2001年2月27日
第151回国会 衆議院 総務委員会
案件:地方税法等の一部を改正する法律案
質疑内容 「地方財政について」
地方交付税法改正、地方税法改正審議では、地方財政全般について質問をしました。地方の財政赤字が188兆円にも達している中、借金によって公共事業を行い、景気回復を目指す方法はもはや効果がないということを主張しました。
また、地方が地方交付税と補助金に依存している体質を改めるため、税源を中央政府から地方自治体に移す方法として、たとえば、国税である所得税を定率税率部分と累進税率部分に分け、前者を地方税に移すことを提案しました。
会議録抜粋
○中村(哲)委員
民主党・無所属クラブの中村哲治です。
最年少の総務委員として、質問させていただきます。若い世代の代表としての感覚を訴えさせていただけたらいいなと思っています。
さて、大臣、平成十三年度末の地方の借金というのは百八十八兆円と言われていますよね。これは、地方財政が借金漬けで危機的な状況にあるということだと私は思っています。
では、大臣、経済財政諮問会議のフルメンバーでおられます大臣にお聞きしたいのですけれども、大臣が会議でおっしゃっているように、二兎を追うという議論をやはり始めないといけないのではないでしょうか。大臣は、三年で景気は回復されるとおっしゃっていました。三年で本当に回復するのか、そして、その景気の回復とはそもそもどういう状況をいうのか、大臣の持っているイメージをお伝えください。
○片山国務大臣
三年で回復するとは言っていません。三年で回復させたい、回復を目指す、こう言っているわけであります。そして、景気の回復というのは、いろいろな議論があるのですが、私はかつて参議院の予算委員会で質問したんですよ、答弁じゃありません、質問したときに、景気を野球の打順に例えると、一番バッターは公共投資だ、二番バッターが住宅だ、三番バッターが設備投資だ、四番バッターが個人消費、五番バッターが輸出だ。
日本の今までは、財政出動で一番の公共事業と二番目の住宅建設はかなり頑張ってきた。塁に出る、ヒットを打ったり、向こうのエラーかもしれません。ところが、三番の設備投資がなかなか打たない、四番の個人消費が全然打たない、こういうことを言ってきたのですが、三番の設備投資は動き出したのです。どんどん打ち出した。
ところが、四番が動かないのですよ。四番の個人消費が財政需要の、御承知のように六割ですから、これをどうやって動かすかが今後の景気回復で、それが民間による自律回復の軌道に乗るのですね。
だから、今どうやって個人消費に刺激を与えて動かすかということなので、個人消費が動いた段階で景気は回復した、財政出動を大幅にしなくても、民間の力で景気が回っていく、こういう状況が私は景気回復だと思っております。
○中村(哲)委員
個人消費の回復というのは四番バッターだとおっしゃっていまして、私もそれは同感です。
若い世代の意見としては、個人消費なんかもう進みませんよ。僕の同じ世代の人たちで、将来に対する不安はいっぱいあります。今のような政治が続いていたら、年金をもらえるかどうかわからへん、将来の見通しが全然立たへん中で、個人消費なんか進むはずがないじゃないですか。ばらまき、ばらまきで公共事業ばかりやって、自分たちの目に見えへんところでお金が使われていっている、それが若い世代の率直な意見ですよ。
それで、大臣は、その後、税財源を地方に移譲すべきだとおっしゃっています。これは景気が回復してからやるとおっしゃっています。しかし、若い世代の代表としたら、不透明な状況があるからお金は使わない、個人消費にはいかないという状況ですから、やはり負担と受益を明らかにするという意味でも、自治体が自分の身を切る努力を本当にしようと思う意味でも、地方への税財源の移譲というのは必要なんじゃないでしょうか。それをさっきの答弁で大臣はおっしゃっていたと思うのですよ。そこについての御答弁をお願いしたいのです。
○片山国務大臣
私も、地方分権一括推進法が去年の四月から施行になりまして、権限移譲だとか事務移譲は一区切りついたのかなと思います。これで十分ではありませんけれどもね。
そうなると、やはり地方の一番要望が強いのは税財源の移譲でございますから、ただ、景気がこういう状況で、国も地方よりずっと借金が多い。地方は百八十八兆ですけれども、国は四百五十兆くらいでしょうか、五、六十兆でしょうね。そういう状況の中で、今それでは税源配分を国との間にやりましょうといっても、私は現実的でないと思うのです。
何度も同じことを繰り返しますけれども、景気がしっかり回復した時点で、これからの地方分権にふさわしい税源がどうあるべきかということをもう一遍しっかり見直すべきではなかろうか、こういうふうに思っておりまして、そういう意味では、今、政府の中での意思も大体そういうことかな、こういうふうになっていると思います。
○中村(哲)委員
私が言いたいのは、四番バッターを打たせるためには、不安を取り除く政策が必要だということです。景気回復をさせたら不安が解消する、そのためには公共投資をやっていく、そういう理屈で不安が取り除かれるのかどうか、大臣はどういうふうに認識されているのかということをお聞きしたいのです。
○片山国務大臣
言われることは私もわかるわけでありますが、やはり言われるように、先行きの不透明さが個人消費を幾らか抑えているところはあると思います。老後の不安、雇用の不安ですね。だから、そういうことはきっちり我々、責任を持って、特に政府が責任を持って、例えば年金や医療や介護や福祉はこういうふうにちゃんとやります、中長期的にこういうことですよと、それから雇用対策についても、新しい産業を創出したり新しい雇用を創出するために、こういう政策をやりますということを提示する必要が、委員が言われるようにあると私は思います。
それからもう一つは、もうかなり皆さん、我が国民は物を持っているのですね、衣食住も。住は、大都市圏はともかくとしまして、大都市圏を除くと、住も足りているのですよ。衣も食も世界で私は一番、ぜいたくだとは言いませんけれども、一番充実している、こういうふうに思いますよ。
今売れているのは、例えば携帯電話だとかパソコンだとかそういう種類のものなのです。だから、そういう意味では、今度は売る方も、個人消費を刺激するような、国民が喜ぶような商品開発というのがあるのかな。今国民が求めているのはサービスですね。例えば旅行もそうでしょうし、いろいろな趣味を生かすとか、絵だとか焼き物だとかいろいろなことを身につけるとか、そういう技能でしょうかね、私はそういうことを求めているのかなと思いますから、総合的にどうやって個人消費を引き出していくかということをみんなで考えていく必要があるな、こう思っております。
そういう意味では、IT革命が、これから携帯電話も次世代の携帯電話になりますと、今度は動画になるわけですから、携帯電話を持っておればインターネットにもつながるし、テレビと同じような効用も出るわけですから、もしこういうものがしっかり開発されれば爆発的な需要になるのかな、それから今度は固定電話でLモードというのも今研究されておりますから、そういうIT革命が景気回復の個人消費爆発の一つのきっかけになればいいなと、当方の所管でもありまして、そういうことを考えておる次第であります。
○中村(哲)委員
私の質問に対する不安の解消という答えの部分をもう一度繰り返させていただくと、雇用の不安と老後の不安を解消していかなくてはならないというのが大臣の答弁でした。それをしていかなくてはならないとおっしゃっていて、議論をしていかなくてはならないとおっしゃっていますけれども、その課題というのはずっと前からあったわけですね。何でできないのですか。
この数年間、年金改革も労働条件の話もいろいろありました。だけれども、現実に不安が解消されていないということは、今までの政府の、また自民党政治の失敗だったのじゃないですか。そこについてはどのようにお考えですか。
○片山国務大臣
それは見方がいろいろあろうと思いますが、政府・与党は年金の改革でも、医療制度の改革でも努力してきています。かなり無理をして前の臨時国会に関係の法案を通してまいりました。
それから、今後抜本的な改革をやろうというので、政府・与党で社会保障に関しては、正式な名前は忘れましたが、そういう協議会をつくりまして、三月中に結論を出そうということで議論しております。
それから、経済財政諮問会議は全体の経済運営や予算編成についてしっかりした方針を出そうということでやっておりますし、そういう意味では雇用を含めまして懸命の努力をしている、私はこういうふうに思います。
○中村(哲)委員
それを若い世代にもわかるように、わかりやすく伝えていただきたいと思います。それができていないのが今の政治全体の問題だと私は思います。
それで、税財源の移譲の話に戻りますけれども、大臣としてはどのような具体的なプロセスで進めていくようなイメージをお持ちでしょうか。
○片山国務大臣
これは役所の意見ではありませんが、政府部内でこれから調整しないといけませんけれども、地方分権推進委員会がこの六月末で一区切りになるわけでありまして、地方分権もこれで終わったわけじゃないからフォローアップをしなければいけませんね。そういう意味で、地方分権の事務や権限移譲のフォローアップをしながら、税財源をきっちり検討して御審議賜る何らかの権威ある機関が必要なのかな、こういうふうに思っておりまして、そういうものを一つのよりどころにしながら議論を起こしていこう。役所は役所で、我が総務省は総務省として、十分な検討を、地方六団体を初め関係あるところの意見を聞きながらやっていきたい、こういうふうに思っております。
○中村(哲)委員
権威ある機関の意見を聞きながらということでよろしいですね。
一つのお考え方としてお聞きをしたいのですけれども、個人にかかる税金と法人にかかる税金をどういうふうに仕分けしていくのかという観点があると思います。例えば、所得税については、累進部分は国税で残すとしても、定率の税率といいますか収入に比例する部分ぐらいは地方税として財源を移譲した方がいいのではないか、そのように考えております。
一方、法人税など法人に関係する税については、景気に左右されるとか地域的な格差が大きいとかいう二つの理由で国税とする方がいいというふうに考えております。つまり、自然人についての税金は地方に、法人についての税金は国にというふうに考えているのですが、この点について、どのようにお考えでしょうか。
○片山国務大臣
税源はいろいろな考え方があるのですが、一つは所得に対する税金ですね、それからもう一つは、消費に対する税金、もう一つは資産に対する税金です。大ざっぱに分けると、所得、資産、消費ですね。それで、所得について言えば、これは個人の所得と法人の所得とありますね、そういう税源を見ながら、長い間の経緯の中で国税と地方税の体系ができているのです。
だから、委員の言われるようなことも一つの大変新しい御意見だと私は思いますけれども、今まで積み上げてきた経緯からいうと、ちょっと大胆過ぎるのかな、こういうふうに思っております。
いずれにせよ、行財政改革というのは基本的に公でやることを縮小すること、官から民へ、中央から地方へ、そうやった上で、その中で税を国と地方がどう分けていくか、もっとわかりやすくする必要がありますね。
そういう意味で、今の所得、消費、資産をどういうふうに、これを一つだけこっちだということには、税の体系としてはなかなか難しい点があると思いますけれども、委員の御提言を含めて、私は今後しっかり検討していく課題だと思っております。
○砂田大臣政務官
ただいまの税の配分についてでありますが、私の私見でもありますけれども、国全体が今の借金を抱えて公債を発行しているという状況の中では、地方に国が移譲する、しかし、国全体としてはどこかで必ず負担しなければならない、そういう状況下にあるわけでございます。そういう意味で、今片山大臣がおっしゃるように、財源にゆとりができて、国、地方それぞれの分野に従って使える財源をそれぞれに分割するということは極めて大事なことでありますけれども、しかし、今の経済状況、国の財政状況の中では、どうしても国税として、あるいは地方税として、結局、地方にも借金が一緒についていかなければ解決できないというような形でありますので、いましばらく財政改善の余裕をいただきたい、そういうふうに考えておるところでございます。
○中村(哲)委員
砂田政務官の御答弁をいただきまして、一言で言うと、先送りという印象を私は受けました。片山大臣の答弁をお聞きしまして、私は非常にわかりやすい御答弁だったなと思っています。それで、わかりやすさがキーワードだと、今おっしゃったと思うんですね。だからこそ、抜本的な改革をしていかぬといけないという大臣のお気持ちに私は共感させていただきました。
それでは、次の質問に移らさせていただきます。
交付税についてお聞きします。基準財政需要額の算定についてお聞きします。
公共事業の補助金のいわゆる裏負担分というのが基準財政需要額の算定に入っております。これでは、補助金をどんどんとってきて、歳出をどんどん膨らませた方が交付税もふえるということになってしまうような気がするんですね。自治体にとっては行財政改革に対するインセンティブが働かない、こういうふうに私は危惧しております。だからといって、裏負担を基準財政需要額の方に全く入れなければ、財政規模が小さい自治体にとっては非常にしんどい話になってしまうと思います。
そもそも、国が公共事業をコントロールして、箇所づけして補助金をつけるという思想自体が今、問題になっているんじゃないでしょうか。今の公共事業で、自治体だって、こんなもの要らないというふうに思っているけれども、国から言われるからしようがないからやろうかというふうな思いでやられているところがいっぱいあるんじゃないでしょうか。本当に欲しいものがつくられない今の補助金制度というものにメスを入れる必要があると思います。
むしろ、公共事業の補助金について、例えば、投資的経費としての一括補助金という形をとるとか、補助金分をそのまま地方交付税交付金という形でやるとか、新しい制度を考えた方がいいのではないでしょうか。この点についての御答弁をお願いいたします。
○片山国務大臣
御指摘のように、国の補助金というのは、補助金がつけばやろうかということになるんですね、地方は。本当にしたい事業が、A、B、CとあってAなんだけれども、補助金がCについたらCをやるんですよ。私も県で財政課長や総務部長をやったことがありますけれども、そういうことになるあれがあるんで、場合によっては自主性を大変阻害していることは事実ですね。だから、そういう奨励的な補助金というのはできるだけ私はやめた方がいいと思うんです。
ただ、公共事業は違うんですよ。例えば、道路だとか河川改修、港湾だとか都市計画、こういうインフラ整備は、国と地方の両方が責任を持って、お金を出し合ってやっているんですね。そういうことが必要な事業なものですから、公共事業の裏負担にはそれは交付税を見ています、場合によっては。事業費補正やあるいは起債についての元利償還を見ておりますけれども、どこまで見るかというのは、一つの検討課題でしょうね。今までのやり方がいいのかどうか、そう思います。
それから、最後に言われました、公共事業なんか全部やめて一括の交付金みたいにしたらどうかと。これは、今、統合補助金という形で幾つかの分野について総合的に、あるいはメニュー的に地方団体が事業をやれるようになっていますが、これは私は大変な前進だと思いますね。これをさらに拡充していきたい、こういうふうに思っております。
ただ、公共事業を全部やめて、第二交付税みたいな、もう一つ交付税をつくる、こういう議論も昔からあるんですが、これは、今の交付税制度とのバランスもありますし、それじゃそうですかというよりも、むしろ、税源の移譲だとか今の交付税制度をしっかりしたものにする方が優先する課題じゃないかと私は思っています。
○砂田大臣政務官
今、大臣がおっしゃったとおりでございます。
必ずしも一つのことに財源を決めて使うということではなくて、統合補助金制度というのが平成十二年の予算において創設をされたところでございまして、その中で比較的自由に使える制度というものもできておりますし、そしてまた、大臣がおっしゃいましたように、国全体にかかわる公共事業については、それなりにはっきりとした形でそのところに予算を使うという形に相なっております。
十二年度から、そういう意味ではかなり自由な選択ができるという部分もふえておりますので、先生のおっしゃるような状況にこれからも発展していくだろうというふうに考えているところでございます。
○中村(哲)委員
お二人の答弁を伺いまして、非常に心強く思いました。
税財源の移譲とセットで考えていくべきだという大臣の答弁に関しては、非常にそのとおりだなと思うんですね。それを強力に、早く推し進めていただきたい。三年たったらとかいう話じゃなく、早く始めていただきたいと思います。
関連してなんですけれども、このように基準財政需要額が過去どんどん膨らんできた原因として、霞が関で新しい制度をつくって、その執行は地方自治体に任せていくという構造的な問題があるように私には思えます。
大臣にお聞きしたいんですけれども、そもそも地方交付税交付金の本来の趣旨というのは、ナショナルミニマム、すなわち、全国どこでも達成すべき最低限の行政水準を保障するということではないんでしょうか。もしそうならば、そのナショナルミニマムというのは、だれがどこでどういうふうに本来決めていくべきものなのか、大臣のお考えをお聞きします。
○片山国務大臣
地方交付税制度というのは二つありまして、一つが、今言われたような標準的な行政を全国の地方団体に保障してやる、そのためのお金を与えるという、ナショナルミニマムというのかどうか、そこはちょっとありますが、そういう財源保障の役割と、もう一つは、税金をたくさん取れるところには勘弁してもらいます、税金が少なく取れるところにはたくさん上げます、中間のところには中間のように上げますという財政調整ですね。財政力のある団体と財政力のない団体との間の財政を調整する、本来は交付税はそれで始まったんですよ、昔は。地方財政平衡交付金という時代が長くあったんです。それはそういうことなんですね。財源を調整する、地方団体間の財政力を調整する。
だから、その財政調整の機能と財源を保障する機能と両方あるわけでありまして、その財源を保障する方が委員が言われるようなナショナルミニマムの保障、こういうことになるのかもしれませんが、ナショナルミニマムという言葉はありますけれども、それじゃ、だれがいつどう決めたかというのはないんです。今は、国がいろいろな法令で、例えば義務教育の小中学校の先生の定数はこうしなさい、標準法というのがあるでしょう、あるいは社会保障や何かでは、生活保護はこうです、児童福祉はこうです、障害者福祉はこうです、高齢者対策はこうですと法令や政令でいろいろな形を決めておりまして、そういうものがナショナルミニマムというならば言うのかなと。そういうものをきちっと決めているものについては、それにかかるお金は地方交付税で地方団体に保障してやる、こういう仕組みになっているんです。
○中村(哲)委員
まさに今、大臣がおっしゃった、国の方でいろいろ制度を決めていくというところが、地方分権という考え方からしてみてどうなのかな、検討が必要なことだと思うんですね。
去年の十二月二十日に全国知事会が、「国の立法等に係る第三者機関設置に関する緊急要望」というのをお出しになりました。もちろんこれは、憲法四十一条の国会単独立法の原則ということもあって議員立法の方には難しいのかもしれませんけれども、この要望というのは、霞が関でどんどん新しい制度をつくってその仕事だけ地方自治体に押しつけられてはたまらないという知事さんたちの率直な、切実な気持ちのあらわれだと思うんですね。この点に関して大臣のお考えをお聞きしたいんです。
○片山国務大臣
今中村委員が言われた、全国知事会から何かペーパーをいただきました。国と地方の立法等に関する第三者機関を設置したらどうか、こういうことでございます。
我々の立場から言いますと、国会は国権の最高機関で唯一の立法機関だと憲法に書かれているんですね。この立法権というのは大変権威のあるものだ、私はこう思いますので、全国知事会が、あるいは地方六団体がいろいろなことを言ってきていただくのは、それはそれでいいと私は思います。それからまた、総務省というのは国と地方との間のいろいろな仲介やコミュニケーション、意思疎通の代弁をするところですから、地方のことを閣内でしっかりと表明していく、こういう役割もありますしね。
だから、全国知事会の会長さんの埼玉県の知事さんが来られたときに、お気持ちはわかります、しっかりと受けとめますけれども、私としては、中長期的な課題なので、この第三者機関を今おつくり賜るのは国会のあれからいうと、それは各会派がぜひ必要だということなら、これは国会でお決めになることですから、国会の皆さんが同意されるというのなら、それはそれで検討してもいいのですけれども、私の立場からいうと、ちょっと中長期的な課題ですねと。唯一の立法機関ですから、その立法機関について、チェックするわけじゃないのだけれども、それについていろいろなことを言う強力な第三者機関ができるということは、もう少し検討する必要があるのじゃないでしょうかと申し上げた次第であります。
○中村(哲)委員
大臣の答弁は、本当にそのとおりだと思います。憲法四十一条で、国会は唯一の立法機関であることが定められております。先ほど私が国会単独立法の原則と申しましたけれども、それはその文言から出てくる原則でございます。だから、国会の審議には第三者機関は関与できないというのが憲法上の要請だと思いますので、その以前の、法案として提出する前の段階の話だと思うのですね。議員立法ではなかなか難しいけれども、内閣提出法案についてはあらかじめおれたちに相談してくれよというお気持ちでの要望だと思うのです。
だから、本来、それは総務省の皆さんが従来やってこられた部分でやるということですから、そこがきちんとできていなかったのじゃないかというのが、その知事さんたちのお気持ちだと思うのですね。そこを透明性を確保して総合調整をどういうふうに果たしていくのかということが、知事さんたちから問われているということだと思いますので、その点について、一言だけお答えください。
○片山国務大臣
全国知事会初め地方六団体からいうと、そういうもどかしい思いがあったかもしれませんが、そういうことを言ってこられたときは自治省時代でございますので、今は総務省になりましたから、しっかりと地方の意思を閣内で代弁させていただきます。
○中村(哲)委員
次の質問に移らせていただきます。
地方債の発行を順次許可制から協議制に移行させていくということですけれども、このことが意味するのは、地方債の発行というのは徐々に地方自治体自体の信用力に任せていくという方向だと思います。その中で、自治体と引き受け手である金融機関との間で、引き受けに当たって審査がかなり厳密になってきているという話をお聞きします。最近の新聞でもそういうふうな報道がありました。国債の格付がスタンダード・プアーズによっても下がりましたけれども、同じように地方債の信用力についても同じような評価の低下が今後考えられると私は思っております。
そのような流れから考えますと、自治省と郵政省が一緒になって総務省になったということがこのことと関連して懸念されます。
と申しますのは、郵貯と簡保が自主運用となって、その資金が地方自治体に直接貸し付けられることになろうかと思います。そのときに、膨大な郵貯の資金や簡保の資金が地方債の引き受けに回ることで地方債の発行というのがどんどん無限定になされていって、地方財政のモラルハザード、倫理破綻が起こることが想定されます。その点についていかがお考えでしょうか。
○遠藤副大臣
今二つ御質問がありました。それぞれ順次答えていきたいと思います。
最初は、地方債の許可制を協議制に移行することによって地方債の信用度が低下するのではないかという御懸念の点でございますけれども、私ども国の方が協議をいたしまして同意したものにつきましては、地方財政計画や地方交付税制度を通じた財源保障をしておりますから、元利償還等について不安は起きない、こういう仕組みにさせていただいているところでございます。
それから、郵貯、簡保の市場運用の例外として特別に直接融資ができるようにした、そういうことによって総務省の中で自分で勝手にやってしまって、透明性が確保されないのではないか。あるいは、総務省というのは大きい役所ですから、郵貯や簡保とかいう資金も総務省の中にあるし、それを借りる方の旧自治省も総務省の中にある。あるいはまた、それをチェックする、行政監察をしておりました総務庁も総務省の中にある。お金を出す方も借りる方もチェックする方も全部総務省の中にあって、大変わかりにくく、自分で勝手にやるのじゃないかというふうな御懸念がさまざまなところから出ておりますけれども、それは全く誤解に基づく御懸念だと私は思います。
と申しますのは、郵貯や簡保資金の地方団体に対する貸付額については、運用計画の一部として、まず郵政審議会の審議を経なければなりません。そして、財投計画の一部として財政制度等審議会の審議を経なければならないし、最終的には特別会計予算として国会で議決をいただく、こういう仕組みになっています。
それからまた、総務省が財務省との協議を経て作成する地方債計画でございますけれども、この中において、地方債資金としての額を明らかにしなければなりませんし、地方債の発行見込み額等を含めた地方財政計画、きょうはこれを出しているわけですけれども、これを策定いたしまして、国会で審議をいただく、こういうふうになっておるわけでございます。
地方債の許可について、あるいは決定について、貸し付けに当たって、これは総務省の中で一元的にできるものではない、こういうふうな仕組みになっているわけでございまして、御理解を賜りたいと思います。
○中村(哲)委員
二つの答弁の先の答弁の方の感想をまず申させていただきますと、地方財政計画で決まっているから自由に発行できない、一言で言うと、そういうことだと思うのですね。それと、許可制から協議制へ移行していくという制度改革の流れと私は矛盾すると思います。そこの制度の移行時期にあるということを押さえて答弁していただかなくてはならないのだと思います。
同じことは、後の答弁でも言えると思います。公社化になろうということになりますと、民間企業に近い企業体としての判断が一方で求められるということになると私は思います。二〇〇三年以降の公社化の制度設計をいかにしていくのかというときにおいて、一々許可をとっていかないと貸し付けができないというようなことであれば、郵政公社の自主性というのは非常に限られたものになると思います。だから、そこのあたりの意思決定のプロセスの明確化、そこが郵政公社をつくる設計のときに必要なのだと思うのですね。そこをどう取り組んでいかれるのか、今後どうされていくのかということをお聞きしたいのです。
○片山国務大臣
御承知のように、二年後に今の郵政事業庁は郵政公社に移行する、こういうことでございまして、総務省発足以来、制度設計を準備していただくようにお願いしておりまして、今鋭意作業中でございます。できれば年内ぐらいに制度設計を終えて、来年の通常国会に公社法を出したい、こういうふうに思っております。
その中で、この自主運用についてどういう割り振りで、今度は公社と旧郵政省なる総務省が、総務省の中にも郵政企画管理局という内局は残りますから、こことどういう分担をして全体の自主運用をやっていくかを議論して詰めたい、こう思っておりますが、公社にするということは、やはり公社自身が透明で自律的にいろいろな事業がやれる、弾力的にやれる、企業会計的にやれる、こういうことでございますから、そこのところをしっかりと行革基本法に書かれた郵政公社の基本的なフレームも踏まえて考えていきたい。その中で、この自主運用についてもしっかり結論を出したい。今この委員会でこういう方向ですということを申し上げる段階に至っておりません。しっかりと検討します。
○香山政府参考人
地方債の協議制に関する御質問につきまして、若干補足をさせていただきます。
許可制度から協議制度に移行した場合に、要するに、私どもが協議をいたしまして同意をしないという場合があるわけであります。私どもが翌年度以降その元利償還費を財源確保するとか、あるいは地方債につきまして公的資金をあっせんするとか、そういう場合は当然同意をした地方債に限らせていただくということであります。
協議制度に移行した、基本的に意味がどう違うかといいますと、これは個々の地方団体が国とか知事の同意を得なくても地方債を発行することができるということになるわけでありますが、これは当然、そのためにかえって財政規律を乱したり、みだりに事業が実施されるようなことがあってはいけませんので、一方では財政再建制度は維持いたしますし、赤字比率や元利償還費のウエートが一定の比率以上の団体につきましては、国の許可を受けなければならないというようにいたしております。また、それにもかかわらず、同意を得ないで地方債をあえて発行しようとする地方団体の場合は、議会にあらかじめ報告をしてもらうという制度を用意いたしております。
こういったことによって、全体として、地方財政計画や交付税による財源保障が、はるかに届かないようなとてつもない額の地方債が発行されるというようなことは起こらない。個々の地方団体においても十分財政規律を守って地方債が発行されるであろう。そういう意味で申し上げますと、地方債につきましては償還財源の担保も十分なされておるから、したがって、全体として地方債の信用が下がることはない、こういう趣旨で考えておる次第でございます。
○中村(哲)委員
モラルハザードというのは急に起こるものではなく、徐々に進みます。だからこそ、郵便局と地方自治体が、地方債を発行するときに、引き受けをやるときの相談というのは、きちんとルールに基づいた透明であるものを制度設計していただきたい、そのように感じております。その点を御確認させていただきまして、次の質問に移らせていただきます。
郵政と自治の融合の話が出てきたので、ついでにワンストップ行政サービスについてお聞きします。
先日の大臣の答弁で、合併が進み、それを補うものとして郵便局が自治体の支所的なものになるということが言われておりました。私がそのとき疑問に思ったのは、その費用はどこから出るのかなということでした。郵政事業は公社となりますから、公社化を視野に入れますと、郵政事業としてはただで引き受けるわけにはいきません。そうすると、自治体から委託費をもらって仕事をするということにしかならないと思うのです。
さて、その委託費というのはどういうふうに決まるのでしょうか。また、その財源はどこから出てくるのでしょうか。ワンストップ行政サービスというのは国が推進する事業だから、また基準財政需要額のところに組み入れられて交付税が積み増しされるということになるのでは、本当に困ると思うのですね。その点についての御答弁をお願いします。
○遠藤副大臣
これはこの国会に法案の提出を予定しているわけですけれども、郵政官署、郵便局におきまして、今自治体が行っている業務の一部をできるようにするという法律です。
そこで、取り扱う手数料をどうするかということでございますが、これは郵便局が契約によりまして各地方団体からいただく、こういうことになります。ですから、お金を出す方は地方自治体、地方団体でございます。これに対する特別な、新たな地方財源措置はいたしておりません。
○中村(哲)委員
同じことを大臣にお聞きしたいのです。というのは、大臣がイメージをおっしゃった、先日の答弁で。そのイメージに基づいて、同じことなんですけれども、大臣の口から聞かせていただけませんでしょうか。
○片山国務大臣
市町村の合併をこれから平成十七年三月まで進めていく。できれば与党三党が言われている千ぐらいを念頭に置く。今三千二、三百あるのを千というのは、三分の一ぐらいにするということは簡単にいきませんけれども、そういうことを念頭に置きながら市町村合併を進めていく。
そうしますと、市町村合併で一番反対が多いのは、今役場があるから住民サービスが行き届いている、なくなると、それが低下する、自分らのところが場末になる、親しみがなくなる、市町村役場と距離ができる、こういう反対論が多いのですよね。私は、それはそれで情緒的なことを含めて大変よくわかるのです。だから、仮に市町村合併や地方分権推進のためにどうしても必要ならこれはやっていく。しかし、そうなると、今コミュニティーの中心になっている市町村の役場にかわるようなものがあったらいいなと。
そこで、今幾つかの郵便局でトライアルとしてワンストップサービスをやっておりますから、これを全国的にやってもらったらどうだろうか。しかし、それは郵便局とそれぞれの市町村が自由な話し合いのもとに合意した場合にやってもらう。郵便局に市町村が委託するわけですね、これこれの仕事を頼む、郵便局は引き受けましょうと。一カ所で行って済むからワンストップサービスというので、役場に行かなくて、郵便局に行けば役場で今まで受けたサービスがワンストップでもらえる、こういうことをやったらどうだろう。
そのお金は委託する市町村が出すのですよ。もともと市町村の仕事ですから、いわば市町村の予算というのか財政措置としてもともとあるものです。自分がやるかわりに今度は郵便局にお願いするのですから、そのかかるお金は市町村が委託費で郵便局の方に差し出す、こういうことなんですね。
そこで、このためには法的根拠が要るものですから、私はそのための法律をこの通常国会に出させていただいたらどうだろうか、こういうふうに思っているわけであります。
それから、これからは、ちょっと余談になりますが、地方のIT化を進めなければいけません、地方の情報化を。そのためにはやはり郵便局に、同じ総務省ですから、郵政事業だけじゃなくて、テレコミュニケーションの方でも一つの拠点になってもらう。今イントラネット整備というのを一生懸命やっておりますから、そういう地域のLANの拠点にぜひ郵便局になってもらったらどうだろうか。二万五千もあるのですから、二万四千七百あるのですから、郵便局をうまく活用していく、こういうことが必要ではないかと私は考えておりますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
○中村(哲)委員
大臣の答弁は本当にイメージがわきやすくて、いい答弁をされるなというふうに実感しております。
ただ、今の御答弁で一点、IT化のところがちょっとひっかかりました。IT化という名目で国のお金が郵便局につぎ込まれていく。そのときに、ワンストップ行政サービスの設備をつくるための費用もIT化という名目で継ぎ足していかれているのではないかと思うのですね。今IT化、IT化といいますけれども、具体的に郵便局のIT化というのはどういうものでしょうか。
○片山国務大臣
これは、私がちょっと余談なことをつけ加えたので、今そういう御質問になったんだろうと思います。
今人口によってインターネットの普及や利用が物すごく違うのですよ。数字を見ますと、大都市は物すごく高いのです、中都市は半分ぐらいですか、さらに地方の市町村はその半分なんです。このままでいくと、いわゆるデジタルデバイド、情報格差が拡大すると私は思うのです。本当に進んだIT国家というのは、日本じゅうの隅々まで同じようなインターネットその他の恩恵が受けられるような仕組みにせにゃいかぬのじゃなかろうか。地方はおくれていますからね。
そのためには、今地域のLAN、ある地域の主要な公共施設をネットワークでつなぐことをやっておるのです。その中には必ず郵便局を入れてくれ、役場、公民館、図書館、病院、保健所だとか、その中に必ず郵便局を入れてくれと。郵便局に行けば、そこでインターネットのアクセスもできるし、場合によってはそこで簡単な講習も受けられる、こういうことを少し検討してくれ、やるかやらぬか決まっていませんよ、私の個人の意見と言ったので。ぜひ郵便局をそういうことの一つの拠点に、情報の拠点にすることも今後考えていきたい。細かいことは検討してもらいます。
○中村(哲)委員
大臣はインターネットをどれぐらいお使いになりますか。
○片山国務大臣
恐らく委員よりは相当使い方が下手だし、回数は少ないと思いますけれども、そこそこにはメールをやっておりますが、国会がございますので、今は忙しくてそれどころではありません。
○中村(哲)委員
大臣、メールをやっているとおっしゃいましたね。メールというのは非常に個人的なものですね。郵便局に行ってやろうというふうにお思いになりますか。
○片山国務大臣
それは委員、地方の、おくれているといったら怒られますけれども、まだまだこれからのところの現状を見て、私は、やはりそういうところにインターネットにもっと親しんでもらうということが必要かなと。
そこで我が総務省は、インターネットの整備事業だとかイントラネットの整備だとか、もう少し広域的なネットワークの整備だとかに今力を入れているのです。私は、恐らく地方の町村に住んでおれば郵便局に行ってやろうと思いますよ、郵便局はちょっとコミュニティーセンターみたいになっているところがたくさんあるんだから。ぜひその辺は御理解賜りたいと思います。
○中村(哲)委員
インターネットの使い方を教えてくれる場所として郵便局が機能するというのはわかるのですけれども、日常的にインターネットを使うというのはやはり家になると思うのですね。デジタルテレビとかいうことも言われていますけれども、端末は必ず家にあって、そこでインターネットをやる。デジタルデバイドを解消するのであれば、一軒一軒の家にどういうふうなインターネットの網を張っていくかという観点が必要だと思うのですよ。それと関係して考えると、郵便局にインターネットというのは余りイメージが沸かないなというのが、私、インターネットを駆使している議員として思うことであります。メールマガジンということも御存じでしょうけれども、そういうものを駆使している議員としての意見として聞いていただければ幸いでございます。
それではもう一点、最後に、地方債の今後を考えると、貸借対照表の作成など自治体の信用力を開示するための情報公開制度というのを整備していく必要があると思います。
その点について、今後どのように取り組まれるおつもりでしょうか。局長の答弁と、最後に大臣の答弁をお願いいたします。
○香山政府参考人
地方団体の財政に関する情報の公開というのは極めて重要なことだと思っておりまして、既に財産でありますとか歳入歳出予算の執行状況等につきましては、住民に定期的に公表されておりますけれども、最近いわゆるストック情報についての関心が高まっておりまして、地方団体の資産の構成、あるいはその資産を形成するためにどのような財源があって、それが負債としてどのように残っているか、こういうことが大きな関心になってきております。
総務省におきましては、昨年三月にバランスシート作成に関する研究会によって報告書を取りまとめまして、地方団体に対しましてその活用方を要請したところでございまして、私ども現時点での調査では都道府県はすべて、それから八割の市町村においてバランスシートを作成する、あるいは作成の検討がなされておるという状況になっておりまして、こういう意味での地方団体の取り組みも少しずつ進んできておるのではないかと思っております。
さらに今年度におきましては、普通会計だけではなく公営企業会計も含めました全部の会計を対象とするバランスシートの作成でありますとか、こういうことにつきましても作成手法について研究をいたしております。
いずれにいたしましても、今後とも、地方団体の財政状況をさらにわかりやすい形で住民の方々にお示しできるように、我々としてもできるだけの努力をしてまいりたいと考えております。
○片山国務大臣
今の局長の答弁に尽きますが、国の方は、情報公開法も四月から施行されますし、ぜひ地方の方にもできるだけ情報開示をしていただくように努力いたします。
○中村(哲)委員
私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
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