主流になってくると思います。少なくとも、二〇〇三年から二〇〇六年、三大都市圏は始まって全国にはまだ始まらない、その移行期にはそういうことになることは明らかでしょう。
そうすると、なぜ国はアナログの廃止を急ぐのかなという疑問が出てくるわけです。国策として一律に推進していくというのではなく、地上波放送をデジタルにするかどうかというのは、各放送局に地域ごとで任せたらいかがでしょうか。デジタル化を選択するところは、デジタル化に伴うすばらしいサービスを提供できることになるわけです。一方、設備投資が大変だからアナログでやるというところも、それはそれでいいじゃないですか。そして、国全体として、デジタル化したところから周波数を有効に利用していく、そういうふうな段階を踏んだ移行措置というのがあった方がいいと思うのですよ。
大臣はさっき私に、右か左かじゃない、中間をとった方がいいとおっしゃいましたけれども、まさに私は今回そのことを言わせていただきたい。二〇一一年にぱんとやめてしまうようなことをせずに、段階を踏んだ措置を考えてもいいのじゃないでしょうか。その点について、海老沢会長と大臣と、お答えください。よろしくお願いします。大臣にお願いします。
○小坂副大臣
ぜひとも大臣に答えていただきたいところもあるのですが、私の方から、若干これは技術的な問題もかんできてしまうと思うのですね。委員のお考えとして、物の考え方としては、そういう考え方が確かにあると思うのです。
しかしながら、デジタル化におきましては、放送局の電波はどういうふうに出てくるかといいますと、放送局の本体から出る電波だけでなく、中継局というのが、あちこちにアンテナが立つわけですね。その中継局が、アナログの場合には全部周波数が違います。ですから、放送局がそれぞれ独自に、デジタル化をいつやるかというのをばらばらに決めますと、実際には周波数がいろいろなところで占有されてしまいまして、この帯域を全部あけようと思っても、虫食い状態になってしまう。それで、アナログの電波が残っているところは幅を広くとってしまいますので、その周辺部分でデジタル化というのはなかなかできなくなってしまいます。そういうことから、デジタル化を志向するのであれば一斉にやらないと、電波の空きチャンネルを確保することはできないのですね。それが一つの理由として、一斉にやっていただかなきゃいけないということにもなります。
それから、地上波のデジタル放送を実施するメリットは、電波の有効活用と同時に、先ほども別の委員の方に申し上げましたけれども、デジタル化の信号によって、インターネットあるいはデジタルBS放送、そういったほかのメディアとの融合が図れるようになる。いわゆる通信と放送の融合と言われるように、その信号の内容の、コンテンツの相互乗り入れがしやすくなるわけですね。そういうことによって、電話も将来また、デジタルの電話にどんどん変わってくるかもしれない、今もほとんど変わっておりますけれども。携帯のデジタルですね。
そういうようなことで、全部融合できるというメリットがありますので、そういった意味で、ぜひとも地上波は一斉にデジタル化をして、そのメリットを享受したい。それが国民全体の利益につながることだ。そういうことで私どもは考えております。
○海老沢参考人
私どもとしては、公共放送として全国あまねく情報が行き渡るようにするのが使命でありますので、そういう面で、情報に格差がないようにする意味合いからも、できるだけ早くやりたい。それが我々の使命だと思っておりますので、始めた以上は、今全国五十四の放送局がありますけれども、できるだけ早く円滑に普及をさせたい、そういう方針で臨みたいと思っております。
○中村(哲)委員
時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、この続きは電波法のときにやらせていただきます。ありがとうございました。
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